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2.鬼麿斬人剣 3.かくれさと苦界行 4.一夢庵風流記 5.影武者徳川家康 7.花と火の帝 9.かぶいて候 10.見知らぬ海へ ※ 柳生非情剣 |
●「吉原御免状」● ★★☆ |
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1986年02月 1989年09月
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隆さんの時代小説デビュー作。 隆さんの長篇ものとしては比較的短いものですが、まとまりが良いこと、それと今後の活躍を彷彿させるものを様々に含んでいるところが、読み逃せない魅力です。 遊郭である吉原の“城塞”としての性格付け、“傀儡子”一族という題材、柳生一族対後水尾天皇、或いは吉原者との対立。 ストーリィのスケールが大きく時代考証も優れている点、今後の隆さんの活躍が楽しみでした。急逝がとても惜しまれます。 ※後水尾天皇が中心となる作品が、「花と火の帝」。 |
●「鬼麿斬人剣」● ★★ |
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1990年04月 1990/04/11 |
刀工・鬼麿を主人公に据えた 連作短篇。鬼麿の振るう“斬人剣”の迫力が見所といえる作品。 ストーリィは、名刀工・源清麿が自ら死を選んだ場で、弟子の鬼麿に、昔金に困って製造した駄刀を探し出して折るように命じるところから始まります。その折り捨て旅に、そうはさせじという伊賀組との闘いが絡む8番勝負、というストーリィ。 鬼麿は、赤ん坊の頃山中に捨てられ、山嵩に育てられた巨躯の野人、そしてその扱う剣は試し剣術独特の構え、という設定。隆さんが好む“傀儡子”の系統にある主人公です。 時代小説というジャンルから少し飛び出て、“伝奇ロマン”といった冒険小説の如きものです。 |
●「かくれさと苦界行」● ★★ |
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1987年12月 1990年09月 1990/02/13 |
再び柳生義仙と酒井忠清が暗躍する「吉原御免状」の続編。 今回は、公娼の吉原に対抗して私娼の岡場所を開設、経済的に吉原に打撃を与えることにより、御免状を手に入れようと画策します。 ストーリィの細かな内容はともかくとして、読了後は、作者畢生のライフワークを満喫したような充足感がありました。 死んだ筈の有名人○○が登場するというのも、興味惹かれる部分です。 |
●「一夢庵風流記」● ★★☆ 柴田錬三郎賞受賞 |
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1991年09月 1992年12月 |
主人公“一夢庵”とは、前田慶次郎利益のこと。 信長軍団長の一人・滝川一益の一族であり、前田家の養子に入る。しかし、前田家の家督は、信長の寵臣だった利家が継いだことから、義父死去後は前田家を出奔し、“傾奇者”として天下を放浪したという人物。 秀吉に気に入られ、意地を通し続けることの許しを得る。直江兼続との交誼、朝鮮へ渡ったりと、とにかくスケールが大きいのが魅力。スケールの大きさは、隆さんならではのものであり、本作品もその期待を裏切ることはありません。 西欧で言えば、ダルタニャンばりの冒険小説と言うところでしょう。 |
●「影武者徳川家康」● ★★★ |
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1993年08月 1990/04/27 |
私の愛読書のひとつ。 初めて読んだ時に感じたことは、とにかく驚きでした。 関ヶ原の戦いで家康が殺される。その為、関ヶ原以後は家康の影武者がその代わりを務めざるを得なくなった。その裏面において、次代将軍の座を狙う秀忠と影武者の間には、長く厳しい暗闘が延々と続いた、というストーリィ。 この作品の魅力を挙げれば、まさに数え切れない程です。計り知れない程のスケールの大きさ、活力。そして、史実と照らし合わせると、奇想天外な話でありながらきちんと壺にはまっていく展開。 もちろん、魅力的な人物の筆頭は、“いくさ人”である影武者=二郎三郎、島左近、甲斐の六郎です。隆さんの手により、全く新しい魅力をもった人物像が創られた、と言って良いでしょう。 本作品は、まさに時代小説の傑作! そして、時代小説に新風を吹き込んだ、と言える作品です。 ※本作品に頗る対照的な作品に、
池宮彰一郎「遁げろ家康」があります。比較して読むとこれ以上の楽しさはありません。 |
●「捨て童子・松平忠輝」● ★★★ |
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1989年11月 1992年11月
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初めて読んだ時には、何となく面白くないように感じたのですが、再読した時には、自由人・忠輝の尽きない魅力に完全にはまりました。 家康の六男でのちに勘当され流罪人として生涯を終えた、この忠輝という主人公は、隆さんが描いた中で最も傑出したヒーローではないかと思います。 ストーリィとしては、「影武者徳川家康」と重複するところもあり、「影武者」に並列する作品として楽しむことができます。 |
●「花と火の帝」● ★★☆ |
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1990年01月 1993年09月
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徳川家康・秀忠・家光3代の時期に天皇・上皇であった後水尾天皇と、それをとりまく“天皇の隠密”たち、岩介・猿飛佐助・霧隠才蔵・朝比奈兵左衛門らの活躍を描く伝奇ロマン。 この作品は、まずストーリィの構成に魅力があります。 ただ、これには岩介という主人公の存在が欠かせません。 刊行された部分は、ストーリィとしては闘い=“火”の部分。もしかすると、未完となった今後の部分には“花”の面での闘いが描かれる予定ではなかったかと、私なりに想像し、改めて残念と思う次第です。 ※後水尾天皇は、「吉原御免状」にも登場する天皇です。 |
●「死ぬことと見つけたり」● ★★☆ |
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1990年02月 1994年09月
1994/01/30 |
戦時中、中原中也とランヴォー詩集を隠すために 「葉隠」を持っていったところ、戦地においてロマンとして「葉隠」を熟読したという、隆さんの述懐から始まる作品。 その為か、本作品には、他の作品とは異なった趣きが感じられます。隆作品の特徴はスケールの大きさとそのロマンの壮大きさにあるのですが、本作品には“葉隠”という特異な世界を隆さん独自の持ち味で調理して卓上に供えた、という雰囲気が感じられます。 本書は未完ですが、15話まで書かれています。一本のストーリィとして壮大な世界が語られているというより、聖書の如くひとつひとつの挿話が語られる中に、“葉隠”という共通精神が通っている、という印象です。 読み応えに加え、他にない独特の味わいがある作品です。 |
●「かぶいて候」● ★☆ |
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1990年05月 1993年12月
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本作品の主人公は、“幡随院長兵衛”でお馴染みの水野十郎左衛門の父親・水野成貞。本来は、水野日向守勝成→成貞→十郎左衛門と、3代に渡る“傾奇者”伝として構想されたようですが、冒頭部分で未完となってしまった 作品です。 型破りで、社会の枠に収まりきれない人物として、前田慶次郎に繋がる作品と言えるでしょう。 なお、本作品でちょっと興味を惹かれるのが、秀忠の人物設定。従来の秀忠像とは異なり、度量もあり、温か味のある人物として描かれていること。家光との比較において、秀忠像が相対的に上昇せざるを得なかったという事情が窺われます。 |
●「見知らぬ海へ」● ★★ |
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1990年10月 1994年09月 1994/01/09 |
徳川幕府にて御船手奉行となった、向井兵庫守正綱の若き頃を描いた海洋歴史小説。残念ながら本作品も未完です。 向井水軍の総帥、向井正綱の茫洋とした人物ぶり、海戦の魅力、そして海の自由人としての“水軍”という構成が、何より本作品の魅力です。 残念なことに本作品は、ウィリアムス・アダムス(三浦按針)が日本に漂着し、正綱と出会うところで未完となっています。 |
●「柳生非情剣」● ★★ |
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講談社文庫化 2014年01月
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柳生の剣客たちを描いた短篇集。ひとりひとりの個性を、遣う剣に結びつけたところが面白いのですが、其々の篇だけでも充分読み応えのある作品です。 慶安御前試合・・柳生連也斎厳包(尾張:兵庫助利厳・三男) ※新陰流道統は、1.上泉伊勢守信綱、2.柳生石舟斎宗厳、3.柳生兵庫助利厳(如雲斎)、4.柳生茂左衛門利方(次男)、5.柳生連也斎厳包(三男)、以下略 |