updated Oct.11 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3255. 社会保険加入は働いてから2ヵ月後からと言われたましたが、それでいいのでしょうか?
 登録型で派遣されています。長期の派遣を依頼されましたが、契約は最初は2ヵ月です。試用期間の意味があるということで、社会保険(健康保険と年金)の加入は、それが終わってからと言われました。
 友人は、正社員ですが、3ヵ月の試用期間のときに社会保険に加入できていました。派遣労働者は、法律で2ヵ月待たないと社会保険に加入できないことになっているのでしょうか? それに、雇用保険は4ヵ月後からと言われています。社会保険と雇用保険で違いがあるのはどうしてですか?

 【結論】
 派遣会社が労働者の社会保険や労働保険の適用に消極的で、本人の意思にまかせていたことが誤りであったことが明らかになりました。1997年になって会計検査院からの指摘で法の不適用が大きな問題になり、改善の指導が進められています。

 現段階で問題になっているのは、派遣就労の最初からではなく、2ヵ月や4ヵ月を経過して初めて、社会保険が適用されたり、雇用保険が適用される等の扱いがあることです。これも、適用に消極的な派遣会社の誤った理解(曲解)に基づく誤った措置です。本来、就労の最初の日から、保険適用をするべきなのです。

 健康保険と厚生年金保険は、厚生省・都道府県社会保険事務所が担当行政機関で、一般に「社会保険」と呼ばれています。
 これに対して、雇用保険は、労働省・公共職業安定所が担当行政機関で、事業主が保険料を払う労災保険と合わせて「労働保険」と呼ばれます。

 健康保険と厚生年金保険は、適用事業所に使用される労働者に強制適用されるのが原則です。

 健康保険法第13条(強制被保険者)

  左ノ各号ノ一ニ該当スル事業所ニ使用セラルル者ハ健康保険ノ被保険者トス
 一 左ニ掲グル事業ノ事業所ニシテ常時五人以上ノ従業員ヲ使用スルモノ
(イ) 物ノ製造、加工、選別、包装、修理又ハ解体ノ事業
(ロ) 鉱物ノ採掘又ハ採取ノ事業
(ハ) 電気又ハ動力ノ発生、伝導又ハ供給ノ事業
(ニ) 貨物又ハ旅客ノ運送ノ事業
(ホ) 貨物積卸ノ事業
(ヘ) 物ノ販売又ハ配給ノ事業
(ト) 金融又ハ保険ノ事業
(チ) 物ノ保管又ハ賃貸ノ事業
(リ) 媒介周旋ノ事業
(ヌ) 集金、案内又ハ広告ノ事業
(ル) 焼却、清掃又ハ屠殺ノ事業
(ヲ) 土木、建築其ノ他工作物ノ建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又ハ其ノ準備ノ事業
(ワ) 教育、研究又ハ調査ノ事業
(カ) 疾病ノ治療、助産其ノ他医療ノ事業
(ヨ) 通信又ハ報道ノ事業
(タ) 社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)ニ定ムル社会福祉事業及更生保護事業法(平成七年法律第八十六号)ニ定ムル更生保護事業
 二 前号ニ掲グルモノノ外国又ハ法人ノ事業所ニシテ常時従業員ヲ使用スルモノ


 適用除外されるのは、2ヵ月までの契約期間の労働者、通常の労働者の労働時間の4分の3以下の労働時間の労働者など、特別な場合に限られます。

 2ヵ月までの契約期間の労働者でも、それを超えて働き続けるときには、健康保険に加入することが必要となります。厚生年金保険もほぼ同様な要件を定めていますし、担当の行政機関は都道府県の社会保険事務所ということになります。

 健康保険法法第13条の2(適用除外)

 前条ノ規定ニ拘ラズ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ健康保険ノ被保険者トセズ
 一 船員保険ノ被保険者但シ船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第十九条ノ三ノ規定ニ依ル被保険者ヲ除ク
 二 臨時ニ使用セラルル者ニシテ左ニ掲グルモノ
  但シ(イ)ニ掲グル者ニシテ所定ノ期間ヲ超エ引続キ使用セラルルニ至リタルトキ又ハ(ロ)ニ掲グル者ニシテ一月ヲ超エ引続キ使用セラルルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
   (イ) 二月以内ノ期間ヲ定メテ使用セラルル者
   (ロ) 日日雇入レラルル者
 三 季節的業務ニ使用セラルル者但シ継続シテ四月ヲ超エ使用セラルベキ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
 四 臨時的事業ノ事業所ニ使用セラルル者但シ継続シテ六月ヲ超エ使用セラルベキ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
 五 事業所ノ所在地ノ一定セザル事業ニ使用セラルル者
 六 国民健康保険組合ノ事業所ニ使用セラルルモノ


 厚生年金保険法も、健康保険法とほぼ同様な規定になっています。
 とくに、ご相談の場合のように、2ヵ月以上の派遣就労を前提にしている場合には、就労の最初の日から当然に社会保険加入の要件を満たすことになります。
 雇用保険については、4ヵ月までの期間の季節的労働者については適用除外になっていますが、派遣労働者の場合には季節的労働者とは区別されています。4ヵ月を超えてからの加入という扱いは誤ったものです。長期の就労を前提にしていますので、当然に就労の最初の日から加入することになります。

 昨年来、派遣労働者の社会保険未加入が大きな問題になりました。

 派遣会社が、勝手な法律解釈をして、社会保険(健康保険・厚生年金保険)加入が強制的なものと考えずに、派遣労働者の選択にまかせるという間違った扱いをしてきたからです。会計検査院や行政監察庁からの指摘があり、現在、派遣労働者の社会保険加入が進められています。

 こうした派遣労働者の社会保険未加入が生じた原因の一つに制度の欠陥があります。
 それは、一定の就労などの要件があれば強制加入しなければならないのに、その届出が、事業主にまかされていることです。
 もちろん、届出をしなかったときには、罰則の適用もありますし、2年間であれば、遡っての保険料徴収もできますし、給付についても受けることができます。しかし、その手続をとることが必要です。

 労働者派遣法が施行されて12年になりますが、こうした届出を監視し、保険料を徴収する行政責任がある厚生省(社会保険事務所。雇用保険の場合は労働省系列の公共職業安定所)が、行政の規制緩和の動きも背景にあったために、きわめて不熱心であったのです。そのため、派遣会社が、届出をしなくても見逃されてきましたし、現在も見逃され続けています。

 健康保険法の被保険者の資格は、このように事業主からの届出の手続によりますが、労働者(被保険者)も、資格の取得や喪失に関して、確認を請求することができることになっています。
 健康保険法第21条ノ2(被保険者資格の得喪)

 被保険者ノ資格ノ取得及喪失ハ保険者ノ確認ニ依リ其ノ効力ヲ生ズ但シ第二十条ノ規定ニ依ル被保険者ノ資格ノ取得並ニ第十九条及前条ノ規定ニ依ル被保険者ノ資格ノ喪失ハ此ノ限ニ在ラズ
 2 被保険者又ハ被保険者タリシ者ハ何時タリトモ前項ノ規定ニ依ル確認ヲ請求スルコトヲ得
 3 保険者ハ前項ノ規定ニ依ル請求アリタル場合ニ於テ其ノ請求ニ係ル事実ナシト認ムルトキハ其ノ請求ヲ却下スベシ
 4 第一項ノ確認ハ第八条ノ規定ニ依ル報告若ハ第二項ノ規定ニ依ル請求ニ依リ又ハ職権ヲ以テ之ヲ行フモノトス


 派遣会社が届け出をしていなかったり、届け出が誤っている場合には、この確認の請求によって、被保険者の資格を確定することができますし、必要となります。

 登録型派遣労働者の場合、派遣就労をしている間は、健康保険・厚生年金保険の被保険者の資格があり、派遣就労を終了したときには、健康保険・厚生年金保険の被保険者資格がなくなり、国民健康保険・国民年金の被保険者ということになります。

 派遣労働者のなかには、面倒な手続を避けるために、健康保険にも国民健康保険の両方に加入しているという方もおられるようです。これでは、派遣元の違法な扱いや制度の欠陥が労働者の犠牲と負担によって処理されていることになってしまい、根本的な解決から離れてしまします。
 理屈のうえでは、就労開始の時点にさかのぼっての清算が必要です。
 しかし、実際には労働者が加入したいと問題を提起することになりますが、会社の協力が必要であるために、それが大きな壁になって改善しにくいのが現実です。

 幸い、会計検査院の指摘があって、社会保険事務所や公共職業安定所も派遣会社の労務管理の是正を開始しています。行政機関をうまく活用しながら、是正をはかることが必要だと思います。

 できれば、健康保険や厚生年金保険に長く継続加入できるように、加入手続きなどの制度的な改善が必要になっています。

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