福島原発メルトダウン

 

注意:本リポートはできるだけアップデートしているが、最新の情報のアップデートは完全で はない。ただ政府事故調でも触れられていない013/3/10のNHK特集までは反映した。この他にBWRの構造的欠陥政府事故調報告原子力学会報告を参照ねがいた い。

2011年03月11日午後3:46、マグニチュード9(世界で4回目)の超巨大地震で福島第一、第二原発はスクラムした。平安時代に大津波の記録 があるそうで、2011年3月11日の東北大地震は1,000年に一度の大地震のようだ。東電は福島県の火力と原発を全て失い、電源不足に陥って企業が活 動を始める月曜日から輪番停電すると連絡があった。問題は鎌倉市の下水ポンプには非常用発電機がなく、停電すると下水からし尿があふれ出す可能性あると か。トイレをできるだけ使うなという広報車が触れまわっていた。

原発事故初期の頃の私の推測だが、原発近くの30m位の断崖に津波が砕けて50m位の水しぶきが上がっていたのでディーゼル油タンク流出だけでなく、海水 ポンプシステムが潅水して動かなくなったのかもしれないと考えた。持ち込んだ発電車が役に立たなかった理由がうなずける。幾らビルを頑丈に作ってもシステ ムとして機能しなければそれは不合格。そうするとこの原発の設計思想に瑕疵があったことになり、人災と言えるのではないかと思った。地震国日本には海水冷 却型の原発は海浜で海面近くに建設してあるからこういうことになる。丘の上に建て、海水の冷水塔を使うシステムは高価になり、原発の安さが無意味になるの だ。

公表される情報は不明確で一貫性がない。できるだけ本当のことを知りたいと、情報をあつめ推理したものが本報告書である。

地震で配管が破断し圧力容器内の冷却水が失われた可能性

津波により停電が生じ、冷却ができなくなる前に、地震動で圧力容器ないの水が失われたかという疑問に関してはつぎのよう な報告がある。

12/26日に公表される畑村委員会の中間報告は2、4号機の東西方向の加速度/耐震基準は550/437- 507/441ガルと耐震基準を越えていることを根拠に政府と東電の津波原因説に疑問を呈するという。

これは原発設計技師田中三彦氏が岩波書店刊「科学」9月号の15pの論文で指摘しているもので格納容器内循環ポンプ回り の配管が地震動で壊れて 圧力容器内冷却水が漏れ出た可能性も否定できないという論である。田中三彦氏は特に一号機の格納容器の圧力上昇に関し東電が行ったシミュレーションで地震 後15時間でメルトダウンで底が抜けたとされるより6時間早く格納容器圧力上昇が早く始まっていることから格納容器内配管が壊れてがシミュレーションより 早く水が抜けてメルダウンが早まった可能性があるとしている。もし本当なら津波対策をし、ストレステストに合格すれば運転再開できるという政府の目論見は ここで大きく崩れることになる。

循環ポンプは配管にぶら下がっているわけではなく、格納容器内にあるビームに固定されているはず。したがっ て太い吸入配管や吐出配管が550ガルで破断する確率は低い。一方配管サポートなどは設計図面もなく、現場判断で信頼性の低い上向き溶接でビームに溶接さ れたというか ら、あるいは配管サポートが元から外れ たということはあるかもしれない。それでも大口径配管は肉厚もあって容易には破断しないだろう。ただ同じMark-Iである古い敦賀1号機が延命目的で 2010年に循環ポンプ回りの配 管を更新していることから、経年変化で劣化すれば完全に白とはいえない。問題は制御棒作動用のマカロニチュープ、中性子計測用貫通部、計器用導圧菅、温度 センサー、遠隔操作弁開閉の作動用空気配管、配管や機器のドレン、ベント弁などの細管は肉厚も薄く、支持もされておらず、震動解 析もされていない。したがって基準地震動を超える加速度で、または共振で破断した可能性は 否定できない。現に東電は空気作動のベント弁の空気配管が空気圧を維持できず、開けることが難しかったと報告している。保安院も配管破断を否定しない見解 を11月にだした。しかし政府の事故調査委員会は中間報告でこの可能性はないと断定した。 私はベント菅のベローズ破断説をとったが、田中氏はベローズ破断に加え、格納容器蓋のフランジの部から(ボルトが伸びガスケットが飛んで)水素がデッキに 漏れたとの説をとる。畑村委員会はこの田中論文に重大関心をいだいていると報道されたが、12月6日の政府の事故調査委員会中間報告では否定された。国会 の事故調査委 員会には田 中三彦氏自身が委員に任命され、ヒアリングは公開でなされるという。

2013/07/10東京電力元社員である木村俊雄氏が記者会見。 内容は福島には過渡現象記録装置が設置されており、地震直後10分の運転データが1/100sec刻みで記録されているが東電報告書はこれをほとんど引用 していない。地震トリップ信号、原子炉スクラム信号は使用不能としている。特に循環ポンプは振動が大きく、BWRのアキレス腱といわれているのに循環ポン プに関するデータを一切公表していない。スクラム後の液位の 低下は泡がつぶれたためとしているが、木村氏の記憶では泡が消えただけでこれだけ液位低下はありえない。それからサンプの液面がポンプのオンオフ運転で変 動しているのに、一定にたもたれているので液漏れはなかったと断言しているのはおかしい。1号機の補機冷却系海水ポンプは動いていないのに不明としてい る。CRDの温度が急上昇していうのに何の言及もない。少なくとも PCV内での小口径配管の破損はなかったとは言い切れない。原発再開に支障とならないように地震でなんら問題なかったというシナリオが大切とこのシナリオ に合致するデータのみひろっているため、東電報告書は事故報告書ではなく、政治文書だと弾劾している。

崩壊熱

核分裂反応が停止しても核分裂物質の崩壊熱は減少しながらも長期間にわたって出つづける。故古川先生提供のU.S. Atomic Energy Commission (USAEC) Report WASH-1250, July 1973 "The Safety of Nuclear Power Reactors and Related Facilities"(邦訳「原子力安全ハンドブック」)のFig 1.3によれば、110万kW炉で燃料を293日燃やした後のdecay heatは下表のようになる。


heat (kW)

day after scrum

decay/fission ratio (%)

cumulative decay/fission (%)

power output

1,100,000

-

-

-

fission heat (38%)

2,894,737

-

100

-

decay heat

225,000

0

7.7727

0.000

decay heat

17,000

1

0.5873

8.360

decay heat

10,000

5

0.3455

9.742

decay heat

7,500

10

0.2591

11.037

decay heat

4,060

30

0.1403

13.248

decay heat

1,740

90

0.0601

16.855

decay heat

660

365

0.0228

23.125

decay heat

300

730

0.0104

26.907

decay heat

204

1,095

0.0070

28.269

decay heat

180

1,460

0.0062

31.447

Decay heat


スクラム後の津波で非常用電源を失ない、ついにバッテリー電源を失うまでの運転

福島原発はGE Mark-Iという沸騰水型(BWR)原子炉である。制御棒が水圧で圧力容器下部から挿入する形式をとり、ドライウェルという西洋梨型の格納容器に収納さ れている。 ドライウェルはぶ厚い鉄筋コンクリートで包まれているが、サプレッション・チャンバーというトーラス型のウェットウェルは裸で地下室に設置され、ドライ ウェルとウェットウェルを連結するベント管には熱膨張吸収ベロウズが装着されている。

発電運転中は制御棒は燃料集合体(炉心)から引き抜かれて下に下がり、燃料棒は臨界に達し、核分裂反応で発熱し水を沸騰させる。発生した水蒸気は タービンを回して発電機を回す。タービン排気は復水器で凝縮し、ポンプで圧力容器に循環する。


normal operation of GE Mark-I reactor

地震が発生すると原子力建屋地下に設置してある地震計の信号が制御棒駆動水圧系を作動させて制御棒を炉心に挿入し、核分 裂反応を止める。これをスクラムという。同時にタービンへ蒸気を送る主蒸気管(4本)の隔離弁と給水管(2本)の隔離弁も閉じる。隔離弁は格納容器内外に 直列に設置されている。

<交流電源があるときの崩壊熱除去系>

通常の原子炉停止後、旧式BWRなら緊急炉心冷却シ ステム(ECCS; Emergency Core Cooling System)、改良型BWR(ABWR)なら残留熱除去系が自動的に起する。いずれもHPCI(High Pressure Core Injection)室に設置されている。崩壊熱で加熱され、高温になった圧力容器の水を小型ポンプで抜き出し、真水で冷却して圧力容器に戻す。真水は タービン建屋にある熱交換器で海水により冷却する。

いずれのポンプも交流電源喪失でもSBO(Station Black Out)でバッテリーバックアップで8時間は稼働できる。ただし1系列しか用意されていない。バッテリー電源が尽きれば 緊急炉心冷却システムも残留熱除去系も停止する。

<全電源喪失時の崩壊熱除去系>

GEの設計思想に従い、全てのMark-Iには全 交流電源喪失でも崩壊熱 を除去できるようにアイソレーション・コンデンサー(非常用復水器)が装備されていた。これはあらかじめ90分間分相当分備蓄された水で崩壊熱で発生する 水蒸気を凝縮し、凝縮水は重力で圧力容器に戻すものである。90分間を過ぎれば備蓄水はすべて蒸発してなくなるので新しい水を供給しなければならない。ア イソレーション・コンデンサーは格納 容器を挟んで燃料プールの反対側に設置され、格納容器を貫通する配管で圧力容器と連結されている。 しかし2001年、浜岡原発でアイソレーション・コンデンサーが水素爆発をして配管が破断した事故を受けて から東電は設計変更を申請し、1号機を除き、すべて撤去されていた。これは水素爆発はアイソレーション・コンデンサーが悪いのではなく、炉のなかで放射線 で発生する水素 と酸素をベントしないことが原因なのである。撤去は本末転倒の判断。これは小泉首相と平沼経産業相、現松永経産次官が保安院長、勝俣社長のころである。未 確認だが、日本の殆どのBWR炉には敦賀1号機を除き、女川も含め、アイソレーション・コンデンサーは 撤去されたかついていないという。

アイソレーション・コンデンサーが不要という理由は原子炉隔離時冷却系ポンプ(RCIC; Reactor Core Isolation Cooling system)があるから二重投資ということであった。RCICは圧力容器で発生した蒸気でタービンをまわし、圧力抑制室に備蓄された水を圧力容器に昇圧 注入する。タービン排気は圧力抑制室に備蓄された水で凝縮させるという設計である。タービン排気はサプレッションチャンバーに備蓄した水で冷やされて液化 する。1号機は古いデザインでタービン駆動の隔離時冷却系がなかったからアイソレーション・コンデンサーを撤去できなかったと推察される。

<全電源喪失に至る流れ>

福島第一原発の非常用電源は東北電力から供給されていたが、地震で送電鉄塔が倒壊した。この時点で外部電源を失う。非常 用ディーゼル発電機が自動スタートしたが、1時間後の15:41非常用ディーゼル発電機停止でSBOに陥った。ディーゼル油タンクが津波で流出したことが 原因だ。ABCニュースのJapan Earthquake: before and afterを見れば岸壁にあったデーゼル油タンクと思しき2基が綺麗に姿を消している。一つは丘 の上に打ち上げられ、もう一つは沖にながされているのが目撃されている。

また米国規準で覆いもなく、裸で設置されていた全ての海水ポンプのうち、津波が強く襲ったと思われる4号機の巨大な海水 ポンプ3台のモーターが水中にあるポンプからちぎれて流失している。14.8mの標高に建設した女川原発は無事だったが、標高10mの福島は悲惨なことに なった。

<1号機の運転記録>

1号機のみ、アイソレーション・コンデンサー(非常用復水器)がとりはずされていなかった。 というかこれしかない。水位が緊急炉心冷却システム(ECCS)起動点まで下がらなかったため、ECCSは 作動していなかった。圧力容器圧高で3月11日14:47自動的にアイソレーション・コンデンサー(非常用復水器)が起動する。全交流電源喪失でも短時間 ならバッテリーで制御系は確保されている。14:47にアイソレーション・コンデンサーは自動的に作動した。しかし性能が良すぎて運転開始後8分の15: 03に圧力容器の温度低下速度が1時間に55oCを超えそうになったため、運転員は手動で停止したと一時報じられたが真相は違うよ うだ。真相は15:30にSBOで水位不明とな る。15:35津波がシャッターを破壊して海水がバッテリー室に流れ込み、非常用電池が水没して「非常用復水器の配管破断」を検出する直流電源が失われる と自動的に配管破断を知らせる信号が出て、非常用復水器と圧力容器を結ぶ格納容器内側の隔離弁が自動的に閉じ、再び停止した。(東電は弁駆動電源と制御系 電源は別系統でこれが失われるタイミングによっ ては弁が開き続けることもあるため、判断を間違えたと釈明)NHKの鈴木ディレクターが米国に出向き、同型機のアイソレーション・コンデンサー の隔離弁にはハンドルが付いていて手動で開けられるように設計されていることを明らかにした。しかし東電の運 転員は手動で開けることなど考えもしなかった。メルトダウン前なら原子炉建屋に入り、これを開ければメルトダウンは避けられたのである。東電幹部はそうい う設計になっていることを知っていなかったという。ゆえにマニュアルにも書かず、訓練もしていなかった。怠慢というほかない。運転員がしたことは電源喪失 の信号で、隔離弁が閉じた可能性があるとみて調べたところ、弁が閉じていたため、遠隔で隔離 弁を開けたとしているが記録がなく、開けたかは不明。16:41バッテリー電源が一時的に復旧したとき、水位が一瞬表示されるも- 90cm、16:57水位不明、-150cmと あるのみ。しかしこののち、吉田所長命令で総員退去。その 後、アイソレーション・コンデンサーが作動していたかは不明としているが実際は閉。NHKが専門家に頼み国産の炉心溶融ソフトSampson Simulatorで計算したところによれば水位は11日18:00には燃料頂部、19:30には全露出となる。温度が上昇し 、圧力容器の圧が上昇したため、減圧系(安全弁)が作動して、炉心水が蒸発し、水位が下がった。11日18:18頃、直流電源が復活したため電動弁を開け たが、アイソレーション・コンデンサー(水は10月でも65%残っていた)から水蒸気が確認できずとしてアイソレーション・コンデンサー保護のためとして 18: 25には隔離弁を遠隔で閉じた。じつはこのとき燃料は完 全に露出していたからもう蒸気はでないわけだ。バスのバッテリーを持ちこんで水位計だけ生かしたが、水位はTAF+200mm(燃料棒は水没ということ) と表 示された。


差圧式水位計は導圧管内の水の凝縮による誤差防止のため、基準水柱方式が使われる。これは測定水柱ー基準水柱の差圧にあ らかじめ基準水柱分をバイアスして表示する仕掛だ。メルトダウンの高熱ないし急激な減圧による突沸で基準水柱内も測定水柱内の水もすべて失われたため、ゼ ロの測定水柱にあらかじめバイアスされた基準水柱が上乗せされるため、基準水柱分の見掛けの水位が加わった示したものである。スリーマイル島 でも生じたと同じ原因 と結果である。ディスプレーサー型正しく測定水柱を計測できる。 日本では失敗に学ぶ姿勢が全くない。

格納容器内にはスリーマイル島の反省から発生した水素に着火する点火栓を設置していたが、電源喪失で点火できなかったと東電幹部は発言。じつは最近の自動 車 バッテリーが完全密閉型にできたのは再結合触媒をバッテリー内に設置することで爆発限界に達する前に常温で水素を水に戻すことができるよ うになったからだ。点火装置などかえって危険。米国ではスリーマイル後これを装備していたが原子力村は唯我独尊で化学反応に疎くこれすら採用していないこ とは明白。ただしジルコニウ ムから発生する水素は中性子分解とちがい、酸素はジルコニウム酸化物になってしまうので、点火栓 も再結合触媒も役にたたないことは同じだが。この東電の幹部の発言は彼の無知をさらけ出す結果にすぎない。

スクラム直後の崩壊熱はWASH-1250によれば1.1GWで225,000kWだ。したがって出力0.46GWの1 号機では 80,958,000kcal/hとなる。水の潜熱を532kcal/kgとすれば、水の蒸発量は152ton/hとなる。圧力容器内容積は238ton だ。2/3が水で満たされていたとして158tonあったことになる。アイソレーションコンデンサーが働いていないとすれば、水は1時間で全て蒸発して安 全弁経由格納容器にでてしまう計算だ。したがって水位計は正しいとみなしてよい。また配管系は健全であった。バッテリーが水をかぶってから弁が閉じてし まってアイソレーションコンデンサーがまともに動かなかったとみれば説明できる。これからバッテリーは浸水するようなところに設置してはいけないという教 訓が得られる。以後燃料棒が露出すると温度が上昇し、燃料管被覆が酸化して水素が発生した。23:00には水素ガスは格納容器より漏れ出て二重扉で放射能 は1.2mSv/h。 このころすでに格納容器からの漏れは増大していたと見られる。

<2-3号機の運転記録>

2-3号機は1号機とは圧力容器で発生する蒸気で水注入ポンプを駆動する異なる方式の原子炉隔離時冷却系ポンプ (RCIC; Reactor Core Isolation Cooling system)を 装備していた。(GE設計の1号機と同じ形式の重力式のアイソレーションコンデンサーは水素爆発を嫌って撤去されていた)

原子炉停止後、原子炉水位はECCSの自動起動設定点までさがらず。14:47主蒸気逃し安全弁が作動。しかしながら、 バッテリー駆動のAO隔離弁が継続的な使用でバッテリーが約8時間で上がり、DC(直流)電源を喪失したため 、弁が閉じ、タービン駆動の隔離時冷却系RCICは使えなくなった。温度が上昇し圧力容器の圧が上昇したため、 減圧系 (安全弁)が作動して、炉心水が蒸発し、水位が下がった。燃料棒が露出すると温度が上昇し、燃料管被覆が酸化して水素が発生した。


2号機:

全交流電源喪失の時、2-3号機はアイソレーション・コンデンサーがないため、14:50原子炉隔離時冷却系RCICを手動起動。15:28水位高にて自 動停止。15: 39RCICを手動起動後SBOになるが、RCICは3月14日13:25まで稼動したと推定。RCICは所内電源と非常用ディーゼル発電機による電力の すべてが失われた事態を考慮して、炉心の崩壊熱による蒸気を使用したタービンによってポンプは駆動される。タービンは常に待機状態に置かれ、非常時には 30秒で定格回転速度に達する必要があり、暖機運転がなく湿度の高い蒸気にも対応するなど、厳しい条件での運転が求められるため、特殊なタービンが使用さ れる。圧力制御プールからの水を炉心シュラウド外側に注水するポンプを駆動する。

3月14日の3号機の爆発は2号機の減圧用AO弁の電源を破壊したため下げられず、(といっても安全弁としての機能は維 持されていたはず)消防ポンプでは海水を注入で きな い事態になり、3月14日19:02に圧が75気圧から7気圧にストンとおちた。このときメルトダウンの熱で圧力容器の炉内核計装案内管(in-core monitor guide tube)に穴があきガスが抜けたと推定される。19: 54消防車で炉心に海水注入開始。ただ格納容器の圧は上がり続け 、14日深夜どこかが壊れて放射能大量放出に向かうのである。

2015/5/20 の東電発表では2号機のベント配管に装着されたラプチャーディスク周辺の放射線量は0.08-0.3mSV/h、格納容器側にある弁も0.15- 0.7msV/hであるのに1号機と共用の排気筒は10sV/hであった。結論として2号機からのベントは一回も行われていないことになる。 2011/3/13-14のベントは弁を開けた時はラプチャーディスクはわれず。3号機の水素爆発以降は2つある弁の格納容器側がしまって2度と開くこと はなかったことになる。

3号機:

原子炉停止後、原子炉水位はECCSの自動起動設定点まで下らず。14:48主蒸気逃し安全弁が作動。15:05に原子炉隔離時冷却系RCICを手動起 動。15:25水位 高にて自動停止。16:03にRCICを手動起動後、3月12日11:36に自動停止。その後、12日午后0:35に緊急炉心冷却シ ステム(ECCS; Emergency Core Cooling System)の高圧注水系が自動的に起動したが、振動が大きくなったため、設備の破損を危惧して13日午前2時42分に手動停止。これは直長の判断で停 止され、工 場長が知ることはなかったという。ECCSはバックアップ系がない。その後、消火ポンプによる注水を試みたが原子炉の圧を下げるAO弁がバッテリー電力不 足で 遠隔操作では開かず。減圧できず。13日午前3:35にECCSの高圧系の再稼働を試みるが14時間バッテリーだけでポンプをうごかしたため電源切れでポ ンプが動 かず。 隔離時冷却系RCICの再起動を試みるも不成功。手動停止後数時間の5:00頃メルトダウンが開始したと考えられ、13日8:00には3号機からの放射能 リークが 記録されている。この場合も炉内核計装案内管(in-core monitor guide tube)に穴があきガスが抜けたと考えられる。13日午前9:25バッテリーを中央制御室に持ち込み制御盤に接続して減圧弁を開き、消防ポンプで注水で きたときはすでにメルトダウンが 始まり、放射能が格納容器を破って外気にリークし始 めていた。(12/23-26新聞)

2013/3/10のNHK特集では消防ポンプの水の55%は低圧給水ポンプのメカシール・パージ水供給ライン経 由、復水器に流れていたという。番組にでてきた低圧給水ポンプのメカニカルシール・パージ水は汚染水がシール部から漏れ出ることを防止するために非汚染水 を供給するものだ。東電はそこに消防車のホースを切り込んだわけ。停電でポンプ停止中はインペラ―出口圧がなくなるため、どっとパージ水がケーシングにな がれこむ。そして停止しているインペラーを逆流し吸入側にもれて、復水器を満タンにした。こうして半分の水は炉心にとどかなく、3号機はメルトダウンが継 続し た。正常運転で予備のポンプが停止しているときにもこのパージ水は逆流するので運転員はポンプ停止したらタービン室にゆくか、遠隔でパージ水弁を閉 じなければならない。NHKにこの逆流を指摘した刑部真弘教授は元原研で現東京海洋大教授と宮野廣法政大デザイン工学科教授のようだ。極秘入手の配管系統 図に書いてあったとのこと。放 射性物質を扱うポンプはすべてメカニカルシールから漏れる水で環境を汚染しないように奇麗な水をメカニカルシール部に供 給 する細い配管を施してあることは常識だし、通常パージラインはP&IDに明記されているものだ。番組でもチラッと系統図を写し、3Dモデルを作製 している。これに思いが至らない東電はお粗末と言わざるを得ない。タービン室に溜まった水をくみ上げようとしたら1号機と2号機の復水器が満杯だった謎は この水が溜まったものだろう。ただ3号機の復水器は空であったと報道されていたので漏れた水はどこに行ったか疑問は残る。

2014/12/21のNHK特集で は3月15日正午までの4日間の放射能放出量は全体の25%で、15日午后以降放出総量の75%が放出されたことが米軍の測定した データも含め気象データを突き合わせてわかったという。政府の事故調では2号機らの漏れが最大であったとされたが3号機も貢献していると考えないと説明つ あないという。1-3号機の低圧給水ポンプのメカシール・パージ水供給ライン経由、復水器に流れてい た量は膨 大で東電の内部資料によれば、消防ポンプ能力30t/hの 内、29t/hが18ヶ所で内部リークししていたと判明したという。赤熱した ジルコニウムチューブは1t/h程度の水では冷却されず却って水で酸化される酸化熱が加わて、ジルコニウムチューブを腐食しつづけ、水素を発 生させ、こうして出てくるヨウ素131やセシウム137はセシウムホットボールとなってサプレッションチャンバーの水温が100℃に達すると吸収され ずベントラインにでてくる。この配管は埋設管でドレン抜きがないため、溜まったコンデンセートに溶け込む。15日夜半から16日に行われた3号機4度目の ベントでこのコ ンデンセートがすべてベントスタックから放出され、ヨウ素131やセシウム137全体の10%放射能がセシウムホットボールとなってまき散らされ飯館村の 汚染が生じた。(東電測定デー タの最大値。ここでは東電は4号機の爆発が原因としているが、NHKでは誤認とみている)これの事実は規制委員会が設置を要求しているベントフィルターに は十分 な備蓄水がないと温度が上がってしまうとフィルター性能がゼロになるということを示唆している。こういうことは化学プラントで経験していることと同じだ。 米国政府がプール水の干上がりを心配して外務省経由でその危惧を伝えたため、民主党政府(自民党でも多分同じ)の決定でそちらへの注水が優先されたため、 東電の現場が決定した電源復旧工事が遅れ、消防車からの1t/h注入期間が長引いた。結果論からいえばプールには十分水は有ったのだから、電源工事は止め る必要はなかったということになる。緊急時の優先順位を現場から遠いところで決定してよいかどうかという教訓。

炉心シミュレーションに あるように崩壊熱とジルコニウム酸化熱で炉心が2000℃を越えるのはメルトダウン後6−8時間程度の期間で24時間後には水で冷却せずとも放射冷却で 1200℃以下になってしまう。したがってセシウムホットボールが生成したのはこの期間という ことになる。3号機は13日未明にECCSを手動で停止してますからここからメルトダウンが始まってとしてセシウム・ウラネートが気体・ミストとなって吹 き出し、水素で還元され金属としてガラス球に封じ込められたという推論が成立うる。こうして夕刻にはセシウムホットボールが生成していたと考えられる。し たがってNHK番組の推論のように注入海水がほとんど復水器にながれて冷却不足であったため、熔融炉心の温度が上がったという推論を無理に採用しなくとも セシウムホットボールは生成したし、森永先生の指摘のように局部的再臨界があればより多くの熱がでるのので補強される。というわけで気象研究所の分析のよ うにウランもプルトニウムもごく微量だがセシウムホットボールに含まれていたという測定結果も説明できる。これがベント管内に蓄積し15日深夜のベントで 大気放出されたというNHKの説明も成立する。したがって藤原節男氏が危惧するような核爆発が3号機であったという仮説は不用と思う。

セシウムとウラン/プルトニウムがいっしょになったサブミクロンスケールのセラミックス粒子の発生・拡散プロセスについて核燃料屋の常識の範囲で、考えら れることをリストアップすると。

1)事故前のセシウムの存在形態について
軽水炉の場合は、燃料温度がそれほど高くない(燃料棒の中心でも1500℃以下)のでセシウムの大半はUO2のなかに固溶している。燃料棒の中心でも、気 泡に出てきてはおらず、概ね結晶格子の中に固溶している。一方、温度が高くなると、セシウム・ウラネートすなわちCs2UO3の化合物となってする。ただ し、この化合物は酸素ポテンシャルによって酸化ウラン側の価数が変化するので非化学量論組成が、若干変化する。

2)炉心が溶解し、温度が2000〜3000℃になったとき
これらの化合物の蒸気圧が高くなり、気体・ミストとなるが、大量の被覆管ジルコニウム合金金属相による水の分解のため、気相では水素が大量に存在し、強い 還元雰囲気になっている。鉄Feも事故の初期にはたぶん合金酸化物となるであろうが、還元されて非化学量論組成となり、炉心の溶融時の温度では、蒸気圧も 高くなっていると思われる。なぜかZnと一緒にいるようだが、Znの起源はあとでしらべてみる。このなかで、セシウム化合物が、ミストないしは気相状態で 結合してセシウム・ナノ粒子ができたのではないかと思います。小さいということは成長する時間がそれほど無かったこと、小さいから浮遊して、外に出た。溶 融炉心での、気相での反応は、たいへん重要な研究課題だ。原子燃料屋がどのていどこの学術会議系のしごとに参加しているかわからない。

再臨界の可能性について
SUSとボロンとのEutecticでの融点低下で、1430(K)=1160℃で溶ける。したがって、制御棒のほうが、集合体より先に熔融落下して、再 臨界になるというシナリオはありうる。



wikiより

ちなみに格納容器内部の循環ポンプのバージ水はどこから供給するか調べたら、制御棒コントロール水系(CRD)から供給していて循環ポンプには運転 中は近寄れないわけだから供給弁などはない。毎分数リッター程度の供給となっているから格納容器の外になんらかの流量調節弁はあるのだろう。停電でも CRD系だって全てとまっている。よく制御棒が重力で抜け降りなかったものだと思う。ここでハタときがついたのだが、循環ポンプが全て停止したとき、まだ 炉内圧は70気圧だからこのパージ水ライン経由でCDR系に漏れるか、コントロール・リーク系から格納容器ないに炉心水はもれる。


isolation condenser and isolation cooler turbine

2-3号機のバッテリーがあがるまでの8時間の間に東電は倒壊しなかった1,000,000Vの送電線を逆送して非常用電源を生かす準備をし、バッテリー 充電をすればも少し時間を稼げたかもしれない。しかし東電本社は政府に非常用発電機を探すことを頼んだだけでなにもしなかった。現場では社員の自家用車の バッテリーや屋台の小型発電機までかき集めた。それでもシステムは回復しなかった。東電は燃料棒が露出したのち、慌てて4台の工事用電源車を11日22: 00現 場に持ち込み、接続しようとしたがケーブルをつなぐことすら慣れない作業でてこずった。ようやくつないでも配電盤(メタルクラッド)は水没して接続できな い、また日本の工事用電力車の電圧と米国仕様に非常電力の電圧が異なり、ポンプを動かすに至らなかったとされている。しかし仮に電圧が同じであっても海水 ポンプのモーターは海水につかって使えなかったはずだ。バッテリー電源が失われれば全ての弁が閉じてしまい、原子炉隔離時冷却系ポンプは停止する。多重 バックアップシステムがたった一つの原因、津波で一瞬にして失われ、崩壊熱は2時間で水を蒸発しつくす、そして燃料棒は2,800oC に上昇し、圧力容器底にメルトダウンする。そして底板を貫通する多数の制御棒駆動装置や計器信号系を破壊しつくす。


partial meltdown


事故の核心部分

軽水炉は格納容器による封じ込めが売りだった。当然その設計思想によりすべての貫通部には隔離弁を設置して緊急時にはバネの力で閉じて放射能を閉じ込 めるように設計されていた。これが事故の主因となった。アイソレーション・コンデンサーや隔離時冷却系がこのため圧力容器から切り離されて炉心冷却できな くなった。自家用車のバッテリーを 持ってきて閉じた隔離弁を開けようとしたができなかった。圧力容器の水は完全蒸発して安全弁経由放出されサプレッションチャンバーで液化されたが、格納容 器の圧力は設計圧以上になって格納容器は破壊された。設計思想に自己矛盾がある欠陥装置なの である。そこを改良すれば使えるという論もあるが複雑なシステムである別の原因でメルトダウンは再発するだろう。それに分裂生成物を捨てる場所すら住民の 反対で確保できていないし、今後も政治的に不可能と判断 するのが妥当だろう。

炉心温度

5月16日、炉心に水が無かった期間は

1号機:14時間09分

2号機:6時間29分

3号機:6時間43分

と公表される。

5月24日、東電は炉心温度の推移を公表した

1号機:地震から4時間後(保安院は5時間後)250oC→2,800oC、水素発生量770kg、25時 間後水素爆発

2号機:地震から77時間後(保安院は80時間後)250oC→2,800oC、水素発生量360kg、 109時間後圧力容器破損

3号機:地震から42時間後(保安院は79時間後)250oC→2,800oC、水素発生量570kg、 66時間後圧力容器破損、68時間後水素爆発


圧力容器と格納容器内の状況

1号機は地震の6時間後には炉心が露出して高温になり、ジルコニウム被覆管が水蒸気と反応して水素ガスを発生させ、これが安全弁経由格納容器に放出 され た。炉内の水がなくなって炉心が露出すると水素ガスが格納容器内に放出されると格納容器の圧も上昇した。炉心が熔融すれば炉内核計装案内管(in- core monitor guide tube)が溶けて穴が開き内部水素ガスは急激に格納容器に放出され、ドライウェルは汚染水素ガスで満たされる。12日の2:30には最高使用圧力の2倍 の840kPaGとなる。ところがその3時間後 の5:14、格納容器圧力は突如低下傾向をしめした。私は当初は多量の水がタービン室から発見されたため、ドライウェルと圧力抑制室を連結するスポーク状 のベント配管に設置された熱膨張を吸収す るべローズが薄肉のため、設計圧の約2倍の内圧で破れたと推定していた。これは1号機に特に該当する。しかし2012年に入った東電の調査で、ガスの大部 分は格納容器頂部の燃料交換用蓋のフランジから高温のため漏れたということになっている。これが原子力圧力容器最上階の燃料交換プラット フォームに充満した。当初はフィルタ付き換気扇を逆流したと考えたが、フィルターはおせんされていないため、いまではこの可能性は否定されている。決死隊 が10:17ようやくウェットベントし た。このとき換気扇に逆止弁がないためベントラインより原子力建屋にガスが逆流した可能性 は電源が失われると建屋と排気管の間にある弁が自動的に閉じるため ない。爆発はウェットベントのガスではなく、格納容器頂部からもでたガスが爆発したことになる。こうして午後3:36に1号機建屋燃料交換デッキで水素爆 発が あり、上部壁を吹き飛ばし、屋根は直下に落下プールを塞ぐ。

電源車の電力は結局電力系統の水没のため、役に立たなかった。東電の武藤副社長は政府の命令という形でようやく午後8:20に至り、消防車を使って消防系 ライン経由残留熱除去系に海水注入を決断したのだった。(後日首相が中断させたという政争劇に使われるが、全くの誤報であった)しかし圧力容器内圧が高 く、消防ポンプ車の吐出圧では注入できない。安全弁(SR弁)を開けて圧を下げるために自動減圧系(ADS: Automatic Depressurization System)に窒素ガスを送って遠隔開操作にて開こうとしたが電源がない。漸く、12Vの鉛畜電池を12個繋ぎ電磁弁を開けるたが格納容器内圧が設計圧 の4気圧から8気圧まで上がっていたためパイロット弁ひらかず海水注入不能になるという状態が繰り返された。温度が上がれば水を増やし、下がれば絞るとい うことをするうちに圧力容器の底が抜けて圧はかなり下がって安定した。しかし圧力容器の底の穴から水 漏れして、燃料棒を水没させることはできず、水位はダウンスケールしている。このとき完全に燃料棒は破壊され、酸化ウランペレットが圧力容器底に落下しそ こで高温になり、固まりとなった。この塊は表面は接触する水の気化温度だが内部は高温だ。これをメルトダウンという。


hydrogen leakage from top of containment and sea water injection by fire engine

スクラム後1月を経るも、メクラ運転で、(中央制御室に照明がついても計器電源は死んだまま)炉心に消防ポンプで毎時数トンの海水を注入することし かできていなかった。この海水は炉心で蒸発し、サプレッション・チャンバーで再凝縮して格納容器内に温水となって溜まり続け、水素や希ガスなど不凝縮ガス は水にとけこまないため、格納容器の圧は上昇する。再度、ベントせざるを得ない事態になると考えられていた。しかし格納容器が破損し、水がジャジャもれで 19-25日頃には格納容器内水面も一定になったようだ。一体どのくらい格納容器内に溜まるのか上の崩壊熱から計算してみた。3号機は燃料棒548本のう ち32本はMOX燃料だったということなので、崩壊熱を10%増しにしてある。

Unit No


1

2

3

4

power output

kW

460,000

784,000

784,000

784,000

fission heat (assumed thermal efficiency of 38%)

kcal/h

1,040,810,526

1,773,903,158

1,773,903,158

1,773,903,158

cumulative decay/fission ratio of reactor fuel over 10days

%

11.037

11.037

12.141

11.037

cumulative decay/fission ratio of reactor fuel over 30days

%

13.248

13.248

14.573

14.573

cumulative fission heat of reactor fuel over 10days

kcal

114,874,258

195,785,692

215,364,261

195,785,692

cumulative fission heat of reactor fuel over 30days

kcal

137,886,579

235,006,690

258,507,359

258,507,359

design pressure of containment

kPaG

430

430

430

430

max. permissible temperature of water

C

145

145

145

145

sea water temperature

C

10

10

10

10

water enthalpy change between sea and containment

kcal/kg

135

135

135

135

minimum water required for cooling over 10 days

ton

851

1,450

1,595

1,450

minimum water required for cooling reactor over 30 days

ton

1,021

1,741

1,915

1,915

minimum salt deposited inside reactor over 10 days (3.5%)

ton

29.8

50.8

55.8

0.0

actually injected water until April 2 (over 22days)

ton

5,700

9,300

9,000

0

assumed reactor inside diameter

m

4.5

5.3

5.3

5.3

reactor volume (assumed length of 15m)

cu.m

238.6

330.9

330.9

330.9

theoretical water injection rate over 10 days

ton/h

4

6

7

6

actual sea water rate

ton/h

2 to 18

NA

NA

NA

inside diameter of suppression chamber tube

m

6.0

6.5

6.5

6.5

diameter of torus

m

27.0

28.5

28.5

28.5

volume of suppression chamber

ton

2,398

2,971

2,971

2,971

diameter of dry well upper portion (assumed length of 15m)

m

9.0

9.6

9.6

9.6

diameter of dry well sphere

m

14

17.7

17.7

17.7

volume of dry well minus reactor volume

ton

2,152

3,658

3,658

3,658

total volume of dry well + suppression chamber - reactor

ton

4,551

6,629

6,629

6,629

(total volume of dry well + suppression chamber - reactor)/reactor

-

19

20

20

20

reactor thickness

cm

16

16

16

16

containment wall thickness

cm

3

3

3

3

volume of surface condenser (water inside)

ton

1,600 (400)

3,000 (3,000)

3,000 (3,000)

3,000 (3,000)

condensed water tank (water inside)

ton

2,000 (700)

2,359 (900)

2,500 (1500)

0

spilled water depth in turbine room

m

2.0

2.0

2.0

0.0

spilled water in reactor house basement

ton

3,806

4,503

4,503

4,503

spilled water in turbine room

ton

4,000

4,000

4,000

0

spilled water in pit

ton

3,100

6,000

4,200

?

fuel pool volume of 12m depth

ton

1,020

1,425

1,425

1,425

status of pool gate

-

closed

closed

damaged

closed

volume of cover water based on above gate status

ton

680

950

475

950

status of pool gate

-

closed

closed

damaged

open

volume of cover water based on above gate status

ton

680

950

475

1,900

number of spent fuel assembly

-

292

587

514

1,331

number of spent fuel lot in pool

-

0.5

1

0.9

3

decay/fission ratio of first year

%

0.0114

0.0228

0.02052

0.0601

decay/fission ratio of 2nd year

%

0

0

0

0.0228

decay/fission ratio of 3rd year

%

0

0

0

0.0104

total decay/fission ratio

%

0.0114

0.0228

0.02052

0.0933

decay heat rate of spent fuel in pool

kcal/h

118,652

404,450

364,005

1,655,052

water enthalpy change between 40C water and 100C steam

kcal/kg

598.8

598.8

598.8

598.8

supplied water to pool of spent fuel until April 2 (over 22days)

ton

included in 3

0

6200 inc.4 &1

included in 4

cumulative evaporation loss of pool water over 10 days

ton

48

162

146

663

time to loose water submergence

days

143

59

33

14

decay heat rate of spent fuel in pool reported by media

kcal/h

60,000

400,000

200,000

2,000,000

reported cumulative evaporation loss of pool water over 10 days

ton

24

160

80

802

Heat and water balance

計算結果が示す冷却に要する最小水量に対し東電はほぼ5倍の水を注入していたことが分かる。これは内部での冷却が効率よく行われていないことを意味 する。 その理由は注入水が炉心を通過せず、周辺を冷却しているだけであるし、炉心がメルトダウンし、酸化ウランの塊になり伝熱面積不足で内部は高温だが、外部は 水の沸点に下がっているからだ。冷却速度は分厚い酸化ウラン の熱伝導律速になっているのだ。3月27日になって発覚した2号機のタービン室の溜まり水は海水ポンプに連なる配管ピットにもみつかり、5月15日になっ てようやく確認されたが、原子炉建屋地下を満杯にしているはずなのだ。そしてこの水には炉心の燃料棒と同じ組成の物質が発見された。

地震後20日間経過した時点で原子炉建屋地下、タービン建屋地下、配管ピットに溜まった水はほぼ実際に注入した量に匹敵する。即ち注入した水は全量1-3 号機からもれていたということになる。即ち格納容器はジャジャ漏れということになる。タービン建屋地下と原子炉建屋はケーブルダクトや配管ダクトで連結さ れている。ここを伝って水は流れ出す。冷却する最低限の水の注入でも地震後30日間経過すれば。サプレッション・チャンバーは満杯になり、不凝縮ガスが圧 縮されるので早晩ガスをベントせざるを得なくなるはずという危惧は全く的はずであった。注水量と同量の水が漏れ出るのでもはやガスベントはしないで済むよ うになった。

水の垂れ流しを止めるために既設の循環ポンプと循環水冷却器を動かさねばならない。しかしそれも絶望的だ。なぜなら循環ポンプは原子力建屋隣のHPCI地 下に設置され、汚染水に水没していると考えると水収支がぴったり一致するからだ。外部電源を10日目の3月21日に引き込みを開始し、23日には接続が完 成したがあまり意味がない。

3号機ではタービン室まで放射性コバルト、ヨウ素、バリウム、セシウム、プルトニウム238、239、240など燃料棒に含まれる物質を含む高濃度の水が 溜まり、作業員のベータ線熱傷などあった。毎日750人の作業員を投入して4月1日になるも循環冷却システム稼動にむけ努力するという政治的発言をしてい る。タービン室地下室の水を炉心に注入すれば循環運転できるが塩が炉心に蓄積するのでそれもできない。格納容器から水が垂れ流しでは結局なにもできない。

細野豪志首相補佐官が3ヶ月を目処に既設の循環運転確立といっている言っているが全く意味を成さない言明だ。東電は一時に一つのことしかできない中央集権 の集団だから指揮官の頭にあることしか実行できない。いくつかの代案を平行して進めるのが苦手の集団だ。


消火ポンプ車による炉心への海水注入そして真水への切り替え

非常用ディーゼル発電機(400V、6,000V)が燃料タンク流失で停止したのち、東電は工事用ディーゼル発電機(200V、100V)を持ち込んだ。 しかし電圧が違うため、当然つかえない。電力会社としては基本的なことが分かっていないドへま。そこで消防車を岸壁に置き、海水をくみあげてシビアアクシ デント対策で用意されていた追設の消火系または復水補給系から残留熱除去系に送水するラインを使って圧力容器を冷却した。水は循環していなく、温まった温 水をワンスルーで溜め込む方式だ。ホウ酸をどのように添加したかは不明。

ちなみに全電源喪失シミュレーションはGE Mark-I型のブランズフェリー原発一号機をモデルにオークリッジ国立研究所が1981年に行っている。今回はこのシミュレーション通りに進行した。

25日、1-3号機は圧力容器のヘッドスプレイヘ送っていた海水を真水に切り替えた。しかし消防ポンプは同じものを連続使用している。ホウ素はもう充分だ ろうと真水に切り替えてからは添加していない。しかしこれは危険だ、圧力容器底部がこわれて注入水はジャジャ漏れだからホウ素は流れさってしまう。再臨界 の心配は残る。27日、消防ポンプはそろそろ寿命が来るので仮設電動ポンプに交換することを検討していると報道される。

2号機を真水に切り替える準備をしていると25日に発表したが27日になるもできていない。

25日、米軍は沖合いにバージを浮かべ、バージと発電所をパイプで結び、真水を供給することを提案。自衛隊が運営をすることになった。曳航される映像は TVにでた。その後、岸壁に2隻接岸したTV映像が4月6日海上30kmからNHKが撮影して紹介した。接岸は多分タグボートの支援があったのだろう。こ れを真水の供給と汚染水の一次貯蔵に使うと報道されている。 その後、米軍バージは姿を消した。

圧力容器内での塩の蓄積

GEの設計者Richard T. Lahey Jr.はこの圧力容器内の蒸発と格納容器内の凝縮で圧力容器に塩が析出し、徐熱が難しくなるだろうという予測をしていると望月氏が教えてくれる。塩分濃度 を3.5wt%として全量溜まるとして計算してみたところRichard T. Lahey Jr.の計算値26-46トンとほぼ同じレベルとなった。一方格納容器には真水が溜まっているはずである。塩が燃料棒を囲めば燃料棒の温度は上昇し、食塩 の融点は801oC。ジルコニウムの融点は2,200oC。塩が溶け、ジルコニウムが熔け、酸化ウランペ レットが炉底に落ち、一部溶融し、圧力容器底部に溜まっていると想像できる。801oC なら鋼鉄製の圧力容器の底が抜けないが、ケーブル貫通部の充填材がダメになり、隅肉溶接部はストレス・コロージョン・クラッキングで割れるであろう。上か ら降ってきた水はこの溶融塩の上に落下してやけたフライパンにそそぐ水のように瞬間蒸発して 底の隙間からサプレッション・チャンバーに向かって流れ、真水で熔けた塩は塩水となった割れ目から下のインターペデスタル(スカート部)にしたたり落ちて いるというシーンがみえるようだ。ホウ酸も注入されているが洗い流されたところでは局所的臨界になって崩壊熱プラスの熱を出していると思われる。


格納容器の破壊ならびにウェットウェル・ベントに伴う建屋の水素爆発

ジルカロイと呼ばれるジルコニウム合金は金属の中で熱中性子の吸収断面積が最小のため、原子炉の燃料棒の被覆材料として使われている。圧力容器内で燃料棒 露出による480oC以上の高温でジルコニウムが水蒸気と反応して水素が発生する。発熱反応である。

Zr + 2H2O = ZrO2 + 2H2

また水が高温や中性子により酸素と水素に解離する可能性がある。ただ熱分解または放射線分解生成ガスはすぐ燃えてもとの水に戻るだろう。というわけ で主としてジルコニウムと水蒸気の反応で生成した水素が安全弁経由格納容器内に出てきて溜まり、格納容器の圧が 設計圧以上に上昇し、3つの格納容器は意図せざる破壊と漏れが生じた。格納容器にはあらかじめ窒素が封入されているので爆発することはない。

漏れが発生したのちには意図的にサプレッション・チャンバーに追設されていたウェット・ウェルベントをした。ウェット・ウェル・ベントとはトーラス型 (ドーナツ型)のサプレッション・プールからガスをスタックに導くラインである。スタックには燃料交換デッキ 内のガスを排出する非常用ガス処理系のファンと逆止弁が連結されている。3号機は3月13日以降、複数回ウェット・ベントしている。ファンは停電で停止し ているからウェットベントするとベントスタックから原子炉建屋非常用排気系ダクト経由燃料交換デッキへの逆流はありえる。東電が12月22日行った調査で はこの逆流の証拠をみつけたという。4号機の水素爆発もベントダクト経由と考えられる。

しかしウェットベント前から原子力建屋内には放射性ガスが充満しており、各所に漏れがあったと推定される。格納容器蓋フランジ、ドライウェルの亀 裂、ドライウェルとサプレッションチャンバーを連結するベント管のべローズなどがその漏れ個所候補だ。意図せざるガス漏れはもっと始末が悪く、原子炉建屋 の地下室から燃料交換用の通路 を通って燃料交換デッキに抜けた。このため、原子炉建屋に水素が充満する結果となり、1号建屋と3号建屋を失ったのである。

ウェット弁操作の詳細は公表されていないが、バッテリー上 がりで遠隔操作弁が使えず、多量の放射線を浴びての困難な作業であった。ウェット・ウェル・ベントはシビアアクシデント対策としては最悪の対応である。フ ランスでは砂を充填した巨大な吸着塔を用意している。さて意図したベント より、大部分のガスは格納容器の圧があがると勝手にもれ出てきたのである。これが原子力建屋に充満し、一番弱い燃料交換室の壁と屋根が吹っ飛んだのであ る。

サプレッション・プールが満杯になってもベントできるようにドライベントラインなるものも用意してるようだが詳細は不明。今回は2号機ではドライウェ ルからベントするドライベントもしたと報道されている。


メルトダウンかメルトスルーか

メルトダウンを溶融して塊になり、内部が赤熱しているものが圧力容器の底板に乗っているか、一部が底の制御棒の貫通穴からこぼれてコンクリート上に溜まっ て いるか、底板と一緒に全てペデスタル床に落ちているかのちがいで本質的には大差ない。ペデスタル床にはサンプがありその底部から格納容器底板まではいかほ どもない。


福島第一原発を救う道はあったか?

結論から言えばイエス。全電源喪失、バッテリー水没、海水ポンプ損失でも放射能放出を防げた。無論、後智恵ではあるし、ないものねだりだ。

最も早く破滅に向かった1号機についてのべよう。バッテリー水没で全ての計器が沈黙した時点でアイソレーションコンデンサーの隔離弁が閉じる。その後、水 は崩壊 熱で蒸発し、水位は1時間ちょっとで燃料棒上部までさがる。更に1時間で燃料棒は完全に露出する。この間にまだ放射能はもれていないのだから原子炉建屋に 入ってアイソレーションコンデンサーの隔離弁を手動で開ければよい。そうしておいてアイソレーションコンデンサーに消防車から水を供給すればよいのだ。こ うしてジルコニウム被覆は守れたはず。

アイソレーションコンデンサーが別の原因でつかえないなら消防車で海水を汲み上げて消火ラインから原子炉に海水を注入すればジルコニウム被覆は守れ た。被覆が 健全であれば水素も放射能も冷却水にでてこない。ただ圧力容器内は圧力が80気圧と高く、消防車のポンプではヘッドが足りない。安全弁は格納容器内にあっ て遠隔でしか開けない。そのためにはまず早めにベント弁を手動で(地震で計装配管か破断したため遠隔は不可)開けて格納容器の圧をさげる。サプレッション チャンバーに備蓄した水の水温があがり、蒸気圧分圧があがるのであらかじめ注入している窒素を手動でベント弁を開ければよい。ついでバッテリー直結で電磁 弁を開ける窒素を送り込み、減圧して消防車から注水すればよかった。海水は圧力容 器内で結晶になり、冷却を阻害するので出来るだけ早く真水に切り替える。 サプレッションチャンバーが満杯になったらこの水も抜く、燃料棒が健全なら汚染度は非常に低い。これだけの処置 を継続しながら水没したシステムをゆっくり修理しながら回復することでいいのだ。ただ東電は事前に訓練していないからできるはずはなかったのだ。

被覆管が健全であれば核分裂物質は燃料棒の中にとじこめられたままであるので環境には放射性物質は殆どでない。運転員も安全である。ただ現行の原子力災害 対策特別措置法案という法体系ではベントを開けるのはいちいち政府の許可を待ってということになっているのかもしれない。海水注入となれば原子炉を失うこ とになる。とすると吉田所長が法と組織の処罰覚悟で無断で決行するしか時間的余裕ははない。吉田所長の脳裏にもしこういう可能性がよぎったら、管総理の指 示を無視したくらいだからやっていたとおもうのだが、残念ながそこまでは思いが至らなかったのだろう。燃料棒が露出しないかぎり、圧力容器内は放射能汚染 されないのでベントをあけてはいけないという法の精神に抵触しないとおもう。事前に想定して消防車も用意して社長の許可なくしてよろしいと全権委任してお けばよいだけのこと。法もそれをバックアップすれなよい。

しかし安全だといっている政府にも東電にも事前の権限委譲を認める気はなかったであろう。文系中心の日本ではないものねだりだ。文系官僚機構が法を作ると とんでもないものになる。なぜ文系優位ではいけないかというと文系は自分は分からない、部下の理系役人がOKだといったからだといいわけが出来る。しかし 理系の部下は首を切られないように上司の意向に従うだけなのだ。こうして組織は腐敗する。理系中心の組織は理系がトップになる可能性のない階級社会では碌 な人材は集まらず、雑魚の掃き溜めの腐敗した池になる。これが保安院を独立の組織にせよというIAEAの本当の理由である。もしこの独立の組織の長が文系 なら、組織が形式的にどくりつになっているように見せるだけのものになるだろう。おかしなことにIAEAの長は日本の順番だが、その人間は原子力村出身の 文系である。ここらへんは国際的な笑いものになっていることすら日本政府は気がつかない。ことここにきわまれり。私はこのままでは日本には希望がないと絶 望しかつ怒っているのだ。


時系列の記録

保安院が公表した格納容器ベントは下記の5回。ここでWVはサプレッション・チャンバーからのベント。WVはドライウェルからのベント

Unit No 1 2 3
March 12, 10:17 WV    
March 13, 8:41     WV
March 13, 11:00   WV  
March 14, 5:20     WV
March 15, 0:02   DV  

official announced venting

しかしアエラ(Asahi Shimbun Extra Report and Analysis)が整理し総合的に整理した記録では下表のようになっている。12日5:14の時点で1号機の格納容器に漏れが始まっていたのだ。

date

time

event

2011/3/11

14:46

scrum


15:41

emergency diesel generator stopped


22:00

mobile emergency diesel generator mal function

2011/3/12

2:30

pressure of primary containment vessel (PCV) of reactor-1 reached 840kPa>2times of design pressure


5:14

sudden de-pressuring of primary containment vessel of reactor-1 and detection of radiation


5:44

evacuation order

 

6:30

start pumping fresh water into reactor-1 by fire engine
 

10:17

intended wet venting of reactor-1

15:36

explosion of reactor-1building


20:20

switched to sea water

2011/3/13

2:44

unable to inject sea water into reactor-3 due to high pressure


8:41

intended venting radioactive gas from reactor-3

 

11:00

intended venting radioactive gas from reactor-2

15:29

high radioactive density of 1,015mSv/h by unintended gas release from reactor-3

2011/4/14

 5:20

intended venting radioactive gas from reactor-3

 

7:44

pressure of PCV of reactor-3 reached 460kPa

11:01

explosion of reactor-3 building


13:25

loss of cooling capability of reactor-2


16:34

start pumping fresh water into reactor-2 by fire engine


21:37

high radioactive density of 3,130mSv/h around reactor-2


22:50

abnormal high pressure of PCV of reactor-2

2011/3/15

0:02

intended dry venting from reactor-2

 

1:11

high radioactive density by gas release from reactor-2

6:00

explosion of reactor-4 building (possibly by gas from reactor-3 through vent stack duct or elsewhere)


6:14

explosion of PCV of reactor-2


9:38

fire in reactor-4 building

2011/3/16

5:45

fire in reactor-4 building


8:30

steam from reactor-3 building

historical record of event by AERA

圧力容器の圧と温度

圧力容器(RPV)の設計運転圧は87.5気圧、運転温度273oCである。スクラム後の圧力容器の運転状況と格納容器の状態は分 かりにくい。新聞やIAEAから、うかがい知ることができた圧力容器の状態は下表の通り。

Reactor No 1 2 3
pressure (Mpa)@March 23 0.25 - -
pressure (Mpa)@March 24 0.385 0.063 0.137
pressure (Mpa)@March 25 0.31 - -
pressure (Mpa)@April 5 0.4-0.7 - -
pressure (Mpa)@April 19 1.04 - -
temperature (oC) @March 22 302 - -
temperature (oC) @March 23 400 - -
temperature (oC) @March 24 182 105 185
temperature (oC) @March 28 320 - -
temperature (oC) @March 29 299

170

-
temperature (oC) @April 2 249 - -
temperature (oC) @April 5 237 142 90

historical pressure and temperature

3月26日発表の政府の原子力災害対策本部資料を週間朝日4/8号にまとめたものがある。これから再構築した16日までに公表された圧力容器の運転圧デー タに文部省のサイトに公表された 。その後の原子炉圧力容器圧力推移を加えると下図の通り となる。

record of operating pressure of RPV

1号機:3月12日2:45圧力容器の圧は一気に9.5気圧に下がった。この前日の11日20:00頃、メルトダウンで圧力容器の底に穴が貫通しは じめたと思われる。以後の圧力容器の圧は2気圧に下がったままだったがメルトした溶融コアや塩が底部に溜まり、連通した穴を閉塞し、水の通りが悪くなり、 圧力が次第に上昇。そして4月には入ってから3気圧程度、7日には下部で7気圧になった。冷却がうまく出来なくなって温度も400oC 以上になった。ジルコニウムもメルトしたコアに中に溶け込んでいるため、ジルコニウムの酸化せず、水蒸気はメルトした酸化ウランにふれて高温で熱分解し、 かつ強い局所的臨界で生じる中性子線と塩分の影響で水素と酸素が発生しているためなかなか温度が下がらない。注水量を増やすとかえて温度が上がる現象は局 所的臨界で説明できる。局所的臨界で生じる中性子線の証拠として半減期は30分程度の塩素38が検出されている。(4月20日この分析は間違いと修正)

2号機:3月14日19:02に圧が75気圧から7気圧にストンとおちた。このとき圧力容器の底が抜けたと判断される。格納容器の圧が上がって意図したド ライ・ベントをせざるをえなかった。

3号機:3月12日午前中に圧が80気圧から10気圧に急に下がったが、13日6:00頃に給水が停止して圧が最上昇し、その後急減した。このとき、圧力 容器の底が貫通したと考えてよい。格納容器の圧が急上昇したので意図したベントをせざるをえなかった。

圧力容器の温度の推移は下図の通り。

record of operating temperature of RPV


格納容器の圧力

格納容器(PCV)の設計圧は430kPa。格納容器に関しては新聞社は資料を入手してはいるはずだが正確な圧力は報道されていない。その後、文部省のサイトで16日以降の圧力の記録がみれるようになっ た。これをここでまとめてみよう。

record of operating pressure of PCV

1号機:12日2:45、格納容器の圧が9.5気圧に上がり設計圧を越えたあと急に圧が下がった。このときどこかに漏洩個所ができたようだ。しかしその後 圧はあがり、上下を繰り返しなら次第に下がって1.5atmでほぼ安定している。4月6日になって水素と酸素が格納容器に溜まり、水素爆発のおそれがある と米国のNRCが警告。ニューヨークタイムズにもすっぱ抜かれて4月7日には窒素を注入しはじめた。すると圧力がドライウェルが空であると想定したより早 く圧力が上昇した。内部にかなりの水が溜まっているようだ。1.5atmは水深5mに相当する。これは漏れているベロウズが水封される深さで、そのために ガスは水封され圧力が測定されるのだろう。水に関しては1号機の格納容器はいまでもジャジャ漏れ。NRCが心配するほど水は溜まっていない。

2号機:3月15日、0:02のドライベントをしたが、6:10の爆発音のとき、格納容器が破損したらしい。その後、圧力が大気圧に下がったままである。 温度が100oC以下に下がると水蒸気が凝縮して負圧になり空気を吸入する。そうすると水素爆発がありうるので窒素注入はしたほう が良いだろう。

3号機:3月14日、設計圧以上の異常圧を経験している。その後圧は下がったり上がったりしながら大気圧で安定している。温度が100oC 以下に下がると水蒸気が凝縮して負圧になり 、空気を吸入する。そうすると水素爆発がありうるので窒素注入はしたほうが良いだろう。

以上を総合すると格納容器は程度の差はあれ、いづれも損傷していると考えられる。


ガス漏れと意図したベントと原発周辺の空間放射線率

朝日新聞を含むマスコミは14日頃まで東電の公表する正門前と西門前の数値を掲載していたが、これとベント操作の相関が見えずナゾだった。データを探して いたところ「美浜の会」が東電と保安院が公表した原発敷地での空間放射線率の生データから次のような統 合図を 作っているのを見つけた。Uは予期せざるガス漏れ、Vは意図したベント、Eは爆発を示し、番号は原子炉番号として著者がマークした。意図せざる格納容器の 漏れと見られるものが多い。大気漏れ出た総放射性物質の2/3は2号機から漏れたものであることが分かる。16日以降は西風のため、風上にあるセンサーに はピークがでなくなっているが、地面からの放射だけは見えている。

Radiation in power plant (V; intended vent, U; unintended leak, E;explosion)

以上はすべてガンマ線の計測である。東電は14日午後9時ごろの2号機ベント時、福島第一原発の正門で中性子線を検出したと発表した。使用済み燃料棒をい れたキャスクの側ではシールドを透過して中性子がでてくることもあるので再臨界ではないという説もあるが局所的再臨界からでてくるという説もある。

「美浜の会」は対数目盛りだがNY timesは普通目盛りで掲載している。14日23:00原子炉から格納容器に蒸気を逃がす二つの弁が完全に閉まり、原子炉内の蒸気圧力が上昇し、海水の 注入ができなくなった。そこで15日00:02原子炉から直接ドライベントした。当然これまでに放出された蒸気より放射能が高い。

Radiation reported by NY times


圧力容器でメルトダウンは生じたか?

全ての炉において水位計は燃料棒が露出したことを示していた。そして格納容器から漏れ出た溜まり水から燃料と同じ組成の核物質は見つかっている。特にプル トニウムやストロンチウムが周辺の土壌から見つかったことで1号機 から3号機の全ての圧力容器底部に穴が開き、コアの成分が冷却水(海水)に溶解して格納容器に流出していることは確実視される。1号機は11日の内にはや ばやと圧力が下がっているので もっとも早く進展した。燃料棒が冷却水より露出し表面温度が500-1,200oC以上になるとジルコニウム被覆は水蒸気と反応 し、水素ガスを生成し、自身はもろくなって割れる。1,800oC以上になるとジルコニウム被覆は熔解する。中味の酸化ウラン・セ ラミックスがこぼれて溜まり、温度が2,500oCになるとセラミックスも割れて粉になる。温度が2,700oC になると酸化ウラン・ジルコニウム共晶混合物となる。これが鏡板の上に集積し高熱を発する。この熱で圧力容器の底の貫通部に欠損が生じ、冷却水が格納容器 に流れ出したと推定される。海水注入で1号機圧力容器に溜まった塩は次第に底の穴を塞ぎ、流動抵抗が増えて4月5日からは圧力容器内の圧力が上がってい る。温度も一時400oCに上昇したのち、200oC前後でなかなか冷えない。

一方2-3号機はいずれも圧力容器は14日と12日に底板貫通部が破損したままで、格納容器と連通していることは同じ。

米DOEは4月1日、1号機の核燃料の70%が破損、2号機は1/3が破損としている。ちなみにスリーマイル島は45%が溶融したとしている。1号機はメ ルトしたコアが底に溜まっている。2号機は底に穴があいてメルトしたコアの一部が格納容器に落ちている。3号機は底に小さな穴があいている。

drain, IC & CRD housing penetration at the bottom of the reactor

圧力容器には500本ほどの制御棒駆動機構(control rod drive CRD)ハウジングた数本のインコア(IC)モニタハウジング、ドレンパイプが貫通しており、CRDには1本当たり約200kg程度の燃料集 合体と制御棒一式が乗っている。

CRD and fuel assembly

冷却水が無くなって赤熱したコア部分からぽろぽろと落下してくる高熱の酸化ウランというセラミックスのデブリは圧力容器底部に落ちて塊となり、中心部は高 熱となり、周辺を過熱する。底部鏡板中央にあるドレンホールには細いがゆえに肉厚の薄いステンレス管が溶接されている。これが真っ先に熔けるか割れてて内 部の高熱の蒸気を格納容器に漏らすだろう。底部それから 炉内の中性子を計測するICモニタハウジングと沢山のCRDハウジングはスタブチューブという短いパイプを炉内面に隅肉溶接されている。そしてインコロイ 製のハウジングをスタブチューブに通し、スタブとハウジングを隅肉溶接した構造になっている。隅肉部は弱いので熱で割れ、海水をいれたので応力腐食割れ (SCC)が生じ、ハウジングがいくつかストンと下に抜けたかもしれない。当然格納容器外に設置された制御棒駆動装置に連なる細いマカロニチューブも破断 されただろう。破断口は格納容器外にある制御棒駆動装置や復水タンクと連なっている。ここを逆流したかもしれない。


格納容器内放射線と燃料棒損傷率

4月6日現在文部省の福島原発原子炉の状態原子炉の放射線量によれば

1号機:燃料棒の損傷率は70% 31.1SV/h  これが4月8日突然100SV/hに上昇。4月7日の地震の影響?(2014/8/7全ての燃料は溶け落ちていると公表)

2号機:燃料棒の損傷率は30% 31.3SV/h(2014/8/7 60%は溶け落ちていると公表) 

3号機:燃料棒の損傷率は25% 19.8SV/h(2014/8/7今までの予想よりはやく13日午前にはメルトダウンが始まり、大半は溶け落ちている と公表)

いずれも水位から推算したものだ。一時一号機は55%と修正、5月13日になって一号機の水位計の補正後液面はゼロと判明し、損傷率は100%となった。 これから判断すると二号機、三号機もすべて損傷率は100%とみてよさそうだ。

2011/11/30に東電は1号機のコリウムは完全にペデスタルに落下し、深さ81cmのリング状のミゾに溜まり、このコンクリートを深さ 65cmまで浸食し、格納容器壁まで37cmを残すのみとなったとの推定を発表した。2、3号機のコリウムの大部分はまだ圧力容器内にとどまっているとい う。


意図しない局所的臨界は生じているか?

Peace Philosophy Centre, based in Vancouver, Canadaが モントレー国際問題研究所不拡散研究センターの研究員、フェレンツ・ダルノキ・ヴェレス博士(F. Dalnoki-Veress)による論文のIEERエネルギー環境研究所所長であるカリフォルニア大学バークレー校工学博士アージャン・マキジャーニに よる解説文を掲載した。論文はWhat Caused the High Cl-38 Radioactivity in the Fukushima Daiichi Reactor #1?と いうもの。Nature電子版にも掲載。これによるとヴェレス博士は 3月25日に共同通信が1号機タービン建屋の溜まり水の東電の分析結果を掲載した。そこに半減期37分の38塩素が1.6MBq/ccとあったのをみて ビックリした。使用済み燃料に含まれるキューリウム243、244などの超ウラン元素は自発的核分裂をして中性子を放射する。当然半減期37分という短命 の38塩素も微量生成するが排水中に含まれていた量はとてもそれでは説明できないほど多量であった。1号機では時々中性子ビームを発する局所的再臨界が生 じているとすれば説明できる。炉底に溜まった塩に中性子が照射され、38塩素が作られててタービン室地下にでてきているというのである。分析間違いの名人 の東電だから間違いかもしれない。 (4月20日この分析は間違いと修正)しかし分析が正しいとするなら、これだけの量を製造する中性子は超ウランが崩壊して出す中性子の量では説明がつかな い。局所的に臨界になっていると推定できるというのである。

38塩素が生成するなら同時に24ナトリウム(半減期15h)も生成するがしれは検出されていないため、東電の分析間違いだろうという見方もある。

京大原子炉実験所助教小出裕章 氏も4 月6日、同じ指摘をしている。38塩素があることと、ヨウ素がいっこうに減らずむしろ増えてることもその理由としている。臨界のときに出るだろうと思われ るヨウ素134というのがある。前に東京電力が検出したと発表したのが間違えてたということがあったのだが。実際は分析者が間違えるということはないだろ うと思うし、ヨウ素が減らないということは、ひょっとすると、と今は思うようになっていると考えているという。臨界といっても爆発はしない。温度が上がり 形状が変わると臨界がおさまる。おさまるとまたもとに戻って核分裂反応が始まるということを繰り返しいつまでたっても発熱が止まらない。2号機にもこの傾 向がある。小さな原子炉がいつまでも動いていて止められないという状態なっている。動いているということは、核分裂生成物を次に生み出してるということだ から、放射能が次から次へ漏れてくる。それがヨウ素の濃度が1億倍を超えてしまったということ。ホウ素の注入量が少なすぎたので局所的臨界が継続している のだ。そういえば海水から真水に切り替えたときホウ素の添加をやめたという報道があった。

国際原子力機関(IAEA)の原子力安全担当のデニス・フローリー氏が、福島第1での再臨界の可能性について「最終判断ではない」としたうえで「これ(再 臨界)は部分的に起きる恐れがあり、放射性物質の放出が増加するかもしれない」と述べたとしていると米ブルームバーグ紙が報じている。

東京電力は23日、東電福島第一原発の原子炉建屋の約1.5km西にある正門付近で、これまでに2回だけ計測されたとしていた中性子線が、12-14日に 計13回検出されていたと発表した。燃料棒プールからと考えたほうが良いかもしれないが、関係あるかもしれない。

4月7日の7Mの余震後、1号機の温度が急上昇を始め、内部の放射線強度も急に3倍になったことも説明できる。震動でより臨界が維持しやすくなったと説明 できる 酸素と水素が発生しているとして慌てて窒素ガスを格納容器に注入しはじめた理由の説明になっている。

核物理学者の森永先生に局所的臨界現象について聞いたころ、コアがメルトしてしまうとホウ酸を投入してもメルトしたコアの中には届かない。実際東電は真水 に切り替えてからホウ酸の投入はしていないようだ。したがって、ずっと局所的臨界は発生していてもおかしくはない。東電の担当者が朝日の記者に語った、 「注水量を増やすと炉頂の温度があがる。不思議だ」というつぶやきは水のファットマン効果を疑わせる。制御棒は無論燃料棒と一緒にとけて圧力容器の下のほ うで熔けて熱いタドンのようになった塊のなかに溶け込んでいるだろう。制御棒は炭化ホウ素、カドミウム合金、インジウム、銀など中性子吸収剤 をステンレスで包んでいて融点は1400oCである。これが熔け込んで濃度の高いところでは臨界にならない。しかし均一に混ざって いるわけではないから、まるでないところもある。そういう局所的なところでホットスポットになっていると も考えられる。4月6日のM7の余震の後、温度が再上昇し、260oCになった。その後も3日間220oC を維持している。局所的臨界が疑われる。臨界のとき、中性子線のパルスが出るので分かるはずだが、炉心内部の現象なので厚い遮蔽のために外には中性子線は でてこない。局所的臨界しても薪が弾けるようにパチパチと瞬間・局所的ミニ爆発をしてジェオメトリーが変わるので液体燃料の東海村の臨界のように継続する ものではない。局所的臨界を証明するためには中性子によって合成される自然界には存在しない放射性アイソトープが排水にでてくるので、ヨウ素やセシウムが 発するガンマ線だけでなく、広域のガンマ線スペクトルを測定すれば確認できるのだがとつぶやいている。安全委員会でそのような指導をする立場だけれど日本 では核物理学者は死に絶えたからどうかな?とおっしゃっていた。

ただ圧力容器内部で「局所的臨界」となっても中性子は遮蔽で外にはでてこない。問題は遮蔽のないプールで局所臨界となると東海村のように死者が出る。死人 となる人は自分の眼球の中の水が青色のチェレンコフ光を発するのを見る。そしてオゾンの臭いをがぐことになろう。その後数日にして死に至る。 現場で働く作業員がもってい線量計は中性子を検知できない。これは労働衛生上問題となろう。

東電は4月20日、塩素38の測定値は間違いであったと発表。これに対し、フェレンツ・ダルノキ・ヴェレス博士は「Cl-38 の読みは1.6MBq から「検出限界未満」と変更され、変更理由は「主要ピークによる核種の同定及び放射能濃度の決定」とされる)誤りを撤回したのかについて、説明が願わし い。たとえば、Cl-38の主要ガンマ線は1.64MeVおよび2.16 MeVにある。これらがいかなる線と干渉して6桁下げることが必要とされたのだろうか。もしカウント値がCl-38 の為でなかったのなら、いかなる同位元素が1.6 MBq/mLに匹敵するカウント値を持っていたのか分かる全スペクトルデータと資料採取日の公表を求めている。

8月25日に 奥 州市の前沢下水浄化センターの下水汚泥から2,300Bq/kgの放射性ヨウ素131が検出され、さらに9月2日、9月6日の検査でも、そ れぞれ590ベクレル/kg、480ベクレル/kgが検出された。放射性ヨウ素131半減期が8日なので、これは局所的臨界が継続していることの証拠。す なわち福島は簡単には収束しないようだ。

11月2日未明東電は2号機原子炉内で局所的再臨界の疑いありとしてホウ酸水を注入した。10月28日から稼働していたガス管理システムが半減期5日のキ セノン133、半減期9時間のキセノン135を検知したためである。同時に水素濃度も増えた。これは中性子などによる水の分解によるものと考えられてい る。ただ周辺の放射線は増えていない。連鎖反応ではなく、プルトニウム、キュリウム242,244など超ウラン物質の自発的核分裂でもキ セノンが発生する。この公算が大きい。

1号機、3号機でも同様に局所臨界の可能性は考えられるが、1号機ー3号機の中性子測定器は故障しているし、1-3号機は放射線は強くて格納容器にガス管 理装置を設置できていないため、キセノン分析も中性子測定も、水位計もなしにめくら運転している。

渡辺悦司氏、遠藤順子氏、山田耕作氏の共著「放射性微粒子の危険性の完成版」 は事故当時採取された放射性微粒子が、セシウムだけでなく、ウラン、ジルコニウム、モリブデンなどの原子を均一に含む合金・ガラス状の球体であることが解 明された。このような事実は炉心溶融物内で、温度がメルトダウンの温度(上記 2865℃)を大きく超えて上昇した可能性が高いことを示している。水素爆発の火炎温度は、空気との反応で2040℃でしかなく、このような高温を生じる ことができない。 それができるのは崩壊熱か臨界だけであると考えるのが自然であろう。ウラン金属の沸点は4131 °Cだから崩壊熱でも局部的にそのくらいにはなる。炉心では制御棒は先に熔けて落ちているか局部的に臨界になり、ウラン蒸気を噴出したということもあるだ ろう。特に3号炉はプルトニウムが多かったので臨界量も小さい。

3号機圧力容器上部フランジ部過熱メカニズム

4月14日になり、圧力容器上蓋フランジ部が166oCから252oCに上昇した設計温度は302oC である。上蓋フランジ部の内側には水と蒸気を分離する装置Steam separatorsとSteam dryerがある。注入水はどこから入っているか公開情報では不明である。望ましい注入場所は無論、Steam separatorsとSteam dryerの上のヘッドスプレイからが望ましい。仮にメルトしたコアが放射線や赤外線をだしていたとしてもseparatorsとSteam dryerが受け止め、水冷してくれる。

東電が公表したポンチ絵では消防車で消火系または復水供給系に注入しているというだけでその水が圧力容器ヘッドスプレイのMO弁を開けたのか低圧注水系の MO弁をあけたのか全く不明である。そもそもバッテリーが上がっていたのだから遠隔操作弁は皆閉じているはずである。多分手動弁を開けたと思われるが、そ ういう情報は技術音痴の記者諸君が質問しないことをいいことに頬かむりだ。

もし注入点が給水管レベルの低圧炉心スプレイ系経由であれば、Steam separatorsとSteam dryerは冷却されない。溶融して固まったコアから放射されるガンマ線により水蒸気が分解され、発生した水素と酸素が、上部には出口がないから、そこに 溜まる。そして可燃域に入れば爆発もせず、静かに燃焼し、水蒸気にもどる。放射線で分解した水素と酸素が水注入点より上で継続的に燃焼して高温ガスとなっ ても冷却されないことにある。こうしてコアが発生する放射線エネルギーが圧力容器上部をあたためる仕掛けが自然とできあがっていると考えられる。解決法は 水注入点をSteam separatorsとSteam dryerより上にすべきということ。

一号炉でも全く同じことが発生しているのかもしれない。局所臨界で1号機の高温を説明できるが、こちらである可能性もある。もしそうであるなら現在続行中 の一号機格納容器に窒素を注入してい るのはピエロのような行為ということになる。

注入した水は溶融して固まってしまったコアの表面を冷却して100oCの温水となって圧力容器底部から下に噴出しているのだろう。 温泉と同じ原理だ。かなり強いラジウム温泉ではあるが。コア内部は高温のまま。この状態は変えようがない。再臨界していないのをよしとするしかないのだろ う。

東電が詳しい注水点をどこかと説明せず、温度データをだけを発表し、計器故障という常習犯的思考様式に逃げ込んでいるが、計器故障などで役人はだませても 市民をだませるとで思っているのだろうか。いたずらに不安を増して、風評被害で迷惑をかけ続けている。そして自づからもこの説明に安住して危険を見過ごす 行為ではなかろうか?

4月19日に230oCに下がりつつある。


格納容器の脆弱性

ゼネラル・エレクトリック社でマーク1の安全性を再評価する責任者だったデール・ブライデンバー氏(79)が毎日新聞に格納容器について「設計に特有の脆 弱さがあった」と指摘。容積が小さいことが最大の理由らしい。開発後に社内で強度を巡る議論をしたが受け入れられなかった。ブライデンバー氏はGEを辞 め、原子炉格納容器の上部が小さく、下部と結合する構造が脆弱で万一の事故の際には危険であることを米議会で証言。マーク1の設計上の問題は、米原子力規 制委員会の専門家も指摘し、GEは弁を取り付けて原子炉内の減圧を可能にし、格納容器を下から支える構造物の強度も改善。GEによると、福島第1原発にも 反映された。「補強しても基本設計は同じ。 圧力容器破損などで生じた力に耐えられる強度がなかった」という。

ガンダーセン氏が原子力規制委員会(NRC)で証言したように

@格納容器の容積は圧力容器の20倍しかなく、圧力容器の安全弁が作動するか底が抜けると設計圧を超えてしまうことが問題とされた。このために後付で ウェットベントを追加したが、操作前に格納容器が破れてしまった。(管さん引きおろしのための国会でのベント論争は全く無意味な場外乱闘にすぎない。つい でに海水いれた入れないもメルトダウンしたあとのことで無意味な論争)
Aサプレッションチャンバーに備蓄してある水の量が少なく、温度があがり、スプレーポンプがNPSH不足に陥ってベーパーロックを生じ、炉心冷却ができな くなる。(これはアーニー・ガンダーセンが指摘しているが福島で生じたかは不明。1号機にポンプはなく、2、3号機では上手く作動していたと思われる。
Bサプレッションチャンバーとベント管は裸でベロー付き、そしてコンクリートで補強していないので設計圧通り壊れる(福島1-3号機で発生したこと)

したがって東通1号、女川1-3号、浜岡1-4号、志賀1号、敦賀1号、島根1-2号が同じ問題を抱えていることになる。


サプレッション・チャンバーは破損したか?

福島原発はGE Mark-Iという沸騰水型(BWR)原子炉である。制御棒が水圧で圧力容器下部から挿入する形式をとり、ドライウェルという西洋梨型の格納容器に収納さ れている。ドライウェルはぶ厚い鉄筋コンクリートで包まれているが、サプレッション・チャンバーというトーラス型のウェットウェルは裸で地下室に設置さ れ、ドライウェルとウェットウェルを連結するベント管は熱膨張吸収ベロウズを組み込んである。したがって内圧が設計圧を超えると、漏れやすく、破裂するこ ともある。特に熱膨張吸収ベロウズは薄肉で破れ安い。

3月15日、2号機サプレッション・チャンバー付近で爆発音がしたとき(後に4号機の爆発音と確認)、確かに環境の放射線量はピークを示した。爆発 音以降格納容器の圧が計測不能だから破損 したと東電は言う。爆発音がしたとき、圧力検出センサーが破壊されて計測できていないだけかもしれない。圧力容器内のメルトしたコアが圧力容器内下部に落 下して水蒸気爆発した時の衝撃波が安全弁経由サプレッション・チャンバーに放出されたなどの仮説が披露された。しかし圧力容器の底が一挙に抜けない限り、 水蒸気爆発など生じない。幼稚な学者の説と聞こえる。圧力容器の底板がドカンと抜けるのではなく、ドレンや制御棒が抜けた穴から水と蒸気が漏れる程度では 水蒸気爆発は生じない。また水が圧力容器から漏れてはいるがインナー・ペデスタル・エリアに多量の溜まり水がない場合も水蒸気爆発は生じない。そして格納 容器にはすでに漏れ個所があり連続的に流出しているのだからインナー・ペデスタル・エリアに多量の溜まり水があるわけがない。だから水蒸気爆発は生じな かったし、今後も生じない。

3月27日に至り、1-3号機タービン室地下とピットから多量の水が発見されたことからと、意図したベントと関係なく、間歇的に放射線強度が突発的 に上昇した ことからも、全ての格納容器は破壊されていると推定される。ただその漏れ量は少な く、大部分は津波がもたらした海水のようである。格納容器に破壊個所があるとすればエキススパンジョン・ベローズだろう。熱膨張を吸収するために薄いステ ン レス管で作た蛇腹管だから設計圧の2倍の内圧で真っ先に破れる。エキスパンジョン・ベローズはドライウエルとトーラスを結ぶ10個以上あるベント管につい ている。(下図褐色部) もれた汚染水は トーラスを収納する原子炉建屋の地下を満たし、溢れてケーブルダクト、ないし配管を通すトンネルを経由してタービン建屋に流れて溜まったと考えるのが妥当 だろう。 仮にエキススパンジョン・ベロウではなく、別の個所であっても漏れた水はまず原子炉建屋の地下に流下してそこを満杯にしてからケーブルダクト経由でタービ ン室に流れ込む。溜まった量も注入した総量とほぼ一致している。

3号機も4月2日に格納容器圧が大気圧なのでほぼ同じように格納容器は破損している。


Path way of radiation material


2012/2/1、原子力安全基盤機構は、事故後の1〜3号機は圧力容器が高熱になり、格納容器内の温度は280〜500度°C以上になったとみられる。 格納 容器の隙間をふさぐ樹脂などは高圧だと250°C以上で中の蒸気が漏れる可能性があり、500°Cに達すると約1ミリの隙間ができる。300平方センチ程 度の 破損に相当すると公表。

2012/12/11東電はロボットを使って2号機の8本あるベント管のうちの1本のベント管とプレッションチャンバーを連結する部分を撮影しもれは発見 できなかったと発表。

格納容器への窒素注入

4月6日になって東電は米原子力規制委員会(NRC: Nuclear Regulatory Commission) の専門家のアドバイスに従い1号機格納容器に水素爆発防止のため窒素を注入するという。6,000m3の窒素ガスを6日間に渡って 注入するという。これは格納容器の内容積の2倍の量だ。その理由として2通り考えられる。

@格納容器はあらかじめ窒素が封入されているわけだから、次第に温度が下がれば内部の水蒸気が凝縮して負圧になり、2-3号機は空気を吸い込むかもしれな いと考えるのは妥当。ただベロウズが水没しているので水封され、空気を吸い込むおそれはないはず。それにしても6,000m3は多 すぎる。この際、ドサクサにまみれて汚染ガスをベントしてしまい、作業環境を良くしようという魂胆かもしれない。

A水が高温や強いガンマ放射線や局所臨界による中性子線を浴びれば酸素と水素に分解する。通常運転時は水蒸気とともにタービンに入り、復水器で未凝縮ガス として真空ポンプで脱気され、ベントスタックから捨てられる。崩壊時はガンマ線などを出すが中性子線をださない。もし小さな領域で臨界などが生じていれ ば、中性子線がでて酸素と水素が発生する。水素が4%以上、酸素が5%以上なら爆発する。設計圧100気圧の圧力容器なら耐えられるが、設計圧が4気圧そ こそこの格納容器程度では耐えられないと考えたのか?

NRCは上昇する水位によって格納容器に重圧がかかると指摘している。格納容器に水が多ければ多いほど、余震によって壊れる可能性が高くなる。元GEの原 子炉設計者、マーガレット・ハーディングも余震を警告して言った。「私が日本側の担当者だったら、地震の後にその構造的完全性を確認もできていない格納容 器に何トンもの水を入れたままにしておくことはしない 」と。マーガレット・ハーディングの危惧は杞憂である。なぜなら1号機格納容器は水がジャジャ漏れで満水になる恐れはない。

1号機はアイソレーション・コンデンサー(非常用復水器)が装備されていた。アイソレーション・コンデンサーを 機能させる弁がバッテリーの水没で閉じ、アイソレーションコンデンサーは地震後1時間である直容器から切り離されてしまった。結果、11日中に格納容器の 圧が設計圧の2倍以上に上昇して早期に破損したと考えられる。東電は格納容器の水素爆発を防止するために6,000m3の窒素を注 入するのだと大々的に宣言し、4月6日から413Nm3の 窒素を注入した 。しかし圧力が156から176kPaに上昇した。予想より早く上昇するしたのは水位が高くなっているのではとの東電のつぶやきが報道された。これは ニューヨークタイムズにスッパ抜かれた米国のNRCが懐いた高水位と余震の危惧を共有していたからと思われる。本当にそうなら大変危険だ。そこでNRCと 東電の危惧が当をえたものか理想ガスの状態方程式を仮定してドライウェルの残り空間を推算してみた。理想ガスの状態方程式は

PV=nRT

だから注入した窒素のモル数nは

n=100 x 413/RT

あらかじめ格納容器にあったガスのモル数n0はドライウェルの空間容積をV0とすれば

n0=156 x V0/RT

注入後の状態は

176 x V0=(n+n0)RT

だから

V0=(100 x 413 +156 x V0)/176

V0=2,065m3

となる。概略の寸法から推算したドライウエル内容積から圧力容器の容積を除いた容積は2,152m3だからぴったり一致 する。ドライウェルまで水位は上昇していない計算結果となる。やはり1号機の格納容器は水に関してはジャジャ漏れなのだ。漏れ個所が原子力建屋の地下室で 水封されているからガスは漏れていない。住民にとっては不幸中の幸いでもある。だがもれ出る水をどうかしなければ東電は膨大な漁業補償に直面する。ちなみ に東電が用意した窒素ガス6,000m3を全て注入すれば圧力は446kPaに上昇し、設計圧の430kPaを越えてしまう。まーそうなる前に水封圧以上 になれば汚染ガスがぶくぶくでてきてまた原発周辺の放射線濃度があがる。すでに格納容器内ガス 放射線濃度は上がってメーターは8日から100Sv/hで振り切れて いるが東電は計器故障と言っている。

4月9日に1.9気圧になったきり、6,000m3注入してもそれ以上圧力の上昇はないという。不思議なことに周辺の放 射線強度は上がっていないが建屋内は4月18日には二重ドアドアの外で270mSv/h(2号機12mSv/h、2号機10mSv/h)であるから、注入 した窒素だけもれているのだろう。5月4日に17,000m3注入したというが圧は大気圧に下がったままである。現場の吉田昌郎所 長は窒素注入には反対だったそうだが、本社がやれと命じたのだそうだ。

7月末に1号機格納容器内のセシウム137濃度は20Bq/m3と非常に低 い。ほとんど漏れてしまったようだ。

2012/1/20になって東電は2号機の格納容器の予備のケーブル貫通口経由でオリンパス製のファイバースコープ内視鏡を挿入し、内部の水位を確認しよ うとした。水位計は格 納容器底部から4.5mのはずが4mのところにある作 業点検用のグレーティングより上には見えなかった。格納容器下部が破壊されているのだから水が溜まっていないだろうと予想できるはずだが、まだ狂っ た水位計に期待するなどかなり、甘い集団と見える内部温度は44°C。内視鏡のCCDは格納容器外にあったがそこの放射線強度は20-30mSvのため鉛 遮蔽したそれでも白い斑点がチラチラする画像しか得られなかった、

2012/3/26になって2号機の格納容器の予備のケーブル貫通口経由でより長いファイバースコープ内視鏡を挿入し、内部の水位を確認したところ底より 60cmしかなかったと公表。内部の放射線強度は72.9Sv/h。2012/4/18のロボットによる調査でもサプレッションチャンバーのマンホールが 健全であることが確認された。これらか らサプレッションチャンバーとドライウェルを連結するベント管のベローが破損しているのではとの当初からのわが推論が正しかったのではないか。注入水はす べてベント管ベロー部から地下室に漏れ出ていることになる。トーラス室天井部の配管の保温カバーが外れて垂れ下がっている。トーラス室の放射線量は 118mSv/h。

格納容器での水素爆発

建屋を吹き飛ばした水素は明らかに高温でのジルコニウムと水蒸気の反応で発生したものだ。しかし圧力容器下部と格納容器底に落ちて溶融して固まったコリウ ムは4ヶ月も散水すれば少なくとも外面の温度が下がり(内部は高温だが水蒸気は入り込めない)放射線で発生する水素が発生主体となるだろう。そうすると水 が放射線で分解して水素と酸素が同量発生するので爆発の危険はないとはいえない。

大気圧の格納容器内にある水素が爆発しても格納容器の強度が10気圧程度なら持ちこたえる。特にコンクリートに覆われているドライウェルは持ちこたえるで あろう。しかしサプレッションチャンバーやベント管はもたないしすでに破損していてガスと汚染水が垂れ流しになっている。もし水素爆発が生じれば、この破 損口が拡大し、汚染が広範囲に拡大する可能性はのこされている。

1号機に続き、6月にはいり2号機にも窒素注入開始したと報じられているが、3号機は汚染が激しく、まだ作業員がはいることができず、窒素注入は開始して いない。ロボットにて清掃するも安全レベルには下がらない。床に鉄板を敷くことを検討しているという。

そして3号機にはプルトニウム燃料が装荷されているのだ。

3 号機の爆発のビデオを見るとリングと茸雲が見える。これは爆発したガスが円形の口から放出されたことを示す

原子力建屋地下室に溜まり水はあるか?

結論からいうと1-3号機すべての地下トーラス室は水没している。水はルーバー経由で流れ込んだ海水、漏洩水だろう。4号機は無論、水没していない。その 理由は4月11日の余震の加速度データは4号機のものしか公 表されないからである。1-3号機は水没して死んでいる。ただトーラス室の横にある2-3号機のHPCI室にあうポンプは動いていたのだから水没はしてい なかったのだろうか?

上の筆者の推測は5月に入ってからようやく行われたロボットを送り込んだ調査でもグランドレベル以上のフロアーからの水漏れは発見されなかったことからも 正しい。

1号機のロボット検査は6月4日になって地下室からの配管貫通部のゴムが劣化して4,000mSv/hの水蒸気が噴出しているのを撮影。

2号機は99.9%と湿度が高く、水滴が滴り落ちている。これは最上階が破壊されていないため、燃料プールから蒸発した水蒸気がこもって凝縮したため かとプールの冷却器を設置して33oCまで冷却したが、湿度は下がらない。やはり地下室から湿度が上がっているようだ。5月14日 に作業員が1号機原子力建屋地下にはいって地下の溜まり水を目視確認している。

3号機は障害物が多くよくわからないが多分溜まり水はあるはず。

1-3号放射能とタービン建屋地下の溜まり水の流出経路はどこか?

原子力建屋地下室からケーブルダクト、ドレン水配管などを経由してタービン建屋に流れ込んでいると推定するのが妥当であろう。 ただ2号機を除き、溜まり水の汚染度は2号機を除き、低いのでかなり津波の海水が混じっている可能性あり。

格納容器蓋のシリコンゴムガスケット、格納容器に出入するパーソナルエアロックのガスケット、ケーブル貫通部、制御棒駆動マカロニチューブ、計器の信号 ケーブルの貫通部などからガスがもれてる可能性もある。ケーブル貫通部(cable penetration)はエポキシ樹脂で固めてある。黒煙がでて火災があったことが分かっているが、いずれかの樹脂が燃えたのだろう。漏洩量が0.5% /dayでプラント境界の放射能量が一定値に達しないなら格納容器の使用前検査はパスする。今回のような異常を経験すれば漏洩量が増えておかしくない。以 上、元東芝設計者後藤政志氏。ただこれらのいずれからの漏洩であろうと、もれた水はまず原子力建屋の地下に流れ込む。それにドライサンプの貫通穴は全て水 面上にあるのでガスは漏れても、水は漏洩しないはずである。

タービン建屋地下に水が溜まり、ヨウ素やセシウムが出ていることから1号機の格納容器の漏れは少ないが3号機は2号機と同様のベロ-部またはサプレッショ ンチャンバーの他の弱い個所の破壊と漏洩が生じていると考えられる。

BWRは炉心循環水が直接タービン室に連結されているため、蒸気隔離弁が閉じても隔離弁に内部リークがあり、配管がどこかで破損されればもれる。 しかしーのラインには逆止弁、隔離弁があるのでこれらが開いていたとは考えられない。地震動がこれら重要個所を破損したかもしれないが、その可能性より格 納容器のベローズ 等の損傷の可能性大である。復水器の冷却海水も止まっていたから復水器に溜まっていた水は給水ラインを逆流したとしか考えられない。復水器が地震で壊れて 海水が漏れている可能性もあるが海水ポンプは止まっている。サプレッション・チャンバーの水を圧力容器に循環して残留熱を除去するポンプ系からもれている 可能性もあるが、循環ポンプは原子力建屋地下で水没しているはずだからありえない。

containment of BWR

いずれにせよ、2号と3号格納容器は常に漏洩している。特に2号が多いようだ。

Steam isolation valve

Primary containment access lock

tube between CRD and control unit


タービン室地下および配管・ケーブル・トレンチの溜まり水

1号機のタービン室には18日ころから溜り水が見られるようになり、水深は40cm、放射能濃度は2.9MBq/ccと判明。炉心から流れ出した水が格納 容器の破損部経由で 原子力建屋地下室に溜まり、あふれてトンネル経由、タービン建屋地下に流れでていることは組成から断定できる。27日から仮設ポンプで復水器へ戻し始めた がすぐ復水器は満杯になり、30日ではタービン室は水深さは半分になっただけ。

2号機のタービン室に27日ころから水がたまり始める。溜まった水の水深は1m、放射能濃度は2.9GBq/cc(通常の10,000,000倍 )と発表された。しかしこれは間違いで、通常の100,000倍(29MBq/cc)だという。炉心から流れ出していることは組成から断定できる。もれた 水量はタービン室地下で長さ100m、幅10mに溜まり仮に水深1mとすれば100m x 10m x 1m = 1,000tonとなる。復水器は一杯で収容できない。そこで東電はこれを復水タンクに移そうとしたがこれも満水。3日かけてサージタンクに復水タンクの 水を移し、復水器の水を復水タンクに移す玉突きをやろうとしている。4月9日にようやく完了した。4月10日にタービン室地下から復水器へ汲み上げ開始す るという。

3号機のタービン建屋地下で24日作業員被曝。溜まった水の水深は1.5m、放射能濃度は3.9MBq/cc(通常の10,000倍)と判明。炉心から流 れ出していることは組成から断定できる。復水器は一杯で収容できない。復水器内の水の組成は発表なし。

さてこの溜まり水を復水器に収容しようとしたところ、1号を除きほぼ満水だった。そこで東電はこれを復水タンクに移そうとしたがこれも満水。3日かけて サージタンクに復水タンクの水を移し、復水器の水を復水タンクに移す玉突きをやろうとしている。4月9日にようやく完了したという。

このほか海水配管を通すトレンチが満水で1号機は大部分海水のようだが、2号機は間違いなくタービン建屋の溜まり水が流れこんだ模様。3号機は未調査。海 水ポンプや海水スクリーンの電力ケーブルを通すトレンチにも同じ溜まり水が流れ込み、4月1日、海水スクリーン横から高濃度汚染水が取水口の海に漏水して いるのが見つかった。これはセメントで漏れ止めしたが止まらない。吸水性高分子ポリマーを流し込んでも止まらない。コンクリート製トレンチの下に敷いた敷 石層が水脈となって流出していると見られる。流出量は7ton/h程度、2号 機への注水量とほぼバランスしている。敷石層に水ガラス(珪酸ソーダ)を注入して流量は少なくなり、ついに4月6日完全に止まった。濃度はヨウ素で 300,000Bq/cc。セシウムで排出基準の1,100,000倍という。

4号機のタービン建屋の地下には水は溜まっていなかったが4月18日になって溜まりはじめたという。1-3号機の汚染水をこれに移すことを検討中と報道さ れる。

5、6号機の地下にも地下水の湧出はあるという。

東電は4月11日からタービン室地下とピットの溜まり水の排水のとりかかるとしている。たとえこれに成功しても原子力建屋地下に溜まる水をどう排水すると いう大問題がある。ものすごい放射線の下で働くロボットを投入して、また原子力建屋の外から厚いコンクリート壁に穴をあけて排水を始めても、水面がサプ レッションチャンバーの破損個所まで下がれば放射性ガスが多量に大気中に漏れ出す。こうして12-16日の悪夢に戻る。現在、この溜まり水が曲がりなりに も水封の原理でガス漏洩を防止しているわ けだ。(無論これは私なりの独自の推論で、東電と政府は認めたくなく、目をそらしているが)だから原子炉建屋の排水はここで頓挫するわけ。

通常、化学プラントでは可燃物を扱うから海水配管やケーブルは直接埋葬して可燃物がたまらない構造にする。しかし東電は土木屋が強いからものすごい金がか かるが、世界一高い電力料金を取っているから意に介さない。土木工事量を多くしようとする社内 のパワーバランスなのか、巨大な海水配管すら地中に巨大なトンネルを構築してその中を通すことを好む。直接埋設のほうが周囲の土壌から優しい力で支えられ るのだが、コンクリート・トンネル内の配管は固定点に集中加重をうけるので破壊されやすい。 著者が係わった東京湾の扇島のLNG基地も世界の標準は配管は海上のトレッスル上に設置するが、東電は海底トンネルを掘ってここにパイプを敷設せよと要求 する。いつかガス漏れ事故を起こすのではないかと心配だ。

2014/1/30 東京電力は福島第一原子力発電所2号機の圧力抑制室の下部に穴が開いており、外側の「トーラス室」に水が漏れているとの見方を 明らかにした。両室の水位差を超音波で測定した結果から、穴は合計で8〜10平方センチと推計した。また、1号機で2013年11月に見つかった水漏れ箇 所については、その漏水量が1時間当たり0・89〜3・35トンに上るとの推定値を発表した。格納容器本体と圧力抑制室をつなぐ「ベント管」付近の2か所 で、ロボットが撮った流れ落ちる水の映像から推定した。3号機でも今月、原子炉建屋の1階で水漏れが初めて確認されている。ただ、これらの箇所で推定され た漏水量は注水量より少ないため、東電は「3基ともまだ他に漏水箇所がある」とみている。(2014年1月31日  読売)


汚染排水の回収作戦

サージタンクに復水タンクの水を移し、復水器の水を復水タンクに移し、復水器にタービン地下溜まり水を移すという 玉突きのやりくりはタービン建屋の地下の汚染水が危険すぎて多分不可能と考えていたが、案の定、10日間空費した挙句、集中廃棄物処理施設にある 10,000トンの低レベル汚染水を海に放流して開けたスペース3万トンに2号のタービン室地下の水を回収するという。 これは世界の顰蹙をあびた。総量5-6万トンの汚染排水があるという。不足する2万7000トンのタンクを1ヶ月で新設するという。現時点でも 7ton/hという高濃度のトレンチの漏れは発見後4日後の4月6日にようやく止めることができた。静岡市がもっていたメガフロートを東電が買い上げて横 浜の三菱重工で漏れなどチェック後、福島に持ってゆくことも決まり、4月7日には横浜港に向け曳航中の映像をみた。これは長さ対深さ比が45もあって通常 のバージの12に比べ、極端に薄い。荒天で曳航すればホギングやサギングで折れてしまうおそれがある。防波堤などの守られた海面でないと汚染水と一緒に失 うおそれがある。

当初、塩の蓄積を回避するために米軍が提案した横須賀から運んだ米軍のバージは着岸したが、4月3日現在配管接続がまだうまく行っていない。もう1隻並べ て着岸させ 、汚染排水の一時保管タンクにするようだったが姿を消した。

メガフロートはようやく5月中旬には現場に到着した。沖にタンカーを繋留し、バージでピストンすればよいと思うのだが、なぜか東電はこれを計画していると か聞こえてこない。あくまで陸にタンクを設置し、アレバ社から6月末に届く浄化プラントを待つ姿勢だ。その間溢れる水をどうするのか?

5月末には集中廃棄物処理施設が水漏れしていると報道された。事前に行われた止水工事はうまくいっていないようだ。回りの地下水位より引く保ってももれる ということはどういうことか?東電はまだ循環もできておらず打つ手がないようだ。

1号機:4月14日未着手、復水器は満杯。

2号機: 4月12日にようやく汚染排水を復水器に移す作業が開始し、14日に660ton移して完了。地下室のレベルは8cm下がったが、再びもとにもどって上昇 中である。国際的非難をあびながら中味を海にすてて空にした次の移送先の集中廃棄物処理施設は水漏れ対策中で当分使えず。移送作業は4日19日にはじまっ たが1万トン移送するのに26日間かかるという。3万トンの容量がるが漏れの可能性があるので地下水位より低い液面とすると1万トンが限度だという。5月 末までに別に1万トンの仮設タンクを建設し、メガフロートも接岸させるという。

3号機:4月14日未着手、復水器は空。


復水器の水はどこから来たか?

圧力容器の給水ラインには逆止弁が2個と隔離弁がシリーズに入っている。事故後2週間も経過しているのでこれがもれたか、壊れた可能性のある制御棒駆動 ピストンと高圧ボンベを結ぶマカロニチューブ経由か。弁操作が不明のため憶測にすぎないが、復水貯蔵タンクからの逆流などの可能性は低いという。

長いこと謎であったが、2013/3/10のNHK特集で消防ポンプで注入した海水の大部分は低圧給水ポンプのメカシール・パージ水供給ライン経 由、復水器に流れていたという説がでてきた。1号機と2号機はこれで説明できる。ただ不思議なことに3号機も消防ポンプで海水を注入したのだが復水器は空 であった。


大気中の放射性核種

一般に核分裂生成物は下表のようなものだ。核分裂生成物を100%としたときの成分比を示してある。エネルギーになって減少した質量を無視するとほぼ同じ 質量の核分裂生成物があることになる。

Fission Products

half-life

detected by TEPCO

FP concentration (wt%)

140barium

13d

yes

trace

133caesium

stable

no

6.79

134caesium

2y

yes

trace

136caesium

13d

yes

trace

137caesium

30y

yes

6.09

56cobalt

77d

yes

trace

58cobalt

71d

yes

trace

60cobalt

5y

yes

trace

129iodine

15.7My

no

0.66

131iodine

8d

yes

2.83

132iodine

2h

yes

trace

134iodine

53m

yes

trace

135iodine

6.6h

no

6.33

115indium

440Gy

no

trace

85krypton

11d

no

trace

140lanthanum

2d

yes

trace

99molybdenum

66h

yes

trace

147promethium

2.6d

no

2.27

106ruthenium

370d

yes

trace

149samarium

stable

no

1.09

75selenium

120d

no

trace

108silver-m

418y

yes

trace

121Sn

55y

no

trace

90strontium

29y

no

5.75

90technetium

211ky

no

6.05

99technetium-m

6h

yes

trace

99technetium

211ky

no to yes

6.05

129tellurium

70m

yes

trace

129tellurium-m

34m

yes

trace

132tellurium

3d

yes

trace

tritium

12y

no

trace

127xenon

36d

no

trace

88yttrium

107d

no

trace

88zirconium

83d

no

trace

93zirconium

1.5My

no

6.3

possible fission products

産業技術総合研究所つくばセンターが大気中にただようほこりなどに付着した放射性物質が出す放射線(γ線)のエネルギースペクトルを、ゲルマニウム検出器 という測定器を用いて測定した。赤色は3月15日、緑色は3月19日に採取した物質が出す放射線のエネルギースペクトルである。青色はバックグランドと呼 ばれもので、採取した試料を置かないで測定したスペクトルである。バックグランドのスペクトルには環境中に存在するK-40(放射性カリウム、人体には約 0.01グラム、約3000ベクレル存在) の放射能が見えている。100Bqの単位はs-1で、1秒間に100個の原子核が崩壊 し放射線を放出していることを表す。

3月15日の測定結果では、ヨウ素131、セシウム137、キセノン127、テルル132といった物質が放射性の核種と して検出された。 無論トリチウムや炭素14もでているだろう。これら揮発性分裂生成物の量は分裂生成物の22.7wt%となる。

3月19日の測定結果は放射性ヨウ素などの放射性核種が減少したため、自然界に存在するK-40(放射性カリウム)、Pb-214(放射性鉛), Bi-214(放射性ビスマス)からの放射線が目立って観測された。

radiation spectrum


タービン室地下およびトレンチの溜まり水の核種

27日TEPCO公表の溜まり水の核種の分析表はセシウム134をヨウ素134と間違えただけでなく、典型的分裂生成物である「プロメチウム 147」、「サマリウム149」、「ストロンチウム90」、「テクネチウム90」、「ジルコニウム93」を分析していない。ただ「ウ素800」はかなり含 有されているらしい。4月になって保安院が公表した溜まり水の分析値共 同通信が配信した38塩素などを加えたものは下表である。

Date:March 26


Unit-1

Unit-2

Unit-3

Fission Products

half-life

Bq/cc

Bq/cc

Bq/cc

74arsecic

18d

390



38chlorine

37min

1,600,000(miss)



140barium

13d


490,000

19,000

134caesium

2y

120,000

2,200,000

55,000

136caesium

13d

11,000

250,000

6,500

137caesium

30y

130,000

220,000

56,000

131iodine

8d

150,000

13,000,000

320,000

134iodine

53min




140lanthanum

2d

340

190,000

3,100

91yttrium

59d

390



Total

-

2,012,120

16,350,000

459,600

detected fission products in water


周辺の土壌中のアクチニド

1と3号機の燃料であるウラン235、3号機の燃料であるプルトニウム239も分析していなかったが、3月29日になっ て構内で検出されたと公表。敷地内土壌のプルトニウム量は0.8Bq/kg。 構外でも微量ながら検出された。

Actinide or Truns-uranium

half-life

detected by TEPCO

concentration(wt%)

237neptunium

2,140,000y

no


238plutonium

88y

no to proportional to fuel


239plutonium

24,000y

no to proportional to fuel

4%(reactor 2)

240plutonium

6,500y

no to proportional to fuel


241amerisium

432y

no


235uranium

7,000,000y

no to proportional to fuel

1%(reactor1&3)

detected actinide or Truns-uranium

235ウラン4%燃料を使って発電した270kgの超ウラン元素を含有する軽水炉の使用済み燃料40トンの放射強度は下図の通りである。ここでFPとは核 分裂生成物(Total FP: Fission Products)、プルトニウムなどのアクチニド(Total Actinides)または超ウラン元素(TRunsUraniumTRU )を個別に表示。

decay of radiation

福島第一原発敷地外に拡散した放射性物質の総量と汚染被害については福 島の放射能汚染を参照ください。


既存残留熱除去系の復旧は不可能

東電の吉田昌郎所長は残留熱除去系を動かしたいようだ。元東芝の伊藤さんによると残留熱除去系ポンプは原子力建屋にあるという。(米国でインター ネットに出回っている東電の非公開の図面を見ると実際には原子力建屋隣接した地下にある)原子力建屋地下室は溢れる水で水没しているはず。通常遠心ポンプ はベーパーロック防止のため、水面より低い位置に設置しなければならない。したがって残留熱除去系ポンプはトーラスが設置されている地下室 の隣にあるHPCIビル地下にあるはずである。トーラスとの間は隔壁があるとしても。配管貫通部のシールが破れて水が漏れる可能性がある。シールが破れて いなくとも全ての地下室にはドレンポンプがあり、ドレン配管で連通している。 ポンプと弁は遠隔操作だが、水没の為に死んでいる。弁が開であればドレンラインを通じて地下室は連通していることになる。また信号・電力ケーブルの貫通穴 もある。このシールが破れている可能性もある。また原子力建屋地下の排水をすれば、トーラスの破損部の水封がきれてガスが漏れてしまう ことにもなり。排水はできないかもしれない。

HPCIビル地下にある残留熱除去系ポンプが水没していなくとも、冷却水は真水の補機冷却水をつかう。この補機冷却水はタービン建屋で水没しているから、 残留熱除去系を使うということはタービン建屋を使えるようにしなければならないということになる。仮に排水に成功しても原子炉に注水しているわけだから水 はドンドンでてくる。賽の河原現象だ。

原子力建屋隣HPCIビル地下にある残留熱除去系を動かすには遠隔操作できなければならない。中央制御室の照明は点灯したが制御盤とバッテリーを生き返ら すことができるのだろうか?残留熱除去系のポンプ類は原子力建屋で水没している。仮に原子力建屋の排水に成功しても水没していたモーターは使えないはず だ。タービン建屋の排水をしたところで全く関係ない。東電は仮設の海水取水ポンプを4月3日に設置完了した。しかし、残留熱除去系ポンプは原子力建屋の中 で使えない。要するに既設の残留熱除去系をよみがえらせる試みは絶望的なのだ。

新しい仮設の循環ポンプシステムを作ってそれをタービン室の給水ラインや主蒸気ラインに切り込んでも圧力容器の底がぬけているので循環運転はできない。

このまま何も対策しなければ現在の開放系ワンスルー冷却を数年継続することになる。そうなれば格納容器の汚染物質はすこしずつトレンチの割れ目などからか ら地盤に滲みこむ。地下水は陸から海に向かって流れているので土壌汚染は海へと広がり海洋の汚染を引き起こす。最悪のシナリオになりそう。


可能な残存熱除去運転

現在の垂れ流し方式は早急にやめる方法として提案できるのは原子力建屋地下室または経路は不明だがこれと連通していると見られるタービン建屋地下室をサプ レッションチャンバーの代用にすることしかないと思われる。すなわち圧力容器、格納容器、建屋地下室を一体とみなすわけである。とはいえ、すぐにはできな い。なぜなら今建屋地下室に溢れている水は海水だ。これを循環したら塩が析出して1号機のように冷却を阻害する。

塩が全て洗い流されるまで待つとすれば洗濯機の洗剤をすすぐために少なくとも3バッチほどの水の交換が必要だ。実はバッチ運転はできないのでもっと必要に なるのだが、3回転でよしとしよう。1バッチ6万トンだから3倍の18万トンの水ですすがねばならない。とこが今回東電が用意したのは1バッチ分の6万ト ンだけ。そこで考えられるのは、トーラス設置の地下室から水を汲み上げ、汚染水を濾過してゴミを除去し、海水で冷却し、イオン交換樹脂で脱塩して炉心に循 環する方法だろう。放射性物質も除去できればそれに越したことはないが、とりあえずは塩を除去するだけでよい。東電はこの処理施設を7月末までに完成させ るという。

理想をいえば地下水汚染を防止するために地下室はタービン建屋は空にして原子力建屋だけにしたほうがいいに決まっている。原子力建屋の外からボーリング機 械で壁に穴をあけ、そこから水中ポンプを原子力建屋地下室に投入し、汲み上げ、水処理したのち、現在の真水注入ラインにつなぎこむこともできる。


水棺方式は無意味であるばかりでなく、可能でもなく、かえって危険

以上が残留熱除去に関する著者の提案だったが4月18日に東電が発表した計画では格納容器に水を満たして冷やすことにしている。いわゆる水棺方式 (flooding)だ。しかし全ての格納容器は程度の差はあれ漏れている。特にジャジャ漏れの2号機の格納容器に水を満たそうとしても皆流れ 出てしまい、始末に負えないだろう。漏れ止めに圧力抑制室のある地下室を水ガラス(珪酸ソーダ)入りのセメントスラリーを注入して固化できるかどうかにか かっている。それができないかぎり 、発熱の続く3年間は垂れ流しとなる。1と3号機も本当に水面を上げられるのかどうか?やたらに汚染水を増やしてギブアップするのではないか?

4月29日に1号機を水棺にするといって注水量を増やしたところ、温度が下がり、蒸気が凝縮したため、格納容器の圧が大気圧になってしまった。空気を吸い 込むと爆発する恐れアリと注水量を戻す。そもそも格納容器の水がどこにあるかは水位計がないので分からない。水位計をつけるために作業員が建屋内に入れる ように移動式のフィルター付き換気扇を設置するといって5月はじめ仮設工事をした。

5月10日までに1号機には9,911トン注入したという。ところが水位はどこか分からないと東電はいう。東電は水位計が故障していると思いたいのだろう が、実は一滴も溜まっていない可能性が高い。なぜかというとドライウェル内容積から圧力容器の容積を除いた容積には4,551トンの水が入るはずだから満 水になっているとしても約5,000トンはどこかに漏れてしまっていることになる。このもれた水は原子力建屋やタービン室の地下に流れ込んでいる と考えるの合理的だ。格納容器の何倍もの量を注入した窒素も圧力が上がらないから全てもれているのは確実。

にもかかわらず東電はおかしなことに漏れていないと淡い期待を懐いていた。この希望的観測が無駄な作業に時間を浪費し、全体工程の遅延を招いているのだ。 淡い期待の根拠は中央制御室にゴースト水位が表示されていたことと、タービン室地下の1万トンの溜まり水の放射線量が低いためだと思うが、コアが溶融して 酸化ウランの塊になり表面積が少なくなって溶け出すセシウムイオンなど出尽くしてしまったと考えれば説明がつくのでは?いずれにせよ、水漏れで水位はあが らない。漏れが注水量より小さければ水位はあがるが、圧力容器外のぺデスタル床上18mまで水位を上げると格納容器内と圧力容器内に溜まっている水素・窒 素ガスが圧縮されて圧があがる。圧が上がれば漏れが増える。水位が上がっても水圧が増え、やはり 漏れが増える。結果として圧力容器と格納容器内水位は上昇しないのだ。漏れが増えれば廃水が増える。無論水蒸気は温度が下がれば凝縮するが 、水素や窒素は業凝縮しない。ベントすれば環境を汚染する。ベントするためのフィルターを用意しているようにも見えない。そもそも格納容器上部にベントが あるのだろうか。いずれにせよ、窒素注入ポイント以上NPSH分水位をあげなければポンプ循環はできない。ただただ垂れ流し続けることになる。私は少ない 情報で推理しているだけだから間違っていることを望むががどうだろう。2号機は東電も認めるほどジャジャ漏れだからもっと絶望的、3号機は1号機とどっこ いどっこいだ。いずれにせよ 全て未着手だ。 東電が水棺方式を発表するまえから、著者はPCVのドライウェルとサプレッションチャンバーを結ぶベント管のベローが破れているとみていた。(日立名誉顧 問のAさんも同意)この漏れをとめないと水棺方式は無理。ベローがコンクリート構造物の中に隠れていて(無論隙間はある)コンクリートスラリー注入でも漏 れ止めは無理。サプレッションチャンバーの漏れ個所をセメントで固めるときは固まるまで水の注入を止めなければならない。その間に燃料が高熱になることも 有りうる。

5月5日、東電はペデスタル床より約5m高にある窒素注入ラインを水抜き出しに使って水循環すると発表した。したがって窒素注入ラインの貫通点以上でかつ 循環ポンプのNPSH分水位を上げなければ、水をポンプで吸引できない。ということはまずサプレッションチャンバーの漏れ個所をセメントで固めなければ、 難しい。空気浄化後の5月9日人が建屋内部には入ったが、窒素注入ライン近辺は600-700mSv/hあって近寄れない。内部からは放射性ガスが流れ出 しているのかどうか?5月10日鉛シートで囲って作業員を守りながら水位計や圧力計の表示器を取り付け、中央制御室の表示が正しいのかクロスチェックする というが鉛シートでも放射線は防げなく困っている。ロボットは地下室に降りられないのでいまだにメクラ運転ということだ。5月11日、現場で水位計を交換 し、圧力容器は空とわかり格納容器内の水位はいまだに不明確(東電流の表現でゼロ)とのこと。

さて水棺にしてもメルトしたコアが大きな塊になっている以上、冷却速度はこの塊内部の熱伝導速度で律速される。従って圧力容器を水没しても冷却速度を早く はならず、水棺方式は無意味である。水棺方式は圧力容器と格納容器の容積比を20にして圧力容器の安全弁が吹いたとき、格納容器の圧上昇をその設計圧内に 納めるという設計思想を破る行為だから、格納容器をそのために失うという危険性を増すということになる。そして満水の格納容器は余震によって壊れるリスク もなきにしもあらず。

あらゆる面で政府と東電の加速収拾方針は政治的ショーに過ぎないと思う。安全神話も政治的ショーであったがこの水棺方式も大変危険なものであると私は指摘 しておきたい。東電は漏れが増える方向へと舵を切る。とても半年で終局に持ち込めるとは思えない。そして補償額は増える。とても愚かな集団だ。文系リー ダーは自分が何をしているのか分っていない。これを発表するときの勝股会長は一見自信ありそうにみえたが、メクラの自信だろう。いままでこれで政治的に乗 り切ってきたのだろうが人は騙せても理学的原理はだませないのだ。メクラが上にいればその部下とそれを取り巻く東芝、日立、三菱の技術陣も上の顔色を伺い ながら本当のことを言わない。結果として組織としては技術能力がまるでないように見える。

後日東電本社は格納容器に破損をしぶしぶ認め、水棺方式は放棄した。そして政治ショーは本社が吉田所長に相談せずに作り上げたフィクションにすぎないと判 明。なぜ相談しないかというと反対されるからだという。このような内部抗争に国民は付き合わされているのだ。それなら所長を更迭すればよいと思うが、誰が 所長になる?皆、火中のクリは拾わない。だから吉田所長はできることだけを自らの判断でやっているだけだ。


冷却用循環水は汚染地下水を水処理して再使用

救い出そうという循環ポンプも冷却器も原子力建屋の地下で水没しているはずだ。なぜならベローズは熱膨張を吸収するために薄いステンレス製の蛇腹管だ からここが破れている可能性は大きいからだ。

2011年6月末にようやく循環システムが稼働し始め、7月2日ようやく安定した。その後の稼働率は70%、処理能力は80%である。

水棺方式にこだわっている頃は、東電は当事者能力を失っているように見えた。これを断念してようやくまともになってきたようだ。

循環式にして福島も落ち着き所に落ち着いたようだ。まさに水は低いところに流れる。今東電は循環冷却系を確立して今後数年の循環冷却をしなければ と焦り、タービン室 に溜まった水を排水しようと努力を傾けているが、まったく地に足がついてないあがきのように見える。

結局、原子炉と格納容器内にある水溶性放射性物質は殆ど全部出てくるの ではないか。大気に出ないだけ助かっているが海は大変迷惑。いわば巨大な水洗便所の原理だ。水洗便所はリークフリーではないから予期しないところから漏れ る。しかしこれも時間がたてば大きな海原が助けてくれのだろう。



water circulation and water treatment


地下水の流入防止、汚染地下水の海への流出防止、汚染地下水の処理、処理水の保管、プールからの燃料棒引き抜き、じゃじゃ漏れの格納容器から熔融燃 料の取り出し、廃炉、乾式キャスクで長期間保管に関しては福島原発 汚染水処理と廃炉参照。



大きな地図で見る


瓦礫の処分

6月7日までに水素爆発で飛ちった瓦礫は遠隔操作の無人重機を使って4m3のコンテナ279個に詰めて保管している。


使用済み燃料プールは干上がったか?

spent fuel pool reactor well and equipment pool (kashiwazaki-4)

それぞれのプールには残留熱の異なる使用済み燃料が入っていた。蒸発で水が失われ、燃料が露出するまでの日数は日数は;

1号機:140日

2号機:58日

3号機:32日

4号機:14日

< 1号機>:話題にもならず。第一水素爆発で建屋の燃料交換デッキがぶっ飛び、屋根が下ちて中の様子も分からず、外から水を供給することすらできなくなっ た。3月31日にコンクリート打設機で注水できたという。何もしなくとも140日は燃料は露出することはないだろう。

< 2号機>:燃料交換デッキは破壊されず、ハッチから湯気がでている程度でこれも問題視されていない。28日に至りで既設配管を使って海水をプールに時々注 水しているという。ただ循環運転はできていない。4月18日にプールの水を分析したところ、燃料棒損傷の疑いがでてきたという。プールが空になったことは ないので、落下物で損傷したのだろうという。

5月20日、プールから立ち上る水蒸気が原子炉建屋に充満して凝縮水がしたたり落ちるため、循環冷却装置を設置することにしたと発表。

< 3号機>:昨年10月、再処理したプルトニウムを添加したMOX燃料が装填されていて、炉内の崩壊熱が他の通常燃料より大きいという。本試算では便宜上 10%増しとしている。計算によれば使用済み燃料の崩壊熱で3号機の燃料プールの水が少なくなったのではないのは明らかである。3号機建屋の水素爆発時 プール・ゲートは吹き飛んだ。結果ゲートを通過して燃料プールの水が原子炉ウェルに流れ込み、ゲート水深4mまでの水を瞬時に失う。それでも475トンを 蒸発で失わなければ燃料棒は露出しない。計算では10日間の蒸発量は146トンだから燃料棒は露出しなかったことになる。これは自衛隊機の観測とも一致す る。従って燃料棒が露出してジルコニウム被覆が酸化し、水素を発生して火災が生じたという説明はここには適用できない。

放射能の大多数は格納容器ベント時または漏洩により放出されたものだろう。一方、原子炉ウェルに流れ込んだ水は140oC の格納容器に過熱されて蒸発し、白煙をあげたと理解できる。20-21日、3号機の格納容器の圧力が設計圧近くまで上昇し、格納容器ベントまで検討された という報道があったが、放水で冷却されたため、ベントせず内圧が維持できたとも解釈できる。放水の動機は別にあったが結果オーライ。けがの功名である。

プール水の循環の経路はますオーバーフローした水は循環ポンプで吸引され、補機冷却系という真水の冷却水と熱交換して冷やされ、プールに戻ることになって いる。そのため、地震で配管か関連機器が破損してももれることはない。真水の冷却水は最後は海水で冷却されるのでシステム全てが復旧しなければ動かせな い。以上小倉志郎氏。

プール内の燃料棒の様子は5月に入っても不明のままであったが、5月10日開催の政府・東京電力統合対策室合同記者会見でようやく3号機燃料プール内のビデオが 公開された。これみてもガラクタで燃料集積体や制御棒はみえない。シュナイダー氏はこれを見たのかもしれない。外国の方が早く知るのは米国アタッシェ経由 ではないだろうか。「最後に知るのは亭主なり」の鉄則が守られた。外国には透明だが国内は不透明。これでは風評被害もむべなるかな。プールの水からは半減 期2年のセシウム134が140,000Bq/cc、半減期30年のセシウム137が150,000Bq/cc、半減期8日のヨウ素131が 11,000Bq/ccであった。ヨウ素131がかなり減っているので再臨界というものはないだろう。これは爆発時降ってきたガラクタで燃料棒が一部破損 し、溶け出したものだろうとのコメントつき。

< 4号機>:定期検査に入っていたため、最もプールの発熱量が大きい。幸いにも燃料棒は100日前に取り出されていたため、発熱量は0.06%程度であっ た。燃料プールと原子炉ウエルと機器ウェルを連結する深さ4mのゲートが閉鎖されていたとすれば、燃料プール内の遮蔽水深8mの水は950トンである。し かるに崩壊熱で蒸発する水量は10日で663-800トンで燃料棒が露出することはギリギリ免れたと思われる。それにゲートが地震で外れていれば原子炉 ウェルの水も期待できる。ただ地震のスロッシングでかなりこぼれたとすれば一部露出してジルコニウム被覆が480oC以上になり、 水蒸気と反応して水素を発生させたともいえないことはない。

米国のNRCはプールの水が完全じ干上がったと想定した。米軍のグローバルホークで撮影した映像をもとにNRCの幹部が17日に北沢防衛相を訪れ、4号機 のプールが空になっていると伝えた。当時はまだ屋根が残っており、誤爆で有名な米軍のことだからこの情報にあまり信憑性はない。なぜか東電は米軍の情報を 無視して3号機に集中し、4号機は数日間放置後、ようやく放水した。その時、激しい水蒸気は立ち上がらなかった。その後の自衛隊機の観測では水が見えたと いうし、赤外線観測で高温部はなかったという。いずれにせよ4号機の火災と周辺の放射線強度の相関関係はないので4号機の使用済み燃料棒から分裂生成物は 大気にはまだでてきていないとみて良いのではないか?4号機のプールもコンクリート打設機で注水継続という。

4月13日、東電は4号機プールの水分析結果を発表した。ヨウ素220Be/cc、セシウム88Be/ccで2号機タービン建屋地下の 16.3MBq/ccと6桁のちがいである。原発周辺の水溜まりと同じ程度だろう。これは燃料棒はたいして痛んでいないということを意味する。無論、爆発 の落下物で一部燃料棒が壊れた可能性もあり、損害はその程度。もし一部でも露出するとか完全に干上がったならこのような数値にはおさまらない。したがって 露出はしていない。

森永先生はガンマ線で水は水素と酸素に分解し、燃料プールをバブルアップしているはずだという。 通常は排気ファンが排出しているが停電でとまり、4日間停止中に火災が生じる程度、燃料交換デッキに溜まったと考えられるという。4月30日、水中カメラ で撮影したプール内のようしから確かにガスがバブルアップしているがその量は建屋を飛ばすほどのものではないように見える。

4号と3号機はベントスタックを共有しているため、原子炉建屋排気ダクト経由で3から4号機へ流れた可能性もある。しかし空撮を見ると3号機のダクトは落 下物で外れてしまっている。 この落下物は3号機爆発のものか4号機爆発のものか?4号機爆発は3号機爆発より後だからどちらだろう。

更に空撮写真をみると、4号機原子力建屋の東側の壁が燃料交換デッキより下の階までぶっ飛んでいる。これはプールから出た水素が原因ではないことを物語 る。3号と4号は中央制御室を共有しているから電力ケーブル、信号ケーブルを通すダクトが連通していう可能性がある。もしかしたら中央制御室からそれぞれ の原子力建屋へ行く職員通路もあるはず。そこで私の仮説は3号炉格納容器からもれがガスがこれらいずれかのダクトか通路を通じて4号機原子力建屋に流れ込 み、建屋内のあらゆるところで爆発したというもの。燃料プールだけ特別に頑丈であったため、底が抜けなかった。これは幸いであった。というわけで高温に なってジルコニウムが酸化したという説は没。

DOEは1-4号機の燃料プールには時々注水するので水はあると4月13日確認している。従ってあれだけ国際的にさわがれたプールの燃料棒破損の恐れは少 くないと思われる。

4月30日、水中カメラで燃料ラックは健全であることが確認され燃料集合体も新旧の色の違いも見分けられ、メルトダウンの形跡もみつからなかった。十字型 の制御棒も変形は認められなかった。

4号機はプール下の水素爆発での損傷が大きく、もし200ガル以上の余震があればプールの底が抜ける恐れありと補強することになった。2Fに鉄骨を建てて 壁を作り、コンクリートを流し込むという。水漏れも心配されたが4月30日には水漏れ問題はないとされている。

5月10日、腐食防止のためと言って、4号機のプールにヒドラジンの投入を始めた。

即発臨界説について

4月26日になりフェアウィンズ・アソシエーツ社のチーフエンジニア アーニー・ガンダー氏(Arnie Gundersen)が3号機原子炉建屋の爆発は水素だけでは説明できず、プールで発生した即発臨界爆発したとするビデオを公表した。ハワイやニューイ ングランドでアメリシウムやプルトニウムの微粒子が検出されたというのが根拠。臨界なら中性子パルスがでてオゾンの臭いがしたはずだが記録はあるのか?

即発臨界とはどういうものか?通常、核分裂で放出される中性子は即発中性子 (prompt neutron) と遅発中性子 (delayed neutron) の2種類に分けられる。遅発中性子比率 (delayed neutron fraction) は中性子全体の1%未満である。原子炉の内部では、中性子増倍率 k は 1 前後で安定した反応過程となっている。反応で作られる中性子全てについて k = 1 に達した時、その反応は臨界状態(または遅発臨界)にあると言う。原子炉ではこのような状態になっている。この状態では出力の変化はゆっくりとしていて、 制御棒などを用いて制御することが可能である。即発中性子のみについて k = 1 になっている時、この反応は即発臨界の状態にあると言う。この場合には中性子の倍加時間は k - 1 の値に応じて通常の臨界よりもずっと短い値をとる。通常の臨界から即発臨界に達するまでに必要な反応度を相対的反応度単位(ドル、dollar)と呼ぶ 。すなわち反応度が1ドルであるときこれを即発臨界と定義でき、1ドル以上となれば原子炉の制御は困難となる。

これによれば原爆の爆発は即発臨界といえる。3号機のMOX燃料でない普通の使用済み燃料棒プール内に ある燃料棒が水から露出したわけでもないのにどうして即発臨界になったのかガーニー氏は説明できていない。火薬の爆発はすべてdetonationだから 即発臨界だからとはいえない。

東電は4号機のプールの水分析もし、水中カメラで撮影し、燃料棒の無事を確認して いる。 また5 月10日3号炉プールのプールの水分析を発表した。半減期2年のセシウム134が140,000Bq/cc、(8/19-20測定では 110,000,000Bq/liter)半減期30年のセシウム137が 150,000Bq/cc、半減期8日のヨウ素131が11,000Bq/ccであった。ヨウ素131がかなり減っているので再臨界というものはないだろ うとしている。水中カメラの映像は落下した爆発破損物が燃料棒の上に堆積してなにも見えない。水バランスから燃料棒が露出したとはいえないが、落下物で 燃料棒の一部が破壊しているということはありうるだろう。アメリシウムは日本では報道されていないが、プルトニウムは見つかっている。両方ともおな じようなものだから当然福島にもでているはず。ではどこからか?それは1から3号機 全ての格納容器からもれたものとプール内の燃料棒の破損からかもしれない。2号機の格納容器は破壊時、音を出したが3号機は黒煙をだした。アメリシウムは 高温にならなければ微粒子 化しないとガンダー氏はいう。 しかし炉内でメルトダウンして高温になれば2,600Cで気化して微粒子になる。これが3号機ドライウェルの蓋のガスケットから直接あるいは水に混ざって 流れ出 したとしても説明できる。黒煙がそれだろう。

日本では公表されていないが燃料棒の小指程のかけらが原発周辺で発見されたと米原子力規制当局が報告しているとアーニー・ガンダーソン氏はいう。その飛距 離から初速を計算すると水素爆発では説明つかない速度となる。したがって即発臨界が発生したのではという。3号機には 燃料棒548本のうち32本はMOX燃料が装填されていた。MOX燃料に4%程度含まれるプルトニウムは高速増殖炉で作られた高純度のプルトニウム239 ではない。軽水炉の使用済み燃料から回収したものだからプルトニウム240という不純物を含む。そしてプルトニウム240は自発核分裂をする。その確率は 高く240Pu: 489,000 回/s-kg(約 1,000,000 中性子/s-kg)だ。プルトニウム240は広島型のガンバレル方式の原爆では自発核分裂で本格的核爆発する前に自発核分裂で原爆を破壊してしまい、たい した爆発はせず兵器 にならない。そこでフォンノイマンの計算結果から32個の点火栓と爆縮レンズ型爆薬を使う長崎型の原爆が開発され、長崎の町は完全破壊された。もし3号機 の格納容器から漏れ出た黒煙中の微細粒子に含まれるプルトニウム240が水素爆発を契機に自発核分裂したとするならばガンダーソン氏の即発臨界説とは意味 合いが違うか激しい反応としては意味がある。も しそうなら非常に怖い話しだ。

即発臨界か否かはキセノン(Xe)の2つの同位体の比率からわかるという。13種の同位体のどれとどれの比か知らない。キセノン131はヨウ素131の 崩壊生成物で安定で自然界で21%ある。原子炉内でキセノン135が発生していてベータ線を出して半減期9時間。これは分裂反応を止める毒物質とされ ている。核爆発ではキセノン133が出来るがベータ線を出して半減期が5日。しかし日本の原発関係者は原爆にはうといからガンマ線しか測定し ておらず気がついていないのかもしれない。森永先生は面白い話だが即発臨界はないのではないかと言っている。3号機からでた黒煙は重い金属が帰化 して固まった微粒子であろうということです。

京大の小出助教授は高崎にある包括的核実験禁止条約に基づく研究機関で、3月15日から16日にかけてヨウ素135が大量に検出されていることに注目し た。これは半減期6.7時間で3日たてば1,000分の1になる。3月11日に原子炉が停止していたのであれば、3月15日にはほとんど存在しないはず。 測定が正しければ、ヨウ素135は3月14日以降に生まれた可能性があるということになる。京大の小出助教授は燃料プールの燃料棒損傷で出てきた核分裂物 質が何らかの核分裂を瞬間的にして多量のヨウ素135を生じたとしている。ちょうどこのころ原子力建屋が爆発した。そして3号機の格納容器からは盛んに黒 い煙が立ち昇った。黒い煙はウランまたはプルトニウム金属が局所部的臨界で気化して水冷却で微粒子状に固まったと考えれば合点が行く。ウラン235が核分 裂す れば6.3%のヨウ素135が生成する。ヨウ素135が崩壊すると半減期9時間のキセノン135となる。これは原子炉でもっとも主要な毒物質で10- 50%が中性子獲得により半減期2.36×1021y のキセノン136になり安定する。残りは半減期230万年のセシウム135になって安定する。ウラン235の分裂は1号機圧力容器のメルトコアで生じたか もしれないとされ、後日否定された局部的臨界で説明できる。プールでのプルトニウム240の自発核分裂はプールにはMOX燃料は無かったのだからありえな い。プ ルトニウム240の自発核分裂は原子炉内部で生じ、格納容器経由で大気に放出されたとみてよいのではないか?プールの場合、仮に全部のコアがプールの底に 落下したとしても広い面積に広がるので臨界にはならない。圧力容器底の狭いところに降り積もってようやく局所的臨界になるのだろう。いずれにせよ怖い話 だ。

5月7日になり温度が上昇しているので注入ラインの漏れがあるかもしれないと消火ラインと別系統の配管経由とすると発表。水不足か再臨界か興味あるとこ ろ。


使用済み燃料プールの循環冷却

仮設電源復旧後、故障した循環ポンプや海水ポンプが復旧したとしても爆発で吹き飛んだコンクリートの破片などがプールの底にたまっていると考えるのがプラ ントの試運転を沢山してきた者の常識だ。ただ循環水ポンプはオーバーフロー水を吸引するので多少のゴミがあっても問題ないかもしれない。

問題は循環ポンプも冷却水もタービン室のポンプと海水ポンプが動かなければ循環冷却ははじまらない。というわけで建屋外からの放水で蒸発損失を補っている 始末である。そうして汚染された水は垂れ流しつづける。そしてオープンとなった原子炉はそのまま放射性物質を垂れ流し続けるのだ。

タービン室地下に人が出入りできない以上、全く別に新しい仮設設備を新規に作らない限り、循環運転はできない。というわけで事故後30日に至るも原子炉の 循環冷 却もプールの循環もできていない。 全く別に新しい仮設設備を作ったところでプールから溢れる水を吸引するポンプはどこにあるのか。どこにあろうと多分つかえないだろう。したがって投げ込み ポンプをプールに沈める必要があるだろう。

東電は6-9ヶ月を目処に軽量のカバーで原子力建屋を覆うとしているが、もれ出る水素ガスを換気しなければ再び仮設建屋が吹き飛ぶのではないだろうか? 換気ガスは無論、フィルターで放射性物質は除去しなければならない。これをしないのであれば東電の得意芸の文字通りのカバー・アップだ。

2012/7/22の東京新聞は地下水が冬200トン-夏500トン流れ込んでくる。保管タンクの水は20万トンをこえた。これ以上保管できない。 そこでプルトニウムを除去して海に放流すべく準備しているという。


新耐震指針は過少であった

2006年に改訂された新耐震指針では438ガルであったが、2号機で546ガル(想定452ガル)、3号機でも507ガル(想定441ガル)であったと いう。4月に入ってからの余震の加速度データは4号機しか公表されていない。多分1-3号機は水没しているのだろう。

2007年7月、東京電力の原発研究者が米国マイアミの国際会議で発表したリポートでは、福島原発施設をモデルにして、日本における津波発生と原発への影 響を分析している。その内容には、福島
原発の地域は太平洋に面した地震地帯であり、その地域は過去400年に4回、マグニチュード8あるいはそれ以上と思われる巨大地震にさらされていると書か れている、としている。さらに、9メートル以上の津波はおよそ1パーセントかそれ以下の確率で押し寄せる可能性があり、13メートル以上の大津波は0.1 パーセントかそれ以下の確率で起こりうるとし、高さ15メートルを超す大津波が発生する可能性も示唆しており、津波の高さが設計の想定を超える可能性が依 然としてありうると結論付けている。しかし中央集権的な大組織ではトップの意識が変わらぬかぎり、なにも是正処置は生じない。

日本国家もしかり、政治家の意識が変わらぬ限り、同じことが繰り返される。


無人飛行機写真が教えること

TVでも紹介されていたが新潟県妙高市の無 線操縦の小型機が3月24日上空至近距離より撮影した鮮明な写真は沢山の情報を教えてくれる。

@1号機の原子炉建屋の屋根はそのまま、燃料プールのある床に落下してプールを覆っているから外から放水できない状態である。

A2号機の原子炉建屋はエキスプロージョンハッチが飛んだだけで無傷、屋根はそのままである。これはベントしたとき格納容器にあらかじめ充填してある窒素 が水素を希釈して爆発範囲にあったガス容積が少なかったためと見られる。

B3号機の原子炉建屋は一番激しく爆発した。飛び散ったデブリが原子炉建屋とスタックをつなぐダクトを完全に破壊し、タービン室の屋根の大穴をあけてい る。2-3号復水器抽気ベントダクトも落下物で破断している。(1号復水器抽気ベントは原子力建屋換気と共用らしい) グランドレベルの燃料搬入口は開。

C4号機の原子炉建屋はプールが埋め込んである燃料交換デッキ下の階層の壁がいたるところで吹き飛んでいる。 燃料交換デッキの正方形の燃料降下口の蓋が飛び口をあけている。グランドレベルの燃料搬入口は開でその中にトラックが放置。水素ガスは下から流れこんだこ とを示唆する。多分3号機の格納容器からもれたガスがケーブルダクトやマンウェーを通じて流れ込んで爆発したのだろう。4号機の3台の縦型海水ポンプが流 失して見えない。

D流失したディーゼルタンクの基礎が見える。


米国製無人ロボットが見たもの

無人ロボットはタービン建屋側のグランドレベルのドアを開けて原子力建屋中にはいった。いずれもグランドレベルで洪水の跡は見えない。 これはグランドレベル以上の階での水漏れはないことを示す。とすると水漏れは原子力建屋の地下、すなわちサプレッションチャンバーのどこかであることを暗 示する。さすると原子力建屋とタービン建屋を結ぶ漏洩水の通路は漏洩地下水ピットを結ぶ配管、ケーブルダクトということになる。

1号機:数十mSv/hの放射線。別の入り口で作業員が測定した放射線は270mSv/hを越えていた。

2号機:99%の高湿度に阻まれて何も見えず。撤退。

3号機:かなりの金属片が床に落下、反対側の燃料搬入口のドアが水素爆発で飛んで素通しになり、山側の屋外が見えた。これは無線操縦の小型機撮影の機器搬 入口のドアが無いことと一致。

4号機:燃料プールの漏れが心配されたがどうも大丈夫らしい。


トピー工業製ロボットがみたもの

2012/4/18に2号機の圧力抑制室上部キャットワーク上はマンホールからマンホールに向かって走行したロボットはマンホールフランジからの水 漏れなどの異常は見つけられなかった。


設計基準と実際

1号機:想定532ガル、実際540ガル 想定津波14.8m、実際13m 引き波で取水口が3-5分干上がる。

2号機:想定590ガル、実際607ガル

3号機:想定512ガル、実際573ガル


炉心再熔解

8月8日の朝日新聞に原子力研究所の田辺文元研究主幹が3号機の再溶融したと考えられるという説を発した。3月21日午前1-3時の圧力容器が 110atmに急上昇している。これは圧力容器内で固まっていた溶融物の塊が冷却不足で割れ、内部から流れ出た溶岩のような高温物質が大量の水蒸気を発生 させた可能性を指摘。21日午後と23日午後、黒っぽい煙が上がったことを記録している。コア・コンクリート反応の可能性あるという。

この日はたまたま風が来たから吹いていて横須賀の放射線強度が高まった。

Radiation in Yokosuka Naval base

実は1-3号機はすべてシュラウドの外側に水を注入していたにすぎない。このため、3号機はメルトした炉心がシュラウド内部の支持板にとどまり炉心を冷却 できていなかった。7月になっても3倍以上の216t/dの冷却水が必要。そこで炉心スプレー系からの注入を計画中という。

東電は注水は途切れたことはなかったとしているが、炉心を囲んでいるシュラウドの外に注水しているに過ぎない。特に3号機は溶けた炉心が炉心支持格子上に とどまって冷却されていないことも考えられるとして東電は3号機では炉心スプレー系経由の注水を9月1日から開始した。

2018/3/17のNHK特集によれば3/18に格納容器の圧力が上がり始めたので、東電本社の安全担当はマニュアルを参照し、圧力の上昇は注水のし過 ぎと間違った判断あら注入量を絞ることを支持した。皆の関心は燃料プールの注水に行ってしまい、炉心冷却は数日間忘れられた。


コリウムの撤去

コリウムの撤去はスリーマイル島の経験から10年後を予定しているようだ。しかしスリーマイル島ではコリウムは圧力容器内にとどまったため、圧力容器に水 張 りして取り出せた。今回は圧力容器の底が抜け、格納容器に穴が開いている。格納容器の穴を補修できてばこれに水を張れるが、破損個所は地下水も湧き出てい るため汚染水中作業となるし、複雑な構造でもしベローが破れていれば補修は不可能であろう。それに撤去作業でコリウムの形状が変われば再臨界のおそれも否 定できない。したがって撤去は不能。かといって格納容器に穴が開いていて地下水と連通していて海を汚染し続ける。これが3基もある。まず、地盤を周辺の地 下水から隔離してから石棺化するということになるのではないか?石棺は老朽化するその補修もふくめ、今後1万年間維持管理しなければならないことを意味す る。東電は消えてなくなっているのでわれわれの子孫がこれと付き合ってゆかなければならない。残りの原発の運転を継続すればもう一度日本のどこかで同じこ とが繰り返されることが確率論から言える。答えは明確だと思うのだが、お人よしの日本人はこれが理解できないらしい。

無誤謬ドグマ由来の人災

今回の事故のポイントと対応策を整理すると下記のようになる。

@非常用ディーゼル発電機燃料タンクを岸壁に設置していたために流失した。取水口近くの海水ポンプのモーターが冠水して使えなくなったり、モーターが破断 して波に さらわれた。

A1号には自然対流を利用するアイソレーション・コンデンサーがついていたが(日本の他の原発にはアイソレーション・コンデンサーはついていない)格納容 器内にはアイソレーション・コンデンサーを置く空間がないため外に設置し、配管で接続されていた。バッテリー冠水で直流電源を失った時点ですべての隔離弁 (半減期1秒という窒素16を閉じ込める目的、給水ラインにはチェック弁)がバネの力で閉じるためこれがつかえなくなった。

Bタービン駆動の原子炉隔離時冷却系ポンプは福島1号機を除き、日本の全ての原子炉に装備されているが、原子炉隔離時冷却は格納容器外設置のため、バッテ リー電源が失われれば役に立たなくなる。

C格納容器のベントは設計圧を超える前にすべきであった。不作為のためサプ レッションチャンバーを損傷し、多量の放射能汚染水を発電所内にばらまき、残留熱除去系の復旧を不可能にした。

Dフランスでは老朽化に伴い、格納容器が脆弱化しているとしてベントガス浄化のためのサンド充填吸着塔を用意しているが、無誤謬神話の日本ではサン ド充填 吸着塔はタブーだった(フランスは無事故) 米国でもMark I型の格納容器は漏れやすいので活性炭充填のヴェントガス吸着塔をつけるべきとの見解が表明されていた。

Eサプレッションチャンバーベントガスがベントスタックに行くダクトは建屋排気ファン出口と共用、弁類がすべて電動のため直流電源をうしなってからは開閉 ができなくなった 。停電時はガスは建屋排気ファンを逆流するのを防止する逆留弁が用意されていないのはバッドデザイン。水素爆発で建屋を失い、第五の封じ込めバリアを失っ た。

Fスクラム後、圧力容器を満水にすれば時間はかせげた(通常運転時にタービン保護目的で炉心の水位高で自動停止する仕組みを解除して満水にする決断のでき る人間が現 場にいなかった)

G世界標準に従い、海水ポンプモーターを裸で取水口近くに露出させたままにしたため、4号機のモーターは津波で流された。保護建屋に囲まれた福島第二原 発、東海第二原発は無事だった。これを見れば他のポンプも同じと判断し、既設ポンプ復旧を断念すべき。敗戦を認める勇気が必要。

Hタンク水のリレーにこだわって時間を浪費せず、既設残留熱除去系の復旧は不可能と判断することからはじめる必要がある。無駄な努力に貴重な人的資源を浪 費しないで、汚染水をバージに回収するグループと長期に渡って使える車載残留熱除去装置を作って切り込むグループに分け対処を考えたらどうかと考えたが、 東電は手持ちの汚染度の低い未処理水を海に放流してそこに汚染度の高い1万トンの排水を収容するという。しかしまだ残り2万トンをメガフロートにと考えて いるようだ。

Iノルウェーなど欧米の研究チームが北米や欧州の核実験探知測定器のセシウムやキセノンのデータをもとに分 析した結果、地震直後からキセノン ガスが検出されている。キセノン放出は地震直後から始まり、4号機のプールに注水直後から激減しているため、プール内の核燃料棒が地震で損傷した可能性あ りとしている。プー ル内の燃料棒の被覆は破損してキセノンが放出されたことは考えられる。

J中空にコンクリート構造物で維持されているプールを地震から守るのは困難。支持構造物が壊れても水漏れのない地下のプールを新設し使用済み燃料は 速やかにそこに移設すべきであろう。PWRはそうなっている。

KGE Mark IIの格納容器は脆弱である。すくなくともベント用の砂フィルター追加工事をしなければ運転再開としないという厳しい条件が必要であろう。ストレステスト にそのような要件は書かれていないはず。この国ではインチキ儀式で国民を欺くという政治が1,000年続いてきて、いまだ繰り返かえされている。

以下経時的イベントの記録である。情報源は初期の頃は日本のメディア。4月1日以降はIAEAで ある。ようやく4月8日より文部省経由保安院が正式 発表した現状が公開されることになった。しかしここにも保安院にとっての不都合なベント前の5:14の漏洩は記載されていない。保安院と東電によ る歴史を書き換える行為だ。


第一原発1号機(46万キロワット)

date

time

event

3/11

14:46

scrum


15:42

emergency diesel generator stopped


16:36

emergency cooling system unable to inject water

3/12

1:20

pressure of primary containment vessel (PCV) reached 840kPa>2 times of design pressure

 

5:14

sudden de-pressuring of primary containment vessel of reactor-1 and detection of radiation

10:17

start venting


15:36

explosion of reactor-1building


20:20

start pumping sea water and boron through fire fighting line

3/23

2:33

added feed water line for water injection

3/24

11:30

power to central control room

3/29

8:32

temporary motor driven water injection

3/31

12:00

transfer of water from condensate water tank to suppression water tank


13:31

start pumping fresh water into reactor-2 by fire engine


21:37

water pouring to pool

4/3

13:55

transfer of water from surface condenser to condensate water tank

4/6

22:30

start injection of nitrogen to PCV

officially announced event for unit-1 on April 8

以下はメディアに報じられたものを著者が書きとめたものである。圧力容器の設計運転圧は70.3気圧、設計圧は87.5気圧、運転温度273oC であるが、これが上昇したため、自動減圧系の安全弁(SR弁)が作動して蒸気がGE Mark I型格納容器下部に接続するドーナツ型のサプレッションチャンバーに導かれた。蒸気はここで再液化されたが、逆に格納容器のドライウェルの圧が上昇した。 逃がし安全弁が開固着して空きっぱなしになったと想像できる。(配管破断も理屈上はありうる)こうすると圧力容器と格納容器は連通してしまう。こうなると 核分裂生成物の崩壊熱により、圧力容器内の蒸発を止めることができず、外部からの水の供給がない場合、圧力容器内の水が蒸発で失われて水位が低下し、燃料 棒が冷却水から露出してしまうという事態となる。燃料棒が露出すれば、ジルコニウム被覆管が高熱になり、ジルコニウムの融点である2,200oC に達すれば被覆管は溶融して中味が崩落する。これがメルトダウンである。そこまでゆかずとも400-850oC 以上になれば被覆管表面が水蒸気と反応して、水の酸素を奪い、水素を発生する。(酸素は発生しない)ジルコニウム被覆はもろくなり、ひび割れして核分裂生 成物であるヨウ素やセシウム137が被覆管から圧力容器内に出てくる可能性がある。またペレットが割れ目からこぼれて下部の水の中に落ちる。これがパー シャル・メルトダウンだ。底部の水が無くなればこぼれたペレットは塊となって溶融し、圧力容器の底を抜けば、格納容器内の水に落下してそこにある水を急激 に加熱して蒸気爆発を発生させ、格納容器を破壊する危惧が生じる。

4月8日に東電が発表した新データによると、11日の21:30燃料上端から45cmまで下がる。炉内の圧力をさげたら上昇に転じた。地震発生後7 時間後の22:46頃、 水位は炉心露出寸前となった。対応により一旦回復するが再び低下、炉心メルトダウンにより水素が発生し、12日2:45頃、格納容器内圧力は740kPa から840kPaから最高9.5気圧になった。温度は100oC 以上となった。東芝OBは設計圧は430kPaという。 肉厚は3cm。設計圧の2倍以上の圧力だったのだから格納容器は破裂してもおかしくない事態だった。漏れ出る放射能が中央制御室にも流れ込んで放射線強度 は通常の1,000倍になっていた。そこで安全院 と首相は究極の選択として12日午後に意図したベントを承認した。フィルター経由という公式見解だったが、どうもサプレッションチャンバーで洗浄したドラ イウェルガスをベントするということだと理解した。これは設計思想を越える異常事態である。住民を被曝から守るためとして3km以内(後手の判断で 10km→20kmに修正)の住民に避難命令を出した。7万人が避難対象人数。

直流電源がないため、電動遠隔操作の格納容器のベント弁を開けることができない。手動で開けるには放射線が強すぎて困難をきわめ、12日14:00頃よう やく人力で開けることができた。

ジルコニウム酸化で発生した水素を格納容器から原子炉建屋内に排気したため、3月12日、15:36に至り、第一原発1号機の原子炉建屋の屋根と壁が突然 爆発した。爆発時は衝撃波が瞬間、空気中の水分を凝縮させてその姿を現した。爆発の様子は ビデオに撮影されている。格納容器はまだ壊れていないとの枝野長官の発表があり、ホットした。証拠として爆発後、放射能の数値は下がっている。1,015 から70mSv/hまで下がったという説明があった。第一原発1号機の圧力容器の圧は13日には0.3533MPa(3.6atm)というから多分格納容 器とは通通になっているのだろう。水位は-1.7mで燃料棒は露出したままであるという。

放出ガスは吸着剤で処理するとはいえ、ヨウ素、クリプトンやトリチウムなどはそのまま素通り。ヨウ素、セシウム137も出てくる。東電は放出にとも なう年間被曝量は64mSv(7.3μSv/h)と予想した。8ヶ所のモニタリングポストと排気 筒の測定装置は電源喪失で機能していないため、移動式測定器で測定したところ、格納容器のベントをあけた時点の境界の被曝量は1,015μSv/h(1mSv/h)であった。東電の予想は全く外れたことになる。

100km北の宮城県の女川原発では境界にあるモニタリングポストで21μSv/hが測定 された。排気筒では検出されていないため、福島原発の1号 機のベントの影響だろうという。同じ頃、福島県田村郡三春町(福島第一の南45km)でガイガーカウンターが、普段20CPM (0.2μSV/h)くら いだったのが1,600CPM(16μSV/h) まで行ったという。ついでヨウ素、セリウム137も検出されたという情報が入る。

さて半径20km以内の住民を避難させるために3月13日、自衛隊ヘリを1号機から3kmの距離にある双葉高校のグラウンドに差し向けた。グランドで待っ ていた双葉厚生病院の患者と職員が建屋爆発時のチリを浴び、除洗レベルの被曝したという。行政は圧抜きしている最中にグラウンドで待機させるなどへまをし たわけだ。そもそも地方自治体が設置したモニタリングポストは停電で沈黙している。今後、周辺農地の汚染を農産物出荷管理などをしっかりしてもらわねば。

東芝の工場から冠水して動かなくなったポンプの大型モーターを自衛隊機が運ぶというニュースがあった。これは緊急炉心冷却システム用ポンプのモーターとす れば今回の事件はディーゼル発電機が水に浸かって使えなくなったとか燃料タンクを失ったからではなく、緊急炉心冷却システム用ポンプのモーターが津波で水 浸しになったためなのだろうか?とすれば機器の配置が津波を考慮して居なかったということになる。

圧力容器の底を抜かないために東電が消防車で20m3程の水を格納容器に注入したという情報がでてきた。圧力容器内底部に水が残っ ていれば、溶融コアは圧力容器内にとどまる。スリーマイルはPWRで圧力容器底部は単純な構造。しかし東電はBWR大好きで圧力容器下部は制御棒駆動装置 というハステロイ 製のパイプのジャングルだから未知の領域。

東電は1号機を捨ててコアを圧力容器内に閉じ込めるためにホウ酸を混ぜた海水を圧力容器と格納容器に注入することにし、自衛隊が注水作業をしている。これ は圧力容器の底を抜かないための、なりふりかまわぬ最終手段である。本法は残留熱は蒸発潜熱で奪うわけだから格納容器ベントは継続されるわけで放出蒸気に 伴う少量の放射能放出は継続されるわけだ。

14-16日と燃料棒は露出したままであるとの発表だが、実際は水位計が正しい水位を示していないという説もある。給水しても水位が上昇しないのは圧力容 器下部から水漏れているという説もある。いずれにせよ、給水量が公表されておらず、消火ポンプは空回りしているだけかもしれない。もし水位計が正しいとす れば、メルトダウンはかなり進行していると考えられる。このとき、制御棒存在域を離れて圧力容器底部に落下した燃料の再臨界の可能性は落下燃料の量に比例 する。

17日は何も変化なし。

18日午後、立ち上る湯気が見られるようになったので22mの高さから放水できる東京都の屈折放水車から1号機の放水する計画はより危機的な3号へと変更 された。

23日、電源は復活。測定機器の電源が復旧した。温度が400oCと高いので海水注入量を2m3/hから 18m3/hに増量した。

24日になり温度は234oCに下がったが、圧力が340kPaに上昇したため給水量を絞る。しかしいつベントしてもおかしくない 状況だ。中央制御室の照明は点灯したという。

25日、プールヘの注水を予定したができず。

27日、1号のタービン室の溜まり水の水深は40cm、放射能濃度は2.9MBq/ccと判明。仮設ポンプで復水器のマンホールに戻している。直流ケーブ ル敷設、空調機電源に取り掛かる。

28日、進展なし。

29ー29日、進展なし。コンクリート車よるプール給水が企画されたが実施の報告はない。

30日、タービン室の溜まり水の水深は、復水器へ汲み上げた結果、3日間かかってようやく20cmに下がる。 しかし復水器は満水となったのでタービン室の溜まり水の汲み上げは中止。

31日、圧力容器(RPV reactor pressure vessel)への給水は消火系経由で7m3/hで継続中。RPVの温度は256oC から249oCに下がる。RPVの底部温度は134-128oC。RPVの圧もドライウェルの圧もこれにつ れて下がる。満水のピットの水を1m分環境保護用タンクに移した。復水タンクの水をサプレッションプール用のサージタンクに移した。

4月3日圧力容器(RPV reactor pressure vessel)への給水は消火系経由で8m3/hで継続中。RPVの温度は281oC から181oCに下がる。RPVの底部温度は128-119oC。RPVの圧もドライウェルの圧もこれにつ れて下がる。燃料プールに注水した報道はない。

4月18日には原子力建屋二重ドアの外で270mSv/h。

5月7日、原子炉建屋内の換気をして作業員が入れるようにクリーニング中。

5月9日、原子炉建屋内の放射線強度が下がったとし、2重ドアを開放、人が内部に入り水位計調整の準備をする。アレだけ注入した窒素が漏れたにもかかわら ず、2日間の空気循環で放射線強度が下がったは驚き。格納容器内部のガスも綺麗になったのか?と書いたところでNHKニュースで内部で窒素注入ライン付近 は700mSv/hで作業困難の模様と報道さる。

5月11日、圧力容器内の水位計を調整して中央制御室が示す水位計の水位は頂部より-1.6mではなく。-5m以上で完全露出していたと発表。東電は希望 的観測をしていたが燃料が全て燃料は底におちていると推測できた。また格納容器内の水位はこれまで考えられていたほど水がたまっておらず、格納容器の半分 にも達していないことがわかった。


第一原発2号機(78.4万kW)

date

time

event

3/11

14:46

scrum


15:42

emergency diesel generator stopped


16:36

emergency cooling system unable to inject water

3/12

1:20

pressure of primary containment vessel (PCV) reached 840kPa>2 times of design pressure

3/13

10:17

start venting

3/14

13:25

loss of cooling capability


16:34

start pumping sea water

3/15

0:02

venting (dry vent)

3/15

6:10

sound of explosion

3/15

6:20

damage to supression chamber?

3/20

15:15

sea water charge to spent fuel pool (40t)


15:46

power to power center

3/21

18:22

white smoke

3/22

16:07

sea water charge to spent fuel pool (18t)

3/29

16:45

water transfer from condensate water storage tank to supression water surge tank

4/9

13:10

water transfer from surface condenser to condensate water storage tank

officially announced event for unit-2 on April 8

2号機は3月13日は格納容器の圧も温度も高いまま待機中、水位は+3.8mという。3月14日になり、水位は+1mと下がり、ついに原子炉隔離時 冷却系ポンプが停止。海水注入を開始したがエンジン燃料の給油忘れで、消火ポンプが停止。この間に炉内水位が下がり、燃料棒が完全に露出したという。圧力 容器圧逃し弁(SR弁)が開かなくなり、開けようとしているが、成功していない。水位はダウンスケールすなわち計測できないところまで下がったという。原 因は圧力容器のベント弁が閉まってしまったことにあるらしい。一時期SR弁を開けて一時、水没できたらしい。3月14日19:02圧力容器の圧が急降下。 23:00すでに3時間露出したままだ、15日00:02ドライベントを実施。すでに境界の移動式モニタリングが3mSv/hを越えているという。直接放 出にすれば3mSv/hを越えることは確実。外部で防護服を着て注水作業している陸自のNBC(核・生物・化学)テロ対策専門部隊である中央特殊武器防衛 隊は水素爆発の落下物で犠牲者が出ることを危惧し、注水をやめて撤退したいと言い出している。確かに東電がすべき作業だ。

3月15日6:10サプレッションチャンバー付近で爆発音が聞こえ、格納容器内部圧力が3気圧から1気圧に低下した。この圧力低下はサプレッションチャン バーに損傷が生じたことの根拠となると東電はいう。 あるコメンテーターはサプレッションチャンバーの外側で水素が爆発し、その衝撃でどこかが破壊されたと推察されるという。しかし阪大の宮崎慶次原子炉工学 名誉教授は圧力容器の底が抜け落ちて下に落ち水蒸気爆発した可能性もあるとする。この直後の境界の放射線強度は毎時960.5マイクロシーベルト、圧力容 器内水位は-2,700mmで、陽圧であった。この時点で所長は不急の要員を避難させ、50人体制で対処しているという。 このとき中性子を検知したという。

18日、原子炉建屋のブローアウトパネルからかすかに湯気が立ち上っているのが見える。そのうちに水素爆発が起こるのかどうか?

19日、電源を復旧して補機冷却系ポンプを使って冷却しようとしているがいまだ成功していない。

23日になり、電源は復活したが機器が水没して復旧には時間がかかる。建屋内は500mSv/hで以降の作業が難航している。

24日、常設配管を使ってプールヘの給水が始まる。

25日、中央制御室の照明点灯目標で工事中。

27日になってタービン室に溜まった水の放射能濃度は2.9GBq/ccと判明。のちこれは間違いと修正。

28日進展なし。

29ー29日、常設配管を使ってプールヘの給水は故障した。

30日、プールヘの給水を消火ポンプに切り替えたがホースが破れた。修理して再開。

31日、RPVの給水ノズル温度が165Cから161C。ドライウェル圧は大気圧。復水タンクの水をサプレッションプール用のサージタンクに移し4月1日 完了。

4月18日には原子炉建屋二重ドアの外で12mSv/h。


第一原発3号機(78.4万kW)

date

time

event

3/11

14:46

scrum


15:42

emergency diesel generator stopped

3/13

5:10

emergency cooling system unable to inject water

3/13

5:10

venting

3/13

13:12

start pumping sea water and boron

3/14

5:20

venting

3/14

11:01

explosion

3/16

8:30

white smoke

3/17

9:48

water pouring to pool by helicopter


19:05

water jet to pool by police


19:35

water jet to pool by army

3/25

18:02

swith to fresh water

officially announced event for unit-3 on April 8

3号機は高圧炉心スプレイ系(HPCS)ポンプをバッテリーで動かして冷却してきたが、12日に至り、これもバッテリーを使い果たし、3月13日に 至り、5:10原子炉給水が全てストップ。1号 機と同じく、3号機も燃料棒が1m30cm露出した。真水注入により、再度冠水したとの報道があった後、真水を使い果たし、海水に切り替えたが水位が上昇 しない。13日朝9:00からベントスタック経由で大気放出することを許可したと官房長官が。実は圧力容器のベント弁を開こうとしたが固着して開かないた という。水位は-1.8mから-2.2mで燃料棒は露出したままだという。燃料棒を露出させたままでは水素が発生するはずなので建屋の爆発があるかもしれ ないという。圧力容器内の圧力は0.26MPa(2.5atm)という。これは格納容器と同じ圧力だから両者は連通している。3月14日に至って11: 00水素爆発で上部構造を失う。爆発力は1号 機より大きく 、かなり大きな放射線遮蔽プラグのごとき大きな塊が飛び上がり落下した。このときプールのゲートも飛んだようだ。爆発後の炉内水位は-1.8mで変わら ず、圧力容器内の圧力は0.17MPa(1.7atm)、格納容器内圧力は360kPa(3.6atm)と逆転している。

3号機の燃料は回収プルトニウムを混ぜたMOX燃料のため、崩壊熱も高いのだという。圧力容器の安全弁を開き、3号機の格納容器のベントも開き、格納容器 ベントすると44マイクロシーベルトから一時的に毎時1,557マイクロシーベルトに上昇した。しかし真水が切れたので海水にしたという。東電は3号 機も捨てたことになる。米国では水素爆発はさけられたはずとコメントする専門家がいるという。

14-16日は燃料棒は露出したままであるという。圧力容器内圧は0.088MpaGである。15日から壊れた建屋から湯気がかすかに上がり始めたのが見 えた。プールに使用済み燃料を保管してあったとしても古いものだから大して崩壊熱は出さないだろうと思っていたが、16日になると激しく白煙をあげるよう になった。東電はこれは崩壊熱でプールの水が沸騰しているためだという。この炉の燃料プールには使用済み燃料が6ヶ月保管していたという。

使用済み燃料棒は3年間プールで冷却することになっている。3号機のプールには2010年6月に取り出した使用済み燃料棒が残っていた。

 燃料プール深さは燃料棒長さ4m、遮蔽深さ8mとして合計12mである。プール開口部は10mx10mとすれば、総量1,200tonの水を たたえている。そして遮蔽深さ8m分の水量は800tonとなる。従って17日間は燃料棒は水没しているはず。ところが東電と政府はこれに水を注入しな ければと慌てふためいている。理由は3号機に大きな白煙が立ち上がったとき、正門での放射線量が10mSv/hと上昇したためらしい。燃料の崩壊熱から推 測すれば3号機には余裕があるはずなのに多量の白煙が上がったのは水素爆発の影響で燃料プール のゲートからリアクターウェルに水が流れ込み、格納容器蓋で加熱されているためではないか?その分プールの水位が下がっているかも?放射性物質は4号機の プールから出ているということもありうるのに4号機プールは放置。

400mSv/hで近寄ることはできないので空焚きにならぬように自衛隊の大型ヘリで海水を3号頂部に散布する作戦を立てたが、30mの高度で放射線強度 は250mSv/hであり、乗員の制限値年間100Svを越えるからとのことで16日はなにもせず空費した。

17日9:48より、高度90mを飛べば87.7mSv/hで済むからと、陸上自衛隊のヘリCH-47から3号に向かって海水7.5トンx 4回の投下。このとき,タングステンシートを操縦士の下に敷いたという。しかし 、ヘリの水の10%程度が雨となって降った程度。正門の放射線は放水の前後で3.78mSv/hと変化なしである。次に自衛隊消防車で30トンの水を3号 機に注水した。

18日午後、自衛隊と東電系列の会社が米軍の放水車を使って50トンの放水をした。ヘリからの投下は中止し、偵察だけとした。東京都消防隊はポンプ車をつ ないで連続的に放水する準備をしているという。

21日午後、一時黒煙が立ち上る。放射線量には影響なし。黒煙を出して燃えるものはケーブル、シリコンゴム・ガスケット、潤滑油などいくらでもある。

22日に白煙があがったとき、正門の値15mSv/hに上がる。どこから漏れているかは本当は不明。

23日になり、再度黒煙が上がる。総員退避。しかし放射線に変化なし。中央制御室の照明が点灯する。残留熱除去系循環ポンプを動かそうとしているが、黒煙 騒動で中断。

24日、常設配管を使ってプールヘの給水が始まる。 タービン室地下一階で関電工のケーブル敷設作業員が3.9MBq/ccの水に入り、水が靴のなかにはいってベータ線熱傷になった。胸につけた被曝線量計は 40分で180μSv/hであった。水の表面は400mSvの線量であったという。

25日、3号機のワンスルー冷却は真水に切り替えた。

27日、3号のタービン室に溜まった水の水深は1.5m、放射能濃度は3.9MBq/ccと判明。

29ー29日、復水タンクの水をサプレッションプール用のサージタンクに移す作業を開始し4月1日完了。

31日、RPVの給水ノズル温度が89C。底部は114C。ドライウェル圧は大気圧。復水器の水を復水タンクに移し終えた。(ポンプが動いたのか?)

4月2日、7m3/hで注入。RPVの給水ノズル温度が119C。底部は90C。ドライウェル圧は大気圧。復水器の水を復水タンク に移し終えた。(ポンプが動いたのか?)

4月14日、圧力容器上部フランジ温度が170oCから250oCに上昇 たという。東電は原因不明という。温度計故障かもしれないという。圧力容器には異変はない。

4月18日には原子炉建屋二重ドアドアの外で10mSv/h。

5月7日には圧力容器の内部温度が上昇したため、注水が途中でもれている恐れありと配管系を変える作業をすると発表。

5月11日、午前10時半ごろ、作業員が3号機の坑道とつながっている作業用の穴(ピット)で、電線を通している空洞部分から高濃度の放射能汚染水が流れ 出ているのを確認した。ピットの海側部分にひび割れがあり、海に漏れていた。東電は空洞をコンクリートでふさぎ、午後6時45分に水の流出を止めた。

5月11日、復水器からの水を圧力容器に戻すための配管を途中で切断し、ここから注水できるよう改良した。新しい配管は、分岐がほとんどなく、高い位置か ら炉心に水を流し込むことができる。

2013/7/4, 3号機から湯気が出ている東電ビデオは削除されたが東電ウォッチャーがの動画をUtube に投稿

2013/7/18, 3号機から湯気が出ている箇所で562mSv/hの高線量が記録された。建屋5階における最高値は2,170mSv/h。

2013/7/25, 原子力規制庁が7/12に北茨城で7maicroSv/hというきわめて高い放射線量が記録されていたと発表。このところ日本では雨が北日本に盛んに降っ ているので格納容器とコンクリートの隙間に隠れていた放射性物質のあるところまで雨水が浸透し盛んに蒸発して放射性物質をまき散らしているように見える。 MOX燃料が装填されているため、崩壊熱は多く、それに見合う注水量が確保されず、注入水がまんべんなく発熱体上に散布されず一部高熱になっているところ があることが想像される。そこから高温のガスが格納容器上部を内部から加熱しているのだろう。


第一原発4号機(78.4万kW)

第一原発4-6号機は定期検査中というので、炉に問題がないが、冷却系は多分つかえないのだろうと思っていたところ、3月15日9:39、4号機4階の プール室で爆発音の後、火災が発生し、自然に消火した。爆発で壁の西北の隅が8x8m破損しているという。ここは冷却ポンプの回転数制御する機器が設置さ れているところだ。原因は水素火災だろうという。水素は燃料棒は赤熱しなければ発生しない。使用済み燃料プールの水に沈めてある燃料棒が水素を出すはずが ない。圧力容器は空である。したがってプールの水が停電で数日間冷却されずにいたため、使用済み燃料から出る崩壊熱で蒸発し、液面が下がって使用済み燃料 のジルコニウム被覆管が露出し、赤熱して酸化し、水素が出たのだろう。とすれば重大事、使用済み燃料プールがウランタドン・コンロとなるおそれがある。東 電はプールに水が残っているか確認していない。不思議なことにはプール温度は84oCを示しているという。満水なら100oC であるべきだ。空になって温度計が放射熱を受けて温まっているのかもしれない。

3月16日5:45、4号機4階のプール室で2回目の火災が発生していることを中央制御室にバッテリーを届けた職員が発見した、今回も火は30分後、自然 に消火した。

燃料プール深さは燃料棒長さ4m、遮蔽深さ8mとして合計12mである。プール開口部は10mx10mとすれば、総量1,200tonの水をたたえてい る。しかし燃料プールと原子炉ウェルは深さ4mのプー ルゲートで連絡しているがゲートは閉じられており、プールゲートのシールパッキンが原子炉ウェルの 水が燃料プールにもらさないとすれば、遮 蔽深さ8m分の水量は800tonとなる。ということは16日午後までに遮蔽水は完全に無くなって、燃料棒上部が顔を出し、水素が発生したといえる。残り の水深は4mだから2.5日で、即ち18日中に完全にドライアップする。水素爆発がやんだのは壁が壊れて通風が良くなったためだろうが、4号機では水蒸気 がそもそも当初からあまり出ていない。ことはこの計算に一致しないのは何故か?

放射線量は発電所内どこでも強いが、17日には減少傾向だ。これは燃料棒は赤熱しているが、ジルコニウムの温度がその融点の1,200oC に達していないため、多量の核分裂生成物が大気中にでてきていないことを示している。いわば空冷されて、なんとか平衡を維持しているということかもしれな い。このところ寒かったが気温があがればどうなる。

18日になり、湯気がしっかりと見えるようになった。しかし3号にかまけてアクションはなにもとられなかった。不思議である。19日には湯気は増えるのか 消えるのか?それが問題だ。

素人が数分で計算できることを5日間予知もせず放置し、あまつさえ、水漏れさえなければ発熱量はたいしたことのない3号機と17日も遊んでいることは信じ られない。もし4号機の燃料棒を垂直に支持している燃 料集合体ラックが熱で崩れれば、空冷もとまり、ジルコニウム被覆が2,200oCを越えれば被覆がやぶれ、多量の核 分裂生成物が大気中に放たれる。ペレットはプールの床に落下してつもり、山盛りになれば温度は酸化ウランが溶融する3,000oC になる。さすれば制御が利かない再臨界となる危険性があるのだが、分散しているため 、多分臨界にはならないだろうと関村東大教授はいう。臨界になれば高速中性子がでて、オゾンを発生させる。水注入すればまた水素が発生して爆発する。そう すると天井が燃料プールの中に落下して燃 料集合体ラックを押しつぶすかもしれない。だからこれを防ぐためにはまずホウ酸を撒いてからにしたいというのが多分ホン音だろう。それな ら、あらかじめホウ酸を解かした水を放水車で壊れた壁の隙間から注入すればよいと思うのだが。

3号に向かってヘリからの海水の投下時、ヘリから東側の壊れた壁越しに4号のプールの水を見たという報告が4号機を放置するという公式な理由づけとして利 用されている。しかし数秒掠めて飛ぶときに東電の人間が原子炉ウェルや機器ウェルを燃料プールと誤認したかもしれないのだ。米軍の無人偵察機の撮影画像は 公表されなかったが、自衛隊ヘリが撮影した写真が公開された。そこには燃料プールらしきものは障害物で見えない。

20日になった自衛隊機から温度測定したところ高温部分は見えなかったという。

22日夕刻から50mの高さに注水できるコンクリートポンプ車を使って4号機にも注水開始したというが異変はなにも報じられていない。

23日になり、電源復活、測定機器の電源も復旧した。

24日、常設配管を使ってプールヘの給水が始まる。

29日、ようやく中央制御室の照明が点灯。

30日、コンクリートポンプ車による給水は必要に応じ継続。タービン室地下で東電職員2名の死体を発見。津波の外傷による死亡という。

4号機のプールの空だきが回避できたのは謎は3号機からダクト経由流入した水素ガスが4号機内で爆発した衝撃で核燃料プール横の原子炉ウェルの水が 偶然、核 燃料プールに流れ込み危機を免れたと推定される。

2012/3/8になり、東電は原子炉ウェルの水はシュラウド交換のため抜く予定だったが、切断器具の補助器具の寸法まちがいで水抜きが遅れていたことと 燃料プールと原子炉ウェルの仕切り壁に隙間があったという幸運が大きいと認めた。

2014/8/7 今までの予想より6時間はやく、13日午前にはメルトダウンが始まり、殆ど圧力容器外に落ちていると公表。(今までは60%)

第一原発5,6号機

すこし離れたところにある。定期検査で停止中であった。しばらく情報は一切なかったが、16日になりプール室の水温が上昇しているという。5号は63oC で毎日5oCの上昇、6号は64oCで毎日4oCの上昇。

ディーゼル発電機は動くようになったという。ただ海水に浸ってしまったポンプのモーターを交換しなければ海水を汲み上げることはできない。 そこで投げ込みポンプで海水を汲み上げて常設の冷却水系に海水を供給している。7月3日にこの仮設ポンプ吐出ビニールホースが破れた。

東電は地震で転倒した東北電力からの送電線の回復工事をようやく17日に開始。

なぜかこの海水放流口周辺海域で規準の1,000倍以上の放射能を検出。

千倍でも 少しであると 保安院

保安院の西山英彦審議官の期待とは裏腹にその後5,000倍近くなった。


共用燃料プール

ここには3年以上経過した燃料棒9、000本が中間貯蔵されているが、ここも冷却できず温度は上昇しているという。


東北電力からの電力ケーブル仮設

20日、 東北電力から66kVを事務所本館近くの仮設メタルクラッドに引き込み、6.9kVに落として建屋に破損の少ない2号機に引き込み、ここから館内ケーブル で1号機に結ぶ工事が320人体制で行われている。PCにて480Vに落とし、バッテリー充電を行うべく作業しているという。

このような面倒なことをせずとも100万Vの送電線を逆送すれば済んだことだ。東京電力がフレキシブルな思考ができていない何よりの証拠だろう。

22日には1-4号機全てに外部電源を供給できるようになった。


第二原発

そうこうしているうちに第一原発に続いて第二原発もおなじ症状だという。バッテリーも使い果たしたためか計器の電源喪失で温度も圧力も水位も計測不能のよ うだという情報と、圧力容器内の水位はまだ燃料棒露出には至っていないという情報がある。第二原発は3月14日に至ってようやく100oC 以下になり、冷温停止が宣言された。第二原発が助かった理由は :

@ディーゼル発電機、メタルクラッド(配電盤)が頑丈な原子力建屋内にあり、冠水しなかった。多分燃料タンクもOKだったのだろう
A主海水ポンプは裸のまま屋外設置であった(モーターがもげることもなかった)が、残留熱冷却用海水ポンプは専用の建屋内にあり、津波から守られた
B東北電力からの電力線が破壊されずに残ったので東北電力復旧後は電力の供給を受かられた

しかし2011年12月に至り、第二原発のMark II型の4号炉と3号炉も放射線線量が強く、どこかの配管の破損があるとかドライウェルと圧力行抑制室を隔離する部分が地震により破損個所があるのではな いかと日立の作業員が噂話しているという。年内に3号機は調査のため、東芝のエンジニアが格納容器に入って調査することになっていると報道されている。


メーカー

Unit

GW

start up

type

contractor

RPV

PCV

Diesel Engine

Civil

1 0.46 1971

BWR-3

GE(Toshiba)

Toshiba Hitachi Niigata

Kajima

2 0.784 1974 BWR-4

GE(Toshiba)

Toshiba Toshiba(IHI) Niigata Kajima
3 0.784 1976 BWR-4 Toshiba Toshiba Hitachi Niigata Kajima
4 0.784 1978 BWR-4 Hitachi Hitachi Hitachi Niigata Kajima
5 0.784 1978 BWR-4 Toshiba Toshiba Toshiba(IHI) Niigata Kajima
6 1.1 1979 BWR-5 GE(Toshiba) Toshiba Toshiba(IHI) Niigata Kajima


現場での労働者

現場で働いている人は相当の放射線を浴びている。4月1日までに20名が100mSvを越えたという。中央制御室の職員はガスマスク着用で勤務していたが 人が体調を崩して入院。格納容器のベント弁を開けた作業員は1回の操作で106mSvをあび、体調不良となったという。これは年間許容量の2倍以上であ る。作業員には死者・けが人多数で出ている。

企業

人数

作業

東京電力

450

復旧

IHI

30

冷却システム復旧

関電工

300

制御機器復旧

東京エネシス (TEPCO子会社)

50

電気設備

日立

170

機器交換

東芝

100

仮設電源

大成建設

130

瓦礫撤去

鹿島

8

重機作業

合計

1,238



東電が採用した緊急発電機

自家発業者からの購入と揚水発電のりようで5-6月は充分。

夏のピーク時対策として、常陸那珂火力に7月までにディーゼル発電気185台を設置して0.25GWの発電をする。8月までにガスタービン発電機 1.5GW新設する。


おわりに

沢山の人が本ページにアクセスされているようなのでGoogle Analyticsで自動計測したところ、赤線のような結果が得られた。もう本事件も山場を越え、アクセス数も急速に低下しつつある。ロジスティックモデ ルを仮定して最小二乗法で近似すると推定累積2万件のアクセスをいただいたことになる。 「福島原発メルトダウン」でGoogle検索すると120万件のトップに表示されるようになった。歴史に残る事件だけにこれだけの支持をいただいたと思 う。

それにしても福島の方々には同情を禁じえない。これを教訓に安易に原発を受け入れることの損得を真剣に考えていただければ幸いである。

本ページのアクセス数の推移 (赤線はGoogle Analyticsのカウント数)

この歴史に残る災害も次第に終息に向かっている。ここでは何が起こったのかを整理した。結果として残った汚染はどうなのかを福島の放射能汚染に整理した。またどうして原発事故が起こったの かの社会的背景の分析を石棺の福島、そしてその解決策を石棺を越えてに提示した。あわせごひいきを。

軽水炉事故ダ イナ ミック・シミュレーター

福島の放射能汚染

石棺の福島

石棺を越えて

ヤブロコフ・ネステレンコ報告

原子力から再生可能エネルギーへ

グローバル・ヒーティングの黙示 録 ー政策研究所・マスコミの一歩先を行く予測

原子力村紳士録ー原発メルトダウ ンのA、B、C級戦犯

原子力へ

to Fukushima Meltdown

March 11, 2011

Rev. March 17, 2018
 


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