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パレルモ観光と小旅行 <Normal目次へ>
モンレアーレ <Monreale>
この大聖堂の目玉は例によって、豪華な金色のモザイク画。そして、美しい回廊…。
ということになるのだが、私は聖堂の外観を覆う文様に心惹かれた。
同じ模様の幾何学的な繰り返しでしかないのだけれど、全体としてみると、まるで動植物のような印象を受ける。ちゃんと真っ直ぐに建っている聖堂が、どういうわけか、うねるように曲線を描いて空に伸びているような錯覚を覚える。
昔、バルセロナで、ガウディが設計した建築をいくつも観てきたことがあるが、それと共通するものがあるような気がした。建物が生物的なのだ。ガウディの方は自然の造形を意識的に取り入れ、曲線を多用したけれど、一方こちらは、幾何学模様の連続で表現されている。ガウディを天才と呼ぶなら、この大聖堂を設計した人は何者?
さて、この大聖堂、建物の上の方に登ることができる。
登ってみると、単なる展望台があるというわけではなくて、細長い通路が続いている感じ。歩きながら、様々な景色を眺めることができた。建物の隣の回廊の全体を見下ろすことができるし、遠くパレルモの街も見える。
途中で、荘厳な聖堂には似つかわしくない美しい色タイルを見つけた。
通路を整備する過程で新しく貼られたものなのかも知れないが、聖堂にこんなものを貼っちゃうあたりがシチリアらしい。こういう写真を撮って帰って下さい、と言わんばかりの演出である。
帰りのバスに乗り込んで出発時間を待っていると、大聖堂の中でみかけた日本人のおばさん集団が乗り込んできた。5、5人のメンバーで、”このバスでいいのかしら”とバスを出たり入ったりしていた。
ようやく行き先を確認して落ち着くと、このおばさんたち、どういうわけかバスの座席に座っていた地元の女子学生らしき若い女の子に目をつける。彼女の方にみんなで目を向けて、”かわいいわね”としきりにおっしゃる。私にはそうは思えなかったのだけれど…
まあ、日本語が通じるわけじゃなし。女の子本人も、自分が大々的に話題になっていることには気が付かない様子だった。
ところが、一人のおばさんが「プレゼント」とか言ってこの女の子にキャンディーを渡し、それからおばさんたちの途方もない英会話が始まってしまう。"Where do you live?"とか、"Are you a student?"なんて他愛のない会話が続いていたうちは良かったが…。「You are beautiful …じゃなくて、かわいいって何ていうんだっけ?」「prettyって言うのよ」「そうそう、You are very pretty!」
おう、何だか凄い会話になってきたぞ。私もおばさんたちからキャンディーを一つもらって、おしゃべりの渦に巻き込まれる。
このおばさんたちは、同じツアーに参加してシチリアを一周しているとのこと。パレルモ滞在中のフリーの時間を利用して、モンレアーレまでやってきたらしい。
それにしても、極端に少ないボキャブラリーで長時間の英会話を成立させてしまう彼女たちの積極性には参った。
私は、バスを途中で降りてこの集団と別れたのだが、その夜に偶然再会することになった。
レストランで夕食を食べていたら、目の前にこのおばさんたちが現れたのだった。店の奥の方から出てきて、ビュッフェ方式の前菜をお皿に取りにきたのだ。
私の方は、もうとっくに前菜が終わって頃だった。私が出入口近くの席に着いてから大分時間が経っていた。だから彼女たちは、私が店に入るかなり前から、奥の方の席に着いていたことになる。食べたいメニューに辿り着くまで、しぶとく時間をかけていたことが窺われるのである。おそらくは、ウェイトレスとの間で、延々とあの英会話をやっていたに違いない。恐るべし。
彼女たちの間には、何事も楽しもうという雰囲気がみなぎっていた。その心意気と行動力に感服させられた一日だった。
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