同棲後の婚約破棄
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Last update 2015.5.31mf相談
私(28歳)は、彼(29歳)と、2年間、同棲しました。私は婚約破棄された側です。1月前に、彼から別れ話を持ち出され、別れました。
彼の行動に納得できないところがあります。婚約後に彼が新入社員と関係し、そちらの女性と結婚したいということなのです。
もちろん、私と彼の間にも何もなかったわけではないし、私なりに反省する点は多くあります。
精神的にも打撃を受けました。彼との結婚を考えて正社員にもならなかった(派遣でした)私は、ここで簡単に放り出された場合、一人東京で暮らしていくのにも、結構、難しいものがあります。ある程度の期間は生活を保証してもらわなければ苦しいです。
もちろん、どんな生活でも良いというのならば、生きていくことはできますが、今更、そこまで生活レベルを落とさなくてはならないのでしょうか。しかも、彼の一方的な理由でです。彼は年齢のわりに高収入( 900 万円)ですし、これからもそうでしょう。同棲期間中、彼の預金は 300 万円増えました。
私は、どのくらい請求できますか。
相談者は、弁護士会の中にあった法律扶助協会(現在は、法テラス)と契約している弁護士(契約弁護士)
の法律事務所へ行き、相談しました。相談は無料でした。答え
正当な理由なく婚約を破棄した場合、相手方に慰謝料が認められます。結婚の意思のある同棲後も同様です。
さらに、結婚の意思のある同棲は、両者に夫婦であるとの意思があるが、籍を入れていないだけの結婚生活(内縁)と考えてよいです。同棲は、氏、相続権など以外は、籍を入れた結婚と同様に扱われます。従って、貞操を守り、同居、協力、扶助の義務があります。単なる婚約破棄の慰謝料ではなく、離婚と同様に考えてよいです。
しかしながら、籍を入れた場合、捨てられた配偶者には、離婚届に捺印しないとの強力な武器がありますが、内縁解消の場合は、そのような武器はありません。同棲を始めるのは簡単であり、それを解消するも簡単なのです。この点が弱いですね。
同棲のために正社員にならなかった点ですが、同棲の場合でも、正社員として働くことが不可能とはいえません。しかし、真実、同棲のために正社員なれなかったのであれば、その間の正社員と派遣社員の間の給料の差額、あるいは今後、正社員として就職するまでの(1年間位の)派遣社員との間の差額給料を損害として請求するとよいでしょう。財産分与あるいは慰謝料の増額事由として若干考慮されるでしょう。
あなたの場合、2年間の同棲後に、相手が出ていったのですから、単なる 婚約破棄の場合の慰謝料 より多くの金額が認められるでしょう。そこで、請求額の計算の目安は次ぎの通りにしたらどうでしょう。
- 慰謝料
100 万円から 200 万円くらい
籍を入れないが、婚姻生活(内縁)を破棄したのですから、それは離婚と同じなので。 - 財産分与
300 万円(彼の増えた預金)の半分の 150 万円くらい
- 逸失利益
以前、正社員で給料が高く、婚約(同棲)が理由で派遣社員として働かざるを得なかったため給料が低かったことを証明できれば、同棲期間中の逸失利益として請求できます。
以上を合計して300万円くらいが妥当な金額でしょう。請求する場合は、まず、その2倍程度を請求してみたらいかがですか。
ものは考えようで、同棲の段階で別れるのですから、非常にラッキーでした。彼のような男性と結婚しても、信頼関係は築けません。子供ができた後の離婚なら、さらに大変です。
相談者の経験は、より良い配偶者を選択するための一過程に過ぎません。
当サイト内の婚約に関する記事
判決
- 東京地方裁判所平成22年9月24日判決
婚約後,結婚式を挙げ,3週間ほど同居したが、入籍には至らなかった当事者双方それぞれが精神的・財産的損害を受けたとして損害賠償を求めたケースで,裁判所は、原告(男性)の、金551万7967円(結婚費用431万7967円、慰謝料70万円、弁護士費用50万円)の損害賠償請求を認めた。
- 東京地方裁判所平成19年1月19日判決
原告(女性)は被告と婚約し、会社を退職、同棲したが、男性に他の女性がおり、しかも妊娠していたケースで、裁判所は、
原告に慰謝料を250万円、逸失利益191万8390円(同期間中に推定できる給与所得控除後の金額)、無駄になった交通費29万3600円、弁護士費用52万1199円の合計から、失業保険給付として45万4836円を差引き、合計金522万8353円の損害賠償請求認めた。
- 神戸地方裁判所平成14年10月22日判決
原告(女性)の,被告(男性)による婚約の不当破棄を理由に被告に対する,財産的損害及び慰藉料の支払請求したケースで,裁判所は,
遅くとも,原告が本件不動産を購入したころまでには,原告及び被告の関係は,互いに将来夫婦として共同生活を営む合意が形成されており,原告及び被告間に婚約が成立していたと認めるのが相当であり,被告が本件婚約を解消したことについて正当な理由のあることを認めるに足りる証拠はないから,被告は,本件婚約の(不当)破棄を理由に,原告の被った損害を賠償すべき責任を負うとして,原告に請求の一部である金330万円(慰藉料300万円、弁護士費用30万円)認めた。
- 東京地方裁判所平成6年1月28日判決
同棲後における婚約破棄による女性に対する慰謝料として100万円が相当であるとされた。
- 京都地判平4年10月27日判決(判例タイムズ804号156頁)
被告は、妻子があるにもかかわらず、当時19歳で未婚の原告に対し、妻とは別れると言いながら交際を重の、妊娠させた上、
一旦は原告と内縁生活に入り、子を出産させたが、その出産直後に、一方的に別れたものであって、原告及び五郎の今後の生活等も考えると、被告が原告に与えた精神的
苦痛は大きいものがある。
他方、原告は、被告に妻子があるのを知りながら同人と交際したものであって、被告の離婚する旨の言葉を信じていたとはいえ、このような結果になったことについて、
原告にも幾分か責任があることは否定できない。
これらの事情のほか、原告の年齢、両名の内縁生活の期間等を総合して判畊すると、原告の精神的損害に対する慰謝料として、300万円の損害賠償を認めるのが相当である。
- 東京地判平3年7月18日判決(判時1414号81頁)
重婚的内縁関係であっても、妻との婚姻が形骸化してい場合には、内縁関係に相応の法的保護が与えられるべきであり、これを
理由なく破棄することは、不法行為を構成する。
四 内縁関係の不当破棄による慰謝料額
1 原告と被告とが絶縁状態になったことは前記認定のとおりであり、原告がそれを望んだのではないことも弁論の全趣旨から明ら
かである。被告において、内縁関係を破棄した事情について具体的な主張もない本件においては、被告による内縁関係の破棄は不法行
為を構成するものと解するほかない。
2 原告は、被告が500億円もの資産を有すると主張するが、被告が設立に関与した会社も多数に上るものの、今ではその株式等
は子らに移転するなど、殆ど被告の手元に残っていないことが認められる。
しかしながら、一方で、被告が中小規模のタクシー会社の経営を基盤にしながら、正妻、原告及び丙川にも長期間にわたって生活費
を支給してきたこと、その金額は、被告の自認するところによれば原告に対して毎月50万円から60万円まで(被告は、これを一郎
の養育費として支給してきたと主張する。)であることに鑑み、妻及び丙川にもほぼ同額の金員を支給してきたものと認めうるのに加
え、被告は、右の外に一郎の必要があるときには別に500万円から600万円の金員を支給してきたことをも自認している。また、
被告は、一郎の必要に備えるために同人を従業員としてこれに給与を支給しているかのように取り扱い3000万円にもなったものの、
税務当局の指摘を受け、目的を達せられなかったとも言う。
3 以上のように、昭和30年以降、原告との生活の間に被告の資産がどのように増加したか及び被告の現有の資産額がいくらであ
るかを明確にはし得ないという外ない、殊に、中小規模のタクシー会社の経営によって、いかにして3人の女性とその子供を長期間に
わたって養育し得たのか、税法上の大きな不思議と言わざるを得ない。
以上の次第で、本件における右認定の事情の下では、被告の資産をも考慮して慰謝料額を決定することはできないと言うほかなく、
原告と被告が共に生活した期間が30年にも及ぶこと、内縁関係の破棄が専ら被告の意向でされ、原告に責められるべき事情があると
は窺えないことなど諸般の事情を考慮し、慰謝料額は、1000万円をもって相当とするものと定める。
東京都港区虎ノ門3丁目18-12-301(神谷町駅1分)弁護士河原崎法律事務所 03-3431-7161