「財務比率は 企業外部の見方だった」 (些論 ver11.1)

 安さんは 技術屋のくせに、もう永いこと 早稲田のシステム科学研究所(’97年7月に 「アジ

ア太平洋研究センター」に統合)の、管理会計の ケース・スタディの講師をやらせてもらって

いる。数年前に 管理会計研究会誌の「原価計算」に書かせてもらったように、企業に在職中

は優秀な会計屋さんからいろいろ教えてもらい、自分で 設備の予算を扱い始めてからは、企

業では 経営上の意思決定を行う場合に、「予算が(ゼロでも) 付く」という形で 執行が認めら

れることも判った。

 

 生産の現場では係員時代も 長の名が付いてからも、1ヶ月遅れの 「原価検討会」があって、

サンザ絞られたことを ハッキリ憶えている。その 割り切れなさは、精緻なデータを前に 理屈マ

ケして謝る一方の、打つ手があればまだしも 手も足も出ないクヤシサだった。財務比率は 大

分あとになって、診断士や経営士の受験のために勉強したが この方がまだ判った。しかし 両

方とも、実際手を打つためなら 何でこう回りクドイことをやるのか、という印象を 禁じえなかった。

 

管理会計の 資料については、その後の保全費の研究から 法則性(基本投入費原理)を発

見したことと、最近になって H.T.ジョンソン・R.S.キャプランの共著「レレバンス・ロスト:白桃

書房刊」を読んで溜飲が下がったことで、気持ちの決着を 付けることができた。

 しかし 財務比率については、その後 それが銀行屋の開発したものだと聞き、「成る程 ラシイ

ナ」という感想を持った程度で、なお その権威がましさは、安さんを 閉口させるものがあった。

 

財務比率が有用であることは 言うまでもないが、問題は 今のような厳しい時代に、財務比

率だけで 果たしてタイムリィに効果的な手が打てるかどうかを疑問に思い、具体的な 企業

のコンサルティングの中で模索している内に、たまたま知ったのが 故山城 章先生(ー橋大学

名誉教授)の企業の内部診断の提言であった。財務比率を補完する 具体的には、素材・仕

掛品・製品の回転率は 事後評価だけだが、別項の「納期遅れ対策」ならば 見事に在庫を低

減できる例がある。

 

 また 安さんが「経営3本勝負」と言っている、次の例を 見て欲しい。

          <A社>       <B社>     B社は A社の事業に参入の余地がある

 土 地    自社の所有    地代支払い   と見て、立地・生産・販売とも 全く同じ条

 建 物    自己資金で    金利支払い   件で事業を始め、結果は今のところ 両社が

 設 備    近代化資金   リースで賃借   同じ水準ににある。この場合 両社をどのよ

 決 算     ±0        ±0     うに評価するかが問題である。

 

 これは どちらが正しいか否かではなく、経営態度の問題である。在来のモノの見方からは

タメラウことなく、財務比率によって 「A社がイイ会社」であるとことに(安さんを除いて)異論は

なかった。しかし今は 多少話しが通じてきて、「B社がイイ」とする安さん説も支持者が出るよう

になった。

 

 言うまでもないが 「A社がイイ」というのは、コゲ付いたら 担保を叩き売ってモトが採れるイイ

会社ということであり、B社支持は A社がなぜ、B社の地代・金利・リース料との 差額分の利益

化できないのかを問題にする態度なのである。すでに バブルの崩壊以来、日本列島の担保

価値は 総崩れで、各企業が新規事業を起こそうと思っても 担保の追加ナシには資金が動か

なくなっている。ベンチャーこそが 国を救うという時代には、前向きの実力評価方法を 研究す

る必要があるのだ。

 

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