はやみね かおる作品のページ No.2

  

10.ギヤマン壺の謎

11.徳利長屋の怪

12.虹北恭助の冒険

13.いつも心に好奇心!(怪盗クイーンからの予告状)

14.人形は笑わない

15.怪盗クイーンはサーカスがお好き

16.「ミステリー館」へ、ようこそ

17.虹北恭助の新冒険

18.虹北恭助の新・新冒険

19.怪盗クイーンの優雅な休暇

20.あやかし修学旅行

  
【作家歴】、怪盗道化師、バイバイスクール、オタカラウォーズ、そして五人がいなくなる、亡霊は夜歩く、消える総生島、魔女の隠れ里、踊る夜光怪人、機巧館のかぞえ唄

 → はやみねかおる作品のページ No.1

 
虹北恭助の冒険−高校編−、都会のトム&ソーヤ1、ぼくと未来屋の夏、僕と先輩のマジカル・ライフ、怪盗クイーンと魔窟王の対決、都会のトム&ソーヤ2、虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー、笛吹き男とサクセス塾の秘密、都会のトム&ソーヤ3、オリエント急行とパンドラの匣

 → はやみねかおる作品のページ No.3

 
都会のトム&ソーヤ4、ハワイ幽霊城の謎、赤い夢の迷宮(勇嶺薫)、卒業、恐竜がくれた夏休み、虹北恭助の冒険−フランス陽炎村事件−、モナミは世界を終わらせる?

 → はやみねかおる作品のページ No.4


   

10.

●「ギヤマン壺の謎−名探偵夢水清志郎事件ノート外伝−」● ★☆

 

  
1999年07月
講談社刊

青い鳥文庫
(580円+税)

2009年07月
講談社文庫化

   

2004/02/22

“名探偵夢水清志郎事件ノート外伝”大江戸編の上巻。

まさか夢水清志郎、三つ子三姉妹が江戸時代で活躍しようなどとは思ってもみませんでした。
始まりの舞台はなんとイギリス、ついで長崎。そして東海道の道中を経て大江戸に。その場所、その場所で夢水清志郎左右衛門の推理が繰り広げられます。
登場人物はいつもの面々、もといいつもと同じ様な面々。
長崎の岡っ引・レーチ、江戸の長屋の大家として亜衣ら三姉妹に羽衣母さんが登場。さらに、愛馬ぽち1号にて江戸中を駆け回るかわら版屋として、真里も登場。
歴史小説ならではの登場人物は、道中で道づれとなった才谷梅太郎こと坂本竜馬、新選組の近藤勇・土方歳三・沖田総司というお馴染みの面々。
それに加えて、燃える一介の書店人中村巧さんをモデルにした、神技のような居合術の達人・中村巧之介の登場が新鮮なところです。
ミステリより、幕末に舞台を設定した興味が楽しい一冊。
なお、現代と違って江戸時代の方が、名探偵として有名になったらしい。その都度名探偵の説明を要したようですけど。

大江戸編序章(第一の事件・はじまりはエディンバラ/第二の事件・ギヤマン壺の謎/第三の事件・六地蔵事件)
大江戸編外伝・やつの名は巧之介
名探偵IN大江戸八百八町(ちょっとしたプロローグ/第一の事件・大入道事件)

   

11.

●「徳利長屋の怪−名探偵夢水清志郎事件ノート外伝−」● 

 

   
1999年11

講談社刊

青い鳥文庫
(620円+税)

2010年01月
講談社文庫化

   

2004/02/22

“名探偵夢水清志郎事件ノート外伝”大江戸編の下巻。

上巻に比べると、かなり歴史時代小説という雰囲気が増しています。理由のひとつは、居合術の達人・中村巧之介と幕府御庭番の決闘シーンがあること。もうひとつは、勝海舟も登場し、最後に西郷隆盛との会見シーンが用意されていること。
前半の第一の事件では、怪盗九印が登場。のちに登場する怪盗クイーンの先祖だそうです。
そして最後は、官軍と幕府軍の戦いによって江戸市中が火の海になることを避けるべく、夢水清志郎左右衛門の指揮のもと、徳利長屋の連中たちが力を合わせて江戸城を消すという凄い計画を実行します。

歴史をうまく取り込んだユーモア・ミステリですけれど、日本人がいるからこその日本、江戸町民がいてこその江戸と、新しい時代へ向けての庶民の願いを主題にしているのは、やはり学校の先生らしいところです。
でも、あの明治維新、結局はフランスのような革命ではなく、治世者が徳川幕府から薩長軍閥に移っただけなんですよね。

名探偵IN大江戸八百八町・後編
プロローグ/第二の事件・怪盗九印は最後に笑う/またまた大江戸編外伝・れーちの東海道中膝栗毛/最後の事件・徳利長屋の怪

      

12.

●「少年名探偵 虹北恭助の冒険」● ★★☆

 

  
2000年07

講談社刊
ノベルス
第9刷
2003年08月

(840円+税)

 

2003/12/23

少年名探偵・虹北恭助を主人公とする“虹北商店街”シリーズ、第1冊目。
舞台となるのは、古くからある虹北商店街。その商店街の中でも一番古いのが、古書店の虹北堂
本書の主人公となる少年名探偵は、その虹北堂で猫のナイトと共に店番をしている虹北恭助です。

事件は常に“日常ミステリ”。そして語り手=ワトソン役となるのは、同じ虹北商店育ちで同級生でもある野村響子ちゃん。
となると思い出すのは、本作品と共通するところの多い、北村薫“覆面作家シリーズ。覆面作家の新妻千秋も魅力いっぱいでしたが、それに勝るとも劣らないのが、この虹北恭助。
古書店の奥で一日中本を読んでいるのが好き。不登校児ですが、読書を通じて並みの小学生を遥かに凌駕する知識をもっている。腰まで届く長髪、外出時には古風なマントを羽織る、という主人公像。そして、探偵としては安楽椅子型です。
何と言っても、この虹北恭助のキャラクターが魅力。特に、学校で学ぶ必要もない位の本好きという点に魅せられます(笑)。
また、野村響子ちゃんとのコンビも、とても楽しい。

ミステリ自体はさ程のものでもないでしょう。しかし、小説の面白さとは登場人物の面白さあってこそ、という英文学の伝統を思い出させてくれるような短篇集です。
楽しい読書をお求めの方には、お薦めです。
(※ちなみに虹北商店街は“夢水”シリーズの虹北学園の傍)

虹北みすてり商店街/心霊写真/透明人間/祈願成就/卒業記念

      

13.

●「いつも心に好奇心!−名探偵夢水清志郎VSパソコン通信探偵団−」● ★☆
 <怪盗クイーンからの予告状>

 

  
2000年09

講談社刊

青い鳥文庫
第16刷
2004年01月
(950円+税)

 

2004/05/16

青い鳥文庫創刊20周年記念企画、はやみねかおる“夢水清志郎”と松原秀行“パソコン通信探偵団”の競作本。
といっても、両者が同一ストーリィの中で謎解きを競う訳ではなく、ストーリィ中ちと袖触れ合う程度。
「ジョーカー」、「クイーン」、「飛行船」、「人工知能」という4つのキーワードを共に使ってミステリを書く、というのが本企画の趣向です。

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズとしては、とにかく本作品にて怪盗クイーンが登場した、という意味が大きい。かつてのルブラン「ルパン対ホームズ」を思い出させられます。
夢水清志郎の超人的な推理、クイーンの颯爽とした怪盗ぶりは、まさに本格派。名探偵VS怪盗という醍醐味を十分味わうことができます。
児童書であっても“本格”を損なうことはない、そんなはやみね作品の魅力は、本書でも変わるところはありません。
もっとも、夢水清志郎にしろ、怪盗クイーンにしろ、はやみねさんの貴重なキャラクターですから、勝ち負けをつけることなく穏便な結末に済ませてしまった、というのは仕方ないところか。
なお、本格ミステリという点では、夢水清志郎がパソコン通信探偵団に勝っていると言えます。

怪盗クイーンからの予告状/パスワード電子猫事件

    

14.

●「人形は笑わない−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● 

  

  
2001年08月
講談社刊

青い鳥文庫
(620円+税)

2004/04/11

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第7作。
そして、魔女の隠れ里」「あやかし修学旅行と並ぶ隠れ里3部作の第2作目とのこと。

雑誌「セ・シーマ」のタフな編集者・伊藤真里が選んだ今回の“謎解き紀行シリーズ”舞台は、人形伝説・人形の塔が残る毬音村
それに、部費調達のためレーチ発案によるミステリ映画制作をすることになった文芸部の面々が、夢水・三姉妹・伊藤の一行にさらに加わります。
そして、一行9人は伊藤の運転するバス・ポチV3号にて、9人の老人しかいない過疎の村・毬音村へ。

亜衣ら一行と村の老人たちの触れ合いの楽しさという要素はあるものの、人形の塔の怪というミステリ自体は、よく理解できず。
シリーズも11冊目となると多少飽きもきていて、今ひとつもの足りず。

     

15.

●「怪盗クイーンはサーカスがお好き」● ★☆

 

  
2002年03月
講談社刊

青い鳥文庫
(620円+税)

 

2003/12/23

ストーリィ云々より、まず楽しければ良いじゃないか、と言いたい一冊。
名探偵・夢水清志郎の好敵手である怪盗クイーンを主役にした、シリーズもの第1作。
あとがきで、はやみねさんが有名な怪盗を列記(※)していますが、クイーンはそのいずれに勝るとも劣らない怪盗。そして、スマートさでは群を抜いているかもしれません。
助手は、冷静沈着な中国系・ジョーカー。そして、超巨大飛行船トルバドゥール搭載の人工知能・RD怪盗クイーンからの予告状を参照)。
そのクイーンが伝説のダイヤを奪おうとしたところ、伝説のピエロに率いられたサーカス団がクイーンの面前で奪っていきます。
そして、クイーンとサーカス団が対決!というストーリィなのですが、サーカス団の正体は?、そしてクイーンと対決する目的は何なのか?

登場人物の紹介で殆ど終わってしまうような作品ですが、ストーリィの中味より、雰囲気の良さ、登場人物各々のユニークさ(クイーン始め、タフな編集者・伊藤真里、いつもの岩清水刑事ら)がとても楽しい。
理屈抜き、とにかく楽しく読めることが嬉しい、一冊です。

※有名な「怪盗」:怪盗ルパン、ルパン三世、怪盗ルビィ・マーチンスン、怪盗セイント、怪盗ニック・ヴェルヴェット、怪盗ジバコ、怪盗ルーズルーズ、怪盗キッド、怪盗シュガー、怪盗アマリリス、....怪盗ピエロ

  

16.

●「「ミステリーの館」へ、ようこそ−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● 

 

   
2002年08月
講談社刊

青い鳥文庫
(670円+税)

 
2003/12/14

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第8作。

引退した世界的に有名なマジシャン・グレート天野が開設したテーマランド、「ミステリーの館」
岩崎家の三姉妹、亜衣のボーイフレンド、担当編集者と出かけた名探偵・夢水は、課題をクリアし、本当の「ミステリーの館」に招待されます。
言わば、元マジシャンが探偵相手に仕掛けたマジック、ミステリの挑戦状、というストーリィ。

夢水名探偵の他に、学生の井上快人とその恋人である霊能力者・川村春奈(→「僕と先輩のマジカル・ライフ」)、そしていつもの上越警部・岩清水刑事が招待されています。
その仕掛けは、読者にもまた向けられているようで、本書の中身は二重の袋とじに封印されているという、凝った製本です。
もっとも、本書の面白さはミステリより、名探偵・夢水のとぼけたキャラクター、その他個性的な登場人物たちのやりとりの可笑しさに負うところ大です。

    

17.

●「少年名探偵 虹北恭助の新冒険」● 

 

  
2002年11

講談社刊

ノベルス
(700円+税)

 

2003/12/31

“虹北商店街”シリーズ、第2冊目。
冒険「祈願成就」ストーリィが尾を引いているみたいで、カメラ屋の若旦那、喫茶店FADE IN のマスター、イラストレーターの宮崎さんの3人組による自主映画制作が、本書「新冒険」の中心ストーリィになっています。
ただこの3人、プロモーションビデオ「名探偵はつらいよ」の制作以来すっかり虹北商店街振興会から警戒されていて、指名手配犯人同様に扱われているところがコミカル。

「夜間飛行」は、女の子の転落事故の謎を、恭助と祖父・恭じいちゃんが推理する、クリスマス時のストーリィ。
「外伝の一」は、何と恭助の留守の間に若旦那が主役の躍り出た番外篇。響子ならずとも頭を抱えたくなるような、能天気な3人組を中心にした自主映画の対抗戦、というストーリィ。
まぁ、ここまでハチャメチャになると、それはそれで楽しいと言う他ありません。なお、名番組「シャボン玉ホリデー」のコントネタが度々登場するのですが、理解できている方、どのくらいいるのでしょう(笑)。
恭助の登場が僅かしかないところが、もの足りず。

夜間飛行/外伝の一:おれたちビッグなエンターテイメント

   

18.

●「少年名探偵 虹北恭助の新・新冒険」● ★☆

 

  
2002年11月
講談社刊

ノベルス
(740円+税)

 

2003/12/31

“虹北商店街”シリーズ第3冊目。と言っても、2冊目の新冒険と同時刊行。
本書の方は、3篇とも恭助が登場しますので、その点はちゃんと楽しめます。また、春、夏、冬と季節代わりのストーリィになっているところも嬉しい。なお、響子ちゃんはもう中学3年生。

「春色幻想」は、ちょっと良い話。教訓として受け留めれば、聞いた話の表面だけで人を判断してはいけない、ということか。
「殺鯉事件」は、まず題名が奇抜。そして、またしても若旦那たち3人組が登場します。喫茶店FADE IN のバイト・由美子の結婚披露宴用ビデオが、何故怪獣ものになってしまうのか。響子ならずとも相変わらず頭を抱えたくなる展開ですが、最後に恭助が、映画に現れた事件の謎、さらには映画作りそのものまで謎解きしてしまうところが、鮮やか。いよっ、名探偵!と掛け声をかけたいような楽しさがあります。
「聖降誕祭」は、クリスマスに絡んだミステリ。心温まるストーリィで、同じくクリスマスものの北村薫「空飛ぶ馬」を思い出します。
ミステリとしての魅力より、虹北商店街に仲間入りしたような気分になれるところが楽しい一冊。

春色幻想/殺鯉事件/聖降誕祭

       

19.

●「怪盗クイーンの優雅な休暇」● ★★

  

   
2003年04

講談社刊
青い鳥文庫
(720円+税)

 

2004/01/18

余計な理屈は抜き、とにかく読んでいる間中、楽しかった一冊。

“怪盗クイーン”シリーズ第2作。そして、青い鳥文庫には珍しい 450頁という堂々の長篇。それでも、金の密輸入、タフな編集者・伊藤真里の部分をカットしているそうなのですが、たっぷり楽しめること請け合えます。
ストーリィは、半年に3回も働いたから休暇を取りたいと駄々をこねるクイーンのところに、カリブ海クルーズ旅行への招待が届きます。
高価な宝石を盗めるものなら盗んでみろという挑戦が含まれているのですが、クイーンを10年来の仇と狙う暗殺者集団・初楼のメンバー、国際刑事警察機構の探偵卿ジオットと見習・冥美まで待ち受けるという罠付き。おまけに、怪盗を目指すグーコ王国のイルマ王女も登場と、登場人物の顔ぶれは多彩です。
その分、暗殺者集団との闘い、探偵卿と競っての宝石獲得作戦、イルマ王女の相手、さらにグーコの竜との闘いと、ストーリィも盛り沢山です。
クイーンの助手・ジョーカー、人工知能のRDも登場、前作同様の活躍を見せます。
児童書ですけれど大人が読んでも楽しいのは、複数のストーリィが絡んで進行すること、クイーンは勿論のこと登場人物各々が個性的なうえ、ひとつひとつの場面に充分見応えがあること、そしてサスペンスの定石をきちんと踏んでいること故です。
楽しく刺激的なストーリィをお望みの方に、お薦めします。

 

20.

●「あやかし修学旅行 鵺のなく夜−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● ★★

 

  
2003年07

講談社刊
青い鳥文庫
(670円+税)

 

2004/02/01

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第9作。

亜衣たちもついに中学3年生、修学旅行の時を迎えます。
ただし、虹北学園の修学旅行は、普通の学校とはちと違います。
修学旅行実行委員会が、自分勝手かつ盛り沢山な生徒の要望を組み入れて毎年独自の計画を練り、夜中は裏の日程表によって様々なイベントが実行されます。そのうえ今回は「修学旅行を中止せよ」という「鵺」からの脅迫状が届く。さらに、夢水清志郎が校長先生代理として修学旅行についてくるというのですから、無事に終わるとはとても思えない。
修学旅行のワクワク感を存分に詰め込んだ一冊ですから、あの頃に戻って楽しい気分になれるのは、もう間違いなし。

楽しい各パーツ・ストーリィを紹介すると、次のとおり。
・足りない費用は虹北商店街で生徒たちがバイト。亜衣のバイト先は古本屋虹北堂というのですから、楽しい。
・夢水とレーチの組んだ、透視力の大道芸トリック。
・裏イベントの中では、まくら投げ大会がとくに楽しい。
・夢水の食べものに関するあさましさぶりも、ユーモラス
鵺伝説、龍神殺神事件、持ち帰るなの石、三重密室殺人事件の言い伝えの謎解きが、真骨頂。
・おみやげ買いに女の子から誘われない、淋しい男の子たちの友情ぶりについては、気持ちが判るなぁ。
・引率の先生たちの心意気も、良いですねェ。
・そして、「鵺」の正体、夢水の解決ぶりに納得。
勿論、これらは実際に読んでみないと、楽しさは味わえません。

     

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