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1.平成大家族 3.エ/ン/ジ/ン 4.女中譚 5.小さいおうち 6.エルニーニョ 7.花桃実桃 8.東京観光 9.眺望絶佳 10.のろのろ歩け |
かたづの!、長いお別れ、彼女に関する十二章、ゴースト、樽とタタン、夢見る帝国図書館、キッドの運命、ムーンライト・イン、やさしい猫、オリーブの実るころ |
うらはぐさ風土記 |
●「平成大家族」● ★★ |
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2010年09月
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現代だからこそ可笑しい、そんな家族風景を描いた長篇小説。
72歳になる元歯科医の緋田龍太郎は、妻と老いてボケた義母、30歳過ぎているというのにヒキコモリ状態の長男、という4人暮らし。 そんな龍太郎をそっちのけで、大家族となった緋田家は(各自いろいろな問題を抱えつつも)それはそれで賑やかに回転し出し、龍太郎一人がその流れから置いてけぼりになっている観のあるところが愉快。 ※そういえば大家族の物語ってかなり久しぶり? いえいえ、破天荒ではあるものの小路幸也「東京バンドワゴン」があります。 |
●「ハブテトルハブテトラン」● ★★ |
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学級委員としての板ばさみに耐えられず不登校児となった小学5年生の大輔。 両親は考えた末に、大輔を母親の故郷である広島県福山市松永の祖父母の元に預け、2学期を地元の小学校で過ごさせることに決める。 そして大輔は一人、広島空港に降り立ったのだが、迎えに来るはずの祖父母の姿はなく、代わりに現れたのは・・・・。 都会で精神的に参った大輔が、のどやかな松永の土地で、少年らしい健やかさと伸び伸びした精神を取り戻す、爽快な少年物語。 母親と同級生だったという担任の“魔女”ことオオガキ先生、すぐ大輔を遊びに誘い出すウメちゃん、大輔に目をつけたらしいオザヒロをはじめ、大輔が触れ合うどの人物もストレートなところが魅力。また、備後弁の会話も楽しい。 本ストーリィ中でもっとも爽快な章は、前の小学校での悔いを晴らすべく、大輔が尾道から今治へと瀬戸内海を結ぶ橋(しまなみ海道)を自転車で渡っていく部分。竹内真「自転車少年記」の爽快さを思い出せてくれます。 |
●「エ/ン/ジ/ン」● ★★ |
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本書題名を何のことと思われるでしょうか? 私はてっきり発動機のことと思ったのですが、さに非ず。主として“厭人(人嫌い)”、副次的に“猿人”。そして発動機とも無縁とは言えない題名。 契約を突然切られた契約社員の葛見隆一。たまたま届いた幼稚園30周年記念の同窓会案内状に誘い出されて出かけたところ、知り合ったのが蔵橋ミライという若い女性。 是非はともかくとして、それは社会のことに大勢の人間が熱くなった時代。しかし、何故今頃、また学生運動なのか。それは奥田英朗「オリンピックの身代金」にも通じる疑問です。 宇宙規模的の厭人だったというミライの父親を探し求めるうち、かつての特撮テレビ番組論へと行き着いたのには唖然としましたが、僅かな希望でも未来に繋いでいこうとするメッセージには納得です。 |
●「女中譚」● ★★ |
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2013年03月
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林芙美子、吉屋信子、永井荷風の“女中小説”を現代に蘇らせた連作短篇集、とのこと。 メイドカフェが大人気の現代・東京のアキバ。その一軒に出入りする老婆。かつて若い頃、女中奉公をしていたのだという。 その老婆が自らの女中体験を思い出話として語る、という趣向の連作3篇。 “女中”と言っても、石坂洋次郎が「風と樹と空と」に描いた若くて健康なお手伝いさんでなく、幸田文「流れる」のいぶし銀のような女中でもない。 林芙美子に捧げられた「ヒモの手紙」は、女給時代、悪質なヒモのような男と一緒になって、男に騙された女をさらに足蹴にしようとする顛末を描いたストーリィ。 荷風作品を愛読していただけに、私としては「文士のはなし」が特に面白く、楽しかった。 本作品を気に入るかどうかは、上記3人の作家が好きかどうか、読む人の好み次第と言えそうです。 ヒモの手紙/すみの話/文士のはなし |
●「小さいおうち」● ★★ 直木賞受賞 |
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2012年12月
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「女中譚」に続く、女中ストーリィ。 “お手伝いさん”でなく“家政婦”でもない、「奉公」という言葉を付け加えるに相応しい、“女中”という呼称が一般的だった時代の話。 女中の目から、大東亜戦争の勃発、戦時中の社会の様子を描いている点も興味深いのですが、やはり惹かれるのは、タキが仕えた美人の奥様=時子の恋でしょう。 |
●「エルニーニョ」● ★★ |
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2013年12月
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DV男の恋人から逃げ出し南国の町へやってきた21歳の女子大生=瑛(てる)。そしてもう一人、施設を逃げ出してきたらしい7歳の少年=ニノ。 「エルニーニョ」とは、海水温の上昇により引き起こされる異常気象のことですが、元々はペルー沖の漁師たちがその奇妙な海水温の上昇を、幼子=イエス=エルニーニョと呼んだのが語源らしい。 何もかも捨てて逃げ出してみるもの一計、大事。 |
●「花桃実桃」● ★★ |
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2014年06月 2011/03/18 |
40代シングル、結婚歴なしという花村茜。父親の桃蔵が死去し、転がり込んできたのがボロアパート「花桃館」。しかもその花桃館、墓地に隣接していて、幽霊が出るという噂もあり。 どこかで読んだようなストーリィだなぁと思ったら、設定といいストーリィ展開といい、帚木蓬生「千日紅の恋人」によく似ています。 肩の力を抜いて、気軽に楽しく面白く、ほのぼのと茜の人生再生ストーリィを楽しめる作品。 |
●「東京観光」● ★☆ |
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2014年08月
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私としては初めて読む、中島京子さんの短篇集。 趣向で面白かったのは「植物園の鰐」と「コワリョーフの鼻」。 表題作「東京観光」は、田舎町の生保レディが主人公。好成績のご褒美に東京での3日間の研修に招かれた(うち一日は自由)という設定ですが、折角の東京だというのに・・・。 植物園の鰐/シンガポールでタクシーを拾うのは難しい/ゴセイト/天上の刺青/ポジョとユウちゃんとなぎさドライヴウェイ/コワリョーフの鼻/東京観光 |
9. | |
●「眺望絶佳」● ★☆ |
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2015年01月 2012/02/19 |
東京スカイツリーが完成する今年=平成24年、東京スカイツリーと東京タワーの間でバトンタッチ、申し送りが行われるように交わされる往復書簡。 東京に永い間立ち続け、都下に起きるドラマをずっと見続けてきたタワー、ツリーであってみれば、信じられないような物語もいろいろと観てきたはず、というのが前提にあるのでしょう。 眺望良し。【往信】 |
10. | |
●「のろのろ歩け」● ★★ |
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2015年03月
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北京、上海、台湾と、異国の地で女性主人公たちが味わった異国体験を綴った3篇。 北京は、中国初のファッション雑誌創刊に力を貸すため仕事でやってきた女性編集者の話。 それでも異国の地へ赴くというのは、私自身海外旅行へ行って帰ってきたばかりということもあって、心躍るところがあります。 異国情緒、異国だからこその驚き、めぐり逢い、思わぬ発見という風味づけが効いていることも事実ですが、3篇それぞれ中篇ストーリィとして、えも言われぬ、存分な面白さあり。 北京の春の白い服/時間の向こうの一週間/天燈幸福 |
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