荻原 浩作品のページ No.2



11.さよならバースディ

12.あの日にドライブ

13.ママの狙撃銃

14.押入れのちよ

15.四度目の氷河期

16.サニーサイドエッグ

17.さよなら、そしてこんにちは

18.愛しの座敷わらし

19.ちょいな人々

20.オイアウエ漂流記


【作家歴】、オロロ畑でつかまえて、なかよし小鳩組、噂、誘拐ラプソディー、母恋旅烏、コールドゲーム、神様からひと言、メリーゴーランド、僕たちの戦争、明日の記憶

 → 荻原浩作品のページ No.1


ひまわり事件、砂の王国、月の上の観覧車、誰にも書ける一冊の本、幸せになる百通りの方法、花のさくら通り、家族写真、二千七百の夏と冬、冷蔵庫を抱きしめて、金魚姫

 → 荻原浩作品のページ No.3


ギブ・ミー・ア・チャンス、海の見える理髪店、ストロベリーライフ、海馬の尻尾、極小農園日記、逢魔が時に会いましょう、それでも空は青い、楽園の真下

 → 荻原浩作品のページNo.4

 


      

11.

●「さよならバースディ」● ★☆


さよならバースディ画像

2005年07

集英社刊

(1600円+税)

2008年05月
集英社文庫化



2005/08/13



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主人公である田中真は、多摩の山の中にある東京霊長類研究センターの研究員で、現在類人猿について言語習得能力の実験を行っている。
その真には大切な人が2人います。それは、実験対象であると共に子供のように可愛がっているボノボ(ピグミーチンパンジー)のバースディと、同僚の藤本由紀

子ザルのバースディを使っての会話実験は元々安達助教授が始めたものでしたが、その安達が1年前突如自殺を遂げ、今は真と由紀が中心になって実験を継続しているという状況。
バースディの会話実験が順調に成果を挙げていることから、センターの責任者である野坂教授は、バースディの成果を大々的に発表しようと目論んでいる。
そんな折、真は由紀に正式にプロポーズしますが、その夜由紀は謎の死を遂げてしまう。飛び降り自殺か、あるいは他殺か。鍵を握っているのは、その場にいた筈のバースディのみ。
真はバースディの会話能力に全てを託し、バースディから真相を引き出そうとする、というストーリィ。

帯には「サルだけが知っている愛する人の真実」「長編ミステリー」とあり、確かにミステリに違いはないのですが、読後感からすると愛する者たちの切ないストーリィ、と言いたい。
真とバースディ、そして由紀。この3者相互における絆の強さ、愛情の深さがあって故にこそ生まれ得るストーリィなのです。
子ザルが重要な登場人物となっているという癖の強いストーリィだけに一般受けしないかもしれませんが、切なさという点では純粋なラブ・ストーリィに少しも引けをとりません。
なお、バースディと真らが家族のように一日を共に過している光景はとても楽しい。バースディというボノボに、読み手もまた愛おしさを感じずにはいられません。そこに、本作品の魅力、力強さがあると言って過言ではないでしょう。

読了後には、バースディのこれからの幸せを願わずにはいられません。

    

12.

●「あの日にドライブ」● ★★


あの日にドライブ画像

2005年10月
光文社刊

(1500円+税)

2009年04月
光文社文庫化



2005/11/23



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主人公の牧村伸郎は、大手都市銀行で順調に昇進ルートを歩んでいた元エリート銀行員。でも、今はタクシー運転手。
それだけでも主人公の現在置かれている状況、心理状態が判るというものではありませんか。
とりあえず一時凌ぎの手段としてタクシー運転手募集に応募したものの、営業成績はノルマを超えられず、生活パターンは日夜逆転し、妻と2人の子供たちは冷たくなっている。
タクシーで都内を走りながら夢想することは、あの時こうしていたら、恋人と別れずにいたら、希望していたあの会社に入社していたら、ということばかり。

少し前まで大企業もリストラ大合唱していた今日、他人事ではないのです。早期退職者募集に応じて退職していった元同僚たち、今頃どうしているのやら。ですから、この主人公には身につまされるのです。
でも、主人公の夢想ぶり、「もしあの時こうしていたら」とは誰しも考えたことのあることでしょうけれど、いくら何でも行き過ぎではないか、いい加減にせよと言いたくなる。
こうした場合の選択肢としては、次の3つしかないでしょう。
何もかも放り出し裸になって一からやり直す、現状を肯定したうえで今の状態の改善に努める、自暴自棄となって全てをダメにしてしまう。
さて、本書主人公はどの道を選んだと思いますか?

明日の記憶で荻原さんは現代社会に生じた新たな個人の問題を鮮やかに切り出して見せましたが、本作品もそれに連なるストーリィと思います。切り口の鮮やかさがお見事。
なお、主人公が語る銀行の封建的な職場風景、かなり戯画化されているようです。また、今の女房ではなくあの彼女と結婚していたらというのは、既婚男性に共通する意識(女性も?)かもしれません。そうした点が本ストーリィを深刻にせず、ユーモラスな味わいもあるものにしています。
タクシー運転手さんの苦労も知れて、ちょっとお薦めしたい作品です。

            

13.

●「ママの狙撃銃」● ★☆


ママの狙撃銃画像

2006年03月
双葉社刊

(1600円+税)

2008年10月
2016年10月
双葉文庫化


2006/04/19


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帯の宣伝文句には「ふたり(福田曜子と孝平)は、ごくふつうの恋をし、ごくふつうの結婚をしました。ただひとつ違っていたのは・・・」とあるのですが、見た途端、それはないよなァと声を洩らしてしまいました。
昔の人気ドラマ“奥さまは魔女”の出だしじゃないですか!
あのドラマのファンとしては、その文句を聞いただけで手が伸びずにはいられない。そんなのはアンフェアです。

本書の主人公である福田曜子は、凡人の夫、フツーの娘と息子をもつ平凡な主婦。しかし、彼女には隠している過去があった。それは少女時代、アイルランド系米国人の祖父・エドと共に過した米国・オクラホマでの10年間の暮らし。

本書は、荻原作品の中では軽い方の部類。それなりに読ませてはくれるものの、もうひとつ迫力を感じません。
しかし、それが一転するのは、曜子が中学生の娘・珠紀を守るため敢然と立ち上がり、すかさず行動に移るところから。
その部分はすこぶる痛快で、スカッとします。
前半がここに至るまでの前置きということであれば、前半の単調さも充分許せます。
やはり、母親は子供を守って立ち上がる姿が一番魅力的なのかもしれない。
“奥様は魔女”に通じる面白さあり。

※リメイク版映画の感想はこちら → 奥さまは魔女

         

14.

●「押入れのちよ」● 


押入れのちよ画像

2006年05月
新潮社刊

(1500円+税)

2009年01月
新潮文庫化


2006/06/10


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「今ならこの格安物件、かわいい女の子が(14歳・ただし明治生まれ)ついてきます−」というのが帯の売り文句。
てっきりその“ちよ”が絡む連作短篇集と思いきや、彼女が登場するのは、3番目の「押入れのちよ」一作のみ。
不気味だけれども軽やか、中には少々切ないストーリィもある、という短篇集。

多少不気味なところがあるのは構わないけれど、後味の悪さが残ってしまうのは私にはいただけない。
それに、荻原さんならではの味わいという点でも、やや物足りない。
私にとって後味の悪かったのは、「老猫」「介護の鬼」。また、「お母さまのロシアのスープ」「殺意のレシピ」「予期せぬ訪問者」は意外と月並み。
一方、15年前かくれんぼをしたまま失踪した妹の謎が巨大なくすの木に呼び寄せられるようにして明らかにされる「木下闇」、ちょっと幽玄的な「しんちゃんの自転車」が、私の好みです。

本書で注目すべきは、はやり表題作の「押入れのちよ」。失業中の青年と、彼が引っ越した先の安アパートに住み着いていた女の子の幽霊の話。明治生まれながら少女という設定のからにじみ出てくるコミカルさが楽しめます。
この1作だけ読むなら、立ち読みで済んでしまうかも。

お母さまのロシアのスープ/コール/押入れのちよ/老猫/殺意のレシピ/介護の鬼/予期せぬ訪問者/木下闇/しんちゃんの自転車

  

15.

●「四度目の氷河期」● ★★


四度目の氷河期画像

2006年09月
新潮社刊

(1800円+税)

2009年10月
新潮文庫化



2006/11/05



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丹念に描かれた少年の成長ストーリィ。

大学の研究者である母親との2人暮らしである主人公・南山ワタルは、狭い町の中で日本人離れしている風貌、母親が未婚であることから疎外され、子供の頃からイジメられているのが普通という状況の中で育った。彼がその中でめげなかったのは、人並みはずれた身体能力をもっていたおかげ。
そのワタルが唯一気持ちを通じ合わせることができるのは、小5の時転校してきたサチ(室田紗知)だけ。サチもまた父親が酒乱で母親が水商売勤めという問題を抱えていた。

周囲の冷たい視線を跳ね返すように雄々しく成長してワタルのストーリィはそれだけで読み応えありますが、それだけでは特筆するようなものはありません。
本書を特色づけるのは、ワタルが遠く1万2千年も前に生きていたクロマニヨン人に思いを馳せながら成長していくところにあります。
少年とクロマニヨン人との繋がりというと荒唐無稽のように感じられるかもしれませんが、カンター「2万5千年の夜明けを以前に読んでいたので違和感は少しもなし。素直に本ストーリィを受け入れられました。
ワタルの本性、行動パターンに想像をめぐらすという点では、スケールの大きい夢膨らむストーリィ。その一方で、少年が雄々しく成長するためには父親の後姿が必要なのかと感じられたストーリィでもあります。
そしてその父親の影から脱却する段階に至って必要だったのは信頼できる恋人の存在。

ストーリィの背景はスケール雄大なものですが、逆境に打ち勝って成長していく少年・少女の姿を描いているところは極めて地道なものです。その2つをうまく纏め上げているところが本作品のミソでしょう。
読み終えた時、眼前に壮大な四度目の氷河期の原風景が広がっているような気持ちに捉われます。そこが本作品に魅せられる点。

   

16.

●「サニーサイドエッグ」● 


サニーサイドエッグ画像

2007年07月
東京創元社刊

(1800円+税)

2010年05月
創元推理文庫化


2006/08/21


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「ハードボイルド・エッグ」に続く私立探偵・最上俊平もの第2弾。
とはいっても私、前作は読んでいないため、主人公の最上俊平に出会うのは本作品が初めてです。

フィリップ・マーロウばりのハードボイルド風探偵を気取るものの、最上探偵事務所には閑古鳥が鳴き、たまに来る仕事といえば逃げ出したペット探しというものばかり。
プロローグばかりか、主ストーリィに入ってもそれは変わらず。
和風美人からのペット探し依頼に胸をときめかせたのも束の間、暴力団からの仕事依頼に青ざめるとそれもまたペット探し。
しかし、それがペット探しと簡単に片付けられない揉め事に巻き込まれる発端になるとは・・・。
そのうえ、折りしも押しつけられた金髪で青い目の元モデルという若い娘を雇い入れたところ、それもまぁ・・・。

ハードボイルドを気取るにも関わらず現実は、そしてそんな現実にも関わらずハードボイルド探偵並みの格好づけを余儀なくされるという、最上俊平のパロディのような展開が本作品の面白さでしょう。
それなりには楽しめはしましたが、パロディの面白さとしては今一歩。何といっても唐獅子株式会社というパロディの傑作を知っていますから。
パロディの面白さより、最上探偵の哀しくなるほど健気な奮闘ぶりを買ってやりたい、というのが私の感想です。

  

17.

●「さよなら、そしてこんにちは」● ★★


さよなら、そしてこんにちは画像

2007年10月
光文社刊

(1500円+税)

2010年11月
光文社文庫化



2007/11/22



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仕事で翻弄される人たちの喜怒哀楽を温かい目で、ユーモラスに描いた短篇集。
こうした作品は荻原さんの得意中の得意というところでしょう。愉快で楽しく、そしていつの間にやらぬくぬくと心が温まっていく感じ。
また、各篇冒頭のイラストもなかなかの味わいです。

7篇の最後はクリスマスにまつわる話ですが、本書はクリスマスにとらわれるストーリィではないにも関わらず、温かい心でクリスマスを迎えたいという気分にさせられてしまいます。
案外、番外編のクリスマス・ストーリィと言える短篇集かもしれません(笑)。
ただし、本書中に描かれるのは、温かさや笑いばかりではありません。その中に苦さも悲哀も入り混じります。
どんな仕事にもトラブル、悩ましい問題は付きまとうもの。それでも頑張って奮闘するしかない、というのもまた仕事というものでしょう。
それでも仕事の中にちょっと笑える要素を見い出せれば、もう少し楽に仕事をこなすことができるのかもしれない。

・実は笑い上戸の葬儀社社員。初めての女の子がもうすぐ生まれるとあって、つい嬉しさがこみ上げてしまう。
・夢見たいな農家生活を描いた両親だったが、現実ははるかに異なる。でも、田舎生活にはそれなりに良いところもある。
・TVの健康食品情報に振り回されるスーパーの売場責任者。
・健気な主婦の密会相手はTV画面上の特撮ヒーロー。
・グルメ評論家のふりに騙された不器用な寿司店主。
・スローフード特集のマスコミに振り回される料理研究家。
・若い妻と愛娘にクリスマスをせがまれて戸惑うお寺の住職。

7篇中では、表題作「さよなら、そしてこんにちは」が私は一番好きですね〜。
また、「ビューティフルライフ」には、荻原さんの初期作品を思い出させてくれる楽しさあり。
「スローライフ」「長福寺のメリークリスマス」は、皮肉混じりの笑いが特徴の2篇。こうした苦味も私は好きです。

さよなら、そしてこんにちは/ビューティフルライフ/スーパーマンの憂鬱/美獣戦隊ナイトレンジャー/寿し辰のいちばん長い日/スローライフ/長福寺のメリークリスマス

  

18.

●「愛しの座敷わらし」● ★★


愛しの座敷わらし画像

2008年04月
朝日新聞出版

(1800円+税)

2011年05月
朝日文庫化



2008/05/27



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祖母、夫婦、中学生の長女に小学生の長男、それに犬のクッキーというのが、本書主人公となる高橋一家の構成。
東北の地方支店に転勤を命じられた晃一が男のロマンだと勝手気決めてしまった借家は、駅からも商店街からも程遠く不便なうえに、古ぼけた田舎の一軒家。しかし、でかい。敷地は 400坪もあって、二十畳もある部屋が幾つもあるという具合。
しかも、本書題名かもら判るように、何とこの一軒家には“座敷わらし”が住み着いていたのです。

ボケの入っている祖母=澄代、お調子者で根性のない晃一、前の学校で除け者にされていたという傷を抱える梓美(あずみ)、喘息もちの智也、しっかり者の主婦=史子という高橋一家は、この家でどんな生活を営むことになるのやら。

紺色の着物を着た4、5歳位の子供といった姿で、ぼさぼさの髪は銀杏の葉っぱをさかさにしたような形。性格は怖がりや。
高橋一家に何かをするという訳でなく、何もしゃべらず、ただそこにいるだけ、というような存在。それが座敷わらしです。
でもそのおかげで、高橋一家は再び家族の団欒、絆を取り戻していきます。
そうした家族の再生に至る過程にこそ、本作品の愛すべき魅力があります。
縁側でのポカポカした陽だまりのような、そんなのんびりとして温かな雰囲気がとても嬉しい。

しかし、残念ながら物語には常に終りがあります。それはもう仕方ないことと観念する他ないものですが、最後の最後であっと言わされます。
真に、本書は最後の最後まで愛すべき作品です。
温かでほんわりとした物語がお好きな方に、是非お薦め。

※映画化 → 「HOME 愛しの座敷わらし

    

19.

●「ちょいな人々」●(絵:益田ミリ) ★★


ちょいな人々画像

2008年10月
文芸春秋刊

(1524円+税)

2011年07月
文春文庫化



2008/11/16



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本書で描かれるのはどれも身近なことばかり。それが、こんなにも滑稽なストーリィに成り得るなんて!
事実こんなことが有ったし、こんなことも有り得るし、こんなことが起こったらと、読みながら、想像しながら、笑いが止まらない滑稽譚集。
こんな笑い、昔の4コマ漫画には時々あったような気がします。でも4コマではなくれっきとした短篇小説である故に、笑いはもっとスケールアップ。
本書を読み終わった頃には、気分すっきり、元気を取り戻せていること、きっと間違いなし!です。

「ちょいな人々」とはどんな意味だろう?と誰しも思う筈。
その表題作は、カジュアル・フライデーが突然導入され、何を着て行ったら良いかと困惑するサラリーマンの悲喜劇入り混ぜた騒動記。「ちょいな人々」という言葉の意味が判るのはその結末においてですが、そこでまた笑ってしまう。まさに鯛焼きのシッポの先まで笑いが詰められた篇。
なお、他人事でないのは、私の会社でもカジュアル・フライデーが導入された最初の日、男性社員の殆どがゴルフウェアだったことからも明らかです。

「ガーデンウォーズ」は、庭木とガーデニングを巡り角突き合わせる老人と主婦という隣人同士の信義無き戦いを描いた篇。子供たちも呆れる程ヒートアップしてしまう様が何とも可笑しい。
「いじめ電話相談室」は、今や無視できない社会問題となったイイジメの電話相談係を承った市役所の女性職員の奮闘記。ここまでやるかぁーと驚き、呆れ、興奮。でも、だからこそ痛快。女性は逞しいなぁ。
「犬猫語完全翻訳機」は、新製品の試作品モニタリングの顛末。こうなるのかァという面白さはありましたが、続編ともいうべき「正直メール」でこのネタをさらにスケールアップした面白さには脱帽。こりぁ、面白いですよ。最後に男性社員の殆どが○○を上げたという結末はもう当然というか。
「くたばれ、タイガース」は、猛烈トラキチの恋人がやっと結婚申込に自宅へやってきた夜の顛末。そこに至って初めて無口な父親が熱烈な巨人ファンだったことに気づいたというのは、何と迂闊なことか。相容れないのは当然です。

ちょいな人々/ガーデンウォーズ/占い師の悪運/いじめ電話相談室/犬猫語完全翻訳機/正直メール/くたばれ、タイガース

  

20.

●「オイアウエ漂流記」● ★★


オイアウエ漂流記画像

2009年08月
新潮社刊

(1700円+税)

2012年02月
新潮文庫化



2009/09/08



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桐野夏生「東京島が現代的なサバイバルゲームを漂流記に持ち込んだものとしたら、本書は現代的サラリーマン社会+αに無人島生活ノウハウ例を加えてコミカルに語った荻原版漂流記。

トンガからラウラに飛んだボロいプロペラ機が嵐にあって海上に不時着。乗客が救命ボートでやっと辿り着いたのは、小さな無人島。
リゾート開発会社に視察御一行様4名(キャリアウーマン1名を含む)+スポンサー候補企業Gのノー天気なお坊ちゃま副社長、お見合いパーティで知り合った入籍前の新婚カップル1組に、戦友慰霊を旅だった老人+孫の小学生。それに加え、正体不明の外国人男性と、不時着後行方不明になった機長の愛犬であるセントバーナード1匹、という顔ぶれ。
パワハラ部長はノー天気な副社長におべっかばかり。その副社長は、無人島に漂着したばかりだというのに、アイス・ティーはないの?とのたまう。会社で一番下っ端は、ここ無人島でもこき使われるばかりで、孤軍奮闘しているというのに、その奮闘を評価される訳でなし。

主人公であるその下っ端社員を叱咤激励して後押しするのが、女性主任という構図は、まこと現代的ですなぁ〜。
一方、新婚カップルの新妻の方は、入籍するどうか再考し始め、他の男性に目移りしているという具合。無人島離婚?
それでも、意外な人物が意外なサバイバル能力を発揮し、2人の女性がもつ小型バックからは様々な役立つ小道具が取り出され、徐々に無人島生活は軌道に乗って(?)いきます。

ノー天気な副社長やパワハラ部長の存在など、最初こそとんでもないと思っていたのが、いろいろな人物がいてこそ無人島生活も退屈しない、かえって楽しいところもある、と思えてくるところが、本作品のユーモラスなところ。
結構、巧妙に物語られている漂流記です。さすが荻原さん!

「オイアウエ」とは、現地で「おお」「ああ」「いやはや」とか、喜怒哀楽すべてを表す言葉とのこと。

      

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