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江戸時代の大気光象の記録

日本テレビ系列の番組「世界一受けたい授業」の 2015/9/12 放送回に 「かわら版で見るお江戸ミステリー!」という授業があり、 そこで「金環日蝕を報じたかわら版」として紹介された文献があります。 そこに描かれた図は日蝕ではなく、ちょっと大気光象を知っている人が見れば即、 暈の類だと判るものでした。 所蔵元に問い合わせたところ閲覧可能とのこと、実物を見て、 どういう記録なのかを調べてみました。

※ 詳細についての記事を日本気象学会機関誌「天気」に寄稿しました。
綾塚 祐二, “嘉永元年 (1848年) に庄内地方で見られた大気光象の記録” in 天気 (日本気象学会機関誌) 2018, Vol. 65, No. 4, pp. 255-258 [PDF (「天気」記事検索) ]



鶏肋集(四) 七丁
「鶏肋集」第四巻、七丁(ページ)に挟まれている記録
名古屋市蓬左文庫所蔵 (名古屋市教育委員会の許諾の下に掲載)

文献の概要

左の画像がその文献です。 尾張藩士の安井重遠という人物による風聞書 (かわら版や風説などを書き留めた資料) 「鶏肋集」の第四巻、七丁 (7ページ) に、これが折り畳まれ挟み込まれています。 文章部分、まだきちんと読めていない^^;部分もあるのですが、 以下現時点で判ったことを説明します。

まずは全般的な内容から…
● 嘉永元年(1848年) 四月二十四日と、翌二十五日の記録 (図は二十四日のもの) (1849年に江戸付近で金環日蝕が起きているので「金環日蝕を報じた」というのはそれと混同したものと思われます)
● 羽州庄内藩 (今の山形県鶴岡市付近) で見られ記録されたものが (尾張藩に) 報告され、 書き写されたもの
● 「天文図式・本などでこのような現象を見たことがあるが、何故に現れるかは不明」
● 四月二十四日については文章のほうで昼頃から午後に掛けての時間による変化が書かれている
● 図は、文章と照らし合わせると、二十四日の様子の時間による変化を一つの図にまとめたもののよう
● 図の朱で縁取りしてある部分は色が着いていた現象、縁取られていないのは白い現象、を表していると思われる (内暈の内側と思しき部分のくっきりした線はコンパスのような道具を使って描かれたものと思われる)


図の部分の区分け

何が見えていたのか? (四月二十四日)

こちらの画像は図の部分に強調処理を掛け、現象ごとに番号を振ってみたものです。 番号はおおよそ文章中で言及されている順序です。 中央の赤い丸は太陽です。四月二十四日の記述を見ていきます。
(1) のくっきりした細い線のある部分は内暈で間違いないでしょう。
(2) は図全体の様子からすると一見、太陽アークのように見えるのですが、 文章と照らし合わせると、どうも太陽高度が高いときの幻日環のようです。
ここで少し時間が区切れています。

(3) は形状からして、上端接弧でしょう。
(4) は、端が跳ね上がっているのが奇妙ですが、(2)の幻日環が太陽高度が低くなって半径が広がった様子と捉えるのが妥当なようです。
ここでまた少し時間が飛びます。

(5)上部ラテラルアークでしょう (外暈かもしれませんが、上端接弧も見えていたようですし)。
(6)幻日で、(7) はそこから伸びる幻日環、ということでよいかと思います。が、 ? をつけた上下に広がった部分がちょっと謎です (文章中にはそこへの言及は特になし)。

このあたり、どの番号のものを指しているのか判別しづらい文もあるので、 何か新たに判ったら随時更新します。 「庄内で見られたものの報告を書き写したもの」ということで、元の記録がどこかに残っていないだろうか、というのも気になるところです。


何が見えていたのか? (四月二十五日)

四月二十五日については、一行ほどの記述に留まります。 正午を挟んで、太陽の周りに二重の輪が見えていた、という記述なのですが、 一つは内暈でよいとして、もう一つが外接ハロなのか、 9度暈なのかは不明です。 旧暦の四月ということで、庄内辺りでも外接ハロが見える太陽高度ではあったと思われます。



ヨーロッパでの古い記録

さて、ヨーロッパのほうの同時期の図による記録というと、 1820年 4月8日の William Edward Parry のスケッチが有名です。 さらに時代を遡ると、 1661年 2月20日の Hevelius のスケッチ1629/1630年のローマでの記録1535年のストックホルムの記録 などがあります。 日本にも、このような大気光象のさらに古い記録が、 他にもそれと気づかれずにまだまだ眠っているかもしれません。 何か良い手段があれば探してみたいものです。

(2017/09/16)


関連項目

内暈 幻日 幻日環 上部ラテラルアーク
上端接弧 外接ハロ 珍しい半径の暈

Contact: aya@star.email.ne.jp.cut_off_here