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パレルモ観光と小旅行 <Normal目次へ>
サン・ジョバンニ・デリ・エレミティ教会 <S.Giovanni degli Eremiti>
この教会が建てられたのは、ルッジェーロ2世時代の頃。
この教会は、ノルマン宮の裏手の方、車道を渡った向こう側にある。その一本の道が難関であった。それほど広い道ではないのだけれど、これを渡るのに一苦労させられる。
絶え間なく車が両方から走ってきて、そのスピードも速い。教会に向かって右の方は、手前にカーブがあるため、見通しが悪い。このカーブから車がどんどん飛び出して来る感じなのである。信号の付いた横断歩道があるわけでなし。通行が途切れるのを待っていると、いつまで経っても道が渡れない。
こういう場合、南イタリア式の交通ルールによれば、断固とした態度で歩き始め、決して立ち止まることなく渡り切るのが横断の唯一の方法ということになる。実際、迫り来る猛スピードの車なんかにはおかまいなく、颯爽と道を斜め横断して行く人がいた。なるほど、車のドライバーだって事故は避けたい。こちらが歩いて行けば止まってくれるか、よけてくれるものなのだ。「車は急に止まれない」とは言うものの、それなりに急停車はできる。車の制動性能の限界を見切ったような、地元イタリア人歩行者の横断は見事と言うしかない。
私も、パレルモ滞在中一度だけ、地元の人の真似をしてみたことがあった。けれど、道の半分あたりで挫折。こちらが道の真ん中まで来ているというのに、全くスピード落とす気配のない車が気になり、足を止めてしまったのだ。車の方を見ると、ドライバーと目が合った。すると、そのドライバーが首を右にサッと振った。そのまま前に歩いて行けという合図らしい。恐ろしいと思いながらも歩き始めた。結局、その車はもとのスピードのまま、私の背中の方を通り過ぎて行った。簡単に真似できるもんじゃない。
どうやら、たいていのドライバーは、歩行者の動きを予測して、ぎりぎりぶつからないと踏んだらピードを落とすようなことはしないらしい。
何とか車の途切れるのを待ち、ようやく入り口の管理事務所に辿り着く。
事務所の横の階段を登って行ったところに、教会の建物がある。
中にはほとんど何もなく、石を積んだ壁がほとんど裸になっていた。見上げると、赤い丸屋根の内側の石組みを観ることができる。
建物の外、中庭の回廊は、予想していたよりは小規模なものだった。周囲には草木が生えていて、雑然とした雰囲気がある。普通の教会でこの種の回廊に出くわすと、整然とした雰囲気があって緊張感を感じるのだけれど、ここにはそういうものがない。和やかな印象のある回廊だった。
そんな雰囲気のせいなのか、ここでかなり和んじゃった人たちがいた。
ドイツ語圏の人たちと思われる団体旅行客が、回廊の内側にある樹木の下に集まっていた。何をしているのかと思いきや、この人たち、みんなで柑橘系の果実をむしり取って食べていたのである。キンカンと温州みかんの中間くらいの大きさの小さな実だった。たぶん思いっきり酸っぱいだろうと思われる橙色の実を、うまそうに食べている。たくさんの実をビニール袋に詰めている人もいた。
係員の人がやってきて”No!”と注意すると、ほとんどの人たちが散らばっていった。けれど、一人の大柄なオバサンだけが、ムシャムシャと実を食べ続けていた。係員の存在を無視する態度である。そこで、係員の人が大声でもう一度”No!”と言った。するとそのオバサン、何と係員の方を凄い形相で睨み付けた。顔を係員の方に向けながら、背中の方に手を伸ばして実をむしり、それを皮付きのまま次々と口に運んでいる。口からは果汁がしたたり落ちていた。まるで、教会の廃墟に現れたバンパイア。ちょっと背筋が寒くなる光景であった。
みなさん、旅先の慣れない食事でビタミンが不足してたんですかね…。でも、果物はお店で買おうよね。
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