縮刷版97年4月上旬号


【4月10日】 7565番なのである。何がって「根性戦隊ガッツマン」の隊員ナンバーが、である。そんな団体があることなど今朝まで露ほども知らなかったのだが、たまたま立ち寄った本屋で、宮村優子さんの初単行本「根性戦隊ガッツマン大百科」(彩文館出版、1429円)を見つけたのが運の尽き。今年に入って3回も実物を見たというストーカー的親近感も加わって、ついつい手に取り、あまつさえ購入してしまった。30越えてアニメ声優の単行本を買うとは。30越えて「ウテナ」見てんのと、いったいどっちが恥ずかしーだろーか、ってどっともだけど。

 しかしとことん企画モノ人生なんだね、みやむーは。CDは最初の「ケンカ番長」こそ普通のアルバムだったのに、次はオールアニソン風って曲ばっかりの「スペースケンカ番長」だもんな。単行本にしたって、キレイキレイした写真が巻頭を飾り、のたくったポエムなんぞが間を埋めて、あとはゴーストがテープからおこした”自作エッセイ”ってのを、スカスカのレイアウトで収録するってのが王道だろ。なのにみやむーのは、巻頭こそ写真とポエムが飾っていても、あとは根性戦隊の闘いの日々が延々と続いてる。ペラペラな割には中身はギッシリと詰まったお買い得本。これ1冊でガッツマンのことだけじゃなく、みやむーのことならたいがい分かる。足がとっても頑丈そうってことまでも、ね。

 今日はミスマル・ユリカなのである。でもって7月10日の誕生日はガロード・ラン(誰だ?)なのである。何がって「アニメージュ」5月号の付録についていた「アニメージュ・オリジナル・セミ−アニュアル・カレンダー」に日割りでピックアップされているアニメキャラクターが、である。本当だったら誕生日はこっちがよかった「天上院桂」(こんな名字だったのか!)は4月20日、「天上ウテナ」は5月17日、「姫宮アンシー」は8月12日ー。ほかにも5月23日の「小早川美幸」とか6月8日の「辻本夏実」とか6月20日の「初野華」とか、トレードしたいキャラがたくさんあって迷う。

 しかしこれだけたくさんアニメがあると、名前抜きカレンダーを出されて、どんなアニメのどのキャラクターなのかを正解できる率は、たぶん1割にも満たないんじゃなかろーか。エンターテインメントを担当している者が、こんな正解率でいー訳はなく、勉強が必要と先月から買い始めた「アニメージュ」を、隅から隅までなめるよーに読んでいく。なるほど、「少女革命ウテナ」で決闘場への道すがらかかる「絶対運命黙示録」の歌は、「天井桟敷」から流れた「万有引力」の舞台でかかっていた歌だったのか。どーりでミスマッチな訳で、そのあたりに「ウテナ」を宝塚の模倣にはしたくないとゆー、製作陣のこだわりが感じられる。えっ、大森望さんも柴田よしきさんの「炎都」買いだってえー?

 「根性戦隊ガッツマン」を買って「アニメージュ」を買った同じ本屋でマイケル・ヴェンチュラの「動物園 世界の終わる場所」(都甲幸治訳、学研、2700円)買うとゆーのも、なかなかにバランスがとれた行動ではなかろーか。かのスティーブ・エリクソンが絶賛して序文を特別寄稿しているほどに、アメリカでは知られた作家さんらしーけど、日本ではこれが初登場になる。学研で翻訳者をプロデュースしている安原顯さんがセレクトして来た以上は、きっとなかなかに読ませる作家さんに違いない。

 しかし翻訳者の都甲さん、1969年生まれのたぶん27、8歳ってところだからホント若い。学歴から見て柴田元幸さんの弟子筋に当たる人なんだろーけど、こーゆー人をピックアップするあたりにも、安原さんならではのタクラミが感じられる。でも確か安原さん、学研からも追い出されちゃったんじゃなかったっけ。ブコウスキーやティム・オブライエンを出したりして、なかなかにコダワリが感じられた学研の翻訳モノが、この後はもー読めなくなっちゃうのかなー。

 学研からはほかに、たがみよしひささんのミステリー巨編「なあばすぶれいくだうん」の13巻が発売。徳間書店の方でやってた妖怪物の連載が、雑誌消滅とともに打ち切りになっていたはずだから、たぶん現在唯一まともに楽しめるたがみ作品だった「なあばす」が、これでお仕舞いってのはちょっと哀しい。最初のうちは結構推理物としても楽しませてくれていたのに、最近じゃーオカルトかかったりしてたから、このあたりが潮時だったのかもしれない。

 しかし「精霊紀行」と「軽井沢シンドローム」と「我が名は狼」を頂点に、「グレイ」とか「化石の記憶」とか「依頼人から一言」とか題名忘れたビリヤードの漫画とか、なかなかに楽しくカッコ良い作品が多く、さまざまな媒体で活躍していたたがみさんも、最近ではとんと目立たなくなってしまった。いっぽうで兄上の小山田いくさんは、「すくらっぷぶっく」の時からほとんど変化することのない絵柄で、相変わらずのほのぼのとした世界を、デビュー以来の秋田書店で延々と描き続けている。どっちの道が正解かってのは一概に言えないけど、地味で堅実な長男としては、小山田さんの地味で堅実な路線に、作品の好悪はともかくも惹かれるものがある。でも買ってないんだよなー「マリオネット師」以降の小山田作品は。


【4月9日】 富士通からメールが入っていて、何だろうと思ってあけて見ると、マイクロソフトによる買収が決まった「ウェブTVコミュニケーション」のスティーブ・パールマン社長が、今ちょうど日本に来ていて、日本での合弁先の富士通といっしょに、買収による影響とか、今後の事業展開の予定だとかを話すことになったのだとか。結論から言えば、マイクロソフトに買収されても日本での事業に「変化なない」とのこと。むしろ「マイクロソフトのリソースを使っていーものを作れる」とかいったポジティブな意見ばかりを並べていて、せっかく独力で立ち挙げた事業が、ビル・ゲイツにぱっくりやられちゃったってのに、アメリカ人って割り切るのが早いなーとゆー感想を持った。

 外国人は冗談が好きなので、英語でしゃべっている間も、のべつくまなし、じゃないのべつまくなしにジョークを織りまぜる。けれども英語がピーマンな身では、英語が解る約数名の記者がどははははと笑っている間に入って、うへへへへと愛想笑いをするしかないのがちょっと恥ずかしい。それが何度も重なると、こんなことなら、中学生の時にもっとしっかり予習復習をしておくんだったと強い後悔の念にかられ、情けねえなあと深い自己嫌悪に陥る。隣のASAHIパソコンの女性記者は、どーやら英語が完璧に解るらしく、タイミング良くあいづち笑いをしていたなー、あーこんちくしょー。

 ウェブTV自体は、富士通で前にデモを見た時、既存のインターネットTVに比べて格段に使いやすいインターフェースに、ちょっと感動した記憶がある。通信料の関係で、なかなかインターネット自体が普及せず、結果コンテンツも充実していない日本では、まだまだ先が見えないが、有線テレビの感覚で、さまざまなデータをインタラクティブに仕入れることができるウェブTVの存在価値は、いずれきっと認められていくことだろー。しかしビル・ゲイツ、PC上でのインターネット事業がなかなか軌道に乗らないにも関わらず、将来を見据えてしっかりとTVのインターネット事業にも投資するあたり、とにかくナンバー1狙いの日本橋あたりの某ソフト流通会社のおっさんとは、やっぱりスケールが違うねー。いやスケールはいっしょかもしれないけれど、バックにある資金力がケタ違いに違う。何せあっちは世界の億万長者だもんね。

 講談社の「小説現代増刊号 メフィスト」を買ったついでに、双葉社の「小説推理」を本屋で立ち読みし、香山二三郎さんの「国内ミステリー評」のコーナーを読んでひっくり返る。取りあげていたのは柴田よしきさんの新作だけど、ちょろっとだけ「炎都」について触れていて、これを傑作と大絶賛している。まあ人によって感性はさまざまだし、こっちだって菅浩江さんの「鬼女の都」を未だに大絶賛している身だから、他人のことなど言えた義理ではないのだが、しかしガッパが出てきてヤモリがしゃべて天狗火がポンポン投げられる小説を、スペクタクル巨編とかパニック小説みたくとらえるのって、やっぱり僕には解らない感性だなー。そーいえば香山さん、前にも週間文春で「炎都」を大絶賛していたから、よほどお気に入りなんだね。

 京都といえば、右京区にある臨済宗妙心寺派塔頭「大雄院」が、インターネット上に仮想寺院「情網寺」を建立したとゆー話を記事にして出す。よくあるインターネットのお墓じゃなくって、生まれながらもその目的を全うすることのなかった、ボツ原稿とかクズソフトといった浮かばれない「情報」を、懇切丁寧に供養して差し上げるための「お寺」なんだとか。今年の10月24日に供養祭をするそーで、今は供養して欲しい情報を受け付けている最中。送っても送っても採用されなかった小説とか、描けども描けども載らなかった漫画とか、撮れども撮れどもコンクールで入賞しなかった映画とかでも、多分オッケーだと思うから、心当たりのある人は、さっそく連絡をとって供養を依頼したまい。でないと化けで出るよー。

 たまたま14日に京都で取材があって、前日の13日から京都に入っている予定だったので、13日か14日の明いている時間にお話がうかがえないかと、「大雄院」のご住職に「電子メール」を出すと、およそ1時間くらいで返メールが届いていた。さすが「電脳坊主」、ネグロポンテなみに四六時中メールチェックをしていると見える。もしかして繋ぎっぱなしの環境を庫裡かどこかに作っていて、メールが届くと「ポペーポ」とチャイムが鳴るよーになっているのか。ともかくも浮かばれない情報がどのような災いをもたらすのか、どうやったら供養できるのかをとっくりと聞いて来るつもり。帰ったらこっちで布教活動でもしようかな。

 京都で泊まるホテルをインターネットで予約。これでよくマスコミやってるってくらい電話が苦手な自分にとって、誰とも会話せずにホテルを予約できてしまうウェブってシステムは本当にありがたい。本当に予約がとれたのかってのがちょっと不安だけど。しかし京都なんてもう12−3年足を踏み入れたことがなく、泊まるホテルも取材先の印刷会社もさっきの住職のお寺も、さっぱり地理が分からない。せいぜい日曜日にアベックの顰蹙を買いながらひとり鴨川べりでも散歩して、地理を確かめよーかと思っているけど、「炎都」みたいな大災害が発生したら、きっと逃げ切れずに水虎に食べられるか天狗火で焼け死ぬね。

 帰ってビデオで「少女革命ウテナ」の第2話を見る。オープニングの綺麗さは前回と変わらず、本編の酷さ(あくまでも「絵」についてだけど)もやっぱり同じ。コンバトラーVの合体シーンじゃあるまいし、どーして螺旋階段を登って決闘場に行くシーンで、第1話とおんなじ絵を使うかねー。動きもリミテッドかかっていてギャグっぽく、流麗な絵とどこかあんまりあっていない。「黙示録なんたら」ってなコーラスにもまだ慣れない。それでもちょっとづつ姫宮アンシーにはまりつつある予感がするから、このままきっとズルズルと見続けて、ゴールデンウイーク明けには立派に「せかいをかくめーするちからだー」とか叫んで、上司に決闘を申し込んでいることだろー。んでもってエンゲージするんだ、って誰とだ?


【4月8日】 特集の仕事絡みで小石川と秋葉原をハシゴ。ともに凸版印刷の事業所で、小石川では包装材、秋葉原ではデジタルとアナログを融合させた新しい形の印刷工房の話を聞く。包装材で面白かったのは、すべてが紙で出来たカン、ってちょと日本語がヘンだね、カンのように円筒形をしたジュースなんかのパックのことで、凸版の付けたブランド名では「カートカン」とゆーらしー。

 紙でカンのかわりになるのって、ごもっともな意見だけど、実はしっかりなってるってのが驚き桃の木21世紀。確かに握れば潰れすけれど、それには相当の握力がいるくらいにけっこうカタくできている。おまけに最近ではホットのベンディングマシンにも対応していて、2週間もホットの自販機に放り込まれたままで、ふつうの紙だったらフニャフニャになってしまうところを、しっかりと形状を保ち、機密性を維持できるんだとか。生産量が圧倒的に少ないから、マーケットでお目にかかることは滅多にないけれど、そのうちジワジワと蔓延ってくるかも。今でこそ3割を越える酒の紙パックだって、最初はケチョンケチョンだったからね。

 秋葉原では地下にあるデジタル工房「GALA」を見学。スキー場でも温泉でもないよ、あれが「ガーラ」でこっちは「ガラ」。鳥ガラなんかでもないからね。ここの凄いのは、マックにSGIといったマシンがそろってフルデジタルの製版機があって、それで校正刷りの部分だけは人間が1枚1枚手で刷りだしているところ。微妙な色の調合なんかはでっかい機械でばんばん刷っていたら、ぜったいに出せないんだとか。

 例えば、同じ赤でも発色の良い赤が欲しかったり、逆に沈み込む赤が欲しかったりするクリエーターのニーズを、マックなんかから打ち出されたプリントを見てピピピっと感じとって、微妙に色の配合を変えるという。「ライトを当てた時まで考えて色を混ぜる」とは、その道40年のヴェテランにしか出来ない仕事。しかし後継者不足はどんな職人芸にもあてはまるよーで、その人も3年でいいから人を付けてくれたら養成してみせるのにと話していた。隣の部屋では若いお姉さんがインディゴをちょちょいと(ってもすごいスキルのカタマリあってのことなんだけど)操ってすっげーグラフィックを作っていて、この対比がいかにも今風だなーって思ったね。

 移動の電車の中でL・スプレイグ・ディ・キャンプの「悪魔の国からこっちに丁稚」(田中哲弥訳、電撃文庫、上下各550円)を読む。元の英語を解るところだけ訳し、ときどきないところまで付け足したとゆーだけあって、織り込まれるギャグはとってもジャパナイズ。普通の翻訳小説とはちょっと違ったテンポの良さもあって、スラスラと最後まで読めてしまった。本当の英語版がいったいどんなストーリーになっていて、どんな文体が使われているのかは英語に不自由な身ではなんとも確かめよーがないけれど、日本人が設定からキャラまでをすべて1から起こして書く、ヤング・アダルト向けファンタジーとは、どこかやっぱり違う雰囲気がある。

 シェルダンやスティールといった作家の作品が「超訳」と銘打たれて刊行されて、ベストセラーになる風潮に慣れてしまったせいか、こーゆー作品が出てもあまり驚きはない。これでディ・キャンプの認知度が高まるならばいーじゃんってゆー気にさえなる。岩崎書店なんかの翻訳ジュブナイルSFが、SF好きになるきっかけだったから、入門者向けにこんな企画があっても面白いんじゃないかな。

 もちろん原著者しても、翻訳を生業としている人にしても、こーゆー「超訳」ってスタイルには、いろいろと異論と反論もあるんだろーね。安易に(翻訳を安易を言い切る英語力はないんですが)海外の設定とストーリーとキャラクター(つまりはすべてってこと)を借りて来る風潮が強まるのだけは御免被りたく、その辺り「超訳」に向く作品向かない作品、「超訳」を読ませるターゲット分析、読ませることによって将来につながるマーケティングを、出版社さんや作家産にはお願いしておきたい。

 もはや得体のしれないラブラブアニメと化した「新・天地無用!」。デフォルメの凄さはついに魎呼をして西岸良平ツラに変えるまでに至った。ストーリー展開の唐突さ、解らなさは「少女革命ウテナ」も真っ青。だって「天地無用!魎皇鬼」を見てテレビ版「天地無用!」を見てノベライズもコミックも読んでいる人間が、理解できないって言ってるんだから、なんで天地の家には女の子がたくさんいるのか、そのことすらも解らないフリの客が、とても居着いてくれるとは思えない。これはこれで見るとなかなかに楽しめる要素はあるんだけど、やっぱり「天地無用!」って名乗っているんだから、世界観だけは守って欲しいよなー。キャラクターを使い回しこねくり回すことは、キャラクタービジネスにとって決して良いことじゃないと思うよ。


【4月7日】 なにかと話題のアスキーが、元「SPA!」「PANJA」編集長の渡邊直樹さんを迎えて、この5月に創刊する新雑誌「週刊アスキー」の見本誌が届く。表紙が広末涼子さんで、アスキーの元役員が設立した会社「アクセラ」から出た新雑誌の「週刊テレビゲーマー」といっしょ(見本誌も広末さんだった)ってのが、なにやらとっても因縁めいてる。もしかして意識して起用したのかな。

 それはさておき内容の方では、オタキング岡田斗司夫さんの「オタキングダム」とかいう連載は、「おたく」カルチャーを「SPA!」で積極的に取りあげた渡邊直樹さんらしーといえばらしー。同じく「SPA!」で起用して大ブレイクした中尊寺ゆつこさんを再び起用しているあたりも、いかにも渡邊直樹という感じがする。旬一歩手前の人を起用して大ブレイクさせるのが渡邊さんの持ち味とすれば、今が旬真っ盛りな岡田斗司夫さんの起用ってのは、ちょっと外しって気もしないでもないけれど、旬ってのは岡田さんを昔から知っている「おたく」の感性だから、一般にはまだまだ知られていない岡田さんが、ここで大飛躍を遂げて、それこそ小林よしのりさんみたく超大メジャーになる、よき前兆と言えるのかも。

 でもたしか岡田さん、「週刊アスキー」のコンペティターともいえる「SPA!」でも連載を持つんじゃなかったっけ。版元の扶桑社からは何人かアスキーに移ったよーで、ますます対抗意識は強まってるってのに、その両方を一時に征するなんて流石は当代(東大)きっての「オタキング」。いっそその足でアクセラの「週刊テレビゲーマー」にも連載を持てば、因縁ありあり雑誌が3つ巴で演じる「大週刊誌戦争」の中で、すっげー注目を集めることができるのになー。

 ほかには今が旬な50人の大紹介。ウォルフレンに古川亨さんに飯野賢治さんてのがオモテの売れ線だとすれば、村崎百郎さんに森村泰昌さんあたりはウラの売れ線。硬軟剛柔オモテウラを取り混ぜたアセンブルも、やっぱり渡邊テイストってことかな。まー見本誌でなんで中身は変わるだろーし、レイアウトなども見直されるだろーね。でもあのデザインも何もない明朝体の題字だけは、どうにもいただけないなー。

 山田正紀さんの「妖鳥」(幻冬舎ノベルズ)を読了。1000枚近い分量があるにも関わらず、サクサクと読んでしまえるのは、流石に20年以上のキャリアを誇るエンターテインメントの旗手ならではの文章力。妖しげなホラーじみた設定が、ラストで常識的に解決されてしまうよーに見えて、そうもならないところも山田さんらしー。主題はやっぱり「死」ってことになるんだろーか。自分の「死」にジタバタする者と、たくさんの他人の「死」に冷めた者。同じ「死」を挟んで対立する2つの感性がぶつかり合ったところに発生する事件を、「死」から最も遠い位置にいる者が解き明かす。

 けれどもどちらの「死」をも理解できずに、悩みもだえるってシチュエーションは、同じくどちらの「死」も理解し得ない今の自分と、どこか重なる部分がある。「死」に際してジタバタしたくないなーと思いつつも、やっぱりジタバタしそーだし、「死」に鈍感になりたくないなーと思っていても、いざ戦場なんかに放り込まれたら、周囲の「死」に慣れっこになってしまいそーで、どちらに転んでも恐ろしい。動機がいまいち理解できないが、フェアな謎がたくさん盛り込まれているから、「本格推理」って惹句はとりあえず信用できるものだった。やっぱり山田さんには「SF」を書いて欲しいんだけど、こーゆー作品なら「ミステリ」もいーかなって思ってしまう。


【4月6日】 西澤保彦さんの「瞬間移動死体」(講談社ノベルズ、800円)を読む。テレポーテーションというSF的な設定を約束事として使ったミステリという意味では、同じ講談社ノベルズの「人格転移の殺人」ほかと共通しているが、約束事の分かりやすさという点では誰の人格が誰の中に入っているのか、1読しただけではなかなか理解できなかった「人格転移」よりは、はるかに分かり易い。

 もっともこの話、SF的設定のミステリとゆーよりは、作家になりたくて仕方がないのに応募作は1次選考止まりで、あまつさえつき合っていた彼女がさっさとデビューしてしまい、今はその彼女の夫として主夫業に勤しみながらも、夢すてきれずに悶々とする男の苦悩ってのがテーマになっているから、心当たりのある男共は、心穏やかに読むなんてことちょっと出来ない。「殺意」が芽生える瞬間もホントよく解るって、心当たりがある男共の1人なのか、オレは。

 最近ことさらSFファンの間で評判の悪い日本経済新聞文化欄「ウェーブ」のコーナーに、小谷真理さんが登場して何やら書いている。すわ、かの「氷河期」記事への反論か、いやいや反論なんて生やさしいものじゃないぜ、きっと悪口罵倒の類に違いないぜと思って読むと、意外や日経への反論めいたものは一切なく、「文学界で花開く『複雑系』」とゆーテーマで京極夏彦さんとか篠田節子さんとか新世紀エヴァンゲリオンとかに共通する、「各ジャンルの情報系を高度に再処理し相互交渉させ、結果的にジャンル個々からは予想すらされぬ新たなる面白さを紡ぎ出」している点を挙げて、最近流行りの小説の特徴を分析している。

 「複雑系」がなんたるかを良く知らない文系ヲタクの僕は、よーするに「ごった煮」で「なんでもあり」ってことなんだろーと、小谷さんがムズカシイ言葉を使って構築する理論を安易に単純化してしまうのだが、面白いエンターテインメントって昔からいろいろな要素をごっちゃりと詰め込んで、いろいろな角度から楽しめたんじゃなかろーか。「複雑系」って小難しい流行言葉を使われるよりも、「なんでもあり」ならこっちが元祖の「SF」って言葉で括ってくれた方が、もっとすんなり読むことが出来たよーな気がする。「SF」を「氷河期」と断じた日経にケンカ売るみたいだけどねって、小谷さんもう既にケンカ売ってるんだけどね、「SFマガジン」で派手に。

 あと「折しも『SFマガジン』誌がこの5月号から緊急フォーラムを設置し、『文学ジャンルの複雑系』を意識した論争を開始した」ってあるけれど、言われてはじめて「『複雑系』を意識した論争だったのか」と気づく文系ヲタクがここに1人。それほどまでに高尚なことをしている雑誌だったとは露知らず、買ったら横山えいじさんの漫画と大森望さんのインタビューとブックレビュウとコミックレビューを真っ先に読んでいたわが身を深く恥じる。でも「SFマガジン」5月号のフォーラムって、「クズ」とか「氷河期」と痛罵されたことに反論したんであって、決して「科学理論に敏感な同誌がジャンル融解現象に強い反応を示した」んじゃないと思うけどね。

 日曜出勤で会社に行くと、ファンハウスから加山雄三トリビュートアルバムの完成CDがファンハウスから送られていた。早速マックのCDプレーヤーでテープ版には入っていなかったTHE ALFEEによる「夜空の星」を聞くと、これがまた「星空のディスタンス」そっくりな始まり方とアレンジ。導入部をアカペラでコーラスし、ジャジャジャイーンとイントロが始まって、それから激しい本編へと突入していくそのノリは、そのままTHE ALFEEのコンサートで天井までマーシャルのアンプを積み上げた前で唄っても、誰も加山さんの歌だと気が付かないんじゃなかろーか。いっしょに聞いていた人にも大ウケだったから、きっとこのトリビュートアルバム「60CANDLES」は売れるぞ。この春は加山が大ブレイクだ。

 山田正紀さんの「妖鳥」(幻冬舎ノベルズ)を読み始める。100ページほどまであっとゆー間に読み進んでしまうが、話は未だ見えず事件らしい事件も起こらず、けれどもゾクゾクとするよーな恐さと面白さを予感している。「デッドソルジャーズ・ライブ」みたく人の死を扱った話になるのか、それとも純粋にミステリとして進むのか、今はまだ手探りの状態だけど、出てくるキャラクターの異様さ、不気味さは「デッドソルジャーズ・ライブ」にいささかも劣ることがない。太田忠司さんの「3LDK要塞山崎家」(幻冬舎)が惹句に偽りありだったので、「妖鳥」の「本格推理巨編」をそのまま信じていーものか、いまはちょっと保留の段階。今晩は徹夜で解明、だな。


【4月5日】 ビデオ録画しておいた「スレイヤーズTRY」を見る。今週から始まっためぼしいアニメの新番組では、デフォルメがシナリオといまいち結びついていない「新・天地無用!」や、セーラームーンのスタッフが集結し、奇天烈さでは群を抜いていても、作画が不安定な「少女革命ウテナ」よりは、はるかに安心して見ていられる作品だなーとゆー印象を持った。作画的にもシナリオ的にも安定していて、だらだらと見続けていればそのまま半年の放映期間が終了して、「あー今回も面白かった」の気分で終わることができそー。

 しかし「新・天地無用!」にも「少女革命ウテナ!」にも「スレイヤーズTRY」にも提供している「代々木アニメーション学院」。これまでは週に1回「ナデシコ」の時だけ我慢していれば良かった、学生が製作したとゆー未熟なアニメを、週に3回も見せられるとゆーのはなかなかにツライものがある。絵的にはまだ以前の「たにし」のCMの方が良かったかな。笠原弘子さんの歌声CMもセットになっているから我慢するか。でも笠原さんってお顔立ちがあんましテレビ向きじゃあー(以下規制)。

 我孫子武丸さんのページからジャストシステムが運営している「波乗王」のページを経由して、いしかわじんさんが始めている連載のページをのぞく。ホントこれほど面白いページが始まっていることを、これまで知らなかった我が身の不明を恥じねばならない。しかし連載のエッセイの冒頭にある「Supported by アコワーク」とゆークレジットを見て、ちょいひっくり返った。こんなところにも進出していたのかアコワーク。去年強引に送られて来たチラシを見て、1度取材に行った会社じゃないか。

 何をやっている会社かというと、説明のページそのままに「なんでもかんでも、まんがにしてしまおうという会 社」。広告に漫画を使いたいって会社に漫画家をあっせんして、漫画の編集まで手がけてしまったり、会社の社史や個人史なんかを漫画で書いて欲しいってクライアントの声に答えて、漫画家を探して漫画を描かせてしまったりと、とにかくまあ漫画に関することならなんでもやってしまう。ちなみに「藤子不 二雄A氏に似た社長」ってのは、すでに絶滅した「少年キング」の最後の編集長を務めていた方で、「MEGU」休刊とともに幾度目かの放浪の度を余儀なくされている聖悠紀さんの「超人ロック」を、はじめて商業週刊誌へと引っ張って来た、ロックファンにとっては決して足を向けられないお方なのだ。と思った。記憶曖昧。

 なんでも自宅には聖さんのカラー原稿がごろごろしていて、取材に行った時も「どうですか1枚差し上げましょうか」なんて言われて興奮した覚えがある。その時は「いつか機会があったら」と生返事をしてしまったが、「MEGU」休刊でこのまま幻への道を突き進むかもしれないと思うと、やっぱりもらっておけば良かったかなーとも思えて来る。今の仕事が開けてゴールデンウイークが過ぎたら、もう1度取材に行ってこよーかな。でもあそこ、「代々木アニメーション学院」のそばなんだよなー。濃いよなー、代々木って。

 夕方からアニメ3本立て。「ガオガイガー」はよく解らない展開。戦闘シーンが海中では、あんまり迫力が出ない。アニメシーンでのモーフィングの使い方はやっぱり上手い。「逮捕しちゃうぞ」はオープニングが変わってちょっとだけ期待を持たせるが、本編は相変わらずのポン酢な作画とシナリオで、これだったら毎週やらなくていい、2週間に1回でいーからゆっくりしっかり作ってくれよと言いたくなる。

 「YAT安心!宇宙旅行」は桂さん目当てだからストーリーはどーでもいーや。土偶星人の占い師「次郎」の声が坂本千夏だったのには驚いた。おりゃあてっきり「クレヨンしんちゃん」の矢島晶子さんかと思ったよ。こんな声も出せるんですねー、千夏さん。エンディングが変わって新しい椎名へきるの歌になって、桂さんの子供の頃の絵がたくさん出るよーになった。しまったビデオに撮っとくんだったと、今になって後悔する。来週は撮るぞー。

 たくさん本の感想文を書き、たくさん本を買った日。スプレイグ・ディ・キャンプの翻訳が、まさか電撃文庫から出るとは思わなかったぜ。「悪魔の国からこっちに丁稚」(田中哲弥訳、上下各550円)って、題名からしてなんだか不安。でもまー超訳で楽しくなるならそれはそれでいーか。あとは平井和正さんの娘さんであるところの平井摩利さん「火宵の月第3巻」(白泉社、390円)とか西澤保彦さんの「瞬間移動死体」(講談社ノベルズ、800円)とか。ストレスが溜まるとついつい本を無茶買いしてしまう。読めるのはちょい先かなー。


【4月4日】 東京ゲームショウに行く。もちろんコンパニオンのお姉さんたちが目当てである。初日の招待日でおまけに午前中だとゆーのに、会場ははや超満員の盛況で、通路を歩くのはともかくブースの中を自由にゆっくりと見られる状況ではなかった。今日がこれなら明日、明後日の一般公開日は、きっと「ゆりかもめ」の駅まで行列が出来て、会場内は身動きが出来ないくらいに人がぎゅうぎゅう詰めになって、3人4人の死人が出ても不思議じゃないくらいの混雑振りを見せるだろーね。その方がコンパニオンのお姉さんに不可抗力で触れるかもしれないって、ふと思ってしまうあたりがちょっとだけ哀しい。

 日本全国からキレイどころを全員集めたんじゃないかってくらい、各社とも質の高いお姉さんを集めていて、ゲーム業界これでなかなか繁盛してるじゃんとゆー思いにとらわれた。先のマックワールドでは、CD−ROMタイトルで日本有数と言われている企業なのに、ヒゲだったり坊主だったりするCEOやら代表取締役やらが、最前線でビラ配ってたもんなー。さてゲームショウで一番目についたのが、何故かNECインターチャネルのブース。スレンダーで長身なボディコン美女を10人くらい取りそろえてパンフレット配りをさせているなかに、何故か2人だけ背丈の低いコギャル風のルーソーミニスカお姉さん(とゆーかお嬢ちゃん)が混じっていて、とても目を引いた。

 顔立ちはともかく身長差ではホント大人と子供のよーな違いがある。どちらが好きかってゆーとどちらも好きだけど、どちらかとゆーとうにょうにょうにょ。たむろってまじまじと見ていると、そのまま都の条例に引っかかるよーな行動を起こしそーなので、別のブースへと目を転じる。エニックスのブースには、黒を基調としたメイド風のコスプレをしたお姉さんたちがたくさんいて、ついつい足が止まってしまった。ほかにもブースの屋上で踊るお姉さんや、ゲームキャラのコスプレをしたお姉さんなんかが会場中をウロウロ、会場外もウロウロ、純情な男の子が目のやり場の困るよーな格好をして歩いていた。こーゆーのを全部ばっちり撮影して掲載したら、マイナーな工業新聞でも飛ぶよーに売れるんだろーねって、どこが工業なんやねん。

 しかし毎度派手好きなワープのブース。開場早々から関係者以外のブースへの立ち入りを禁止して、柵で囲って茣蓙(ござ)を敷いて、樽酒の鏡割りと酒盛りと花見を始めやがった。舞台の上では和服姿の飯野賢治さんが「パーマン」をカラオケして大はしゃぎ、床では茣蓙(ござ)の上に浴衣姿のお姉ちゃんやバンダナをまいた兄ちゃんたちが、升酒をかっくらいながら飯野さんに拍手喝采を送っていた。で肝心の出展物なんだけど、結局午前中は酒盛りが続いていたみたいでブース内には入れず、ワープがいったい何を展示していたのか結局見ず仕舞だった。あるいはワープの展示物は、唄う飯野賢治さん自身だったのかもしれない。自らを宣伝媒体と変えて来場者にアピールするって手法、なるほど今の飛ぶスペースシャトルをアンドロメダ大星雲まで弾き飛ばす勢いのワープ&飯野賢治さんだったら、アリってことなんですね。

 帰りがけに八重洲のビッグカメラに寄って時計の電池を交換してもらう。ポケットベルを時計代わりにしていたのに、数日前から液晶の表示がピクリとも動かなくなり、ちょっと不便を感じていたので、家の引き出しに押し込んであった昔の時計を持ち出して、直してもらうことにした。時計の種類はセイコー「デジボーグ」。買ってから軽く16年は経ち、止まってからも7、8年は経っていただけに、中の機械がお釈迦になっているかもしれないと心配したけど、交換したらしっかり動き出して(ってゆーか画面に数字が表示されて)、新しい時計を買わなくっても、ちゃんと手近に時間の解る生活を取り戻すことができた。しかし今時「デジボーグ」なんてはめてる人、何人くらいいるのかなー。結構とんだデザインだと思うけど、Gショックみたいな人気は出なかったもんなー。あと15年くらい経ったら値打ちが出るかなー。

 森博嗣さんの「封印再度」(講談社ノベルズ、900円)を読了。ますます創平と萌絵のラブストーリーがメインのほのぼのミステリーへと変化していて、クールな理系ミステリーって最初に貼られたレッテルが、どんどんと剥がれていくよーな展開を見せて行く。要となるトリックはどちらかと言えばやっぱり理系の発想で、個人的にはこれまでで1番感心させられた。シリーズも5作目を数えると、そろそろ映像化なんて話も出ているんだろーね。実現するなると萌絵はともかく創平はいったい誰が適任なんだろー。


【4月3日】 仕事で市ヶ谷と秋葉原と五反田をハシゴする。これを聞いていったいなんの仕事だったのか解った人はよほどの業界通だろーけど、いったいなんの業界なのかは内緒。柔らかい業界ではないことは確かで、その業界の取材に今月いっぱい捕まっているため、オタッキーな柔らかい業界の話は、今月はちょっと書けそーもないので、その辺りよろしくご了承下さい。

 それにしても雨の日に1度も会社に立ち寄らず、ずっと外出しっぱなしとゆーのは正直言ってツライ。スエードの靴に雨がしみこんで靴下がジュグジュグになってしまい、なんだかイヤな臭いが足下から漂って来る。地下鉄に乗れば蒸し暑く、本を読む気にも資料を整理する気にもなれない。4月の肌寒い今日でこんなんだから、6月の梅雨時だったらきっと頭がおかしくなるんじゃなかろーか。その頃は冷たいオフィスで1日ペコペコと原稿書いていられる身になりたいなー。でも窓際じゃいやだしなー。

 本屋に行ってあれこれと物色。まず見つけたのが幻冬舎ノベルズと名付けられた新しい叢書で、栄えある第1弾のなかから、太田忠司さんの「3LDK要塞山崎家」(781円)と山田正紀さんの「妖鳥(ハルピュイア)」(933円)と雨宮早希とゆー覆面な新人さんの「EM(エンバーミング)」(781円)を買う。3冊がいずれも書き下ろしってところは、さすが剛腕でなる見城さんが率いる出版社だけのことはある。話題先行のタレント本なんかを積極的に出していたためか、なんとなく一歩引いて見ていた出版社だけど、こーゆーシリーズがどんどんと出るのなら、ちょっとだけ宗旨変えしてもいーかな。

 太田さんの本はコミカルな表紙絵がちょっとヤングアダルトな雰囲気。実はさっさと読んでしまって、中身もどちらかとゆーとヤングアダルトな文庫本に近いノリだったけど、文章の確かさと構成の妙味はさすがに年の功といったところ。達観した小学生とゆーキャラクターの造形もなかなかで、フィニイと大島弓子とガンダムを語る美人ってキャラクターもかゆいところをグサリと突いている。面白いこと請け負いで、早くもシリーズ化が強く強く望まれる。ちなみに太田さんは僕の高校の大先輩に当たる人です。後の2冊は「幻冬舎推理叢書」と銘打たれいるところからミステリーの叢書らしー。表紙のデザインも、なんとなくだけどミステリーでは群を抜く質量を誇る「講談社ノベルズ」を意識しているよーな印象を受ける。

 しかし山田さんもいよいよ本格推理への道を歩み始めたか。「視姦」とか「味姦」とかいったノベルズのシリーズが、ミステリーの人たちから絶賛されていたから、ミステリー分野での活躍も期待していたけれど、「宝石泥棒」「神狩り」といった作品のファンとしては、やっぱり新しい叢書に書くんだったら、自分の主戦場である「SF」の分野で勝負して欲しかったなーと、フクザツな思いにとらわれる。太田さんの作品がヤングアダルトのノリなのは、たぶんこーゆータッチならSFチックな話でも読まれるんだろーとゆー出版社の算盤があったんだろーね。マジな「推理小説叢書」で本格SFを出してもらえるはずはなく、ましてや常にベストセラー狙いの幻冬舎が「SF小説叢書」を出すとはとてもとても思えない。このさいい早川にSFとヤングアダルトのノベルズを創刊してもらうか。叢書名はもちろん「ハヤカワノベルズ・ハイ」。さて何年もつでしょーか。

 別の本屋では森博嗣さんの「封印再度」(講談社ノベルズ、900円)を購入。ちゃんと名古屋弁(那古野弁?)をしゃべるキャラクターが登場したのには驚いた。これまで萌絵も蒼平もその他大勢のキャラクターも、ほとんど名古屋弁をしゃべらなかったから、あるいは方言を話すキャラクターを出さないとゆーポリシーが、森さんの方にあるのかなと思っていた。やっぱり那古野は名古屋だったんだね。新幹線の駅のホームの裏の方に、「生活倉庫」って看板の掲げられたお店(「アピタ」のことね)が出て来るし、明智町の大正村ってその昔高峰美枝子さんが村長さんに就任して話題になった田舎のことも出ていて、それらを実際に見たことのある身として、なんだかうふふふふとゆー気持ちになった。100ページまではすっげー面白そーな予感。「小説メフィスト」の対談でも京極夏彦さんが1番の作品に挙げていたから、きっと折り紙付きの面白さなんだろー。今晩はきっと寝られない。


【4月2日】 浜松に行く。"裏"日本工業新聞!!大号外でお伝えしたとーりに、「わかば日記」との合併を発表するために浜松の商工会議所へと出向いたもの。会場に集まった500人のプレスと1000人のヤジウマを前にして、合併後の新社長に就任が内定しているアカオコウイチ氏とともに、インターネット上に掲載された合併の覚え書きに、電子印鑑をつかってハンコを押した・・・ってゆーツマラナイ冗談は昨日で終わりにしたはずですね。でも浜松に行ったのはホントのこと。浜松トッパン・フォームズ(旧浜松トッパン・ムーア)とゆー会社の工場を見せてもらって、いろいろ話を聞かせてもらった。

 駅前のなんとかとゆー鰻屋で、名古屋ではさほど珍しくないけど浜松ではあまりないとゆー「櫃まぶし」を食べる。はじめの2杯はそのまま食べて、最後の1杯をお茶漬けにしてかき込む。美味。その足で工場へと行き、現地に3時間くらいいて、それから浜松駅に戻る。せっかく浜松まで来たのだから、例の「魔窟」でも見たいなーと思って、静大の某助教授の部屋に電話をかけると留守だった。仕方がないのでそのまま新幹線にのってそのまま浜松を後にする。廃墟になった丸井とか、まもなく廃墟になる西武百貨店とかいったが立ち並ぶ、駅前のサビレた風景を確認するには至らなかったけど、他を圧倒して立つ駅前の塔は、やっぱりちょっと異様だねー。

 大森望さんが関わったとゆーセガサターン向けゲーム「エヴァ2」の攻略本を買って読む。メインストーリーの「福音を呼ぶ資格」をどーやって見るかは、最近のゲーム雑誌にちらほらと情報が掲載されていたからもう観賞済み。シナリオも2本をのぞいてほぼクリアして、ユニゾンゲームの林原めぐみバージョンも、ネルフのマーク合わせ15パズルも出来るよーになったけど、やっぱ買った以上はすべてのシナリオをクリアしたいってのが人情ってもので、攻略本をペラペラとめくり、あーこのシナリオが残っていたんだ、なるほどこーやって見るんだとゆーことを、1つひとつ確認していく。

 大森さんは香山リカさんとの対談に登場。ゲームの攻略本に「SF翻訳家」と「精神科医」の対談が掲載されているのもヘンといえばヘンだけど、大森さんが掲載されている写真でトレーナーの片方だけを腕捲りしているのもなんか妙。トレーナーと同じ文字盤の色をした時計を見せたかったのだろーか。でもレアなGショックじゃないしなー。女子高生なんかがパンツを見せまくっているため、男の人の感覚もかわってきているのかと聞いた香山さんに、「ぼくは変わってないっす。パンツ見えると得したと思うし(笑)」と返した大森さんの意見には全面的に賛同。今の男子だってすべてがすべて女子のパンツ見てるわけじゃないと思うしね。しかしもし毎日のよーに見られるんだったら、せっかくの教員免許を棄てるのも惜しいので、今から勉強して高校教師を目指すんだけどなー。その返ホントどーなってるんだろーか。

 家に帰ってビデオで「少女革命ウテナ」の第1回目を見る。オープニングテーマに聞き覚えがあったので、ビデオをゆっくり回して歌い手さんを確かめると、奥井雅美さんとあって「そーだ先月始めにキングレコードのスターチャイルドレーベル謝恩会で見た人だ」とゆーことを思い出す。改めて聞くとやっぱりなかなかカッコ良い。しかし本編の方は、予想どーりにカタラヅカも吃驚の展開で、薔薇の花をバックに超絶美少女と超絶美少年(長髪)が会話し闘い愛し合う光景に、次第にクラクラと目眩がしてくる。主人公のウテナが螺旋階段を登っていくシーンでバックに流れていた「黙示録がどーした」とかゆー歌のキモチわるさも超絶的。しかしまーとりあえずの第1回目なので、これからもうちょいしばらく見てみるつもり。キモチわるさが癖になったその時には、会社に薔薇の花しょって通勤してるかも。

 テレビ東京で岡田斗司夫さんをフィーチャーした「人間劇場」を見る。歳相応にちょっぴり薄くなった頭髪をバックになでつけて、後ろでちょんまげに縛った岡田さんのお父さんの髪型に、とっても親近感を覚える。コミケに行ってもワンフェスに行っても、エラぶらずにお金を出して同人誌を買ってプラモデルを買う岡田さん。家に帰って潜水艦のプラモデルを嬉しそうに作る岡田さん。休みも外に出ずに家にいて、インターネット日記とかでぐたぐだとオタク風の記事を書き連ね、仕事と断らなければアニメも見れなければプラモデルも買えない自分とは、モノが違うと感心することしきり。せめて足下に及ばんと欲し、ゴールデンウイークに頑張ってエヴァを作ろーとオタク星に誓う。


【4月1日】 朝起きて、今日が4月1日だったことを思い出して、慌ててエイプリルフール用の"裏"日本工業新聞!!大号外をデッチ上げる。時間がなかったので去年の大号外のフォーマットをそのまま使い、記事を2つ3つ入れ替えただけのお手軽な内容にしてしまった。この日のために何週間もかけてネタを練り上げるのが筋とゆーものだったのに、中途半端なものをお目にかけて申し訳ないことこの上ない。かくなる上は来年こそは、全宇宙を震撼させる大ウソをつくぞと、明けの明星ならぬヘールボップ彗星に誓うのであった。ああ。

 去年も確かエイプリルフール用の記事を掲載して大ウケをとった「ASAHIパソコン」が、今年もやっぱりしっかり出鱈目な記事を掲載してくれていた。例えば「花粉でパソコンがハングする!!」って記事。季節柄目鼻をぐじゅぐじゅさせている人は多いけど、実はこの時期パソコンも調子が悪くなることが多いってことで、情報処理振興事業協会が中心となって調査に乗りだしたところ、実はパソコンのマザーボードに大量のスギ花粉が付着しているのが発見されたとのこと。とくに髪の長い女性のそばにあるパソコンに、髪から移った花粉が多く発見されて調子を悪くしていたそうで、協会ではフロッピーディスク・ドライブの入り口を布製のガムテープで塞ぐってゆー予防措置を提案しているとか。

 ほかにも「パソコン基盤でいい湯だな千葉で人気のサイバー銭湯」とか、「薬用マウスウオッシュを発売」(あのマウス用ね)とか、結構考えられたネタが多かった。良かったのが「水道管をインターネットの回線に 水のデータ転送がローマで完成」って記事で、これが本当だったらパソコンの後ろに台所か風呂場からホースを引っ張って来なくちゃならなかったし、オフィスにも通信端末に必要なだけの数の水道の蛇口を取り付けなくっちゃいけないところだった。名古屋の水は美味しいから水道管はノイズが少ないとか、ノイズを限界まで減らすために谷川岳の水や南アルプスの水が通った水道管を作らせるとか、お金持ちの会社は専用管を敷設して中に「エビアン」を通すとか、そんな違いが出るんだろーね。東京は水が不味いから結構ノイズが多そー。あと「ヒ」が「シ」に代わっちゃうとか。ね。

 日販から届いた「週刊日販速報」を読んでいて、5月25日に京極夏彦さんの新刊が発売されることを知る。出版社は中央公論社でタイトルも「嗤う伊右衛門」とあるから、どーやら「京極堂シリーズ」とは違う作品らしー。「本当に怖いものは、妖怪や幽霊ではない。普通に暮らす人々の日常の心だ・・・・。今最も旬な作家が、江戸を舞台に四谷怪談に挑む」とゆーアオリから想像するに、きっと京極流の「四谷怪談」なのだろー。1800円とゆー価格は、いくら分厚くても新書でしかなかった「京極堂シリーズ」に比べると結構なお値段。しかしいったい何ページあるんだろー?

 遅ればせながら毎日新聞3月28日付夕刊の記事『この春話題の「SF」その周辺は?』を読む。「SFマガジン」の塩澤快浩編集長の写真が出ていて、お茶らけた格好をした編集者が増えているなかで、細身の体をぴっちりとスーツで包んだそのオーソドックスなスタイルにちょっと驚く。昔とり・みきさんの「愛のさかあがり」にイラストで登場した元「SFマガジン」編集者の加藤さんも、確かちゃんとスーツを着ていたから、これはきっと早川書房の服務規程なのだろー。

 しかし塩澤さん、7:3で分けた長髪の長い方がハナガタミツルってるあたりがとっても○○○。文学青年がそのまま社会に出ちゃったって感じがして、こーゆー人に例えば「少年エース」だとか「ドラゴンマガジン」だとか「スニーカー」だとかいった感じの雑誌を作ってってお願いするのは、ちょっと酷なのかもしれない。重厚長大企業の部長さん(50歳)あたりが流行っているからとアニメの製作に乗り出すよーなものかもね。でも頑張ってね。

 テレビ東京で始まった「新・天地無用!」をビデオで見る。いきなりの山本リンダのオープニングにイヤンな予感がするが、本編が始まってそのイヤンな予感がピタリ的中したのには、ただただ呆然とするばかりだった。前にテレビ東京で放映されたテレビ版「天地無用!」から見出したクチだから、あまり大きな口はたたけないけど、少なくとも前作の前半部分には、OVA版(第1期)「天地無用! 魎皇鬼」に近いテイストがあった。後半ちょっとダレたけど、映画「天地無用! in LOVE」で盛り返したからヨシとした。

 それが今回は最初からギャグ的演出のオンパレードで、なんだか「プリティサミー」の演出をそのまま引きずっているよーな印象を受けた。砂沙美ちゃんは朝っぱらから人のめーわくも省みずにドラをじゃんじゃん打ち鳴らすし、すっげー強かった(テレビ版でも)じっちゃっも、得体のしれないギャグキャラの地霊にあっさりとやられてしまう。魎ちゃんなんてモビルスーツった戦闘ロボットに変身するんだぜ。もはやあの凛然としたOVA第1期のテイストを、「天地無用」シリーズに求めることは無理なのか。こーなれば仕事にかこつけてパイオニアLDCに乗り込んで、野田隆一社長に「ワタシの天地無用を返して下さいっ!」と直訴しよー。応援をよろしく。


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