updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3262. 社会保険(健康保険・厚生年金)に入りたくないが?
 社会保険(健康保険・厚生年金保険)加入をめぐる相談が増えています。

 派遣会社は、社会保険加入を当事者の意思で選択できるかのように説明してきたようです。しかし、これは大きな誤りです。派遣会社の責任はきわめて重大です。
 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入は、原則として、当事者の意思による選択を許していません。健康に自信のない人が加入し、健康に自信のある人が加入しなければ、支出ばかりふえて健康保険は財政的にすぐ破綻します。こうした、いわゆる「逆選択」を防ぐために、社会保険では、当事者の意思による加入・脱退を原則として認めず、当事者の意思に関係のない事実(就労など)によって加入を強制しているのです。
 こうした強制加入が原則であるのに、派遣会社の多くは、時給(賃金)を高く見せるために、社会保険の加入を派遣労働者が自由に選択できるように取扱ってきました。これは、本来であれば、社会保険不加入は、罰則の適用もあるほどに重大な法違反です。
 派遣会社の責任は、この点でも、きわめて重大です。

 とくに、1996年に労働者派遣法改正の際に、派遣労働者が社会保険に加入していないことが大きな問題として取上げられました。その結果、法改正にともない、つぎのような指針が労働省から通達されました。
 派遣110番のHPに全文を掲載していますので、参考までにご覧下さい。
 この指針は、労働者派遣事業者であれば、誰もが熟知しているはずです。
 「法律の不知」を理由にすることはできません。派遣会社の社会保険不加入の取扱いは、この点でも悪質と考えられます。

 派遣元事業主及び派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成8年労働省告示第102号)
   第2 派遣元事業主が講ずべき措置
    4 労働・社会保険の適用の促進
 派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の就業の状況等を踏まえ、労働・社会保険の適用手続を適切に進めること。

 これまで、派遣労働者、とくに登録型派遣労働者の多くが、社会保険の加入をしていなかったことから、これを改めることになったということです。

 派遣業界の雑誌『月刊人材派遣』は、この問題で業界のなかで大きな論議があることを伝えています。
 派遣業界が一人前になる(派遣労働者が一人前の待遇を受けるようにする)べきであるという点から社会保険加入の推進論に対して、加入に消極的な現実論が対立しているようです。

次の記事は、こうした経過と当事者の立場を示しています。
 1997/06/20 ◇人材派遣業界を一斉検査、社会保険未加入で会計検査院◇朝日新聞ニュース速報

 会計検査院が厚生年金、健康保険の社会保険の未加入問題で、人材派遣業界を一斉に実地検査していることが明らかになった。二カ月を超える雇用契約の場合、強制加入が義務づけられている社会保険に、派遣労働者の過半が加入していないとみられるためだ。会計検査院は今秋までに、保険料の追徴を社会保険庁に求めるとみられる。追徴総額は数百億円にのぼると派遣業界は予測している。
 これに対し、派遣業界最大の団体、日本人材派遣協会は十九日、(1)就労期間が一年未満の派遣労働者には社会保険の適用を除外してほしい(2)過去にさかのぼって保険料を徴収しないでほしい、など社会保険の弾力適用を骨子にした要望書を社会保険庁長官に提出した。しかし、同庁は「今回の検査と保険制度の見直しとは切り離して考えている」という姿勢だ。
 社会保険料は、労働者の標準月額報酬の約二五%で、労働者と会社側が折半で負担する。ところが、人材協が昨年十月、九十六社を対象にした調査によると、保険加入者の割合は四四・七%にとどまっている。
 加入率が低い理由として(1)派遣は「短期・断続型」の新しい雇用形態で、常用雇用を前提とした社会保険制度になじみにくい(2)年金の場合、給付は二、三十年先になり、臨時的な雇用の派遣労働者自身が入りたがらない(3)会社員の配偶者の場合、社会保険に入らなくても支障をきたさないケースが多い、などを挙げる。
 しかし、人材派遣をめぐるトラブルの電話相談を続けている派遣労働ネットワークは「保険料負担を嫌う派遣会社側が加入を拒否しているケースも少なくない」と指摘する。

>どうしても加入しなければならないのでしょうか?  問題が判りにくいかもしれませんが、次の表のように整理できると思います。。

〈社会保険加入と給付〉

 派遣労働者

 本人が加入

 派遣労働者が

 国民健康保険

 国民年金に加入

 夫(健康保険加入)

 の被扶養者

 健保保険料  労使折半負担  本人が全額負担  夫が全額負担
 健保給付

 

 

 

 

 本人8割給付

 

 傷病手当金あり

 (休業保障)

 7割給付

 

 傷病手当金なし

 

 

 家族給付7割給付

 

 傷病手当金なし

 

 年金保険料

 

 労使折半負担

 

 

 本人が全額負担

 

 

 夫が全額負担

 (第3号被保険者)

 年金給付

 

 

 

 基礎年金+

 厚生年金

 

 

 基礎年金のみ

 

 

 

 基礎年金のみ

 

 

 

 (1)まず夫の社会保険の被扶養者でいれば「支障がないのか」という点ですが表のように、保険料だけで考えればそうかもしれませんが、給付を考えれば、健康保険や厚生年金保険のほうが絶対的に有利です。  (2)また、結婚されている方は夫の被扶養者になれますが、そうでない方も少なくありません。そうであれば、国民健康保険や国民年金加入ということになり、保険料の負担はあるのに、給付は少ないという問題があります。  この方にとっては、派遣労働者として社会保険に加入したいという切実な思いと必要があります。  (3)同じように働いているのに、こうした格差が生ずることについての不公平感が一つの背景にあります。  (4)さらに、被扶養者の優遇そのものをなくそうとする社会保険制度全体の見直しの動きもあると思います。国民年金の第3号被保険者の制度そのものに対する批判が、女性労働者のなかでも強まっています。  (5)一見、有利に思えますが、第3号被保険者(サラリーマンの妻)は、基礎年金しから保障されません。2階部分の厚生年金がなければ、年金額として独立して生計を維持できないのが実情だからです。  派遣ネットワークとしても社会保険加入を推進する考え方ですし、わたしたちの派遣110番も、そのほうが、派遣労働者全体にとってはよいことだと考えています。たしかに「国の決めたこと」と言えますが、むしろ、働く者には等しく有利な社会保険を適用してほしいというのは、私たちを含めての要望です。


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