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12.女神記−新・世界の神話− 13.IN 14.対論集−発火点 15.ナニカアル 16.優しいおとな 17.ポリティコン 18.緑の毒 19.だから荒野 20.夜また夜の深い夜 |
【作家歴】、顔に降りかかる雨、天使に見捨てられた夜、OUT、柔らかな頬、ローズガーデン、玉蘭、ダーク、グロテスク、残虐記、魂萌え! |
奴隷小説、抱く女、路上のX |
●「東京島」● ★★☆ 谷崎潤一郎賞 |
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2010年05月
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漂流記と言えば始めて読んだのはヴェルヌ「十五少年漂流記」。そして近年読んだ中で記憶に残っているのは、吉村昭「漂流」。 本書もまた同じ漂流ものなのですが、それらと何と違うことか。 作者が桐野夏生さんとなれば、同じ筈である訳がないと思うものの、意表をつく想定に読む前から興味津々。 太平洋真っ只中の無人島に漂着したのは32人。そしてその中に女性はたった一人。 男たちは島を“トウキョウ”と名付け、気の合った同士で固まり各々の住む場所をブクロ、ジュク、シブヤと名付けている。 最後の結末は、漂流記としては奇想天外でしょうけど、面白い。 |
●「女神記(じょしんき)−新・世界の神話−」● ★☆ 紫式部文学賞 |
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2011年11月
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ヤマトから遥かに遠い南の島、海蛇島で闇の国の巫女となる運命を担って生まれ、16歳で死んだナミマの物語を主ストーリィに、黄泉の国を司る女神=イザナミの深い悲しみ、怨念を描き出した“新・神話”。
イザナキと2人、夫婦神としてヤマトの国をはじめ、数多くの子たちを成したというのに、何故イザナキから穢れた存在として忌み嫌われ、昼の世界に通じる道を大岩で閉ざされ、黄泉の国に閉じ込められねばならなかったのか。 イザナキがイザナミを黄泉の国に閉じ込めた後、アマテラスオオミカミを生み出したりと、一人でイイカッコしいであるのに対して何故イザナミの方はこれ程までに悪く言われなければならないのか、というイザナミの怒りは、ごもっともと言うほかありません。 日本神話を新たな視点から描き出したストーリィ。 |
●「IN」● ★☆ |
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2012年05月
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「IN」という題名の本書、12年前の衝撃作「OUT」とどう関係するのか、どう相対するのか。 そこにまず興味を惹かれるのは、当然のことでしょう。 しかし、少なくともストーリィの面では関係なさそうです。 主人公は鈴木タマキという女性作家。ちょうど“恋愛における抹殺”をテーマとした小説を書こうとしているところ。 「抹殺」とは、無視、放置、逐電など自分の都合で相手との関係を断ち、相手の心を「殺す」ことだという。 ※桐野さんの狙いは、家庭のことさえ曝け出して平然としている作家というものの有り様を描くことにあったようです。 1.淫/2.穏/3.「無垢人」(緑川未来男作)/4.因/5.陰/6.姻/7.「IN」 |
●「対論集 発火点」● ★★ |
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2012年12月
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1999年から2009年まで10年間の中から、選りすぐりの12篇を選んだ対談集。 女性作家との対談では、お互いの作品のことを話題に上り、作品の狙いや執筆背景が聞けるところが興味深く、面白い。 佐藤優さん、原武史さん、西川美和さんとの対談では、桐野さんはどちらかというと聞き役。 松浦理英子・・剥き出しの生、生々しい性 |
●「ナニカアル」● ★★☆ 島清恋愛文学賞・読売文学賞 |
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2012年11月
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先の大戦において特派員として中国へ、また報道班員として東南アジアの戦地へ赴いて記事を著していたことから、戦争に協力姿勢をとっていた作家ということで何かと批判された「放浪記」の女性作家・林芙美子。 桐野さんのこれまでの作品での文章と違い、じっくり、ゆっくりと林芙美子像を語っていくという風が、印象的。 高校1年の頃「放浪記」と「浮雲」を読んだだけで記憶にすら残っておらず、一方で戦争協力者だったという評判を聞いて、これまで林芙美子のことを批判的に見ていましたが、本作品を読んでそれはすぐ撤回。 報道班員となった作家たちに対する陸軍の傲岸な圧力、当番兵という名前の薄気味悪い監視人、そうしたサスペンスチックな描写は、流石に桐野さん、上手い! プロローグ/偽装/南/冥闍婆(ジャワ)/金剛石/傷痕/誕生/エピローグ |
●「優しいおとな」● ★☆ |
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2013年08月
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渋谷の街でたった一人、ホームレスとしてクラス15歳の少年、イオンを主人公にした近未来サバイバル的な小説。 ストーリィは、普通に暮らす人たちとホームレスの人たちを対比し、社会全体を舞台として描いたものではありません。 一見、一人でも強かに生きている様子のイオンですが、彼のような少年にとっても大人の存在は必要なのか、そして“優しいおとな”とはどんな人間のことなのか。 スープ・キッチン/シブヤパレス/バトルフィールド/鉄と銅と錫と/世界は苦難に満ちている/優しいおとな |
●「ポリティコン」● ★★ |
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2014年02月
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東北の僻村、かつて芸術家たちが作った理想郷のなれの果て=唯腕(いわん)村。 地方の過疎化、農村の高齢化・若者離れ、有機農法、アジア女性の嫁取りの他、、脱北者(北朝鮮)の問題まで、本ストーリィは孕みます。まるで現代日本の縮図のような設定です。 ストーリィは、まるで底なし沼に嵌まり込んでいくようで、私としては逃げ出したくなるような展開。 |
●「緑の毒」● ★★ |
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2014年09月
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深夜、一人暮らしの女性の部屋に侵入してはレイプを繰り返す開業医の川辺康之。その犯行はいつも水曜日。 女性に対する卑劣な犯罪を題材にしたストーリィですが、決してサスペンス小説ではありません。 さて結末は・・・というと、当然と言えば当然なのですが、ネット社会だからこその恐ろしさがあります。それはそれで緊迫感いっぱいの幕引きです。 |
19. | |
「だから荒野」 ★★ |
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2016年11月
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私の好きなロードノベルの一種と言えますが、主人公が46歳の専業主婦というところが珍しい。 まぁ、妻、夫、息子、それぞれに不満・言い分はあるのでしょうけれど、本書においては夫=浩光の身勝手さが際立っていて、どうも夫側の分が悪いですねぇ。 先がどうなるか見えない分、ついつい先へ先へと頁を繰ってしまう、文句なく面白いです。朋美と対照的な浩光の困惑ぶり、あくまで懲りない愚かさ振りは滑稽と言うに尽きる、同性からみても愉快です。 1.夜の底にて/2.逃げられ夫/3.逃げる妻/4.世間の耳目/5.素手で立つ/6.破れかぶれ/7.人間の魂 |
20. | |
「夜また夜の深い夜」 ★★ |
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2017年08月
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主人公は20歳前の若い娘=舞子(マイコ)。ただし、舞子が育った状況は異常としか言いようのないもの。 日本から遠く離れた土地、そのうえ日本の感覚からかけ離れたストーリィとなると、非現実感もあります。どうこの作品を捉えたらいいのだろうと戸惑うところもあり。 なお、本作品はマイコがある女性に向けて書いた手紙、という形を取っています。そのため、マイコの気持ちが流れ出すように書かれているところが本作品の良さ、魅力。 第一部:1.もうひとりの自分/2.あなたの悩める妹/3.めくるめく混乱/4.マンガと現実は違う/5.マンガよりも面白い現物/6.マイコ、悪事に手を染める/7.ゴキブリ女、発生す |
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