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2.退屈姫君伝 3.錦絵双花伝(文庫改題:面影小町伝) 4.影法師夢幻(文庫改題:真田手毬唄) 5.紀文大尽舞 6.おんみつ蜜姫 10.おたから密姫 |
紅無威おとめ組− かるわざ小蝶−、山彦ハヤテ、南総里見白珠伝、退屈姫君これでおしまい、桜小町、壇ノ浦の決戦、ふくら雀、青葉耀く、道草ハヤテ、いそさん |
●「風流冷飯伝」● ★☆ 第5回小説新潮長篇新人賞受賞 |
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2002年04月
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江戸で幇間をしていた一八がはるばるやって来たのは、四国讃岐にある風見藩という二万五千石の小藩。
本作品は、時代小説にありがちな緊迫感はまるでなく、終始飄逸な雰囲気に溢れています。見ることを道楽とする数馬が、なかなかの狂言回しを勤めています。 |
●「退屈姫君伝」● ★★★ |
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2002年10月
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痛快無比の娯楽時代小説!!(3部作の第2作) いくら小藩とはいえ、藩主の正室が退屈の余り腰元に扮して屋敷外にでかけ、その後の騒動において先頭に立って活躍するという筋立ては、さすがの山手樹一郎作品にもなかったことではないでしょうか。しかしそうではあっても、そんな些細なことは蹴散らしてしまうほど、米村さんの筋運びは洒脱で、面白いのです。 ストーリィは前作の「風流冷飯伝」同様、貧乏藩である風見藩にかかわるもの。大藩である陸奥磐内藩の末姫であるめだか姫が、風見藩・時羽直重に嫁ぐところから始まります。 明朗、痛快、そして謎解きの面白さ、ちょっと艶めいた部分もあって、そのうえ人情話もあるという贅沢さ。最後は、拍手喝采しつつ笑い転げてしまうという面白さです。 |
●「錦絵双花伝」● ★★☆ |
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2003年10月
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「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」に続く、ゆるやかな3部作の完結篇。今回は、「姫君伝」に登場したくノ一・お仙が主人公となり、お庭番・倉地政之助がこれまで通り登場します。 元々、米村さんは笠森お仙を主役に据えた物語を書くのが目的だったとか。笠森稲荷の茶汲み娘・お仙は、江戸中期に鈴木春信の描いた錦絵のモデルとなり、美女ブームを引き起こした後、倉地政之助に嫁いだ実在の女性だそうです。いきなりお仙のことを書く自信がなかったのでその周辺事から書き始めたら、結果的に3部作になったとか。 本書の中心ストーリィは、くノ一・お仙が年頃になって、不器量娘変じて極め付けの美女となり、江戸中の評判になってしまいます。ところが、もう一人評判になった美女がいて、それが楊枝店の銀杏娘・お藤。 評判になって喜ぶどころか、2人とも評判になっては困る秘密を各々抱えていた。その2人の美女を狙う悪役として登場するのが、前作にもちょいと出た、田沼意次の息・意知。 本作品は、滑稽譚であった前2作とは、雰囲気を異にします。幾分滑稽味はあるものの、本格的な時代小説で、かつ忍者ものストーリィ。 また、隆慶一郎風の伝奇小説の要素が織り込まれているかと思えば、美女2人の身上には、根の深い因縁話が秘められている、という盛り沢山。 様々な物語が本書1冊の中で展開され、幾冊かの小説を一遍に読んだような満腹感があります。その上、多様な面白さは驚くばかり。それが現代小説の感覚で、上手にブレンドされている、という印象です。久々に読み応え充分な時代小説の快作。 ※なお、「〜幕××の場」と、歌舞伎仕立てに仕切られているところも、楽しく読める理由のひとつです。 |
●「影法師夢幻」● ★★ |
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2008年01月 |
なんとも楽しい時代小説です。 豊臣秀頼に馬糞をくわせて侍大将になった、というのが、勇魚大五郎。 その大五郎の子孫は、秀頼が生きて鹿児島に逃れたという唄の伝承を信じ、日本全国くまなく秀頼を代々捜し歩いてきたという。その7代目大五郎が、本書の主人公です。 7代目大五郎に応じて7代目秀頼が登場したと思ったら、7代目真田大助までも登場。さらに初代大助の弟・真田大八の末裔、霧隠才蔵の末裔まで登場するという念の入れよう。そして、初代大助、初代大五郎、初代秀頼、初代大八の物語を各人が語っていくのですから、とにかく面白い。 「講釈師、見てきたような嘘をつき」と言いますが、本書はそんな楽しさに充ちた作品です。 さらに終盤、御庭番・倉地政之助とその配下・大蜘蛛仙太郎(※「錦絵双花伝」参照)が登場するのも、米村ファンにとっては嬉しい限りです。 軽い娯楽時代小説ですが、のほほんとした太平楽な雰囲気がとても楽しい(山手樹一郎「わんぱく公子」が思い浮かびます)。まさに私好みの一冊です。 頭の中を軽くしたいと思った時には、是非お薦め。 荒唐無稽な時代小説の面白さを満喫できる作品ですけれど、芸がなくてはなかなかこう面白くはなりません。(05.08.14) |
●「紀文大尽舞」● ★★ |
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2006年06月
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一代で江戸の豪商にのし上がり、忽然と消えた紀伊国屋文左衛門を題材にした、奇想天外、驚天動地の娯楽時代小説。
主人公は戯作者を志す湯屋の娘・お夢。まずはお夢が、紀伊国屋の隆盛・没落の真相を戯作に書こうと、文左衛門を付け回すところから始まります。 これまでの米村作品でお馴染みの祖となる、紀州藩隠密役・倉地仁左衛門+むささび五兵衛のコンビが登場するかと思えば、大久保彦左衛門、一心太助も登場。さらには絵島生島事件の絵島、6代将軍家宣の正室・天英院、挙げ句の果ては8代将軍・吉宗まで登場し、お夢が堂々と彼らに渡りあうという破天荒さ。 彦左衛門+一心太助の組み合わせは時代が違うなぁと思えば、そこはちゃんと辻褄を合わせ、返す刀で彦左衛門の「三河物語」まで切って捨てるという案配ですから、米村さんは相当な曲者です。 真偽定かならぬ史実に絵空事を混ぜ合わせ、それでもなお歴史事実には背かずといった、融通無碍なストーリィ。そのうえ奇想天外、一転二転さらに留まらず、といった快作。 |
●「おんみつ蜜姫」● ★★ |
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2007年01月 |
九州豊後温水(ぬくみず)藩の末娘で、暴れ姫と異名をとる蜜姫の嫁ぎ先が決まります。相手はあの讃岐・風見藩主、時羽光晴。 ところがこの婚儀の裏には、父・乙梨利重と光晴との間に交わされた両藩合併という秘策が隠されていた。 その直後から利重の命を狙う怪しい影。命令したのは将軍吉宗に違いない。侍の数が少ない温水藩で隠密として吉宗に対決できるのは自分しかないとばかり、母の甲府御前・宇多の許可を得て蜜姫は温水藩を出奔します。お供は忍び猫のタマ一匹。 姫君を主人公とした時代活劇には、古くはTV「琴姫七変化」、山手樹一郎「紅顔夜叉」があり、決して珍しくはないのですが、そこは米村圭伍作品。人を喰ったような可笑しさは、他作品では味わえない魅力です。 |
●「退屈姫君 海を渡る」● ★☆ |
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2004/10/09
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「退屈姫君伝」読了後、いずれはめだか姫の再活躍、あるいは夫君である時羽直重の活躍を読みたいと思っていたのですが、あっさり刊行されたのが、本書・文庫書下ろし。 風見藩国許で藩主・直重が失踪、という知らせがくノ一・お仙からめだか姫の元へもたらせます。 「すてきすてき」「だって・・・この危機から藩を救えるのは、わたくししかいないではありませんか!」とばかり、喜び勇んで船を仕立て、めだか姫は海上を一路讃岐を目指します。 この喜び勇んでという処が、普通の時代小説とはかなり違うところ。とびきり軽妙洒脱、愉快な時代小説なのです。 お供は、お仙、諏訪、小文五という「退屈姫君伝」お馴染みの面々。一方、讃岐では「風流冷飯伝」でお馴染みの一八に、飛旗数馬ら冷飯侍たち+α。まるで同窓会気分ですが、懐かしさもあって嬉しく、また楽しい。 「退屈姫君伝」で初体験したような楽しさはありませんが、いずれの登場人物も個性的で、それなりにしたたか。すこぶる楽しい娯楽時代小説であることには変わりません(私好み)。 |
●「エレキ源内 殺しからくり」● ★ |
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2004/11/14 |
平賀源内の娘・つばめを主人公とする時代活劇。 若い娘を主人公とする時代活劇ストーリィという点では、退屈姫君のめだか、おんみつ蜜姫の延長線上にある作品でしょう。 しかし、それら3作に比べるとちと物足りず。米村作品としては平凡な時代活劇に終わってしまったという印象です。主人公が町娘では、姫君小説のような荒唐無稽さがそもそも無いためと言えます。
源内の遺した秘宝とは何か。それを狙って、源内の親友だった狂歌師・四方赤良こと御家人・大田直次郎、源内ただ一人の娘であるつばめを謎の黒頭巾一味が襲います。 |
●「退屈姫君 恋に燃える」● ★★☆ |
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2005/10/06
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“退屈姫君”シリーズ第3弾! この“退屈姫君”、とにかく面白いのです。畠中恵“しゃばけ”シリーズも楽しい時代小説ですが、本シリーズの〔楽しさ+底抜けた面白さ〕には敵いません。 冒頭からしっぽの最後まで、愉快な気分は絶えることなく、読み終わった時には「あぁ楽しかった!」と満足できること請け合いの一冊。 |
●「おたから蜜姫」● ★☆ |
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2010年10月
2007/12/10
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九州豊後温水(ぬくみず)藩の末娘で、暴れ姫の異名をとる蜜姫を主人公とする「おんみつ蜜姫」シリーズ第2弾。 今回は、なんと「かぐや姫」の謎解きという文学ミステリに蜜姫が挑戦します。 しかし、行動派の蜜姫のこと。古典文学の素養も欠き、頭を捻っての頭脳労働は苦手と、その役回りは専ら母親の甲府御前・宇多が担います。 つまり、本巻は頭脳派=甲府御前&行動派=蜜姫という母娘コンビによる時代版<歴史の謎解き+冒険>物語。あの「ダ・ヴィンチ・コード」の向こうを張って、ということらしい。 ストーリィの発端は、蜜姫の許婚者である筈の風見藩主=時羽光晴に仙台藩主=伊達吉村から縁談が持ち込まれたこと。 いかにも本当らしく思えてしまう「かぐや姫」の謎解きに本書の面白さがあるのは勿論のことですが、ちと長たらしい向きがあるのは否めない。 |