はやみね かおる作品のページ No.3

  

21.虹北恭助の冒険−高校編−

22.都会のトム&ソーヤ1

23.ぼくと未来屋の夏

24.僕と先輩のマジカル・ライフ

  ※天狗と宿題、幼なじみ

25.怪盗クイーンと魔窟王の対決

26.都会のトム&ソーヤ2

27.虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー

28.笛吹き男とサクセス塾の秘密

29.都会のトム&ソーヤ3

30.オリエント急行とパンドラの匣


【作家歴】、怪盗道化師、バイバイスクール、オタカラウォーズ、そして五人がいなくなる、亡霊は夜歩く、消える総生島、魔女の隠れ里、踊る夜光怪人、機巧館のかぞえ唄

 → はやみねかおる作品のページ No.1


ギヤマン壺の謎、徳利長屋の怪、虹北恭助の冒険、いつも心に好奇心!(怪盗クイーンからの予告状)、人形は笑わない、怪盗クイーンはサーカスがお好き、「ミステリーの館」へようこそ、虹北恭助の新冒険、虹北恭助の新・新冒険、怪盗クイーンの優雅な休暇、あやかし修学旅行

 → はやみねかおる作品のページ No.2

 
都会のトム&ソーヤ4、ハワイ幽霊城の謎、赤い夢の迷宮(勇嶺薫)、卒業、恐竜がくれた夏休み、虹北恭助の冒険−フランス陽炎村事件−、モナミは世界を終わらせる?

 → はやみねかおる作品のページ No.4


         

21.

●「少年名探偵 虹北恭助の冒険−高校編−」● 
  
原作:はやみねかおる  漫画:やまさきもへじ

 

  
2003年09

講談社刊

コミック
(476円+税)

2008年04月
講談社BOX化

2003/12/28

“虹北商店街”シリーズ第4冊目ですが、ただしコミック。
虹北恭助の漫画化という編集者の提案に、単純に喜んでいたところ、何と原作を5話書かされた、というのが作者はやみねさんの「あとがき」談です。

この虹北恭助、基本的に安楽椅子型探偵ですから、漫画には本来向いていません。
あとがきにて、はやみねさんも同様のことを言っており、動きを与える為に、虹北堂の居候である日系フランス人・ミリリットル真衛門や、恭助のライバルを自称する高校のミステリ研・会長の沢田京太郎を登場人物として加えたとのこと。そのためか、何かやたらと恭助を喰って騒がしい。
また、野村響子ちゃん+恭助というコンビについては、高校生ともなるとさすがに男女問題という面が浮上し、微笑ましい仲の良さという魅力は維持し難いようです。
やはり“虹北恭助”は小説で味わいたいものです。

虹北ミステリー商店街/幽霊ストーカー/江戸川乱歩賞と暗号/人消し城伝説(前編)/人消し城伝説(後編)/Good Night,And Have A Nice Dream

      

22.

●「都会のトム&ソーヤ1」● ★★☆

  

   
2003年10

講談社刊

(950円+税)

2012年09月
講談社文庫化

  
2003/12/14

 
amazon.co.jp

“トム&ソーヤ”と来れば、誰だって思い出すのはM・トウェイン「トム・ソーヤーの冒険」でしょう。
そう、本書はその冒険に負けず劣らない、現代の少年たちによる都会を舞台にした冒険物語なのです。

主人公は、内藤内人竜王創也という中学生2人。
内人がごく普通の中学生であるのに対し、創也のキャラクターが凄い。頭脳明晰、眉目秀麗、おまけに巨大企業・竜王グループの後継者。
とは言っても、そんなキャラクターは珍しくもなく、本書の魅力には繋がらない。本書の魅力は、実は内人の方にあるのです。おばあちゃんの知恵を受け継ぎ、手近にあるものを使って、次々と窮地を脱していきます。そんな適応力に富んでいる内人こそ、現代のトム・ソーヤーと言うにふさわしい。
 
知性派の創也と行動派の内人という組み合わせは、まさに絶妙のコンビ。伝説のゲームクリエイター・栗井栄太を探して、2人が下水道の迷路へ、TV局の生番組へと入り込んでいくストーリィは、スリルと緊迫感に充ちた、まさに冒険譚の面白さです。
こんな楽しい本、子供たちだけに読ませておくのは勿体無い。
でも、ひとこと言いたい。この2人、本当に中学生?

OPENING/ぼくたちの砦/休憩時間:竜王創也と砦に関する一考察/おうちにつくまでが遠足です/「視聴率」命!/ENDING

   

23.

●「ぼくと未来屋の夏」● 

  

   
2003年10

講談社刊

(2000円+税)

2010年07月
講談社ノベルス

  
2004/01/01

 
amazon.co.jp

“かつて子どもだったあなたと少年少女のための−ミステリーランド”シリーズ(講談社)の第2回配本作品。
書店の店頭でこの本を手にとってみたのが、はやみねさんとの出会い。その本書を漸く読むことが出来ました。

本書は、小学6年生である主人公・山村風太の、未来屋と知り合った風変わりな夏休みを描いた作品。
“未来屋”というからには、ちょっとSF要素のある、ファンタジー小説と思い楽しみにしていたのですが、その期待はやや的外れ。
未来屋といってもその実体は、観察力と推理力に秀でた人物、ということなのです。自称“未来屋”=猫柳健之介が、風太の家に居候してしまったことから、風太のちょっと変わった夏休みが始まります。
数々の謎について、風太が謎解きに挑みますが、大抵的外れ。そこを最終的に未来屋が解き明かすのですが、必ずしもすっきりとしない結末に、欲求不満が残ります。
また、猫柳のとらえどころのない人物像は夢水清志郎以上。
期待した割に物足りなかった一冊。

OPENING/未来屋とぼく/未来屋と神隠し/未来屋と肝だめし/未来屋と自由研究/未来屋と暗号/未来屋と大冒険/未来屋と夏の終わり/ENDING

  

24.

●「僕と先輩のマジカル・ライフ」● 

  

   
2003年12

角川書店刊

(1200円+税)

2006年12月
角川文庫化

  
2004/01/18

 

amazon.co.jp

天狗と宿題、幼なじみ」でデビューした井上快人と幼馴染・川村春奈のコンビが、大学生となって再登場した一冊。
はやみねさん自らあとがきで記しているとおり、貧乏な学生生活へのノスタルジーが、本作品の特徴です。

M大学生になったからには自立した生活をとばかりに、安下宿・今川寮に入寮した快人、相変わらず彼にぴったり寄り添う春奈、M大学8年生ともいい寮仲間に恐れられる先輩・長曽我部慎太郎という3人が、本書の主要な登場人物。
大学1年目の春夏秋冬を通す形での連作短篇集ですが、所々登場するキャンパス風景が懐かしく、楽しくもある。
ストーリィは、面妖な事件の数々を、3人が真相解明していくというもの。
主人公・快人が、信じ難い程の堅物・硬派。それにも拘らず快人から離れない春奈とのコンビがコミカルということなのかもしれませんが、う〜ん、頷けない。
そのうえ、頭が硬い筈の快人が事件の真相を合理的に解明していく辺り、飛躍した観があって納得し難いところあり。もっとも、必ずしも正鵠を射ている訳ではありませんが。
面妖な事件の数々も、蓋を開けてみればどうということない日常ミステリなのですが、それでは霊能力者という春奈の持味が充分発揮されているとは言い難い。
ちと散漫という印象に加え、物足りなさが残った作品。

OPENING/騒霊/地縛霊/河童/木霊/ENDING

  

●「天狗と宿題、幼なじみ」● 

  
 2002年08

角川スニーカー文庫刊

(648円+税)

 
2004/01/18

ミステリー・アンソロジー4「殺意の時間割」(角川スニーカー文庫)に収録された一篇。
小学生6年生の井上快人と、幼馴染で霊能力者である川村春奈の2人が活躍するミステリ。
天狗山に現れる子供の霊を成仏させるため、戦前の時代に子供たちの間で起こった天狗山の事件を、快人が解明するというストーリィ。
特にどうということもない小品ですが、井上快人と川村春奈のコンビ初登場というところがミソ。
僕と先輩のマジカル・ライフにおける大学生の2人と、雰囲気はまるで変わりません。

  

25.

●「怪盗クイーンと魔窟王の対決」● 

  

   
2004年05

青い鳥文庫刊

(670円+税)

 

2004/12/04

怪盗クイーン、パートナーのジョーカー、人工知能のRDという3人組が活躍する“怪盗クイーン”シリーズ・第3作目。

強運に恵まれて富を築き、香港島沖に四龍島城砦を構えて“魔窟王”と呼ばれる王嘉楽
その王の秘蔵する伝説の“半月石”奪取をめぐって、魔窟王配下のバラタナティアムの達人シャンティ、シャクティ姉妹、国際刑事警察機構の探偵卿ヴォルフと、クイーンおよびジョーカーが対決するストーリィ。

はやみねさんのシリーズには、“名探偵夢水清志郎事件ノート”をはじめ幾つかありますけれど、この“クイーン”シリーズは特に子供向けのドタバタ活劇という傾向が強い。
したがって、どうも読み終えた後の満足感というものがあまりありません。
絵空事のような超人的活躍、活劇を楽しんで終わり、というところでしょうか。

※アブナイ考古学者のパシフィスト、クンフー映画の主役を目指す変なイタリア人スケルツィ、四龍島の少年・小牙と、登場人物はかなり豊富で賑やか。その点でも児童向き。

    

26.

●「都会のトム&ソーヤ2−乱!RUN!ラン!−」● 

  

   
2004年07

講談社刊

(950円+税)

2012年09月
講談社文庫化

2004/11/14

amazon.co.jp

内藤内人竜王創也、中学生2人による都会派冒険物語シリーズ第2弾。
1作目に似て2部構成+1ショートストーリィ。そしてストーリィは、前作に引き続き伝説のゲームクリエイター・栗井栄太を探しとその対決。
前半は、栗井栄太を探して深夜の竜王デパートに潜入する内人と創也。後半は、“ゲームの館”に招待された2人と栗井栄太の宝探しゲームによる対決というストーリィです。

本シリーズの面白さは、ゲームオタク的なストーリィの中で、内人がおばあちゃんに教わったというサバイバル・テクニックが披露されるところにあるのですが、この2作目ではそれが物足りない。
所々で披露されるものの、1作目のような興奮させられるテクニックにはお目にかかれません。また、創也の強力ボディガード・二階堂卓也が影だけの登場に留まっていることも淋しい。
本シリーズはまだまだ続くようですので、次作に期待。

OPENING/鬼ごっこ Day and Night/箸休め:わたしを音楽堂へつれてって/ゲームの館/ENDING

  

27.

●「少年名探偵 虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」● 

  

   
2004年11

講談社刊

(940円+税)

 
2004/11/28

“虹北商店街”シリーズ、第4作目。
おっ、新刊!と喜んで買ったところ、何とコミック高校編の原作もの。したがって、新しいストーリィはなし。その点が物足りない。
まぁ、小説で読むのは漫画で読むのとは違った味わいがありますが、元々漫画の原作として書かれたものだけに、所々如何にも漫画的という部分があります。本巻における登場人物のキャラクターや、度々出てくるプラカード出しがそう。
ミステリ研究会部長の沢田京太郎、ミス研部員の面々、虹北堂の居候であるミリリットル真衛門、その妹の美絵留。皆、如何にも漫画的キャラクターです。

本巻で“虹北商店街”シリーズも終わりかと思ったところ、恭助がミリリットル家と知り合うフランスの古城事件が書かれるとのこと。最後となるその巻を楽しみにしていましょう。

ミステリーゲーム/幽霊ストーカー事件/トップシークレット/人消し村の人消し城/最後の挨拶

       

28.

●「笛吹き男とサクセス塾の秘密−名探偵夢水清志郎事件ノート−」● ★☆

 

   
2004年12

講談社刊

青い鳥文庫
(670円+税)

 

2005/02/20

“名探偵夢水清志郎事件ノート”シリーズの第10作。
あやかし修学旅行から久々の夢水清志郎シリーズですが、満足度からいうと、期待度が高かった所為かミステリとしてはちと物足りず。

「ハーメルンの笛吹き男」の物語から始まり、戦時中の日本軍にも少年兵たちが姿を消すと言う“笛吹き男”物語があった、というのがまずプロローグ。
その少年兵のリーダー的存在であった星野栄助の息子、星野栄太郎が経営するサクセス塾。他の塾に比べ生徒たちの成績が確実にアップしているという実績を誇って、近頃大評判。
そのサクセス塾に笛吹き男が現れ、生徒たちを“夢の国”にさらって行くという予告がなされたことから、上越警部らに頼まれ、清志郎、岩崎三姉妹レーチ、タフな編集者・伊藤真里がサクセス塾にもぐり込みます。清志郎は臨時講師(実態は巨大なネズミ、ゴキブリと化しますが)、三姉妹は3日間の冬季合宿に代わる代わる、伊藤は取材と称して。
事件とは直接関係ないのですが、サクセス塾に隠された「秘密」が上手い! すっかり盲点を衝かれた観があって、流石。
一方、ストーリィとしては元学校の先生だったはやみねさんらしく、現在の受験重視の教育への警鐘、その一方で子供自身への期待が描かれています。
サクセス塾で三姉妹が知り合う星野英雄、小川健太郎、黒姫こと小野田硝子という中学生3人、理科の佐々木先生、レーチの小学校時代の神谷先生という、生徒・先生像がなかなか魅力的。

     

29.

●「都会のトム&ソーヤ3−いつになったら作戦終了?−」● ★☆

  

   
2005年04

講談社刊

(950円+税)

 

2005/08/06

内藤内人竜王創也、中学生2人による都会派冒険物語シリーズ第3弾。
今回は2部構成+二階堂卓也が主人公となる1ショート+おまけ(3Dボーリング)、という構成。二階堂卓也の存在感も今回は充分あります。

前半は堀越美晴を映画のデートに誘うため、内人が創也に付き添われて下見にいく話。2人はデート中の子供2人に出会い、彼らを誘拐犯から守るため大活躍するというストーリィ。
後半は中学校の文化祭が舞台。文化祭に紛れ込んだ現金輸送車襲撃犯+犯人を逃亡させようとする強敵“頭脳集団”と2人が対決します。
※この新登場の頭脳集団、栗井栄太と並ぶ内人・創也コンビの強敵レギュラーになるらしい。
恒例のおばあちゃん直伝による内人のサバイバル技能、内人の突っ込みと「そこまでは考えていなかった」という創也のボケの面白さ。派手さはありませんが、キャラクターの魅力と掛け合いが面白いという楽しさは、本書でも健在です。
安定感ある都会派少年冒険シリーズとして、これからも当分3人の活躍が楽しめそうです。

OPENING・作戦開始/S計画/おまけ:ボウリングやっほ〜!/ミッション・イン・スクールフェスティバル/ENDING・作戦終了・・・してません

 

30.

●「オリエント急行とパンドラの匣」● ★☆
 −名探偵夢水清志郎&怪盗クイーンの華麗な冒険−

  

   
2005年07

青い鳥文庫刊

(700円+税)

 

2005/10/15

名探偵夢水清志郎怪盗クイーンがW登場するスペシャル篇。
クイーンが初登場した怪盗クイーンからの予告状以来の特別版です。
舞台も“夢水”シリーズとしては初めて日本を離れ、岩崎三姉妹も置き去りにして、イスタンブールからパリへ向かうオリエント急行という、国際色豊かな巻。
しかし、とかくこうしたスペシャル篇は踏み込み不足があって、ストーリィは物足りないものが多いのです。本書もその例外には非ず。

トルコの有力者で警察も手が出せないというジェラールジャンダン双子の兄妹は、犯罪組織「黒猫」を操り、博物館から“パンドラの匣”を盗み出します。
2人はオリエント急行でパンドラの匣を運び出そうとしているに違いないと、国際刑事警察機構の探偵卿マンダリンと地元警察の刑事セラップもオリエント急行に乗り込みます。
さらにその列車には、出奔したてのマンダリンの娘ボタン、海賊ビルの息子ジャックも乗り込んできて、さながら犯罪捜査+父娘問題という風向き。
ですから、クイーンと夢水の2人は上記ストーリィにわざわざ割り込んできた、と思われるのです。2人が絡んだそもそもの理由は、ジョーカーの元を家出したクイーンが、退屈しのぎに夢水まで巻き込んで怪盗騒ぎを引き起こしてやろうと目論んだためなのですから。

最後に謎を解き明かして存在感を示した清志郎に対して、怪盗クイーンの活躍はちと影が薄い。この勝負、夢水清志郎の勝ち。
そして今ひとつ、オリンエント急行の料理人グラハム=カーと大食漢・夢水の食をめぐる一騎打ちというサイド・ストーリィがある。こちらも結構楽しめます。
サスペンスあるいは謎解きより、個性的な人物が多数登場しているところが楽しい一冊。オリエント急行に夢を馳せながら、どうぞお楽しみください。

    

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