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1931年新潟県生、明治学院大学大学院英文科修士課程修了。明治学院大学文学部教授。著書は「ロンドンの劇場」「シェイクスピア劇の背景」「シェイクスピアへの招待」等。

 


 

●「英国俳優物語−エドマンド・キーン伝−」● ★★




1984年7月
晶文社刊

(2400円+税)

 

1984/08/30

本書は、シェイクスピア役者として有名なエドマンド・キーンの評伝。
18世紀から19世紀にかけて、ロンドンのドルーリー・レイン劇場は、経営者ディヴィッド・ギャリックによって名実ともに第一の勅許劇場として黄金時代を築いていました。このギャリックは、リチャード三世などのシェイクスピア劇でも名優として名を馳せた人物。そのギャリック引退後、シェリダンが経営者となりましたが、極めて無責任であったことから劇場の経営は悪化。そんな後に登場したのがエドマンド・キーンです。
1814年「ヴェニスの商人」シャイロックに扮したキーンは、観衆に衝撃的な興奮を与え、目覚しいデビューを飾ります。それに続き「リチャード三世」「ハムレット」でも型破りな演技を披露し、一躍ギャリックと比肩されるシェイクスピア役者として、キーンは熱狂的な人気を誇った俳優です。
しかし、その反面自負心も高く、放蕩の限りを尽くした果てに死に至った人物でもあります。そんなキーンの評伝ですから、読み応えがあるのは勿論のこと、シェイクスピア・ファンとしては興味尽きない一冊です。
なお、私がギャリック、キーンという役者の名前を知ったのは、マーク・トウェーン「ハックリベリー・フィンの冒険にて。同作品に登場する2人の詐欺師、自称「王様」と自称「公爵」が、いかさま芝居を興業するに際してディヴィッド・ギャリック、エドマンド・キーンの名前を騙るからです。それだけこの2人の名優が有名だったということでしょう。

 

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