NO.014 市 房 山( 市房山:1,721m ) 1993.1.17登山


 頂上直下のチョックストーン( 1993.11.21 )
【市房山について】

【市房山登山データ】

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市房山について

市房山 (イチフサヤマ) は宮崎県と熊本県の県境にそびえる九州を代表する山の一つで、 昔から " 御岳 " と呼ばれて信仰の対象となっている山である。
コースは宮崎側、熊本側どちらからも設置されており、私は宮崎に単身赴任中、4回ほどこの山に登っているが、 熊本側、宮崎側それぞれ 2回ずつ登っている。
どちらのコースもそれぞれ味わい深いものがあるが、ここではハードな縦走も楽しめる熊本側からのコースを主に紹介したい。

私が初めて市房山に登ったのもこの熊本側からのコースで、1月の 17日である。
早朝に宮崎市を出発し、宮崎自動車道からえびのループ橋を経由して市房山の麓まで車を飛ばしてきたのだが、 麓の湯山付近から見た市房山は白く冠雪しており、空は曇っていたものの明るくなった雲を背に白い山肌がボーッと浮き上がるように見えているその姿は、 何か現実離れしたものを感じさせ、信仰の山として崇められているのも分かるような気がしたのだった。

車を市房神社手前のキャンプ場駐車場に駐め、車道をさらに進んで祓川を渡ると、 すぐに左手に石の鳥居が出てくる。ここが市房山の登山口である。
道は樹齢 500年といわれる大きな杉の木に囲まれた参道となっており、暫く進むと夫婦杉といわれる大きな二本杉があり、 そこに一合目の標識が出ている。
やがて、道も山道に変わり、小さな沢を渡り、苔むした岩の間を進んでいくと、三合目の八丁坂となり、自然石の石段登りとなる。
そこから登ること約 40分で、左手にピンク色の壁と赤い屋根をした建物が見えてくる。これが市房神社中宮 (4合目) で、 中は拝殿と無人宿泊所になっている。

中宮からは本格的な山道に変わり、登りも結構キツくなって、喘ぎながら登ることになる。
岩が直立したようになっている仏岩が左手に見えると 5合目、馬の背越が 6合目と、きっちりと標識が立てられているので、 励みになるであろう。
私が初めて登った時には、6合目付近から完全に雪の世界となり、周囲の木々はいわゆる霧氷が付着して白い花を咲かせたようになり、 幻想的な状況であった。
ジグザグの登りは 6合目から先もまだまだ続くが、徐々に周囲の木々も灌木に変わり、やがてスズタケが多く現れ出すと、 傾斜も緩やかになって周囲の展望も得られるようになり、すぐに頂上に飛び出すことになる。

頂上は小広く、一等三角点 (補点) と第 34回国体山岳競技開催を記念した石碑、 そして古い木の標柱が真ん中に立てられている。
山頂は灌木に囲まれているものの、かなりの展望を得ることができ、あまり九州の山を知らない私は、 雲に浮かぶ 高千穂峰等の 霧島連山を遙か南に認めただけであったが、 九州の山に詳しい者なら多くの山々を確認することができよう。

下山は、往路を戻る方法と、二ツ岩の方へ縦走する場合が考えられる。 また、車でなければ宮崎県の米良 (メラ) へと下山するのも良いかもしれない。
往路を戻る場合でも、一旦 二ツ岩への縦走路へ 5分程下って、チョックストーン (岩の間に挟まっている岩) を見てから帰るべきであろう。
このチョックストーンは " 心見の橋 " と呼ばれ、心の清い人しか通れないと言われているが、 無論巻き道もあり、私は 4回のチャンスとも橋の上を通るのを遠慮させてもらった次第である。
よりハードな山行を求めたい場合は、そのチョックストーンからさらに先に進み、北に続く尾根道を辿るべきである。
この尾根は、通称ノコギリ尾根と言われるように、いくつもの小さなピークを登下降していくもので、道も所々狭く、 二ツ岩手前のピークではロープもつけられていて、なかなか歩き応えのあるコースである。
途中 11程のピークがあると言われているが、そろそろ二ツ岩かと思うと裏切られるといった感じで、かなり体力を要するコースとなっている。 しかし、途中の展望は素晴らしく、傘を広げたようになだらかな山容の石堂山が良く見え、 また、これから進む縦走路を見渡せる場所もあり、眼下には登山口である湯山、そして市房ダムなどが広がっており、 素晴らしい縦走路と言えよう。

やっと着いた二ツ岩は、別に 2つの岩があるわけではなく、灌木に囲まれた小さく平らなピークで、 字が消えかけた標識と黄色と白の 2色からなる小さな標柱が立っているだけである。
二ツ岩からは北へ直進する道と分かれて、左へと折れて下り、小さなピークを越して蛇行しながらどんどん高度を下げていくと、 やがてスズタケの茂った道となる。さらに、檜林の中を進むようになると渓流に作られた堰堤があり、 その後 林道に飛び出すことになる。
下山途中、先ほど縦走した尾根を見ることができるが、そこから見る二ツ岩はその名の通り 2つの岩峰が並んで立っている。
林道からは、却って道がよく分からなくなる。とにかく、分岐点では左へと道をとっていくと、やがて登山口手前の祓川にかかる橋の所へ出ることになる。
コース時間は約 7時間も見ておけば十分と思われるが、天候の悪い日や雪が多く残る季節はやめた方が良いかもしれない。

また、少し宮崎側のコースにも触れておくと、こちら側は国道10号線を佐土原から国道219号線に入り、 一ツ瀬ダムを越えて西米良に向かう。
西米良からは国道265号線に入って上米良に向かい、やがて見える槇之口のダム周辺に車を駐めて、ダムの中を通って右岸に渡り、 そこから少し登って車道に出て右へ進むと登山口である (手前からダムの右岸に渡って車道を進めば登山口の所まで行ける)。
こちら側の登山道は、市房山の南東斜面を登ることになるので大変明るく、やや暗く重い感じがする熊本側からの登山口とは対照的である。
私が登った時は、鹿が目の前を横切ったりしたが、自然が多くほとんど人に会わないこともメリットかもしれない。
コース上から、市房山の山頂が見えることが多く、特に八合目付近では正面に山頂を見ながらの明るい草原歩きのようになり、 右手には石堂山が大きな翼を拡げるようにしており、青い空、輝く太陽の下では本当に楽しく歩けるので、 普段 熊本側から登っている人も是非一度はこちら側から登ってみるべきである。
また途中の露岩からは、日向灘も見ることができ、海岸線に立つホテルオーシャン45の高い建物まで見ることができるなど、 眺望は抜群である。
こちら側のコースの所要時間は、槇之口ダムからの往復でガイドブックには 8時間と書いてあるが、私の足で 6時間弱であるから、 7時間半もあれば十分ではないだろうか。
とにかくどちらのコースでも良いから、一度は市房山に登ることをお薦めする。


市 房 山 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ 登山日:1993.1.17 天候:曇り 単独行 日帰り
登山路:市房山キャンプ場−鳥居−四合目− 馬の背越(六合目)−市房山−チョックストーン(心見の橋)−市房山−六合目−四合目−鳥居 −市房山キャンプ場
交通往路:宮崎−えびのIC−免田町−湯前町−湯山−市房キャンプ場(車にて)
交通復路:市房キャンプ場−湯山−湯前町−免田町−えびのIC−宮崎(車にて)
その他の市房山登山 (1) 市房山キャンプ場−鳥居−四合目 −馬の背越(六合目)−市房山−チョックストーン(心見の橋)−1,642mピーク−二ツ岩−土用木場谷 −市房山キャンプ場(1993.11.21:晴れ)
(2) 槙の口ダム−登山口−三合目−市房山小屋−九合目−市房山 −九合目−市房山小屋−三合目−登山口−槙の口ダム(1993.12.25:晴れ)
(3) 槙の口ダム−登山口−三合目−市房山小屋−九合目−市房山 −九合目−市房山小屋−三合目−登山口−槙の口ダム(1994.2.26:晴れ)

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