梶尾真治作品のページ No.1


1947年熊本県生、福岡大学経済学部卒。73年実父経営のカジオ貝印石油入社、82年社長就任。少年時代から小説を書き始め、71年「美亜へ贈る真珠」にて作家デビュー。代表作「地球はプレイン・ヨーグルト」にて星雲賞、「未踏惑星キー・ラーゴ」にて熊日文学賞、91年「サラマンダー殲滅」にて第12回日本SF大賞、同年「時尼に関する覚え書」にてSFマガジン読者賞、92年「恐竜ラウレンティスの幻視」にて2度目の星雲賞、2001年「あしびきデイドリーム」で3度目の星雲賞、04年「黄泉びと知らず」にて4度目の星雲賞を受賞。同年専業作家を宣言。


1.地球はプレイン・ヨーグルト

2.ヤマナベ・ポリスのミイラ男

3.サラマンダー殲滅

4.ドグマ・マ=グロ

5.スカーレット・スターの耀奈

6.OKAGE

7.黄泉がえり

8.黄泉びと知らず

9.美亜へ贈る真珠−梶尾真治短篇傑作選−

10.もう一人のチャーリー・ゴードン−梶尾真治短篇傑作選−

11.フランケンシュタインの方程式−梶尾真治短篇傑作選−


タイムトラベル・ロマンス、インナーネットの香保里、未来のおもいで、新編クロノス・ジョウンターの伝説、波に座る男たち、精霊探偵、この胸いっぱいの愛を、時の“風”に吹かれて、きみがいた時間ぼくのいく時間

 → 梶尾真治作品のページ No.2


つばき時跳び、悲しき人形つかい、ムーンライト・ラブコール、あねのねちゃん、アイスマンゆれる、穂足のチカラ、メモリー・ラボへようこそ、ボクハ・ココニ・イマス、壱里島奇譚、クロノスの少女たち

 → 梶尾真治作品のページ No.3


おもいでエマノン、さすらいエマノン、まろうどエマノン、ゆきずりエマノン、ダブルトーン、アラミタマ綺譚、うたかたエマノン、怨讐星域1〜3

 → 梶尾真治作品のページ No.4


猫の惑星、杏奈は春待岬に、たゆたいエマノン、デイ・トリッパー、黄泉がえり again、彼女は弊社の泥酔ヒロイン、おもいでマシン、クロノス・ジョウンターの黎明

 → 梶尾真治作品のページ No.5

  


  

1.

●「地球はプレイン・ヨーグルト」● ★★☆


地球はプレイン・ヨーグルト画像

1979年05月
ハヤカワ文庫刊



2000/11/15

ずいぶん以前に薦められていた本ですが、黄泉がえりを機に漸く読むにいたりました。
ひとこと、梶尾さん発想の秀逸さに恐れ入るばかり、と表現するのがもっとも適当でしょう。
SF小説というと、とかく日常感覚から縁遠いものという思いがあるのですが、本書に収録された各篇はいずれもとても身近な出来事という雰囲気があります。その点が強く惹かれるところです。何故身近な印象があるかというと、各篇とも生身の人間の姿が第一にあるから、と言って良いでしょう。決して生々しいということではありません。人間的な温もりが感じられる、だから親しみ易いという意味です。
時代設定もはるかな未来があるかと思えば、近未来も現在も、そして明治期という過去もあります。それに加えて、内容もヴァラエティに富んでいます。
私は最近のSF、まして国内ものはまず読んでいません(例外は星新一作品)ので比較ができないのですが、ちょっと他にみない趣向のSFストーリィという気がします。

フランケンシュタインの方程式」は宇宙旅行が舞台ですが、着想および結末のドンデン返しがお見事。清太郎出初式」は時代的 ストーリィですが感動があります。
時空連続下半身」は お見事。奇抜な発想からとても面白い展開があるのですが、結末の壮大さにはほれぼれします。 (ちょっと気色悪いのですが)
詩帆が去る夏」はSFならではのストーリィですが、その切なさが身にしみます。さびしい奇術師」は、 星新一的ショートショートに哀感をブレンドした雰囲気。誰しも好きになるのではないでしょうか。
表題作
地球はプレイン・ヨーグルト」は、味覚により意思伝達を行うという宇宙人を題材としていて、秀逸。登場人物らの混乱する光景が脳裏に浮かんでくるという、極めて映像的なストーリィです。

フランケンシュタインの方程式 /美亜へ贈る真珠/清太郎出初式/時空連続下半身/詩帆が去る夏/さびしい奇術師/地球はプレイン・ヨーグルト

   

2.

●「ヤマナベ・ポリスのミイラ男」● ★☆


ヤマナベ・ポリスのミイラ男画像

1990年02月
早川書房刊

2006年02月
光文社文庫
(476円+税)



2006/03/19

宇宙自由貿易都市のヤマナベ・ポリス、そこで全宇宙で活躍するスーパー・ヒーローたち48人が一堂に会する超人サミットが開催された。しかし、悪の組織“パンドラ”がテロ攻撃を仕掛け、超人たちは身体バラバラに吹き飛ばされてしまいます。
しかし、女性科学者
ユノ・Kの天才的バイオ技術の結果、ホテルのバイト従業員・吹原和彦の脳+48超人のパーツを合成したニュー・ヒーロー、怪傑ミイラ男誕生、という爆笑SFストーリィ。

何とも馬鹿馬鹿しいような設定、そしてそれに相応する馬鹿馬鹿しいストーリィなのですが、余りに馬鹿馬鹿しくて愉快、単純に楽しいのです。
気分転換、ちょっとした合間に読むには恰好の一冊。

普段はボサボサ頭で冴えない女の子なのに、眼鏡を外した途端に美少女へと変身するユノ・Kが可愛らしい。
2人の他に、広域宇宙知的生命連盟・独立防衛軍司令長官の
グム・グス(ミイラ男の命名者)にパンドラ・ズヴゥフル支部部長のオシリス、三級超人のキャプテン・パープルと、脇役たちの顔ぶれもも十分揃っています。
そんな中でも“
I・Gマン”がことに恐ろしい。
極めつけの善人なのですけれど、やることなすこと全て裏目に出るばかりか、ドミノ式に被害を大きくしてしまって惑星ごと遂に滅ぼしたことがあるという、恐ろしい人物。
とにかく発想、および各篇のストーリィに笑ってしまう。

ヤマナベ・ポリスのミイラ男/マイ・フェア・マミー/恐怖!戦慄!!I・Gマン/ミイラ男の花嫁の息子の逆襲/ミイラ男がミイラ取り!/ミイラ男、最大の危機

     

3.

●「サラマンダー殲滅」● ★★☆       日本SF大賞


サラマンダー殲滅画像

1999年02月
朝日ソノラマ文庫

2006年09月
光文社文庫
上下
(各705円+税)

2018年12月
徳間文庫化
(上下)



2008/08/22



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やっと読むに至った、日本SF大賞を受賞した梶尾さんの代表作。
家族旅行を良い機会と読んだのですが、面白く、テンポ良く、かつ文庫上下巻に亘る長篇という長さが、旅行中の読書に恰好の作品でした。

惑星間航行、移住が可能となった大宇宙時代が舞台。
そこには宇宙全体の秩序を司る
“在人類惑星条約機構”と、その機構に対し凶悪なテロを仕掛ける“汎銀河聖解放戦線”という存在があった。
その汎銀戦線の大規模なテロに巻き込まれ夫と愛娘を失った主婦の
神鷹静香は、復讐を誓い、壮絶な訓練を経て戦士となる道を選びます。
しかし、汎銀戦線と闘うために静香は、人間として一番大切なもの=記憶を犠牲にする他なかった・・・・。
果たして静香は復讐を成し遂げることはできるのか。そしてその時、静香にはどんな運命が待ち受けているのか。
その静香のドラマと絡むように、幾つかのドラマが並行して進んでいくというのが、本書のストーリィ構成。

壮大なスペース・オペラ。宇宙を2分して争うかのような想定に、かつて愛読したE・E・スミス“レンズマン・シリーズ”を思い出します。しかし、本作品がそれと大きく異なるのは、何だかんだと言いつつ梶尾さんは人間を主体にこの作品を描いている点。
失笑してしまう位運に見放されている若者、執念深い暗殺者、拷問好きな癖に自分自身は全く意気地がないサディストの訊問者。
それらは時に醜悪であると同時に滑稽でもあります。
それは、本書で梶尾さんが創り出した奇妙な生き物=
“飛びナメ”(羽で飛ぶナメクジ)にも言えること。
気持ち悪い生き物で人間に大きな被害をもたらしますが、その一方で食料ともなり、時には闘いの最中において敵を倒す味方ともなる存在。
数多くの見せ場を繰り広げつつ本ストーリィを紡ぎ出していきながら、主ストーリィは壮絶に、少しの甘えを許さないという風。それでいて、3つのラブ・ストーリィの展開はまさに三者三様という融通無碍な達者ぶり。

一つの長篇作品の中に、短篇の面白さ・長篇の面白さ、凄絶さと滑稽さ、そしてラブ・ストーリィまで織り込まれているという贅沢さな面白さ。
そして読み終えた後は、テロリストまで含めて数え切れない位多くの登場人物たちの姿がくっきりと脳裏に焼きついているという、見事さ。
梶尾さんの代表傑作といって、まさに間違いのない大作。

    

4.

●「ドグマ・マ=グロ」● 


ドグマ=マグロ画像

1993年05月
朝日ソノラマ刊

2003年04月
新潮文庫
(667円+税)


2003/06/08

深夜の病院、初めて夜勤を経験する新米看護婦・由井美果を襲ったのは、想像を絶した悪夢のような一夜。

正直言って、よく判らないストーリィ。また、結局それで何だったのかな、と思う作品。
解説によると、本作品は
夢野久作「ドグラ・マグラ」のオマージュとのこと。しかし、その夢野作品を私は読んだことがないので、そう言われてもピンと来ず。
「ドグマ・マ=グロ」という題名自体が奇々怪々ですが、作中から引用すると
「ドグマ」とは“教義”のことであり、「マ=グロ」とは“マン・マシン・メディカル・グループ”の略称とのこと。と言われても、依然として理解できず。
ともあれ、人間を次々とその体内に飲み込んでいく
ショロホフスク体と呼ばれる異様な生命体と、培養体と呼ばれる半機械との戦いが最後の見せ場。その戦いを意図的に招いたのは、陸軍病院時代からの戦時思想を引きずったグループ。その奇怪な戦いに、看護婦、警備員、患者、右翼団体等の普通の人々が巻き込まれる、というホラー・サスペンス・ストーリィ。
不気味な気色悪いストーリィですが、それでも読ませるのはカジシンのユーモア感覚があってこそ。
この作品を読む人は、物好きな人かもしれません。

     

5.

●「スカーレット・スターの耀奈」● ★☆


スカーレット・スターの耀奈画像

1994年11月
アスペクト刊

2004年08月
新潮文庫
(438円+税)


2004/09/13

宇宙SFをベースにしたロマンティック・ストーリィ、4篇。
宇宙の惑星間を行き来する未来を舞台にしながら、古典的といえるラブ・ストーリィを組み合わせたところが、いつもながらのカジシン風。
現実的に過ぎる、あるいはセックスを抜きに語られない現代のラブ・ストーリィに比べると、いずれも純粋過ぎるストーリィですが、こうしてSFを舞台にするとかえって新鮮に感じられるから面白い。

4篇の中では表題作の「スカーレット・スターの耀奈」が秀逸。後味の爽やかさ、スケールの大きさが気持ち良い。
SFでありながら、究極の愛の姿をいみじくも描いた
「キュービック・スターの麻綾」も楽しい。結婚許可の条件としてある惑星で1年を送ることを命じられた恋人同士。どんな試練が待ち受けているのか。舞台設定と結末への展開がお見事。

「ドリーム・スターの亜眠」「ホーンテッド・スターの玲乃」の2篇は、失った恋人を忘れられない故のやや後ろ向きのストーリィであることから、満足度は前2作に及ばず。

スカーレット・スターの耀奈/ドリーム・スターの亜眠/ホーンテッド・スターの玲乃/キュービック・スターの麻綾

  

6.

●「OKAGE」● 


OKAGE画像

1996年05月
早川書房刊

1999年05月
ハヤカワ文庫化

2004年01月
新潮文庫化


2000/11/25

帯文句に「キングの筆力、クーンツの度肝を抜く想像力、そしてマキャモンの軽快な語り口」と ありましたので、どんなに凄いストーリィかと期待して読み始めたのですが、正直な気持ちとしては、 う〜ん、というところです。

熊本市内にて子供たちが失踪する事件が数十件起こります。
熊本だけかと思いきや、全国各地にて、更には世界中の各地にて起こっていることとか。一体何が起きたのか、という大人たちの疑問から始まるストーリィ。
江戸時代、伊勢神宮への大勢の民衆によるお参りが何回も起こり、
“お蔭参り”と呼ばれたとか。それが連想されることから、今回の現象は“OKAGE現象”と 呼ばれることになります。
子供たちの失踪には、毛むくじゃらで丸い形をした幻獣の存在が関係しているのですが、その正体、そしてその理由は全く計り知れず、私の想像力では全くお手上げ状態でした。それ故、読んでいてストーリィの実感が乏しく、最後の結末も納得感を得られませんでした。
黄泉がえりと比べると、ストーリィの面でも単調ではないかと思います。
期待して読んだ割には物足りず。その一方、梶尾さんの想像力の無限さが印象に残りました。

     

7.

●「黄泉がえり」● ★★★


黄泉がえり画像

2000年10月
新潮社刊
(1700円+税)

2002年12月
新潮文庫化


2000/11/04


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熊本で、突然死者が甦ってくるという現象が続発します。いずれも、近い身内が死んだ時のままの姿で家族の前に現れた、というもの。相次ぐ死亡届取消申請に、戸惑う行政側。何故死者は黄泉がえったのか? そして黄泉がえった死者は、迎えた家族は、どうなるのか?

このように本ストーリィを紹介すると、ホラー小説のように感じるかもしれませんが、決してそんな印象はありません。むしろ、ユーモラスで、ほのぼのした感覚にとらわれます。その訳は、迎える家族が死者たちを、あたかも当然のように、そして嬉しそうに迎え入れるからです。そこが本作品の魅力であり、このストーリィの重要な鍵になっています。
この作品を読みながら、
井上ひさし「吉里吉里人」、恩田陸「月の裏側」、小野不由美「屍鬼を思い浮かべました。一番雰囲気が近いのは、きっと「吉里吉里人」でしょう。

ジャンルとしてはSF小説になろうかと思いますが、内容としては家族の絆、人と人との結びつきを描いたものと言えます。
昨今索漠とした家庭事情について報道されることが多いだけに、こうしたストーリィを読むと、心が洗われるような気持ちがします。
父親を迎えた人、兄を迎えた人、夫を迎えた人、恋人を迎えた人...。それらひとつひとつのストーリィの幕切れは様々であり、それらひとつずつに、最後はじ〜んと胸が熱くなります。
冒頭から、読んで間違いなし!という感触がありました。
こうした作品に出会えるということに、本を読むことの嬉しさがあります。是非じっくり読んで頂きたいと思う作品です。

※映画化 → 「黄泉がえり」

        

8.

●「黄泉びと知らず」● ★★☆


黄泉びと知らず画像

2003年08月
新潮文庫刊
(476円+税)



2003/08/30



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8篇収録の短篇集。
「短篇」と一口に言ってもこの8篇、いずれも侮り難い。
まず、発想が洒脱。その発想にはSF要素もありますが、それに超えて壮絶に笑ってしまう要素があって、魅力いっぱい。
こんな短篇集を手にとれば、楽しく、また嬉しくなってしまうのは当然のこと。まさに短篇の名手と言われるカジシンの、面目躍如です。

表題作の「黄泉びと知らず」は、黄泉がえりのアナザー・ストーリィ。愛する息子を失って離婚した元夫婦が、熊本県での黄泉がえり現象を知り、祈りをこめて熊本へ向かうストーリィです。(生き返ってきた人たちのことを“黄泉がえり”、返ってこない人たちのことを“黄泉びと知らず”と言うのだとか。)

「六番目の貴公子」は「竹取物語」のカジシン流パロディ。古典+SFの奇想天外な展開には圧倒されます。オチもお見事。
「奇跡の乗客たち」は爆笑もの。「魅の谷」は結末がすぐ予想できましたが、それでも可笑しい。
「小壺ちゃん」は、ホームドラマ+SF的ストーリィですが、書かれていないその後の展開を思うと絶句。これも凄い一篇です。
「見知らぬ義父」は、本書中唯一SF要素のない作品ですが、ほっとするような温もりがあります。この一篇のあるのが貴重。
楽しくなりたい方には、是非お薦めしたい短篇集です。

黄泉びと知らず/六番目の貴公子/奇跡の乗客たち/魅の谷/小壺ちゃん/見知らぬ義父/接続された女/赤い花を飼う人

  

9.

●「美亜へ贈る真珠」● ★★
 −梶尾真治短篇傑作選<ロマンチック篇>−


美亜へ贈る真珠画像

2003年07月
ハヤカワ文庫
(580円+税)


2003/10/05


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表題作は梶尾さんのデビュー作、ということに惹かれて読んだのですが、うん?読んだ気がする、というのが感じた最初のこと。
それもその筈、初めて読んだ地球はプレーン・ヨーグルト
に収録されていて、既に読んだ作品でした。

本書に収録されている作品は、いずれもSF的な設定に基づいたラブ・ストーリィ。いみじくも、印象的だった2篇、「美亜へ贈る真珠」「詩帆が去る夏」は、前述の短篇集にて読了済。2篇とも切ないストーリィですが、とくに「美亜へ贈る真珠」の幕切れの美しさが、いつまでも心に残ります。
初期のタイムマシン=航時機。外の世界の一日は、航時機の中の一秒に過ぎません。未来への旅人に選ばれてその航時機に乗り込んだ恋人を忘れられず、美亜はその航時機を度々訪ねながら歳をとり、死んでいきます。航時機の中の恋人は、美亜をどんな思いで見ていたのか、というのが、本篇の主題。
遡時人である恋人・時尼との出会い、ロマンス、別れを描いた「時尼に関する覚え書」も、忘れ難い味わいです。

本書中の各篇は、SFではあっても、本質的には切ないラブ・ストーリィなのです。ラブ・ストーリィ好きな方にはお薦め。

美亜へ贈る真珠/詩帆が去る夏/梨湖という虚像/玲子の箱宇宙/"ヒト"はかつて尼那を・・・/時尼に関する覚え書/江里の"時"の時

 

10.

●「もう一人のチャーリー・ゴードン」● ★★
 −梶尾真治短篇傑作選<ノスタルジー篇>−


もう一人のチャーリー・ゴードン画像

2003年08月
ハヤカワ文庫
(580円+税)



2003/10/05

表題作「もう一人のチャーリー・ゴードン」は、もちろんキースの名作「アルジャーノンへ花束を」に捧げるオマージュ。
ストーリィの実験内容は「アルジャーノン」の知能回復とは異なり、長寿を目的としたもの。人生落伍者となった主人公が、その実験に生命を賭して応じるストーリィです。子供に若返った主人公は、離婚されて別れた息子に会いに行きます。愛する息子との心の通じ合った一日。長篇と短篇という違いはありますが、感動的な名品という点で、本作品は「アルジャーノン」に少しも引けを取りません。

ポー「アッシャー家の崩壊」をもじった「芦屋家の崩壊」「夢の神々結社」は、なかなか楽しい作品。
「地球屋十七代目天翔けノア」はまずまず楽しい作品と思っていたら、最後の最後で強烈なしっぺ返し。思わず絶句しますが、これも梶尾さんらしい面白さ言うべきでしょう。
「清太郎出初式」は、H・G・ウェルズ原作火星人襲来の、日本版。火星人と明治時代の陸軍、鳶および出初式というアンバランスが面白い一篇。
「百光年ハネムーン」は、表題作に登場した五堂勝・雪奈夫婦を主人公とする未来ストーリィ。最後を飾るに相応しい、心温まる一篇です。

もう一人のチャーリー・ゴードン/芦屋家の崩壊/地球屋十七代目天翔けノア/夢の神々結社/清太郎出初式/百光年ハネムーン

  

11.

●「フランケンシュタインの方程式」● ★★
 −梶尾真治短篇傑作選<ドタバタ篇>−


フランケンシュタインの方程式画像

2003年09月
ハヤカワ文庫
(580円+税

2003/10/05

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「フランケンシュタインの方程式」は、一度読んだら忘れられない作品。宇宙ものですが、その内容は、抱腹絶倒の発想+究極のホラー。この作品だけは、理屈抜き、まず読んでもらうことがすべてです。(※梶尾さんには申し訳ありませんが、立ち読みでもいいから読んで欲しいところ)

「干し若」は日本版ドラキュラ、「宇宙船<仰天>号の冒険」は宇宙版怪獣退治、「ノストラダムス病原体」は宇宙発・恐怖の伝染病というストーリィ。いずれも、最後のオチの凄さ、そのブラック・ユーモアには圧倒されます。

「地球はプレイン・ヨーグルト」は、やはり圧巻というべき独創的なストーリィ。味覚を通してしか意志伝達できない宇宙人との邂逅を描いたSF。料理人らを集めての大騒動・狂乱という展開は、読み応え充分。

フランケンシュタインの方程式/干し若/宇宙船<仰天>号の冒険/泣き婆伝説/ノストラダムス病原体/地球はプレイン・ヨーグルト

 

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