デュメイ&ピリスが弾く、ベートーヴェンのソナタ

2002年4月3日 サントリー
4月5日 王子ホール


(銀座はつばめグリルのハンブルグステーキを食らいつつ)

デデ: それぞれに単身の来日はありましたが、このコンビでの来日は4年ぶりってことになりますニャ

CoCo: この鉄板熱いのよぉ、ふ〜ふ〜。

デデ: その時の様子は、アーカイブの055番056番にありますので、興味ある方はご覧くださいニャー。

CoCo: このフォイルにくるんであって、中にビーフシチューがかかっているのが、んめぇ〜んだわさ。

デデ: あの時は、ジャンワンを加えたトリオの日もあって、なかなか燃焼度の高い演奏を繰り広げましたです。

ブチッケ: この付け合わせのジャガイモの皮がパリパリっとしてよろしゅうござんすなぁ。

デデ: ソロの日にはベートーヴェンの7番ソナタなんかも弾いて、ああ、そろそろ、ベートーヴェンに取りかかったのかな、なんて思いました。

ガンバ: このシチューのほぐほぐした肉がおいしいのよね。

デデ: でも圧倒的だったのはやっぱり、ツィガーヌだったでしょうか。

ガンバ: それにこのフランスパン。おいしいわよ。皮がパリパリっとして中がしっとり。さっき調理場の前を通ったときに、おいしそうなパンだニャーって思ったわけ。

デデ: え〜え、わたしゃご飯を注文しちゃいましたよ・・・違うって。そうじゃないの。デュメイの話をしてんでしょ。

ガンバ: まあいいじゃないの、んめえものはんめえってことでさぁ。

デデ: んもぉ。しまいニャ、ちゃぶ台ひっくり返すぞぉ〜い。

ブチッケ: まぁまぁまぁまぁ。そこは一つ私に免じて。今日は食の話から・・・ん、ちゃうか。いや、確か、ベートーヴェンも7〜8年前の来日の折に弾いていましたでげすニャ。

ガンバ: そうそう、このコンビでは確か初来日(?)だったか2回目だったかなぁ。メインのプロがブラームスのソナタ3曲で、その他に、渋谷公会堂でベートーヴェンのスプリングとクロイツェルを弾いたわよね。あの時の印象はよく覚えているわ。おっそろしくドライなホールで、音楽の全てが丸裸にされるような感じじゃなかったかなぁ。弾く方にとっては。だけど、まるで音の隙間を感じさせない、充実した演奏だったわよね。

CoCo: ドライというと、今日の王子ホールもまるで響きのないホールだから、ちょうど似たような条件かな。おととい(3日)のサントリーはそこそこの響きがあるけど、席によって条件がすごく違っちゃうから、ちょっと判断がむずかしいかな。

ブチッケ: そうですニャ。ただ、王子ホールはデュメイにはちょっと狭すぎて・・・

ガンバ: 頭を低くしないとステージドアをくぐれなかった。

ブチッケ: ちゃうでぇ。そうじゃなくって、デュメイの音楽には狭すぎて、耳が痛いほどに鳴っていましたニャ。

CoCo: そう、今日の楽器の鳴り具合はすごかったね。

デデ: さて、どうしてもあの渋谷公会堂での演奏との比較になってしまうんですが、あの時すでに、もうできあがっていたよね。これからレコーディングするから、そのリハーサルって感じとはほど遠い、白熱した演奏でした。そもそもこの二人、日によって演奏が異なるってことがほとんどないでしょ。

ガンバ: 音楽を研究し尽くして、楽譜の透かしまで頭に入っている感じよね。もう「これっきゃない」ってところまで突き詰めて、それを並はずれた表現力を使って「ど〜だっ」って客の前に出してくるわよね。

デデ: だから、あの渋谷での演奏と基本的には変わりはないんだけど、おとといのサントリーでの演奏は、ちょっと歯車がかみ合っていませんでしたニャー。デュメイとピリスとの間に微妙な温度差があって、今ひとつ乗り切れていない演奏だったですが、今日の演奏は、ちょっと違いました。

ブチッケ: はいな。3日は冒頭に弾かれたスプリングでは、明らかにデュメイのヴァイオリンが鳴っていませんでしたニャ。展開部の後半あたりからやっと調子を出してきた様子でした。

デデ: そう、だから、最初何でこんなにバランスが悪いんだろうなんて考えちゃったんだけど、それはそれで、ピリスのバランスの取り方の問題点がよく見えて、面白かったのは確かなんですが。それでも何とか立ち直って、第2楽章以降はなかなか頑張っていたようですニャ。

ガンバ: 3楽章のスケルツォ。あの何となくかみ合わない書法を、絶妙なバランス感覚で合わせていたよね。

デデ: 私は、やっぱり第2楽章の歌い回し。クロイツェルでもそうだけど、前にもましてフレーズのとらえ方が長くなったような気がしたニャ。あれはあれで、説得力はあるんだけど、最初はちょっと違和感があった。

CoCo: そうだよね。以前は「はらりと切って捨ててんげり」って感じで、スパッと切り捨ててから次のフレーズに入っていくことが多かったし、それがデュメイの魅力でもあったんだけど、今回はちょっと違ったね。フレーズの最後を盛り上げておいて、その勢いですっと次になだれ込むって感じかなぁ。

ブチッケ: どちらがいいという、比較の問題ではないけど、フレージングの変更にピリスがうまく乗り切れていなかったのは確かかなぁ。そこらへん、ちょっと二人の息が合わないのが気がかりでした。

ガンバ: サントリーでは5番「春」、4番、9番「クロイツェル」、王子では4番の代わりに1番を演奏したわけだけど、圧巻はやっぱりクロイツェルだったわね。

デデ: ですね。冒頭のソロから堂々とした音楽を感じさせる作り。今日はさりげなく弾きはじめたようでいて、ホール中に音を充満させていました。ピリスの主題呈示も堂に入ったものでした。で、問題のフレージングなんだけど、ここの第1主題から第2主題へのブリッジの部分だよね。切れ目を付けずに、すっと優しい音楽が入り込んでくる。

CoCo: そこなのよぉ。ああいう解釈もありかなって思ったわけ。でも、それなりに面白かったけどね。第2楽章の主題の歌い回しも優雅でしたニャー。

デデ: デュメイの美音が光りました。第1変奏で、ピアノにちょこちょこと、合いの手を入れていく小粋な弾き方をして、ヴァイオリンのオブリガートが付いたピアノソナタという曲の意味を実感させてくれるかと思えば、第2変奏では、ヴァイオリンの名人芸を披露。ともすると、美音に寄っかかって表現を忘れてしまう演奏家が多い昨今ですが、この二人は徹底して語ってしまうんですニャー。楽器の表現の可能性を追求しているというのか。表現せざるを得ない衝動に駆られているんでしょうニャー。

ガンバ: あたしゃねぇ、やっぱり第3楽章だね。あの付点の付いたたたみかけるようなリズム。ここらへんまでくると、ピリスも呼吸を完全に把握して、スリリングな演奏を展開してたんじゃない。

デデ: そうですニャー。サントリーではイマイチ乗りきれなかったようですが、今日は呼吸がぴったりでした。エンディングのところで、2回ほどrit.があるでしょ。1回目はピアノがアクセントを付けた音を弾いて、それをきっかけに走り出す。2回目はヴァイオリンにアクセントがあって、それをきっかけに走り出す。あそこの丁々発止にはぐっと来ましたニャー。もともと第3楽章の付点リズムって、ちょっと不思議だよね。確かにアウフタクトで始まっているんだけど、別にシンコペーションというわけじゃない。フレーズの最後にアクセントがあるんで、ちょっと裏を取られた気がするんだよね。

ブチッケ: フレーズの最後なのか、それとも頭なのかっていうのは、解釈の余地がありますが、そこのアクセントがベートーヴェンにしちゃ小粋なんでげすニャー。あたしゃ、どうしてもここはヒロ・クロサキの名演を思い出してしまうんですニャ(アーカイブ061番参照)。もちろん、モダン楽器とオリジナル楽器という、まったく別物の楽器で弾いているわけですから、比較のしようもないんですが。ああいった、速い楽章は特に、古楽器のほうが表現力が格段に豊かでしょ。

ガンバ: そりゃそうね。表現力や音色のパレットということを言い出したら、そりゃあ古楽器には絶対にかなわないわね。ピアノの音色の美しさも段違いだし。

デデ: をっとぉ。ちょっと話がずれそうなんで、最後に、1番、4番のソナタもなかなか聴き応えある演奏でした。特に今日の1番は若書きの作品ですが、デュメイの颯爽とした歌い回し、ピリスの歯切れのいいリズムが冴え渡っておりましたニャ (=^^=)ノ

とにかくこの二人、楽器を使って徹底的に語ってしまう、表現し尽くしてしまう、そのすごさを実感させてくれる極上のコンビでありますニャ。


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