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 パレルモ観光と小旅行 <Normal目次へ>

 ノルマン宮殿   <Palazzo dei Noumanni>


シチリア文学レリーフ 建物の正面の壁には、イタリア文学発祥を記念するレリーフがある。
真ん中の人物はフェデリーコ2世。自ら口語体で詩を詠んだこのシチリア王の周囲に文化人が集まり、最初のイタリア文学が生まれた。
このシチリア王国の王宮は、当時の先進文化の中心地でもあった。スペイン支配下にあった頃は副王の宮殿でとして使われ、ゲーテ大先生もここに食事に招かれた。今はシチリア州議会堂となっている。

私は、このレリーフがある建物正面から建物の中に入った。
ところが、様子がおかしい。職員たちが忙しそうに廊下を歩いているだけ。州議会堂として使われていることは知っていたが、それにしても観光客らしき姿は全く見あたらない。見学できるような雰囲気ではないのだった。ガラスの囲いのある受付の人に中を見たいと言ったら、建物の後ろに廻れと言われる。
州議会堂の真っ正面から攻めたのがいけなかった。建物をいったん出て、建物にくっついている大きな門、ヌオーヴァ門をくぐって建物の裏手に廻る。

Porta Nuova ところでこのヌオーヴァ門、4人の男の彫像があるのだけれど、よく見ると、そのうち2人は途中から両腕がない。
腕の部分が後で壊れたわけじゃなくて、最初から両腕を切り落とされた人物を描いているらしいのだ。下から見上げると、腕の切り口のところがきちんと彫刻されていることがわかる。
こういうグロテスクな、しかも巨大な彫像を、街の大通りに設える西洋人の感覚というのが未だによくわからない。ターバンを巻いたその姿は、おそらくイスラム教徒を表しているのだろう。腕を切り落とされた異教徒の姿は、キリスト教世界の勝利の証なのか。
この門の建造時期は16世紀。かつて民族共存国家だったシチリア王国の面影は全くない。

さて、建物の裏手の入り口には行列ができていた。
その一番後ろに並んだものの、全く前進する気配なし。ある程度の人数をまとめて中に入れるように調整しているらしい。
この行列を相手にする露天商が2件くらい出ていて、列に並びながら買い物をする人もいた。私の前の一団はアメリカン人の団体様。その中のおばさん二人くらいが、露天商のおじさんを相手に、この待ち時間を楽しんでいた。英語とイタリア語を交ぜながら、「あっちの方を見せて」とか言って、いろんな商品を手にとって眺め、二人で商品を論評し合う。でも結局は何も買わない。
大袈裟な身振りと言葉で観光客を幻惑するイタリア商人を、逆に手玉に取っているのである。真剣に買おうかどうか迷ったけれど、ごめんなさいねといった表情で、ニッコリお断り。見事であった。

ようやく建物の中に入っても、お目当てのパラティーナ礼拝堂の手前で大分待たされた。私はアメリカ人の団体の一番後ろに付いていたわけだが、彼らを案内するガイドさんの説明を聞きながら、2階の廊下で順番が来るのを待った。
すると、そのガイドさん、気をきかせてくれたのか、料金を払っていない人に説明を聞かせるのがイヤだったのか、私を団体の前に進ませてくれた。
前に出たら、あっさりとパラティーナ礼拝堂に入ることができた。

パラティーナ礼拝堂内部 360度、金ぴかモザイクの礼拝堂。自然光はあまり入って来ない。控えめの照明が神秘的な雰囲気を醸し出す。
複雑に入り組んだ柱や壁に、聖書を題材にした絵画や人物像が、隙間がないほどにたくさん描かれている。
この無数の絵画を写真に収めようと、次々とカメラのシャッターを切っている人がいた。ロープから身を乗り出すようにしながら、レンズのズームを操作して狙いを定める。数が多いだけに、一つ一つ追っていったら大変な作業になるはず。彼の表情は真剣そのものだった。
休みなく撮影を続ける彼のストロボが、天井の奥まった部分を照らし出していた。暗闇の中に隠れていた鮮やかな絵画が、一瞬だけ浮かび上がる。
そうしてみると、隅々までまったく手抜きなしに絵画が描かれていることがわかる。昔の人は、小さな窓からわずかに入ってくる自然光や蝋燭を頼りにしていたはず。天井の隅の方に描かれた絵画なんて見えなかったのではなかろうか。それでもちゃんと描いておいた贅沢さ。

列に並んで待つ価値ありの黄金空間。そういえば、ここは入場料無料だ!


Cattedrale P.Norman S.Giovanni d.E. Monreale Erice Cefalu