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林光「生命の木、空へ」 全6章・目次と歌詞

楽譜

1.木は空を
2.なぜ?
3.天の火
4.道の歌
5.敗戦のこども
6.あらゆるものの中に

1.木は空を

木は空を指す
木は大地に根を張る
天と地をまっすぐにつなぐ
傾いた大地に生まれても あやまたず空を指す

木は育つ
楽しい春には のびやかに
きびしい秋には 固く つよく
その歩み 年輪となり
時をかぞえ
歴史を刻む

木は千年生きる
木は二千年生きる
生きてのち 伐られ 割られ 削られ

柱となり 梁となり
またあたらしく生きる

木は見た
天の火は人を灼き
光と雲が人を殺すのを

木は祈る
地の底のなげきを聴く
天へ向かって
木は祈る

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2.なぜ?

溶けてよじれた一升びん
あなたたちの 束の間の宴のあと
とっくに底をついた
このクニの台所
やっと手にいれた酒くみかわし
あなたたちは何を語りあったのか
禁じられた母のコトバを
きょうばかりは思いきり話したか
むりやり捨てさせられたナマエで
たがいに呼びあったのか
うばわれたクニを思い
クニをとりもどす日を夢みたか

その日は<光よみがえる祭り>
タイコとどろきカネがひびき
白い服が蝶のように
街を村を舞い踊る・・・・・

十日ののちにやってくる その日をまたず
あなたたちは
べつのおそろしい光に
灼かれた

クニとナマエとコトバをとりもどした
あなたたちの兄弟は
だが このクニで まだ
ほんとうの安らぎを得てはいない

溶けてよじれた一升びんは
わたしたちにうったえる
溶けてよじれた一升びんは
わたしたちをといつめる

なぜ?

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3.天の火

天の火が一本の木を裂き 人は火を知った

木は野を焼き そのあとを人はたがやした
火は石を焼き 人は粉をこねてその上においた
人はこねた土を火で焼き 人のかたちをつくった

人は石を溶かし 人は丈夫な家をつくった
人は石を溶かし 人は美しい街をつくった

人は燃える石を掘り
人は燃える水を掘り
天の火をもとりこにして
火は地上でふえつづけた

溶かした砂に息をふきこみ
人はつくった たくさんの美しいもの
石と石を混ぜ 火花と火花を混ぜて
人はつくった もっとたくさんの おそろしいものみにくいもの

みにくいものはいつも 美しいものをこわし
それでも人は 美しいものをつくりつづけた

そして ついに
人はあたらしい天の火をつくり
その火で じぶんを灼いた

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4.道の歌

ぼくたちのまえに 道はひとつ
生まれたのは死ぬため それがしあわせ

ぼくたちのまえに 真理はひとつ
日本は敗けない 神風(かみかぜ)が吹く

ぼくたちのまえに 歴史がひとつ
国を治めるのは あれは神さま

ぼくたちのまえに 一枚の地図
日本だけが偉くて ほかの国を見下げてる

ぼくたちのまえに ひとつの科学
2たす2は5になる 魂は弾丸(たま)に勝つ

ぼくたちの都市に 火の玉ひとつ
戦争を終わらせて ぼくたちを殺した

科学は崩れ 真理は溶けた
歴史に穴があき 地図はやぶれた

焼けた帽子 服 靴
茶碗と弁当箱

これがぼくたちの姿
遊び 学び 生きたかった

きみたちのまえに
きめられた道はない
生きるために歩くとき
そこが道になる

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5.敗戦のこども

父さんは敗戦のこども
学校がはじまったとき
教科書に墨を塗り
それから授業がはじまった

かわいそうだったんだね
こども時代の父さんたちは
墨塗り教科書で と言ったら
父さんは首を横に振った

父さんたちは楽しかった
愉快だった おもしろかった
ウソの歴史を墨で消し
ニセの道徳を破りすてた

焼け跡のようにひろがる
なにもない世界に立って
そこに何をつくろうかと
父さんたちは夢をみた

いま きみたちは見ている
父さんたちがつくったものを
美しい夢はみのり
よくない夢もかず多く

さあこれからは君たちが
墨を塗るしごとを引きつげ
おそろしい火のもとを絶ち
よろこびの歌をうたうのだ

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6.あらゆるものの中に

マリア ミカエル マリア ミカエル
マリア ミカエル マリア ミカエル
マリア マリア ミカエル ロウレンシオ

ひとつの名前が 石に刻まれるとき
百のねがいが 星になるだろう
十の名前が 過去帳に記されるとき
千の希望が 花を咲かせるだろう

マリア ミカエル マリア ミカエル
マリア ミカエル マリア ミカエル
マリア マリア ミカエル ロウレンシオ

ねがい 草に 木に
雲や風に 山に海に
あらゆるもののなかに ある

わたしたちが それを見るとき
それをきくとき
そして 歩きはじめるとき

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