|
|
2.喜知次 3.屋烏 4.五年の梅 5.かずら野 6.生きる 7.冬の標 8.武家用心集 9.芥火(文庫改題:夜の小紋) 10.むこうだんばら亭 |
さざなみ情話、露の玉垣、闇の華たち、逍遥の季節、麗しき花実、脊梁山脈、トワイライト・シャッフル、太陽は気を失う |
●「霧の橋」● ★★ 時代小説大賞 |
|
2000年03月 1998/05/15 |
「藤沢周平を想起させる」と評価された、時代小説大賞受賞作。
読み始めはかなり藤沢作品を意識させられましたが、読了の頃にはまるで気にならなくなっていました。 |
●「喜知次」● ★ |
|
2001年03月 1998/05/02 |
時代小説大賞を受賞した後の第一作。
情趣ある作品という雰囲気であるけれど、表面的なものに過ぎず、あまり評価する気にはなれません。 |
●「屋
烏(おくう)」● ★☆ |
|
2002年02月 2003/01/21 |
いずれも静かな印象の短篇5作を収録。 「禿松」は、昔別れた許婚との関わりを描いた作品。 禿松/屋烏/竹の春/病葉/穴惑い |
●「五年の梅」● ★★☆ 山本周五郎賞 |
|
2003年10月 2000/09/15 |
秀逸な時代小説・短篇集です。
何より良いのは、5短篇の収録順序。
この5篇を順序どおりに読み進むのは、まるでオードブルから始まる見事なフルコースの料理を味わうかの感動があります。時代小説ファンには見逃してもらいたくない一冊です。 後瀬の花/行く道/小田原鰹/蟹/五年の梅 |
●「かずら野」● ★★ |
|
2004年04月 2006年10月
2001/09/15 |
作者の乙川さんが、今後の時代小説を担う作家の一人であることに間違いはありません。しかし、その作風は、これまでの時代小説(池波、藤沢も含む)と、一線を画すような違いのあることが感じられます。それはどんな点か。 登場人物の心情を深く、深く掘り下げていく、そんなところに、他の時代小説にはない乙川作品の特徴があるように思うのです。表面的には単純に見えても、その背後には深い心情が隠されている、そしてそれは時に連れて変わり、ますますその襞を深めていく、というように。さしづめ、フランス心理小説の流れを時代小説に持ち込んだ、という気がするのです。 本書はまさしくその傾向が典型的に現れた作品。作品としては、前作「五年の梅」の方が味わいありますし、気持ちよさも本書より優っていますが、乙川さんの特徴をはっきり印した作品として、強く印象付けられます。
本書の主人公は、松代・真田家に仕える足軽の次女・菊子。実家の貧窮故に、菊子は糸師を営む富商・山科屋の元へ一生奉公に出されます。しかし、思いがけない行き掛かりから、菊子は山科屋の息子・富治と共に、故郷、家族を捨て、流転の人生を歩むことになります。 |
●「生きる」● ★★ 直木賞 |
|
2005年01月 |
生きる、というのは、時によって死ぬよりずっと辛く、悲しいことがある。本書3篇の内、最初の2篇はそんな趣旨を語った作品です。 最後の「早梅記」は、藤沢周平「風の果て」を連想させる作品。人生晩年に至った主人公の回想に、懐かしさと僅かな悔恨が滲み出ています。 生きる/安穏河原/早梅記 |
●「冬の標」● ★★★ |
|
2005年12月 |
久々に快心の時代小説を読んだ、と高揚する気分です。 静かでいて、毅然とし、清冽。そして気品漂う、という印象。のめり込むように、かつ愛おしく読み通した一冊です。 本作品の直前に読んだ重松清「トワイライト」が、子供の頃の希望を失った中年男女を描いて、読者に問い掛けるストーリィだったため、あたかも本作品はそれへの回答のように感じられました。 主人公は小藩の武家に生まれた娘、明世。13歳の頃から画塾に通い、一時絵の道に志を抱いたものの、親の決めた結婚を拒むことは到底許されない。嫁ぎ、子を成したものの、夫は若死にしたうえ舅も没し、婚家は零落。姑と息子を抱え、窮境に置かれます。そんな18年間を過ごしても明世の絵に対する情熱は少しも失われることなく、明世は画への道を今度こそ自らの手でつかみとろうとします。 |
●「武家用心集」● ★★☆ 中山義秀文学賞 |
|
2006年01月 |
「処世術」を意味するような題名ですが、人が生きていく上での智慧、覚悟といったものを、さりげなく語った短篇集。 各篇いずれも、現代に通じる、あるいは現代において少しも変わるところないストーリィ、という印象です。 もうひとつ特徴として感じることは、藤沢周平作品とよく似たストーリィがあること。 田蔵田半右衛門/しずれの音/九月の瓜/邯鄲/うつしみ/向椿山/磯波/梅雨のなごり |
●「芥
火」● ★☆ |
|
2007年09月 |
人生の区切りを迎え、次に新たな人生を自分の手でつかもうとする人々の姿を描いた短篇集。 乙川作品の特徴は、その凛々しさにあります。その所為か武家を描いた作品が主体という印象があります。武家以外の主人公を描いた長篇作品もありますが、それはかなりドラマチックな内容。その点で市井もの短篇集である本書は乙川作品としては珍しいと言えますが、凛々しさのある趣は変わることありません。 芥火/夜の小紋/虚舟/柴の家/妖花 |
●「むこうだんばら亭」● ★★☆ |
|
2007年10月
2005/04/28
|
その先のない突端の地、とっぱずれ(銚子の東端)の飯沼村にある小さな居酒屋、いなさ屋。 だんばら波の逆巻く突端の地という舞台設定が、本書に欠かせない重要な要素になっています。賑やかな銚子の中心ではなく、外れにある土地。 その意味で象徴的なのは、14歳で家族の糧を稼がなければならない娘すがを描いた「散り花」。 行き暮れて/散り花/希望/男波女波/旅の陽射し/古い風/磯笛/果ての海 |