高橋義夫作品のページ


1945年千葉県生、早稲田大学仏文学科卒。出版社勤務、広告会社の共同経営を経て、作家。「狼奉行」にて第106回直木賞を受賞。


1.
狼奉行

2.密命

 ※ 龍の置き土産(藤水名子監修「ふりむけば闇」収録)

  


 

1.

●「狼奉行」●           直木賞

  
1992年3月
文芸春秋刊

1995年6月
文春文庫

1995/08/15

羽州上山藩の若い武士・祝勒負は、お家騒動の余波で、山代官の下役に配されます。
自然の過酷な地で、部下の十兵衛や、マタギの娘・みつとの出会い、その中で勒負が成長していく姿を描いた時代小説。

ただ、同じパターンのものとして藤沢周平「蝉しぐれとつい比較してしまいます。味わい深さの点では、同作品にもうひとつ及ばないという印象。その分、物足りなさが残りました。

   

2.

●「密 命」● 

 


2002年10月
毎日新聞社刊

(1800円+税)

 

2003/07/04

家康の密命を受け、長崎、ルソン(フィリピン)、マカオを股にかけて活躍する、奥山流の達人・小笠原玄信斎を主人公とした海洋冒険歴史小説。
関ヶ原の戦いに敗れた豊臣の残党が、南海の島々に逃れ、エスパニアの軍勢と手を組み、徳川政権を覆そうとする企みがあるらしい。そこで、長崎奉行である叔父・小笠原一庵を通じて玄信斎に使命が与えられた、という設定。

しかし、洋上での戦闘がある訳でなく、と言って玄信斎の活躍により大きく興亡が左右される訳でもありません。ですから、海洋冒険小説というより、〔南海見聞録+冒険小説〕と言う方がふさわしい。
ルソンの日本人町をはじめ、東南アジアに住むに至った日本人の姿には、興味を惹かれるところ大です。
明への抵抗勢力である「月港二十四将」の一人である呉川、纏足の少女・月琴をはじめ、魅力的な人物が登場するものの、もうひとつ破天荒な活躍、魅力に欠けているという印象です。
隆慶一郎「一夢庵風流記白石一郎「海狼伝」「海王伝」と比べると、物足りないという感じは否めません。

  


  

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