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パレルモ観光と小旅行 <Normal目次へ>
チェファルー <Cefalu>
パレルモから東へ、列車で1時間ほどの海辺の街。ルッジェーロ2世時代に建造された豪華絢爛たる大聖堂で有名な街だ。
映画のロケ地は別として、街の名所はと言えば、巨大な大聖堂のみの一点豪華主義である。
しかし、なかなか小技が利いているというか、ちょっと面白い観光スポットが街に点在していて、散策するのが楽しいところだった。
例えば、昔の洗濯場の跡。石畳の床に、いくつもの真四角の穴が開いていて、そこに水が湧きだしている。自然の湧き水を利用した洗濯場なのだった。それぞれの水場には、洗濯板を置いたりするのに適当な斜めの石板が設置され、使い勝手もよさそうだった。もしかすると、洗濯板なしで、この石板を直接利用して洗濯物をごしごしやっていたのかも知れない。
何気ない日常の生活の場が、こうして観光スポットになっているのがシチリアらしい気がする。
街を歩いていたら、”中に美しいタイルがあります”とのパネルがあった。何の変哲もない民家のようだったが、試しに小さな門をくぐってみると、見事なタイル張りの壁があった。シチリアならではの鮮やかな色彩。色の取り合わせも絶妙で、思わず息を呑むような美しさだった。
気が付かずに通り過ぎてしまう人が多いようだったが、一見の価値のあるタイルである。
中には、無理やり観光スポットにしたような、怪しい場所もあった。
街並みの中に”漁師の門”と呼ばれている妙なところがある。”門”といっても、大きな建物の一階部分で、部屋と呼んだ方が適切かも知れない。単に"漁師の門"という標識が立っているだけで、この場所にどんな意味があるのかは全く不明。中は薄暗く、雑然と物が散らばっている。なんだか汚い。とりあえず、壁に魚網なんかがぶら下がっていて、なるほど漁師関係の何かであることだけはわかった。
そして、”漁師”(?)と思われる一人のおじさんがいた。粗末なパイプ椅子に座って、ぼんやりと海を見ながらタバコを燻らせている。背中には何とも言えない虚脱感が漂っていて、そのうらぶれた”漁師の門”の雰囲気にぴったりの人物であった。
そんな状態なので、中を覗いただけですぐに立ち去る人ばかりだった。とは言え、こうして話の種にはなるのだから存在価値は大いにあるというもの。
ほかにも、ノルマン期の宮殿跡であるイスラム風の建築物にも出会えたし、散策しながらいろんなものが発見できる街だった。
大聖堂以外に大した見所はないのだけれど、何となく楽しめてしまう。そんなユニークな街だった。
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