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2.戦艦武蔵 3.大本営が震えた日 4.漂流 5.高熱隧道 7.ポーツマスの旗 8.破船 9.破獄 10.冷い夏、熱い夏 |
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夜明けの雷鳴、島抜け、敵討、見えない橋、大黒屋光太夫、彰義隊、死顔、回り灯籠、ひとり旅、三陸海岸大津波 |
●「星への旅」● ★★ 太宰治賞 |
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新潮文庫
1992/12/23 |
“記録文学”以前の吉村さんの代表作品集。 本書に収録された中では、やはり「少女架刑」が印象的です。 星への旅/鉄橋/少女架刑/透明標本 |
●「戦艦武蔵」● ★★ |
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1966年09月
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吉村さんが“記録文学”というジャンルで躍進する契機となった作品。
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●「大本営が震えた日」● ★☆ |
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1968年 1981年11月
1998/05/17 |
昭和16年12月08日太平洋戦争が開戦。その直前、ハワイ・東南アジアでの陸海軍による奇襲攻撃を極秘に進めるため、さまざまな局面で綱渡りのような苦労が重ねられていた。 |
●「高熱隧道」● ★★ |
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1967年06月
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太平洋戦争開始直前、黒部峡谷奥におけるトンネル工事の悲惨な状況を描いた
記録小説。 |
●「ふぉん・しいほるとの娘(上下)」● ★★☆ 吉川英治文学賞 |
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1978年03月 1981年11月 1993年03月
1993/04/25
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私として涙を抑えかねることが度々あった、感動余りある作品でした。 シーボルトが日本を去った後、母の滝が嫁した俵屋時治郎は、混血児・稲に対しても寛容でした。そのお蔭で、稲は学問の上でも優れた才能を表し、自らオランダ語の習得に熱意を燃やし、やがて日本初の女医
としての道を歩むことになります。父親であり、名医と謳われたシーボルトの娘らしい運命だと言えます。 |
●「ポーツマスの旗」● ★★ |
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1983年05月
2002/08/30
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日露戦争における日本−ロシアの講和交渉、その経過を詳細に書き綴った作品。 吉村作品において政治場面を描いた作品は珍しく、その点からも注目すべき一冊です。 ...という前提は抜きにしても、日本・小村寿太郎(外相)全権とロシア・ウィッテ全権の講和交渉が、米・ポーツマスで始まると、もう目が離せなくなります。それくらい、緊迫感、迫真性、臨場感は見事なもの。余計な脚色を入れず、事実のみを淡々と書き綴っていくスタイルの吉村文学だからこそ感じる迫力だと思います。 日露戦争は単純に日本がロシアに勝利したと思っていましたが、日本はこれ以上の戦闘を続けることは、武器、人、財政の面でもはや不可能という状態に至っていた。一方、ロシアも、戦争継続派の声が強まる一方で内乱の危機が高まるという状況にあった。両国ともギリギリの状況におかれていた訳です。 そんな状況の中で両国の全権は、一瞬の隙も許されないギリギリの、かつ一進一退の交渉を続け、ついに交渉を実らせます。 今の日本からすると、これだけの外交交渉を過去の日本が出来ていたとは、とても信じられないこと。それを可能にしていたものは、独立国としての気概、独立を守るためのあらゆる努力、情報収集という裏づけがあり、さらに閣僚・元老たちの一致団結した協力体制があったからこそでしょう。 その点、何と今の日本はだらしないことか。外交は完全に米国頼み、外交交渉も単独ではまともにできない国など、もはや独立国とは言えないのではないでしょうか。 フィクションではなく事実であったからこそ、この緊迫感の重みは凄い。圧倒され尽くします。 それだけの苦労をしたうえでの講和であっても、当時は屈辱的な講和をしたとして、日本国内で暴動が起こり、小村全権および内閣は激しい非難にさらされた、と言います。本当に外交とは難しいものです。 なお、当時の内閣・陸軍とも日本の軍事力の限界を正しく認識していて、精神論を振りかざすことのなかったことが印象的。 吉村昭作品の中でも、是非お薦めしたい一冊です。 |
●「破 船」● ★☆ |
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1985年03月 |
江戸時代、僻地の貧しい漁村の生きる厳しさと、過酷な運命を冷徹に描いた作品。 常に飢餓と対峙するような貧困。それ故、年頃の娘のみならず、家長である父親、女房までが数年身売りして、家族のため食糧を買い求める。そんな漁村が、救いとして毎年のように祈願するのは、“お船様”の到来。 すなわち、沖を通る船が座礁し、その荷を奪うことができるように、村中が祈るのです。さらに、塩焼きと称して夜中火を焚き、座礁を誘おうとする。 そんな極貧の中で生きる漁村の姿を、吉村さんは主人公・伊作の家族を通して描きます。父親は身売りして不在、母親と弟妹の5人暮らし。 久々のお船様到来に村中が歓喜しますが、翌年再び訪れたお船様は、村に過酷な運命をもたらします。 それは村への天罰だったのか、そもそもこんな過酷な状況の中で何故彼らは暮らし続けてきたのか、そんな風につい感じてしまいます。 しかし、吉村さんはそうした感情を一切排除するかのように、事実のみを冷徹に語っていきます。そんな厳然とした姿勢が印象に残る一冊。 |
●「破 獄」● ★★★ 読売文学賞 |
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1983年11月
1995/07/19
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太平洋戦争前後、刑務所脱獄を4回も実行した男の実録。 ※昭和 11年青森刑務所脱獄、17年秋田刑務所脱獄、19年網走刑務所脱獄、22年札幌刑務所脱獄、36年仮出所(54才)、53年死去(71才) |
●「冷い夏、熱い夏」● ★★★ 毎日芸術賞 |
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1984年07月
1995/09/25
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著者の実弟が癌に冒され、死に至るまでの1年間の記録。 |