要旨
福島第一の事故は制御用の電源喪失により発生した。1号機は圧力容器とアイソレーション・コンデ
ンサーを結ぶ配管の遮断弁が閉じられる設計であったため、炉心を冷却できず遮断弁閉鎖後1時間以内に燃料棒が露出しだし、その日のうちに燃料棒は自らの崩
壊
熱でメルトダウンし、圧力容器の底を突き破って格
納容器の底に流れ落ちたことが最近の内部検査でわかっている。燃料棒の被覆チューブであるジルコニウム金属と水が反応して生成した水素ガスが安全弁経由格
納容器内部に放出されて、格納容器の圧力が上リ、最終的に格納容器蓋のフランジから燃料棒交換デッキに漏れ、これが爆発して燃料棒交換デッキを吹き飛ばし
た。こうして水素ガスに同伴していた放射性物質が環境に放出されたのである。2号機はタービン駆動のポンプが辛うじて動き、3号機は非常用電源によって冷
却ポンプが動いたので数日間は持ちこたえたが、格納容器内の備蓄水が沸点に達してのちは結局1号と同じ症状に陥った。結局このBWRの格納容器は小さすぎ
て、崩壊熱を冷やすための備蓄水も少なく、その目的を果たせなかったことは明白である。潜水艦の原子炉用に開発されたPWRは格納容器も大きく、崩壊熱は
蒸気発生器を使って間接的に冷却できるためBWRのような事故は発生しない。しかし日本ではBWRの方の数が多いので規制官庁は原子炉を再稼働する条件と
して格納容器を大きくせよとか、蒸気発生器を追加せよとは言いにくいため筋を通さずに妥協し(忖度し)、冷却水を圧力容器内に注入する消防ポンプをはべら
せることと
格納容器の圧抜きする時のベントガスを洗浄するベントフィルタを設けるとした。これまだ経産省の管轄下であった保安庁に当時の経済産業所の事務次官が指示したことである。しかし所詮フィルタは5%位の放射能は捕獲されずに通り過ぎ
て大気にでてくる。また消防車の圧力は低いため圧抜きしないと圧力容器内には注入できない。圧抜きすれば蒸気をベントせざるを得ない。とりあえず格納容器に注入してそこから内蔵ポンプで圧力容器に注入で
きたとしても、入れた水はあふれて出てくる。この水が汚染されたとき捨てる場所は用意していない。それよりなにより、制御用と非常時冷却ポンプの電源用非
常バッテリとこれらのスイッチ類が津波が流れ込む最下層に設置したというエバスコの設計が最大の設計上の問題なのだが、規制委員会はこれも大改造になるの
で、忖度してバッテリー室に水密ドアをつけることだけで良しとした。津波があれば換気口からもケーブル貫通口などあらゆる穴から流れ込むわけであくまでお
まじない程度の対処である。結局、これでは福島第一事故の再現となること請け合い。それでも再稼働をゆるすという犯罪行為だ。
本論
再稼働に関し、マスコミでは地震、断層、津波、寿命論争がにぎやかであり、政府は2030年で原発0%、15%、20-25%の3つのシナリオを作って国
民にこのうちから選べと迫っている。全て無意味な騒ぎである。長期的目標など数値で表現すること自体が間違いである。そして原発の設計と運転のどこに問題があったのか正確に把握し、対策を講ぜず再稼働すれば事故の再発は否定できない。筆者は政府事故調報告を含む全ての事故報告書に目を通し、原子力学会安全部会の4回の報告会に出席して得た情報を過去の世界の類似事故と比較検討し、多数のエネルギー関連プロセスプラントの設計、運転、事故解析と対策など50年の経験を総動員して以下の結論を得た。
さて問題点を一言でいえば、BWR炉は構造的欠陥商品だということである。これが今回の福島第一が大事故になった最大の原因である。
津波は単にそれを白日の下にさらしたに過ぎない。
BWRの欠陥
@非常用冷却装置が格納容器の外にあるというトポロジーのため、圧力容器と非常用冷却装置が隔離弁経由で連結されている。直流電源喪失で、弁操作ができな
くなれば冷却・注水不能。消防車で注水するにしても直流喪失で減圧弁の電磁弁が開かず減圧できない。仮に直流電源喪失がないかあるいは可搬式バッテリーで
電磁弁を開き、ボンベで窒素を送って減圧弁を開けようとしてもCで格納容器の圧が上がると背圧が高いためパイロット弁は開かず、減圧不能。このような
BWRの本質的欠陥に加え、直流電源が集中給電方式で設置位置が地下であり、分散化されていなかったため、水没で全てすべての直流電源が失われたわけであ
る。こうして格納容器ベント弁も直流電源喪失で開弁できず。可搬式バッテリーとボンベで開弁できてもラプチャーディスク設定圧に達しなければベントでき
ず。全てトップフランジから漏れる。PWRは一次冷却水と二次冷却水の熱交換を行う蒸気発生器が格納容器内にあるため、一次冷却水の循環ループに隔離弁は
なく、直流電源喪失の事態でも低圧の蒸気発生器に消防車で水を送って一次冷却水を自然循環で冷却できる。
A制御棒と核計装の貫通口が圧力容器の下部鏡板に集中しているため、メルトダウンした熔融コリウムと汚染された水素ガスがこの貫通穴経由で格納容器に直接流下し多量の放射能物質がドライウェルに溜まる。このガスはサプ
レッションチャンバーで洗浄されないままBでできたトップフランジの隙間から圧力によってオペレーションデッキに多量に漏れて1,3号機は
爆発する。そしてそのオペレーションフロアーには裸になった使用済み燃料プールがむき出しになって残されるのである。PWRの圧力容器の底部鏡板には核計装用の穴があるだけで、内容物が漏れ出るまでに時間的余裕がある。
B使用済み燃料交換を放射能閉じ込め目的の格納容器の上蓋をあけて行う構造にある。そのため、圧
力容器は格納
容器のトップフランジ直下に近接して設置されている、そして使用済み燃料プールはその格納容器の上部開口部と同じ高さの空中に設置されている。メルトダウ
ンするとジルコニウムが燃えてさらに発熱する。すなわちポジティブフィードバックがかかって、冷却や水注入できなければ、崩壊熱と燃焼熱で圧力容器が赤熱する。赤熱した圧力容器はバイオロジカルシールドに囲まれているため、熱は
圧力容器に閉じ込められる。赤熱した圧力容器の至近距離にある格納容器の巨大な蓋およびマンホールのフランジが過熱され、フランジは歪み、ボルトは伸び、
シリコンゴム製のガスケットは燃えて黒煙をだし燃え、隙間ができる。こうして格納容器上部蓋を中心とした隙間から洗浄されない水素ガスがオペレーション
デッキにもれでて、爆発したと推察される。格納容器下部には大口径の機器搬入用ハッチや人の出入り用のエアロックも
あるが、熱は対流で上部にたまるし、赤熱した圧力容器から距離が離れているため、放射熱も比較的少く、機器搬入用ハッチからも漏れているとしても少ない。
事故後の東電の放射能分布調査で機器搬入用ハッチ周辺より上部蓋周りの放射線強度が強かったことからも裏つけられる。
C格納容器の容積は圧力容器の20倍、設計圧4気圧で容積が過少。
D全ての崩壊熱は最終的にサプレッションチャンバーのプール水を加熱し水温は上昇する。温度が上がれば格納容器内圧力は蒸気圧分上昇するし、水素は水に吸
収されないから水素の流入分格納容器圧は上昇する。津波が地下室に流れ込んで、サプレッションチャンバーの外から冷却してはいたが時間的猶予を増しただけ
である。しかしこの間に復水器タンクからの水注入を継続すればよいのに、運転員がサプレッションチャンバーの備蓄水を循環する方式に切り替えてしまった。
察するにマニュアルにそのように書いてあったのだろう。いつまでも注水を継続すれば満タンになるからとマニュアルを書いた人間は考えたたのであろうか。サ
プレッションチャンバーの水が沸点にたっすると、洗浄効果は低下する。その証拠に3号機のベント毎に同期してに第一と風下の第二原発の環境放射線量が上昇
している。水素ガス中のセシウム微粒子が水に懸濁除去されるようになるには水中をバブルアップする水素ガスの気泡内面のガス境膜を通過して水の表面に達す
る必要がある。そのためには水素ガス中の水蒸気が水で冷却されて気泡の内側の水の表面で凝縮しなければならない。非常に高温でスーパーヒートした水素ガス
が沸点にある水の中をバブルアップしたときはスーパーヒートした水素ガスが露点にまで冷却されるのは水の蒸発潜熱で冷却されるわけだから水素ガス中のセシ
ウム微粒子など水の表面に移動して接触して水中に懸濁する可能性はほとんどない。ただサプレッションチャンバーの中をバブルアップしてセシウムは除去され
るにでてくる可能性がある。福島第一がベントする毎に第二のサーベイメーターの針があがったのは主としてキセノンのためだが、セシウムが完全に除去された
という証拠はない。
E格納容器は窒素置換しているが建屋は空気のまま。したがって格納容器はもれればセシウムを触媒にして水素は建屋が爆発する。
事故後3年で新たに明らかになった福島BWRの問題点(NHK2014/3/16)
@2号炉は水素爆発をしなかったが一番放射能放出が多かったと東電は正式報告している。その直接の原因はサプレッション・チャンバー上にあるAO操作ベント弁を開けることができなかったことにある。しかしこれはその後のデブリの調査と一致しない。
A2号機のAO操作ベント弁の操作空気圧はあったが、開かなかった理由は不明。
B格納容器の変形・破損前の段階で2号機のAO操作ベント弁操作のために原子炉建屋に人がはいれなかった理由はRCICタービンのシールが漏れたため。通
常は汚染されていない蒸気をメカニカルシールに供給しているのだが、このタービンは内側3段のグランド・シールを通過して漏れる水蒸気は更に外側にある1
個の
シールで囲まれる空間からグランドシールコンデンサーで吸引して処理することになっていた。しかしメルトダウンが発生すれば汚染された水素が水蒸気に混入
し、水素は不凝縮ガスのためコンデンサーに溜まり溜まったガスを抜かないと凝縮できなくなる。こうして汚染蒸気が直接原子炉建屋内に漏れた。漏れ量は
50kg/h。
C2号機の格納容器のトップフランジのボルト緩みとフランジ変形による漏洩、配管貫通部の破損部からの漏洩、ペデスタルに流れおちた2000°Cの
コリウムが厚さ24mmの鋼板近くまで流れ、放射熱が鋼板温度を600°Cに加熱し、鋼板が内圧で変形し、鋼板に割れ目を作ったことによる漏洩があった。
D1号機はベントしたとき、近くの上羽島のモニタリングポストの値も急上昇している。これはサプレッションチャンバーの水温が上がってしまえばセシウム粒子
など捕捉してくれないことを意味する。(原発敗戦で書いた通り)NHKはイタリアまで出向いて、水温があがってしまえば蒸気は凝縮しないから粒子の50%は通過してでてくることを
確認。規制委員会がBWRには応急処置として水スクラブ方式のフィルターベントの設置義務を課して再稼働を認めることにしたことは間違い。
PWRの強み
@格納容器容積は圧力容器の200倍でBWRの10倍で、設計圧は4気圧のため水素が爆発しても格納容器は破壊されない。このためBWRより封じ込め性能は高い。
A格納容器内部で燃料を抜出し、使用済み燃料は横にして格納容器の外に引き出すしかけで圧力容器は格納容器の中心下部に鎮座している。このため圧力
容器が仮に赤熱しても格納容器が直ちに漏れるということはない。いざとなれば水棺にできる。
BBWRは圧力容器が格納容器上部にくっついているため、格納容
器に水漏れが発生すれば(ドライウェルとサプレッションチャンバーを連結するベント管のベロー部などからと推察される)水棺にすらできない。格納容器下部にはBWRと同じく大口径の機器搬入用ハッチもあるが熱は対流で上部にたまるし、圧
力容器から距離が離れているため、放射熱も比較的少く、機器搬入用ハッチからも漏れているとしても少ない。そして格納容器内部の散水設備があって冷却できる。
CPWRは日本に大飯1,2号機のアイスコンデンサーを除けば基本には格納容器はドライだ。冷却と洗浄は格納容器上部に設置されたスプレイで行う。スリーマ
イル島のメルトダウンで環境に放出された放射能が福島のそれにくらべて6桁もすくなかったのはパブコックス・アンド・ウィルコックス製のPWRの安全弁出
口には pressurized relief
tankがあり、ここでの洗浄能力が高かったと推定される。日本のウエスティングハウス製PWRにもpressurized relief
tankがあるため水温が低いときは洗浄能力は高いと考えられる。スプレイによる洗浄効果も期待されるが、外付けのベントフィルターをつけたほうがいいことにかわりはない。フランスの古いPWRには後付けで砂フィルターが設置され
ている。事業者はベントフィルターの必要性をよく検討せよと米国の原子力規制委員会の2012年の特別会議向け報告書NUREG-1650にある。
D大飯1-2号機は例外で1250トンの氷を常備するアイスコンデンサー付き格納容器は水素を凝縮できないにもかかわらず設計圧は1気圧のため、水素もれすれば爆発し格納容器は破壊される。そこで原子力規制委員会は
2012/12/20、国内に24基ある加圧水型原発のうち、関西電力大飯原発1,2号機(福井県)について、過酷事故を想定した原子炉格納容器の水素爆
発防止装置の設置など、特別な基準を設ける方針を決めた。水素爆発防止装置ってなんだろう、着火装置なのか、もしそうなら格納容器ないケーブル、電子機器は火災から守るのはどうするのだろう。はたまた予め50,000m3もの窒素ガスまたは二酸化炭素で充填して置くのか?
総合評価
1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故以降、英国は原子力発電所には消極的な立場を取り、1997年に反原子力の立場を取る労働党が18
年ぶりに政権を奪還すると、ブレア首相は運転中の原子力発電所の運転継続は認めたものの、新規発電所の建設は凍結されることになった。
BWRの過去の統計からいえることは今後福島級は全世界で25年以内に1回発生すると予想される。したがって今後の方針はBWRを再稼働するには格納容器トップフランジの冷却を可能にする事前水張り、ベントフィルター設置が必要となろう。
そしてPWRは断層がないという条件でだけではだめでベントフィルターが必要となる。
PWRが先に開発されBWRはこれに対抗する型で開発された歴史があるが、結果的に改悪であったといえる。その原因はエジソンとテスラの直交論争の確執に発しているのかも。
代替エネルギーは石炭と天然ガスで十分まかなえる。地球温暖化は
二酸化炭素は石炭や天然ガスを我慢して使わずとも縄文海進でわかるように自然現象だからいずれにせよ制御できない。出来ると考えたのは西洋の傲慢なのであ
る。まず化石燃料で原子力の代替とし、これを暫時、再生可能エネルギーに置き換えてゆくという大方針はいずれ世界の共通の合意事項になるだろう。だからパニックになって国際競争力を失うなどと心配する必要はない。
応急対策
@福島では洗浄されないガスが格納容器トップ・フランジが加熱されたため漏れた。BWR対策としてはこのトップフランジの上に水を満たして冷却することが考えられるが、そもそも水がなくてメルトダウンしたのだから論理矛盾。
ABWRのサプレッションチャンバーでの洗浄能力低下対策としては吸収ではなく吸着という異なる原理の除外塔を追加する。フランスのPWRですら古いもの
は格納容
器に砂を充填した外付けフィルターを付けている。モルシーブを使えば吸着塔は小さくて済む。モルシーブも温度が高ければ吸着しないため、水スクラッビング
装置も込みで必要となる。水スクラビングはフランスで見たことがある人もいる。外付けフィルターの有効性は実験でたしかめる
必要がある。冷却水の備蓄問題が生じ、設置場所がないという問題は残る。
結局規制委員会はBWRには応急処置として水スクラブ方式のフィルターベントの設置義務を課して再稼働を認めることにした。これは再稼働を急ぐ経産省傘下の結局規制委員会によって決められたが、環境省管轄になっても変わらなかった。
スクラブ方式は冷
却材を失って2時間でメルトダウンが生じ、ガスが発生する。セシウム等は除去できても、キセノンは吸収されず100tBqの放射性物質が環境に放出され
る。これは住民はこれで180mSvの放射線を浴びるので何らかの障害が発生する。メルトダウン直後避難勧告をしても2時間以内に住民を避難させることは
できない。
BPWRでも大飯原発1−2号機は窒素ガス置換と外付けフィルターは必須で他のPWRもフィルター追加することが望ましい。
ESBWRについて
ESBWRは福島事故前の2006年の設計思想に基づくBWRの改良型である。循環ポンプを省略して自然循環型にしたので信頼性は高まるだろう。しかし安
全性を向上させることはない。使用済み燃料プールを地下に移設したのも評価できるし、格納容器にアイソレーション・コンデンサーをつけたことも評価でき
る。そしていざとなれば圧力容器下部を水没できるようにしたのも評価できる。しかし圧力容器のアイソレーション・コンデンサーがBWRと同じように格納容
器の外のままなので連結配管には隔離弁がついている。これは福島と同じ欠点だ。一方のPWRは蒸気発生器が崩壊熱除去につかえるのだ。最大の問題は燃料交
換は旧式BWRと同じ格納容器蓋経由である。これではメルトダウンしたとき漏れは防止できない。なぜ燃料交換を格納容器内で行わないのか、そして圧力容器
のアイソレーションコンデンサーは格納容器内部に設置して隔離弁を排除しないのか理解できない。崩壊熱除去のメーンストリームは格納容器外にある循環ポン
プで行うため、電源ロス時はアイソレーション・コンデンサーが唯一の冷却手段となる。
究極のBWR改良案
格納容器はPWRと同じ設計思想でつくる。すなわち燃料交換は格納容器内部で行う。圧力容器はPWRと同じ中央下部に設置。気化器の位置にアイソレーショ
ンコンデンサーを設置。圧力容器下部の内側にコアキャッチャーを設置。制御棒や中性子計測管はこのコアキャッチャーを貫通させメルトダウン時は圧力容器を
水棺にして保護する。
究極のBWR改良案
その後のGE日立と高級役人の行動
日本原子力産業協会によると15年1月時点で世界では437基の原発が運転中で、建設中は70基にのぼる。今後も新興国を中心に計画が相次ぐ見込
み。建屋ではトルコで三菱重工業などが受注を固めた原発計画で大成建設が大林組などと組んで工事受注を目指している。日立はリトアニアやポーランドでも受
注活動を進め、東芝や三菱重工も海外で原発機器の受注を狙っている。日揮やゼネコン各社は日本の原発各社の海外展開もにらみながら、市場開拓を急いでい
る。
英国では1970年代を中心に改良型ガス冷却炉(AGR)の開発が進められた。しかし、AGRの開発において様々な問題が生じたことから、開発計
画は大幅に遅れた。PWRや蒸気発生重水炉(SGHWR)を含めた炉型決定の試行錯誤が続いた。1980年代に入ってから、AGRの予備的オプションとし
てPWR が採用された。PWR初号機としてサイズウェルB発電所が1987年6月に着工、1995年9月
に運転を開始している。サッチャー首相が中国を訪問した時、英国でもいろいろ炉型を調べたが、BWRよりPWRが良いことに結論し、サイズウェル原発では
それを採用したと言明。中国がPWRを選択したのは正解だと語ったという。現時点では包括的設計審査(GDA)の原子炉の安全審査では、米国と同様の原子炉型式
承認方式が採用されている。アレバのEPR、東芝ウエスティングハウスのAP1000とGE日立のESBWR( simplified boiling
water reactor)が申請されている。
さてドイツのエーオンとRWEが主導していた英国の原発会社Horizon Nuclear
Power会社はオールドベリー発電所(Oldbury)とウィルファ発電所(Wylfa)の隣接サイトにEPR
かAP1000を5基〜7基を建設する予定であった。2012/10/31に日立が中国資本が逃げ出したため手を引くことをきめたHorizon Nuclear
Power社を850億円で買収するという。ただし事故補償のリスク軽減のために申請が受理されたのちは出資比率を50%以下にするという。これはウェスティングハウスを買収した東芝が犯した判断ミス以上の間違いだと感ずる。
そもそも英国政府がESBWRを承認されるのか?多分されない。それも日立はBabcock International Group Plc
(BAB) と Rolls- Royce Holdings Plc (RR/) とカナダのSNC-Lavalin Group Inc.
(SNC) などの協力を得て完成させたいとしている。根本的な改良をせず放射能がもれやすいBWRを英国で運転して放射能漏れ事故を起
こした時はどう保障するつもりなのだろうか?このプラントが完成して動き出した暁には日立の株は全部売った方がいいのではないかと思う。新聞では日本の政
府系金融機関のファイナンスを利用するとある。先進国向けプロジェクトでも気候変動に貢献す
るならファイナンスすることにした国際協力銀行か死んだに等しいルネサスに追い銭を投げた産業革新機構の余り金を期待してとのことだとすれば国家資産をか
すめ取る犯罪的行為ではないかと思
う。
日立製作所の中西宏明社長(東大電)は推進論者だし、2012年6月、原発政策を推進し、目障りな古賀茂明を切った望月晴文元経済産業事務次官(京大法)が、原子炉メーカーでもある
日立製作所の社外取締役に就任している。日本生命保険相互会社の特別顧問も歴任していたので金づるも連れてのお嫁入か。まさに文系にかすめ取られる日本の
構図。官僚の弊害から日本を救うという元都知事石原氏は原発は必要だと言っているうちは官僚の軛にからめ捕られている証拠。日立製作所の羽生正治(東大電)常務電
力システムグループ電力システム社原子力担当CEO兼原子力事業統括本部長兼日立GEニュークリア・エナジーCEOが実施部隊。他の25名の日立の役員は
原子力には関係ないのでどう動くのだろうか。すでにトルコはBWRはいやだと言い始めている。リトアニアでは住民投票はノーであった。望月晴文、中西宏
明、羽生正治らにとっては自分の在任中は成果があがるがその後は野となれ山となれの無責任な行動だ、ここに後世のために記録した。産業革新機構なんて死ん
だに等しい半導体製造会社ルネサスに追い銭を投げたあの機構だ。これで日立とBWRは向う5年は持ちこたえるだろうが、日本がもつかどうか。石原都知事が
つくったなんとか銀行とおなじ。かけごえだけの「革新」をつける典型的な文系の国家詐欺事件で、首謀者は財務省。でもそれに乗る日立の経営陣もどうしよう
もない。腐った文系の誘いにのる意志薄弱な理系亡者ということだろう。
2015/10/31になり日立傘下のHorizon Nuclear
Power社が原発4基の建設を計画している。このうち2基を設置するウィルファの計画は2019年にも着工、24年の稼働を目指しており、1基目の建屋
の発注に向けて日立が日揮と交渉に入ったと報じられた。受注額は1700億円前後に達する見込み。海外でのプラント建設で培ったノウハウを生かす。国内の
原発建設はこれまで総合建設会社(ゼネコン)が手掛けて
きたが、国内の新規案件が止まるなか、大成建設などが海外での建設に乗り出す方針。プラント大手の日揮の参入で受注競争が激しくなりそうだ。
原子炉などの中核機器を日立が手掛け、日揮は米エンジニアリング大手ベクテルと共同で建屋建設などを担う見通し。1基あたりの事業費は約50億ポンド(約
9200億円)で、建設費は7〜8割を占める。日揮の受注分は建設費のうち2〜3割となるもようだ。出力130万キロワット級の改良型沸騰水型軽水炉
(ABWR)2基としているようだ。沸騰水型は改良型でも本質的にヤバイ炉だ。これで事故れば日立は運転会社となるため補償を受けて立つたちばになる。そ
の時は保険会社は付保しないので日立の命取りになるかも。
ところで大間々の原発はプルトニウム専焼BWR炉であるが、圧力容器は日本製鋼ではなく、呉で製造したという。これはたぶん大和建造の呉造船場の遺産ではないかと。
July 17, 2012
Rev. March 21, 2018