updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3132.  9月で契約が終了するので、3日残っていた有給休暇を9月に利用したところ給与明細には有給休暇扱いがされず減給されていました。派遣会社に問い合わせたら、1カ月に最高3日以上の休みは認めない、1年のうち前半6カ月5日、後半に5日有給休暇をつかうようにお願いしている筈、あなたの場合すでに先月、先々月に休みをとっているので有給休暇としては認められない。という返事でした。実は、6月にも有給休暇を連続で5日とろうとしたところ認められず2日減給されていました。
 (1)明らかな労働基準法違反

 年次有給休暇を1年の前半に5日、後半に5日、毎月は、3日が限度という限定を一律に加えることは、こうした労働基準法の規定に明らかに違反しています。

 年次有給休暇の日数は、9月の段階で3日残っているとすれば、それを利用することは、労働者の当然の権利です。(労働基準法第38条)
 使用者(派遣元)は、有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない、ということが原則です。

 年次有給休暇は、できるだけまとめて取得することが、労働基準法の規定の趣旨です。できれば、労働週(5日)単位に取得することが望ましいわけです。したがって、一律に、月3日までという限定は、労働基準法に明らかに違反しています。

(2)使用者(派遣元)の時季変更権は認められないか?

 ただし、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」となっています。(同第38条4項)

 使用者(派遣元)は、労働者の請求した時季が「事業の正常な運営を妨げる場合」に限って、その変更することができるわけです。

 この使用者の「時季変更権」は、「事業の正常な運営を妨げる場合」にしか認められません。
 それでは、何が「事業の正常な運営」にあたるかですが、業務の繁閑、業務の回復性の程度、代替者補充の難易、休暇日数、請求人員等を総合的に判断する
 つまり、仕事がとくに忙しいときで、その休暇のときに、当該の労働者でしか仕事にならないし、代わりの人を見つけるのが困難で、休暇が長く(例:数週間)、しかも、職場のかなりの人数が一度に請求したような場合には、時季変更権は認められるでしょう。
 つまり、職場で何人もの労働者が一度に長期の休暇を取得すると、事業の正常な運営を妨げる場合があります。そこで、そうした場合には、ローテーションなどの配慮で、休暇の取得を円滑にできるように、使用者に「時季変更権」が認められます。

 なお、年次有給休暇は、長期にとるべき休暇であるからこそ、「時季」が問題になり、使用者にその変更が認められる場合があるのです。(短期の「時期」と区別した用語「時季」が使われていることに注意。)

 派遣労働の関係では、この「事業の正常な運営」というのは、派遣先の事業ではなく、派遣元の事業について問題にするというのが、労働省の立場です。

 あなたが、年次有給休暇をとったときには、その代替の派遣社員を派遣することが派遣元の責任です。使用者(派遣元)は、年次有給休暇取得に備えて、そうした人員を用意しておくことが必要ということになります。
 休暇の代替要員を確保するなど、年次有給休暇付与の努力をすることが、使用者(派遣元)には法的な義務として課せられていますので、そうした努力をせずに時季変更権を振りかざし、一方的に月3日などと一律に限定することは許されません。

(3)権利の回復方法(労働基準監督署への申告など)

>> このような場合、どうすれば良いのでしょうか? 労働基準局などに相談>>した場合どのような結果になるんでしょうか? 3日分の給料はあきらめたほ>>うがいいのでしょうか?

 正当な権利であり、あなたの貴重なお金です。派遣会社のお金ではありませんから、あきらめる必要は一切ありません。正々堂々と主張してください。

 労働者には、原則として、年次有給休暇の請求権があります。例外として、時季変更権が認められているだけです。9月の3日分について、減給するためには、時季変更権の行使が適法なものでなければなりません。

 派遣元に、特別の理由があったのでしょうか。おそらく、そうしたことがないと思われますので、この減給(=時季変更権の行使の結果?)は適法でないと推測できます。
 そうだとすれば、あなたは、当然の権利として減給分を回復することができます。

 回復の方法ですが、(労働基準局というよりも、派遣元の事業所のある地域の)所轄の労働基準監督署(派遣110番のホームページにリンク先があります)を調べて下さい。この労働基準監督署に申告をすることができます。

 ただし、労働基準監督署は、使用者(派遣元)に対して、「労働基準法第38条を守りなさい。守らなければ、罰則を適用しますよ」と圧力をかけて、指導をするというのが、その立場です。間接的に「圧力」をかけてくれて、労働者の権利がそれによって回復するということです。

 同様に、派遣会社は、労働者派遣法に基づいて、公共職業安定所(職安、ハローワーク)での、登録型であれば許可、常用型であれば届出によって営業ができます。派遣元の地域の職業安定所に問題を提起することもできます。労働基準法の使用者の責任は、派遣元の責任ですので、それを果たさないことについては、公共職業安定所が行政指導してくれます。(これまでにも、健康保険の事業主が支払うべき保険料を派遣労働者に負担させていた事例で、職安が指導して、かなりの金額を払い戻させた例もあります)
 なお、どこの公共職業安定所が担当かは都道府県の職安関連部局に聞いてみて下さい。

 しかし、以上の、労働基準監督者や公共職業安定所による解決は、あくまで「間接的」なものです。なによりも、労働者自身が、しっかりと、派遣元(使用者)に対して権利を主張することが必要です。(主張を明確にし、相手にうやむやにされないためには、『内容証明』郵便で、賃金を支払うように請求するなどの方法があります。)

 といっても、派遣社員は、弱い立場ですので、なかなか権利の主張が難しいと思います。そこで、もし会社が、取り合おうとしないときには、「労働基準監督署や公共職業安定所へ申告することや、弁護士に相談することを考えている」と相手に伝えて下さい。弁護士が乗り出すことを知っただけで、あるいは、弁護士から電話しただけで、あっさりと、お金を支払う例も少なくありません。

(4)一般的な問題の改善も

 ところで、私たちも、派遣会社で年次有給休暇について、こうした一律の限定があることは、ほとんど知りませんでした。
 もし、そうした慣行が普及しているとすれば、大きな問題です。
 できれば、業界団体や労働省に改善の要請をしたいと思います。

 ほかに、知人の方で類似の例がありましたら教えていただけば幸いです。


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