“最後の忠臣蔵” ★★☆
(2010年日本映画)

監督:杉田成道
原作:池宮彰一郎
脚本:田中陽造
出演:役所広司、
佐藤浩市、桜庭ななみ、山本耕史、伊武雅刀、安田成美、笈田ヨシ、片岡仁左衛門

  

十三人の刺客」に続く、原作=池宮彰一郎、主演=役所広司という組み合わせの時代劇。
元々池宮さんの原作自体面白いものですし、前評判も高そうだったので早くから観に行くことは決めていましたが、私の狙いとしては今回準主役クラスで出演している桜庭ななみ。
書道ガールズ」で初めて観ていいなぁと思っていましたので、その点から本作は見逃せず。

原作は「四十七人目の浪士」という表題で、寺坂吉右衛門を主人公に、赤穂浪士討ち入り事件後の関係者がたどった様々な物語を描いたもの。その最後に来る物語が「最後の忠臣蔵」。
本作品はその「最後の忠臣蔵」を膨らませた形になっているので、原作を読んだ時の印象とは異なりますが、映画としては実に良い作品になっています。

さてストーリィ。
討ち入り前夜に浪士から脱走した瀬尾(せのお)孫左衛門。卑怯者とそしられることになりましたが、実は大石内蔵助から、やがて生まれるべき自分の隠し子を密かに育て上げよという命令を受けていたと判ります。その隠し子が、現在ともに暮す、16歳の美し娘に成長した可音(かね)。
その可音を芝居小屋で見初めたのが、豪商・茶屋四郎次郎の嫡男=修一郎。
平穏だった孫左衛門と可音、2人の生活に新たな局面が展開していくというのが、本ストーリィ。

本作ではいろいろな対峙があります。孫左衛門とかつての盟友・寺坂吉衛門の再会、孫左衛門と旧赤穂藩士たち、孫左衛門と茶屋四郎次郎父子、そして可音を育てるのに力添えをしてくれた謎めいた美女・お夕。
その中でも圧巻なのは、孫左衛門と可音の対峙であるのは言うまでもありません。
自分を慈しんで育ててくれた孫左衛門と、主の命令に忠実にしたがい大事に育て上げてきた可音。2人の深い想いがせめぎ合う場面、本ストーリィで圧巻というべき見所です。
ベテラン・役所広司に引けをとらず、堂々と可音を演じきった桜庭ななみがお見事、期待した以上の観応えでした。

今後も桜庭ななみには、期待大。

なお、本ストーリィで登場人物たちにとって重要な岐路となるところで、それを左右したのは、武士とはどうあるか、ということ。その点も見逃せない要素です。
また、本ストーリィを先導するかのように、「曽根崎心中」の人形浄瑠璃芝居が折々に挿入されています。面白い工夫だと思う次第。

2010.12.23

          


  

 to 映画note Top     to 最近の映画 Index