梶尾真治作品のページ No.4



31.おもいでエマノン

32.さすらいエマノン

33.まろうどエマノン

34.ゆきずりエマノン

35.ダブルトーン

36.アラミタマ綺譚

37.うたかたエマノン

38.怨讐星域T−ノアズ・アーク−

39.怨讐星域U−ニューエデン−

40.怨讐星域V−約束の地−


【作家歴】、地球はプレイン・ヨーグルト、ヤマナベ・ポリスのミイラ男、サラマンダー殲滅、ドグマ・マ=グロ、スカーレット・スターの耀奈、OKAGE、黄泉がえり、黄泉びと知らず、美亜へ贈る真珠、もう一人のチャーリー・ゴードン、フランケンシュタインの方程式

梶尾真治作品のページ No.1


タイムトラベル・ロマンス、インナーネットの香保里、未来のおもいで、新編クロノス・ジョウンターの伝説、波に座る男たち、精霊探偵、この胸いっぱいの愛を、時の"風"に吹かれて、きみがいた時間ぼくのいく時間

 → 梶尾真治作品のページ No.2


つばき時跳び、悲しき人形つかい、ムーンライト・ラブコール、あねのねちゃん、アイスマンゆれる、穂足のチカラ、メモリー・ラボへようこそ、ボクハ・ココニ・イマス、壱里島奇譚、クロノスの少女たち

 → 梶尾真治作品のページ No.3


猫の惑星、杏奈は春待岬に、たゆたいエマノン、デイ・トリッパー、黄泉がえり again、彼女は弊社の泥酔ヒロイン、おもいでマシン

 → 梶尾真治作品のページ No.5

   


            

31.

●「おもいでエマノン」● ★☆


おもいでエマノン画像

1983年05月
徳間書店刊

2000年09月
徳間デュアル文庫

(762円+税)

2013年12月
徳間文庫化


2011/07/18


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ゆきずりエマノンでのエマノンは、永遠の旅を続ける女性というイメージだったのに対し、本書はシリーズ第1巻目である所為か、SF小説、それを担うキャラクターという印象が強い。
エマノンという女性の様々な実像を描くとともに、エマノンと同様の宿命、能力を背負った人物、存在を登場させる、という趣向になっています。
長い髪、粗編みのセーター、ジーンズ、幾つかそばかすの跡、というエマノンの姿は全く変わりません。

エマノンという不思議な存在の一端を知ることができるのが、「おもいでエマノン」「ゆきずりアムネジア」
また、エマノンと似た人間あるいは存在が登場するのは、
「たそがれコンタクト」「しおかぜエヴォリューション」「あしびきデイドリーム」
「さかしまエングラム」もかなりファンタジーなストーリィですけれど、私は「しおかぜエヴォリューション」「あしびきデイドリーム」に惹かれます。

地球に生命が誕生して以来30数億年という長い歴史から見ると、人類への批判も生じて当然のことと思います。

エマノン、永遠に旅する女性なら、彼女に惹きつけられるのも永遠、という気がします。

おもいでエマノン/さかしまエングラム/ゆきずりアムネジア/とまどいマクトゥーヴ/うらぎりガリオン/たそがれコンタクト/しおかぜエヴォリューション/あしびきデイドリーム

         

32.

「さすらいエマノン ★☆


さすらいエマノン

2001年02月
徳間デュアル文庫

2014年01月
徳間文庫

(630円+税)

2017/11/24

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“エマノン”シリーズ第2弾。
SF的、そしてかつ、人類の未来に警告を与えるような5篇を収録。

「さすらいビヒモス」:暴走した象が人々を蹴散らし、犠牲者の数を増やしていく。しかし、象の胸の奥にあったのは・・・。
「まじろぎクリィチャー」:米国の田舎町。そこで禁忌区に指定された場所でエマノンが再会した相手は・・・?
「あやかしホルネリア」:すべてを呑みこむかのような赤潮の動き。何がそんな事態を招いたのか?
「まほろばジュルパリ」:アマゾンの密林の奥で暮らす一族に襲い掛かった危機。エマノンがその地を再び訪ねた理由とは。
「いくたびザハナラード」:中学時代、エマノンとほんのひと時関わったことのある倫子が主人公。彼女が度々声を聞く「ザハナラード」とは何者なのか。

読んだ2017年の現在から16年も前に書かれたストーリィですが、そこに描かれている危機的事実はもはや空想論ではなく現実のものになっていると感じます。その点が印象的。


さすらいビヒモス/まじろぎクリィチャー/あやかしホルネリア/まほろばジュルパリ/いくたびザナハラード

        

33.

「まろうどエマノン ★★


まろうどエマノン

2001年10月
徳間デュアル文庫

2014年02月
徳間文庫

(640円+税)



2017/11/25



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"エマノン"シリーズ第3弾。
なお本書は、徳間デュアル文庫刊行の「まろうどエマノン」と「かりそめエマノン」の中編2作を合本とのこと。
中編である分、読み応えも十分。

「かりそめエマノン」
地球誕生以来の記憶を受け継ぐエマノンは、世代にただ一人の娘だけというのが鉄則。しかし、ある世代で何故か、二卵双生児の兄が生まれていた。
養護施設で育ち、養父母に引き取られて成長した、その
荏口拓麻が主人公。その拓麻には、施設に連れられてくるまで誰か女の子に手を握られていたという断片的な記憶があった。実際、発見された時は双生児らしい2人が発見されていたが、もう一人の女の子の記録は一切なし。
そこはエマノンの兄らしく拓麻にも不思議な能力が備わっていたが、いったい拓麻は何のために生まれたのか。
やがて長じてエマノンに漸く再会した時、拓麻は・・・・。

「まろうどエマノン」
主人公の
廣瀬直樹は10歳、小4の時、九州の田舎町・御所船町に住む曾祖母の元に預けられた。
そこで直樹は、エマノンと言う女性、"ましら"と呼ばれる不思議な存在と出会う。
エマノンとましらから依頼事をされた直樹は、思いがけない冒険と出会いをするのですが・・・。

「かりそめ」は、拓麻においては切ないストーリィ。
一方、「まろうど」は、男の子にとっては忘れ難い、最高の夏休み冒険というべきストーリィ。

※本書読了により、現在までに刊行された"エマノン"シリーズ6巻を全て読み終わりました。なんとくホッ。そして嬉しい。

かりそめエマノン/まろうどエマノン

        

34.

●「ゆきずりエマノン」● ★☆


ゆきずりエマノン画像

2011年05月
徳間書店刊

(1600円+税)

2014年03月
徳間文庫化



2011/07/10



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梶尾さんに“エマノン”というシリーズがあるのは知っていましたが、これまで読む機会に恵まれませんでした。
今回、9年ぶりということですが、新たに第4巻が刊行されたことを機に、やっと読むに至りました。

エマノンというのは、その女性の仮の名。“no name”の逆読み、とのこと。代々母親から娘へと、地球に生命が誕生して以来30数億年の記憶を引き継いで、旅する女性。
長い髪、粗編みのセーター、すりきれたジーンズ、というのが彼女の格好。
ある種の生命、その存続が危機に晒された時どこからともなく聞こえる声、エマノンの旅はそれらの声に呼応するように続けられる、というのが本シリーズの主人公、エマノンという女性のキャラクター設定です。

一つ一つの篇は、スケッチのようなストーリィですけれど、数十億年にわたる生命の歴史を意識して読むと、悠久に通じるストーリィの一部、というロマンス気分を新たにします。

「おもいでレガシー」:人の記憶を写し取ってしまうという若い女性の物語。
「ぬばたまガーディアン」:人知を超えたある存在と精神生命体の闘いにエマノンが立ち会う篇。。
「いにしえウィアム」:歴史を超えた男女の恋愛成就をエマノンが仲介する篇。
「あさやけエクソダス」:ある離島に棲み付いた台湾リスの声にエマノンが応える篇。

おもいでレガシー/ぬばたまガーディアン/いにしえウィアム/あさやけエクソダス

            

35.

●「ダブルトーン」● ★★


ダブルトーン画像

2012年05月
平凡社刊

(1500円+税)

2020年02月
徳間文庫



2012/06/14



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田村裕美(ゆみ)中野由巳(ゆみ)、主人公は朝目覚める度、今日はどちらの自分なのかをまず確かめます。
つまり、本書主人公は2人の女性、双方の意識を持っているのです。当初は夢か幻のようなものと考えていた。しかし、次第にどちらも現実、どちらの自分も実在しているということが裕美、そして由巳にも判ってきます。
裕美は夫も娘もいる30代の主婦。一方の由巳は小さな広告代理店に勤める20代の独身女性。

さて、どういう仕掛けなのでしょうか。何故主人公は2人の女性の記憶を共有しているのでしょうか。
やがて裕美の友人であるデザイナーの
有沼郁子、さらには裕美の夫である田村洋平までもが由巳の前に姿を現してから、ストーリィは急速に展開していきます。
真相は多分こんなことだろうと思ったら、2人の経歴からそれはあり得ないとすぐ気づきました。果たしてどんな仕掛けなのか、まずその謎解き自体がスリリング。
その謎解きが少し見えてきたところから、今度はストーリィ自体がスリリングさを急速に増していきます。そしてそれは最後、息詰まるような展開へ。
かつて読んで興奮した
グリムウッド「リプレイ、その最終場面を彷彿させられます。

途中、そして最終場面と、読み始めた当初からは全く予想もつかない展開なのですが、そこはやはり梶尾さんらしい、SFロマン的サスペンス。
カジシン=ファン、「リプレイ」ファンには、是非お薦めしたい一冊です。

                

36.

●「アラミタマ綺譚」● ★☆


アラミタマ綺譚画像

2012年07月
祥伝社刊

(1600円+税)



2012/08/14



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パワースポット=阿蘇を舞台にした、梶尾さんには珍しいファンタジー活劇+梶尾さんらしいラブロマンス付き。

主人公である
大山知彦、婚約者である苫辺(とまべ)千穂と共に、彼女の実家へ挨拶するため苦手の飛行機で熊本へ向かうところ。
ところが知彦が次に気づくと、病院のベッドの上。何と乗っていた飛行機が阿蘇外輪山に墜落、奇跡的に助かったのは知彦一人だけだった。
しかし、不思議なことに千穂を含め、同乗していた62名が皆行方不明だという。いったい何が起きたのか。
知彦を探しに来た千穂の弟の車に拾われ、知彦は千穂の実家へ。そこで知彦は千穂の父親から、阿蘇には一般には知られていない秘密があるという。そして、負の力が溜まって“
邪魔”が発言しないよう、苫辺家を始めとする周辺の家は長く鎮守役を務めてきたのだという。
そして今回懸念が事実となり・・・・。
姿を消した千穂、知彦は再び彼女を見つけることができるのか。そしてまた、千穂と知彦はこの事態にどう関わっているのか、というストーリィ。

いつもと変わらず熊本を舞台にしてはいますが、ファンタジーラブロマンスが多い梶尾作品にあって、異界のもの同士が争うという本ストーリィは意外でした。その分、読み応えとしてはやや物足りず。

※なお、最近やたらと“パワースポット”が取り上げられていますが、本ストーリィ、安易なパワースポット騒ぎに対する痛烈な風刺を含んでいるように感じたのですが、さて梶尾さんの真意は如何?

       

37.

「うたかたエマノン」 ★☆


うたかたエマノン

2013年11月
徳間書店刊

(1700円+税)

2016年11月
徳間文庫化


2013/12/17


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地球に生命が存在して以来の30億年の記憶を持つという女性を軸としたエマノン”シリーズNo.5。今回は長編です。

舞台はカリブ海に浮かぶ
マルティニーク島
その島の奥にある
ペレー山には“ゾンビ”がいると言われ、魑魅魍魎の存在はこの島では空想事ではない。
母親が天然痘で死に孤児となった少年
ジャンは、ある日船でやってきたらしい風変わりな女性の姿に目を惹き付けられます。それがエマノン。
彼女が何故マルティニーク島にやって来たかというと、40年前に島を訪れた時の記憶が何故か失われていて、その理由と失った記憶を取り戻すためという。
本作品では思わぬ人物が登場し、画家
ゴーギャンと記者ラフカディオ・ハーンという2人。共にタヒチ、日本に住む前という設定です。
エマノンはジャン、ゴーギャン、ハーンに伴われて、かつて自分が倒れて発見されたらしいペレー山を目指します。

本当にゾンビが登場するのかと思うのですが、その仔細が判るとやはり本シリーズらしい展開。
まぁ気軽に風変わりで、地球に住む生命の悠遠さを感じるストーリィでもあるというのが本シリーズの魅力なので、それなりに楽しめるところは従来どおり。カジシンさんらしい一冊です。

    

38.

「怨讐星域T−ノアズ・アーク− Vendetta Planet1 Noah's Ark ★★


怨讐星域1

2015年05月
ハヤカワ文庫
(880円+税)



2015/06/15



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カジシンさんの新作は文庫3巻からなるSF大長編。
紹介文を読むだけではもうひとつ内容がぴんと来なかったのですが、実際に読み始めればすぐ判ります。
本作品は、宇宙スケールによるSF人類クロニクルだということに。

太陽のフレア化(木星まで達する巨大化)が5年以内に発生、地球は瞬時に壊滅するという予測がなされます。
そのニュースが公開される前、
米国大統領アジソンは密かに世代間宇宙船を建造し、選ばれた3万人と共に 172光年先にある移住先惑星“約束の地”へ向けて旅立ちます。
破滅間近の地球に取り残されたそれ以外の人々は2つの道のいずれかを選ぶこととなります。ひとつはその直後に完成した転送装置を使い、危険覚悟で“約束の地”へジャンプすること。もうひとつは地球に残り、地球と運命を共にすること。
しかし、運よくジャンプに成功しても新しい惑星での生活は過酷である様子が描かれます。生活はまるで原始時代に戻ったかのようであるうえに、正体不明の原住生物が人間たちを襲います。
まるで、片や“ノアの方舟”に乗り込んだ人間たち、片や“エデンの園”から追い出されたアダムとイブの子孫たちさながらではありませんか。
ジャンプして約束の地に辿り着いたマサヒロが加わることになったコミュニティの名前が「エデン」とは、何と意味深であることでしょう。

SFマガジンで9年間に亘って連載された宇宙版クロニクル、本巻に描かれるのはその第一段階。
ストーリィは、宇宙船に乗り込んだ人々、ジャンプして約束の地に辿り着いた人々、地球に残る選択をした人々という3局面を並行して描き出していきます。
ファンとしては、第2巻・第3巻への期待大。


約束の地/ギルティヒル/スナーク狩り/ノアズ・アーク/ハッピーエンド/エデンの防人/誓いの時間/鬼、人喰いに出会う/閉塞の時代

    

39.

「怨讐星域U−ニューエデン− Vendetta Planet2 New Eden ★★


怨讐星域2

2015年05月
ハヤカワ文庫
(880円+税)



2015/06/17



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宇宙スケールのSFクロニクル第2巻。
破滅する地球から脱出し
“約束の地”たる新惑星へ希望をかけた人類ですが、本巻に登場するのはいずれも地球を直接知らない、後世代の人々。

転送装置により身一つでエデンに辿り着いた人類グループは、当初世代の原始的生活を脱し、短期間で急速に文明社会を築き上げていた。
一方、世代間宇宙船
“ノアズ・アーク号”内の人類グループは、今や地球を知らず、といって約束の地に辿り着くこともないという、世代を繋ぐためだけに生きている人々。
したがって本書で上記2グループが出会うことはなく、それぞれ交互に、それぞれの現居場所でのドラマが並行的に描かれるだけの巻と言えます。
しかし、エデンでは、当初世代が抱えたアジソン派=ノアズ・アーク号に乗り込んだグループへの憎しみを未だに受け継いでいた。

本巻で2グループが出会うことはないだけに、いよいよ2グループが会いまみえる第3巻へと、興味は膨れ上がります。

降誕祭がやってくる/アジソンもどき/失われし時をもとめて/減速の蹉跌/生存の資質/ノアズ・アークの怪物/テンゲンの山頂にて/アダムス小屋/深淵の選択/ウィリアム・ガズの部屋/自由教会にて/七十六分の少女

  

40.

「怨讐星域V−約束の地− Vendetta Planet3 Primised Land ★★☆


怨讐星域3

2015年05月
ハヤカワ文庫

(880円+税)



2015/06/18



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宇宙スケールのSFクロニクル第3巻=最終巻。

前巻の最後でノアズ・アーク号はついに惑星<約束の地>の衛星軌道に到達します。
移住準備を始める段階に至って初めて、ノアズ・アーク号側は目的の惑星に知的生命体が存在することを知り、平和的に共生する道を探ろうとします。
一方、地表では
ニューエデンの首長となったアンデルス・ワルゲンツィンが一貫して“アジソン派”への復讐・殲滅を唱え、少年まで迎え撃つ為の槍訓練に明け暮れている始末。
衛星軌道上と地表の人類がお互い見合ったままの膠着状態というのが本書の前半ストーリィ。

いったいどういう結末を迎えるのか全く見当がつかず、読み進む間もドキドキハラハラ状態。
しかし、予想もしていなかった事態が生じ、動転している間もなくストーリィはあっという間に結末へ。
気を取り直して結末に向かい合ってみれば、予想したような過激なドラマはなく、極めて自然な形での決着だったと思う次第です。
そこはやはりカジシンさんらしい幕切れであって、納得感というより、むしろ安堵感の方が大きい。

本書の読了後には改めて、争いや戦争のない世界が実現して欲しいと、心から祈る気持ちになります。
これまで人類が歩んできた歴史を短期間の内に再現したかのような宇宙SFクロニクル3巻、本書に込められた思いは読み終えた後になってからじわじわと伝わってくる気がします。


悪魔の降下/遷移軌道上にて/闇の起源/星条旗よ永遠なれ/キリアンは迷わない/ダホディル・フィールドは、永遠に/その日への輪舞曲(ロンド)/大破砕/ポッド・サバイバー/トーマス老の回想

       

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