「診断的経営」は、故山城 章 先生(*参照)が提唱された 経営の概念である。安さんは 「自律
的経営」と呼びたいのだが、山城先生が 今後の経営のあり方を見通して、経営学の学問的な
整理から 「診断的経営」と名付けたまま亡くなられたので、今のところ安さんは これを尊重して
いる。
山城先生の 提言は、もうすぐ 在来の規範的(お手本をマネて 型にハメる)経営では行き詰
まるから、組織の中に 連続的不連続(不断の革新)を仕組んだ経営を構築する必要がある と
いうことであった。山城先生は それは「経営への取り組み方」であり「態度」のだから、頭さえ
切り替われば ムズカシイ理屈は要らないが、経営に関連する人が異動し 世代が替わると、ま
た規範を求め始める と考えた。だから 組織や制度で歯止めに、革新を恒常化しようと 提案さ
[ 経 営 学] [診 断 学] 左表Bの 主体が理念を実践し自己
[科 学(真理・外部的)] @ A 啓発する経営を、Aの客観的な科学
[実 践 学(工学・内部的)] B C 診断でサポートするのが 「診断的経
営」である。Bでは、在来の経営規範や 科学理論に依存せず、理念基準の 自己診断を行う。
山城先生は 診断的経営の具体的な形を、経営者の主体性を強調するため 各企業内での
「内部診断」 というイメージに展開し、外部のコンサルタントを導入することを含めて 経営者が
新しい(自律的・自己啓発的・情報活動的)リーダーシップを発揮することを期待されていた。
安さんが考えたのは 実践学の精神から、内部診断で 診断的にモノゴトをマネジメントする手
順を、経営層のみならず 管理層から第一線の現業にも及ぼすことである。非力な者や成長過
程にある者が、段階的に規範や科学的手順に依存するのは やむをえないが、最終的には 管
理層も現業層も、経営層の理念への整合のほかは、極力 自律的に部分最適化を行い、経営
層が集中的に全体最適化を行えるように 組織・制度を整理することを常に考える必要がある。
自主や 自律は、QCサークルなどでも、管理手間の節減・職場の活性化・人間や企業の成
長などの面で 効果があることが認められているが、企業のオオヤケの 職制上の自律を考える
場合には、単純に「目的指示で 方法自主を」では 済まないものがある。自主改善活動と違っ
て職制の場合には、考え方は同じでも 仕組み(構造)だけでなく、働き(機能)を定量把握する
尺度が不可欠になる。つまり 「このモノサシで この結果を出すから、任せて下さい」と請け負う
仕組みである。
そういう意味の「自律的経営」には 安さんの「IPI(付加価値・総合生産性指標)」が役に
立つ。第二次大戦後 日本にはラッカープランやスキャンロンプランが紹介され、その影響は
カン違いを含めて、今なお 生産性基準原理による賃金交渉のような形で残っている。安さん
の見付けた法則性や 前記の指標は、正念場に来た日本経済を考えるときの 良い手がかりに
なる。何も すべてをこの指標に切り替えるのではなく、現在の方式と併行して算出してみるだ
けでも 効果は大きい。《もどる》
*山城 章 先生[明治42(1911)年〜平成5(1993)年] : ー橋大学名誉教授, 山城経営研究
所長, 主体と客体が合一する 「実践学(新しい実学)」を研究、「経営道」を提唱.
[提供可能資料]
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