竹内 真作品のページ No.1


1971年新潟県村上市生まれ、群馬県高崎市にて育つ。慶應義塾大学卒。在学中の95年「ブラック・ボックス」にて三田文学新人賞、98年「神楽坂ファミリー」にて小説現代新人賞、99年「粗忽拳銃」にて第12回小説すばる新人賞を受賞。
下記既読作品以外に「図書館の水脈」等あり。


1.粗忽拳銃

2.カレーライフ

3.風に桜の舞う道で

4.じーさん武勇伝

5.真夏の島の夢

6.自転車少年記

7.ワンダー・ドッグ

8.ビールボーイズ

9.シチュエーションパズルの攻防

10.文化祭オクロック


イン・ザ・ルーツ、図書室のキリギリス、ぱらっぱフーガ、ディスペリクトの迎撃、ホラベンチャー!、図書室のピーナッツ、廃墟戦隊ラフレンジャー、図書室のバシラドール

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1.

●「粗忽拳銃−流々亭天馬−」● ★★   小説すばる新人賞


粗忽拳銃画像

2000年01月
集英社刊
(1700円+税)

2003年10月
集英社文庫化


2002/01/17

一丁の拳銃を偶然拾ったことから始まる、4人の若者の破天荒な青春記。
副題にある「流々亭天馬」は、ただ今噺家の前座という、主人公の高座名です。その他、劇団俳優である広介、自主制作の映画監督である時村、ライター修行中の可奈というのが、主人公4人の顔ぶれ。各人共もうひとつ脱皮しきれていない、というのが彼等の現状です。
そんな4人が、一丁の拳銃、その発砲体験によって、俄然目覚めたように手応えをつかみ、がむしゃらに走り出すというのが、本書ストーリィです。
拳銃を拾った時に届出もせず、そのまま抱え込み、皆で発砲体験しようということが、そもそも非常識。でも、元々常識から抜け落ちたような落語家が、真っ先に拳銃に固執するのですから、納得感があります。でも、かなり無茶苦茶。そこが若者の破天荒さとも言えますが、かなりのオッチョコチョイという感じもします。だからこそ、落語の「粗忽長屋」をもじり、「粗忽拳銃」というのが本作品の題名。
粗忽ながら懸命に自分らの道を進もうとする青春ストーリィ。4人のバランス良い連帯関係も加わって、爽快な楽しさがあります。そのうえ、拳銃をめぐってのアタフタ、ドタバタがあり、スリリングな面白さを併せ持っています。
新人賞にふさわしい活きのいい作品です。

     

2.

●「カレーライフ」● ★★☆


カレーライフ画像

2001年03月
集英社刊
(1900円+税)

2005年01月
集英社文庫化



2001/07/08



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とても楽しい小説です。理屈なしに楽しめること、冒頭から最後の結末まで、面白さが途切れることなく続くのが何よりの魅力。本を読むことの楽しさを、久々に満喫できた、と言ってよいでしょう。

ストーリィは、主人公ケンスケが、亡父から一軒の店の土地建物を遺されたことから始まります。毎年祖父の洋食屋でカレーを振舞われていた5人の子供たちが、将来ここでカレー屋を開こうと子供心に決意したこと、調理師学校にケンスケが入ったことを父親が決意の実行と勘違いしたことがその原因。その結果、ケンスケはいとこ達を誘いながら、カレー屋開業に向かって歩きだすことになります。

そこからの展開が、とにかく楽しい。まずは大学生のワタルを探す為に富士五湖までサイクリング。そこから今度は米国バーモンソ州に留学中のヒカリの元へ。バーモント州がバーモントカレーの本場と勘違いするのは滅茶苦茶ですが、結果的にカレーを伝授してくるところは珍道中風
バーモント州からは、何と直接インドへ。2人で放浪中のサトルを探しにでかけます。ここでは本格的カレー談紀行譚が楽しめます。

次の沖縄行は3人道中ですが、沖縄料理の薀蓄+祖父のカレーのルーツ探しという、ちょっとミステリ風味が加わった面白さ。
とにかく、場所を変え、登場人物を変え、雰囲気を変え、少しも読者を飽きさせないけれど、常にストーリィの主題はカレー、という小説なのです。

単に楽しいだけではありません。主人公たちのビルディング・ロマンス的要素もしっかり持ち込んでいます。
楽しい小説を読みたいと思ったら、文句なしにこの1冊!と言えます。分厚いですけれど見合う面白さ有り。お薦めです。

   

3.

●「風に桜の舞う道で」● ★★


風に桜の舞う道で画像

2001年05月
中央公論新社
(1850円+税)

2007年10月
新潮文庫化



2001/07/26

予備校の桜花寮で暮らした1年間(1990年)と、10年後の現在を交互に織り交ぜて語る青春記。題名の「風に桜の舞う道」とは、その桜花寮に向かう道筋の忘れ難い風景を語ったものです。
ストーリィは、当時の寮仲間・リュータが死んだらしいという噂を主人公アキラが聞いたことから始まります。噂は本当なのか、でもどうして? それを確かめる為に寮仲間を主人公が訪ね歩くのですが、それと並行して、当時の12ヵ月がフラッシュバックのように語られていきます。
数多ある青春群像のひとつであり、似たような小説は幾冊も読んだような気がしますけれど、本書のストーリィ構成の良さに惹かれます。
寮仲間を訪ね歩く中で、その一人一人について当時の様子が語られ、それと比較するように現在の様子(その結果とも言えます)が描かれています。大学合格だけが目標でその後のことは曖昧な浪人生という時期、それに対し、社会に出てそれなりに自分の仕事に手応え、自分のあるべき位置をつかんでいる現在。ラーメン店を自営していたり、編集者、地元に戻って公務員、大蔵省のキャリア、大学の研究室に残っていたりと、進学後の経過は様々です。
過去と現在とどちらが良いか悪いかということではなく、どちらも各々の時期のあるべき姿であった筈です。当時があって、だからこそ今もある。そんな納得感、気持ちの良さが有ります。
構成のうまさと、題名にふさわしい、サラリとした爽やかさが魅力。見逃すには惜しい一冊です。

なお、寮生活を描いたストーリィという点では、青木奈緒「ハリネズミの道」の方が印象に残ります。

   

4.

●「じーさん武勇伝」● 


じーさん武勇伝画像

2002年08月
講談社刊
(1700円+税)

2006年08月
講談社文庫化



2002/09/15

小説現代新人賞を受賞した「神楽坂ファミリー」、その続編である「かえってきたじーさん」に、書き下ろしの「じーさん無敵艦隊」を加えて単行本化した一冊。

一言でいってしまえば、破天荒な活劇・冒険談。しかも、そのヒーローが、畳職人である主人公の祖父、83歳というのですから、荒唐無稽もここに極まり、と言う他ありません。
井上ひさしさん、小林信彦さんにもこうした要素がなくはないのですが、ここまで突き抜けてしまうというのは、竹内さんの若さ故のエネルギー、奔放さからでしょうか。
とにかく、この“じーさん”の活躍ぶりが凄い!
サイパンでの遭難、海賊との戦い、沈没船の宝捜しと、ダーク・ピットも真っ青という程。そのうえ、ダイビングで知り合った40歳以上も年下の女性と再婚し、赤ん坊までもうけてしまうというのですから、いやはや。
若者でもなかなかという活躍を、80歳を越えた老人がしのけてしまうという、そのアンマッチが面白い。“じーさん”という呼び名が、単なる仇名のように思えてきます。
そのじーさんに引きずられるように、ダメ男の父親、テニス好きの母親とともに主人公と弟までサイパンに渡り、一家総出で冒険気分を味わうというストーリィ、理屈無視の楽しさです。

神楽坂ファミリー/かえってきたじーさん/じーさん無敵艦隊

        

5.

●「真夏の島の夢」● ★★


真夏の島の夢画像

2004年02月
角川春樹事務所刊
(1700円+税)



2008/05/25



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瀬戸内海に浮かぶ小さな島、鹿爪(かづめ)島
その島で毎年夏に行なわれる“鹿爪島アートフェスティバル”。その中の演劇コンクールに出場するため、コント劇団コカペプシの若者4人は東京からこの島へやって来た。
また、エッセイストの大桃佳苗も初の小説、それも官能小説を執筆するため、アシスタントである従妹の大岩律子と共に鹿爪島唯一の豪華観光ホテルへ缶詰になりにやって来た。
全く対照的なこの2組。偶然知り合って精々鹿爪島にいる間だけ付き合う関係で終わる筈だったのが、島の老人たちが繰り広げる産廃持込反対運動に巻き込まれて・・・、というストーリィ。

とにかく登場人物たちの面々が魅力的。
老人ばかりの過疎の島と馬鹿にすることなかれ。この島の老人たち、なかなか食わせ者で意気盛んなのです。
佳苗と律子の作家様ご一行、佳苗は性的に奔放な性分で、第一稿を完成するとすぐ男漁りに出掛けていく。コカペプシの青年2人をうまいこと食いつまんでしまうのですが、あっけらかんとしているので憎めない。対照的にオクテと、それはそれなりに好い従姉妹コンビです。
それでも、本作品の魅力の源泉は、やはりコカペブシの4人にあります。
この4人が個性とアイデアを持ち合ってひとつのコント劇を作り上げていく、その過程は存分に面白く、楽しい。本書で一番魅力ある部分です。彼らが最後に完成させる自作劇「カンヅメ島」、是非私も観てみたい。

なお、コント劇団コカペプシの顔ぶれは、団長の栗本進也山森里中伸司、今田一平。皆20代前半という若さです。
若いけれど、自己満足に甘んじず、一本ピシッと芯の通っている演劇姿勢がまた好いんですね、これが。
折角の魅力あるキャラクター、本作品だけで終わってしまっては勿体ない。是非また彼ら・彼女らと再会したいものです。

    

6.

●「自転車少年記」● ★★☆


自転車少年記画像

2004年05月
新潮社刊
(1900円+税)

2006年11月
新潮文庫化



2004/06/17



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自転車を題材にした、少年たちの成長記。最初から最後まで、爽快感がついに途切れることがなかったという、気持ちの良い作品です。
主人公である昇平草太が4歳の時に始まり、小学校、中学校、高校、そして最後は社会人までと、各年代でのドラマを書き綴っていくというストーリィ構成。
全体を通して最後にドラマチックに盛り上がるというような作品ではありませんが、その代り主人公たちと関わりあう楽しみが、いつまでも続いていくという喜びがあります。

本ストーリィは、自転車に乗ることを覚えたばかりの昇平が風ヶ丘の坂を初めて走り下り、風を切る爽快感に気持ちを高ぶらせるところから始まります。その時の昇平は、自転車のコントロールを失ってそのまま草太の家に突っ込んでしまうという結果に終わりますが、それが草太との出会い。
その時に昇平が味わった爽快感は、読み手もまた決して忘れることのできないものです。その爽快感がストーリィの最初から最後まで吹き抜けている、それが本作品の魅力です。
竹内さんの作品を最初に読んだのはカレーライフですが、あの時の楽しさを思い出させてくれる作品であり、さらに爽快感を加えた作品と言えます。
自転車で遠出もした、自転車部も創設した、恋愛もした、挫折もした、そして再出発もあった、というストーリィ。そしてその都度、自転車に乗る楽しさが仲間を加えてますます広がっていきます。それが楽しい。
主人公たちといつまでも一緒に走っていたい、八海ラリーにも参加したい、そんな喜びが胸いっぱいに広がる爽快な作品。お薦めです!

坂道の向こう側(昇平4歳)/特訓山の冒険(昇平6歳)/潮風の道(草太10歳)/二つの坂道(昇平13歳)/海辺の少年(昇平15歳)/笹山高校自転車部(草太16歳)/リタイアの日(昇平18歳)/旅立ちの道/300キロの助走距離(草太20歳)/スプリングボード(奏21歳)/いくつかの再会(昇平20歳)/八海ラリー(草太24歳)/ノブオコーナー(伸男26歳)/飛び立つ瞬間(昇平29歳)/道の行方

    

7.

●「ワンダー・ドッグ」● ★★★


ワンダー・ドッグ画像

2008年01月
新潮社刊
(1400円+税)



2008/02/09



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いやぁー、本当に面白かった。
自転車少年記も面白かったですけど、本書の面白いのなんのって。
物語の始まりは1989年04月、空沢高校入学式のこと。
遅れて入ってきた少年は制服があちこち破れ、怪我もしているという悲惨な姿でしたが、その制服の胸元から覗いていたのは、何と子犬の顔だった。
捨て犬を拾ってきた新入生=甲町源太郎とその子犬はさっそくワンゲル部に入部し、その日から“ワンダー”と名付けられた部員犬と空沢高校生徒たちとの物語が始まったのです。

“部員犬”という存在自体もの珍しいし、ワンダーとワンゲル部員、空沢高校の生徒たちとの交流も抜きにして語れないないのですが、本ストーリィはあくまで高校生たちの成長ぶりを描いた作品なのです。
ワンダーは、いわば彼らの成長を促す触媒といった存在でしょうか。
それでもワンダーの人懐っこく、茶目っ気ある様子は読んでいて可愛くて仕方ないもの。本書の一頁一頁が面白く、幾度となく胸熱くなり、それは最後の一頁まで全く変わることはありません。

第1章は、源太郎やワンゲル部員らがワンダーを部員犬として学校に公認してもらうまで、自分たちで知恵を振り絞り、自主的に行動していく話。
第2章は、源太郎たち卒業の後、ワンダーの世話をしたいからという理由だけでワンゲル部に入部した知草由貴の話。ワンダーのためだからと始めたことを通じて、何かを目指して一歩一歩進んでいくことの喜びを由貴は知ることになります。
根っからの山男であるワンゲル部顧問の大地先生の存在感も本書には欠かせませんが、その大地先生の言うとおり、ワンダーという存在のおかげで生徒達は、自主的に行動し、決定し、自ら責任を持つということを学ぶことができたのです。
そして第3章、第4章。これ以上を語ることはもはや勿体ないこと。是非ご自分で読まれることをお薦めします。

名作かどうか名品かどうか、そんなことはどうでもいいのです。
本書の一頁一頁に嬉しくてたまらない楽しさ、胸熱くなる部分が詰まっています。そんな想いを何度も味わえることだけで、充分幸せなこと。 絶対、お薦め!

ワンゲルとワンダー/クライミングとマウンティング/実習と脱走/同窓会と部員犬

      

8.

●「ビールボーイズ」● ★★


ビールボーイズ画像

2008年02月
東京創元社刊
(1700円+税)



2008/03/06



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ビール工場撤退のため好きだった女の子が転校してしまうのを惜しんで同級生4人が秘密基地に集まり、初めてビールを飲んだのが12歳の時。
その時を始まりに、仲間が集ってビールで乾杯を交わす場面を繋ぐようにして描かれた、同級生4人(男の子3人+女の子1人)の成長物語。
4人のキャラクターも楽しめますが、本書はそれ以上に、ビールにまつわる物語なのです。

ビールに始まり、常にビールを傍らに置き、最後は皆の出発点である北海道新山市に戻り、皆で力を合わせて作り上げた地ビールで締めくくるという、ビール尽くしのストーリィ。
最初は4人揃っていたものの、転校があったり、進路が分かれたり、新山市と東京に隔たったりと、なかなか4人が揃って集まるということがないままストーリィは進みます。
そして最後に4人が再び一同に会したとき、物語の最初で3人が望んだ奇跡は、起きるのです。
ストーリィだけを追うなら、特別これといった展開がある物語ではありません。
それでも、このすっきりとした、気持ちの良い味わいは格別。
それは、一気飲みした時のビールの美味さというより、じっくり味わうべきエールの美味さ(飲んだことがないので想像するだけですが)に近いのでしょう。

ストーリィのみならず、各章(「第○回ビール祭」と称す)の前に置かれている計10個のコラムで語られるビールの薀蓄を読むのが、また楽しい。
そのコラムをずっと辿っていると、本書で竹内さんが描いているのは単なる4人の成長物語に留まらず、硬直的で規制ばかりという日本の政治・行政を諌め、もっと大らかで、皆で楽しめる日本社会を作ろうよ、という提言を行なっていると感じられます。
本作品の上記2点を私は評価したい。

あの懐かしいカレーライフと共通し、ストーリィも場面設定もビールにこだわった物語。それこそがまた楽しい。
読み終わった後はいそいそとビールで祝杯を挙げるべし、なのかもしれませんが、お酒を止めて随分経つ私においては、特にそんな気分になることもなし(苦笑)。

      

9.

●「シチュエーションパズルの攻防−珊瑚朗先生無頼控−」● 


シチュエーションパズルの攻防画像

2008年06月
東京創元社刊

(1500円+税)



2008/08/09



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竹内さん初のミステリ。それも安楽椅子探偵もの連作短篇集。

いつも独自のストーリィを展開して楽しませてくれる竹内さん、初のミステリ作品と言えども期待したのですが、残念ながら今ひとつ。

ところは銀座のさる文壇バー、「ミューズ」
育ててくれた叔母・ミーコママの半ば命令により、そこでバーテンダーのアルバイトをすることになったのが大学生の
さてその「ミューズ」には、贔屓客でミステリ小説の大家=辻堂珊瑚朗が度々やって来て、女の子にちょっかいを出す傍ら、投げかけられた謎を当意即妙に推理し解き明かして行くのが常。
了もいつの間にか謎解きに巻き込まれ、「ミューズ」周囲で起きた事件の謎、珊瑚朗先生あるいはミーコ叔母自身に関わる秘密についつい推理を働かせてしまうことに。

・「クロロホルム」は、店の周囲で起きた事件の謎解き話。
・「シチュエーションパズル」は、好敵手のミステリ作家同士、珊瑚朗先生対藤沢敬五先生の謎解き争い。
・「ダブルヘッダー」は、"銀座で一番いい女"をめぐる珊瑚朗先生&藤沢先生の謎解きに了が挑戦。
・「クリスマスカード」は、珊瑚朗先生とミーコママが知り合った若き頃における、珊瑚朗先生の謎解き活躍話。
・「アームチェア」には、第三者が登場して・・・・

5篇の中では真ん中の「ダブルヘッダーの伝説」が私は好きでせうねぇ。
自分たちの“いい女”を立ててやろうと、伝説まで創り上げてしまった珊瑚朗&藤沢先生の、虚実ないまぜにしてしまう心意気がなかなかに楽しい。

クロロホルムの厩火事/シチュエーションパズルの攻防/ダブルヘッダーの伝説/クリスマスカードの舞台裏/アームチェアの極意

     

10.

●「文化祭オクロック」● ★☆


文化祭オクロック画像

2009年07月
東京創元社刊

(1500円+税)

2012年11月
創元推理文庫化



2009/08/09



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東天高校の文化祭を舞台とした学園ミステリの好作。

文化祭の開催日、ブランスバンド部のマーチングバンドが終了すると共に流れてきたのは、「DJネガポジ」と名乗る男の放送。
文化祭の案内をする他、特別企画として携帯電話のリレーによるトークショーを企画していると宣言。
その第1回ゲストに指名されたのが、引退したばかりの野球部ピッチャー、山ちゃんこと山則之。その山ちゃんが好きだと広言している相手がユーリこと斉藤優里
東天高校にある古い時計台、その壊れた大時計を動かす人がいたら付き合っても良いとユーリが言っていたとDJネガポジが伝えたことから、山ちゃん、それに挑戦すべく硬球を大時計の針にぶつけ始めます。
冗談じゃない、そんなこと言ってないと怒ったのが、ユーリ。DJネガポジを見つけて締め上げようと、DJブースを探し始めます。ところがまるで見つからず・・・・。
そんな最中、窓ガラス破壊事件の冤罪を鮮やかに晴らして見せたのが、文芸部2年の筆名「探偵コーラ」こと古浦久留美
ユーリから協力を求められ、2人してDJネガポジの謎を解き明かすべく、学園祭の中を駆けずり回ります。

何か画策しているらしい放送部員たち、中々正体がつかめない謎のDJネガポジ。
その一方で、軽妙なDJネガポジのおしゃべり、明るくさばさばした山ちゃんの個性、それらと対照的に潔癖な女子生徒たち。
何だかんだといいつつ、高校生の一大イベント、文化祭の興奮、華やぎを満喫する青春アルバム、学園ミステリ。
そうしたお祭騒ぎを再びヴァーチャルで味わいたいと思う方たちに、お薦めです。

※私が通った高校にも勿論文化祭はありましたけれど、そんなに興奮した覚えはなかったなァ。私自身が醒めていた所為なのか。そうであれば勿体ないことをしたなァという気分。

      

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