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1.格闘する者に○ 4.きみはポラリス 6.仏果を得ず 7.光 8.神去なあなあ日常 10.天国旅行 |
シティ・マラソンズ、木暮荘物語、ふむふむ、舟を編む、神去なあなあ夜話、政と源、あの家に暮す四人の女、愛なき世界、エレジーは流れない、墨のゆらめき |
●「格闘する者に○(まる)」● ★★ |
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2005年03月
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過酷な就職戦線に立ち向かった女子大生・可南子を描いたデビュー作。
まず興味は就職戦線の様子にありました。30年前の私の頃も会社訪問解禁日がTVニュースになりその片隅に私も映ったりしましたが、その頃はまだ可愛げがあったような気がします。それ以降マニュアル化が進み、何でこんなになったの?と思うようになりましたが、本書に描かれる就職戦線はそんな時代のこと。 ただ、本書はそんな時代性や就職戦線という特殊な場面を描いた点だけに良さがあるのではありません。 ともかくは可南子の就職戦線、奮戦ぶり、苦闘ぶり+周辺事情等々が、彼女の性格の率直さもあって忌憚なく描かれていくところに読み応えあります。デビュー作なのにこの完成度の高さはなかなかのもの。 志望/応募/協議/筆記/面接/進路/合否 |
●「まほろ駅前多田便利軒」● ★☆ 直木賞 |
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2009年01月
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こうした表題の作品は、一般的に主人公を狂言回しにして町の住人たちの物語や心温まる小話を書き上げるというパターンが多いのですが、本書はその点ちょっと変わっていて哀感を味わうことの多いところが特徴。
まほろ市は東京都とはいえ、郊外とも言うべき西南部に位置する市。東京でありながら東京と主張しきれないような位置づけが、そんな本ストーリィの哀感ある雰囲気を後押ししています。 多田便利軒、繁盛中/行天には、謎がある/働く車は、満身創痍/走れ、便利屋/事実は、ひとつ/あのバス停で、また会おう |
●「風が強く吹いている」● ★★☆ |
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2009年07月
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箱根駅伝を舞台にしたスポーツ小説。 ボロアパートに住む学生10人が、突き動かされるようにして箱根駅伝に挑戦していくという爽快なストーリィです。
寛政大学に入学した蔵原走(かける)は、万引きの後追い詰められて知り合った清瀬灰二に誘われ、竹青荘という今にも朽ち倒れそうな古アパートに住むことになります。
走、清瀬の2人だけでなく、他のメンバー8人も各々個性的。 ※この興奮、恩田陸「チョコレートコスモス」で味わったものと似ています。 |
※映画化 → 「風が強く吹いている」
●「きみはポラリス Something Brilliant in My Heart」● ★☆ |
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2011年03月
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「世間の注目も、原稿の注文も「あのこと」ばかり。なら、「恋愛」とやらを、とことん描いてやろうじゃないの! ということで始まった小説集」とのこと。 およそ“恋愛”という言葉からは想像も追いつかないような、あらゆる類の恋する想いを取り上げた、といった風の短篇集です。
始まりと最後を締めるのは、岡田と寺島という高校以来の親友同士を描いたストーリィ。これが山椒はピリリ、という感じで快く刺激的であって、本書への興味をかき立ててくれます。そして最後には気持ち良く本書に幕を下ろしてくれます。
ホラー風味あり、サスペンス風味あり、お互い騙し合ったまま夫婦生活を続けていこうとする曲者風の話から、「森を歩く」や「春太の毎日」のようなコミカルな話までもありと、本書に描かれる相手を想う心は実に様々。 永遠に完成しない二通の手紙/裏切らないこと/私たちがしたこと/夜にあふれるもの/骨片/ペーパークラフト/森を歩く/優雅な生活/春太の毎日/冬の一等星/永遠につづく手紙の最初の一文 |
●「あやつられ文楽鑑賞」● ★★☆ |
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2011年09月
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「底なし沼にはまった」という三浦しをんさんによる、文楽鑑賞体験記&鑑賞ガイド。これがもう、絶品と言いたいくらいの面白さ。 本書を読み進んでいくに連れ、次から次へと文楽の面白さが膨れ上がっていくようです。 “文楽”とは大夫の語り、人形遣い、三味線という3つの要素がひとつに合体して成る古典芸能(「文楽」=「人形浄瑠璃」)。 人形によって演じるというところに、独特な面白さがあるらしいのです。悲劇であってもその中に喜劇部分もあり、だからこそエンターテイメント性が極めて高いのだと三浦さんは説く。 先般読み終えたところの、文楽にかける青春ストーリィ「仏果を得ず」、本書と合わせて読んでいたらもっと楽しめていたことだろうと思うと、ちと悔しい。 本書ではまず、しをんさんと担当編集者のYさんが三味線、人形遣いの当代きっての演者を楽屋裏に訪ね、いろいろと話を伺うところから始まります。 豊竹咲大夫さんが「びんぼくさい芝居は嫌い」、「・・・は、もう、やだったねぇ」と心底いやそうに、しみじみ語られたという部分には、ホント笑ってしまう。 それら実地見聞を重ねたうえで、代表的な演目の観劇記に進みます。歌舞伎や落語との比較論も興味津々で面白いのですが、何といっても絶品なのは「仮名手本忠臣蔵」と「女殺油地獄」。 なお、「仮名手本忠臣蔵」は、大阪の国立文楽劇場での通し上演に駆けつけたとのこと。朝10時半に始まって夜の
9時半までという、まさに一日がかりの観劇。凄いですねぇ〜。 まえがき/鶴澤燕二郎さんに聞く/桐竹勘十郎さんに聞く/京都南座に行く/楽屋での過ごしかた/開演前にお邪魔する/「仮名手本忠臣蔵」を見る/歌舞伎を見る/落語を聴く/睡魔との闘い「いい脳波が出てますよ」/「桂川連理柵」を見る/内子座に行く/「女殺油地獄」を見る/「浄瑠璃素人講釈」を読む/豊竹咲大夫さんに聞く/襲名披露講演に行く/あとがき |
●「仏果を得ず」● ★★ |
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2011年07月
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「仏果」とは、修業を積んだ結果として得られる悟りのこと。 さしづめ表題は、修業は生きている間ずっと続くもの、そう簡単に悟ったりできるものか、という主人公の文楽にかける意気込みを語っているように感じます。 義太夫節・三味線と人形劇から成る“文楽(人形浄瑠璃)”。 仕事における悩みもあれば、恋についての悩みもある。しかも、ストーリィは今まで知ることのなかった伝統芸能の世界で繰り広げられるという面白さ。久々に主人公と一緒にストーリィの中にはまり込む、という楽しさが本書にはあります。 こうした作品に欠かせないのは、主人公の脇を固める個性的な人物たち。本書でも、人間国宝のくせして無茶苦茶ぶりを遺憾なく発揮する師匠=笹本銀大夫、「実力はあるが変人」という評判の相三味線=鷺沢兎一郎、健が住みこんでいるラブホテルの管理人=誠二、文楽好きな小学生のミラちゃん、母親の真智、担任教師の藤根先生等々と、顔ぶれに不足はありません。 1.幕開き三番叟/2.女殺し油地獄/3.日高川入相花王/4.ひらがな盛衰記/5.本朝廿四孝/6.心中天の網島/7.妹背山婦女庭訓/8.仮名手本忠臣蔵 |
●「 光 」● ★★ |
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2013年10月
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突然に襲ってきた津波のため、美浜島で生き残ったのは信之たち3人の子供と大人3人だけ。 これまで読んだ三浦しをん作品とは、全く作風の異なる作品。と言うより、三浦しをんらしさの欠片も感じられない。逆に言うなら、それだけ渾身の力を込めた作品ということなのかもしれません。 ストーリィは、島で生き残った子供たち=信之・美花・輔3人の物語と見えますが、私はむしろ、信之・輔・信之の妻である南海子の物語ではないかと思う。 |
●「神去(かむさり)なあなあ日常」● ★★ |
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2012年09月
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どういう意味の題名なのか全く判らず面喰いましたが、冒頭ですぐ判ります。 高校を卒業したばかりの平野勇気、フリーターでもやりながら気楽に過ごそうと思っていたのに、突然担任教師から就職先を決めてやったぞと言われ、帰宅すると今度は母親が荷物はもう先方へ送ったと言う。唖然とする間に餞別を押し付けられ、そのまま自宅から叩き出されてしまいます。訳も判らぬままその足で神去村へ。 ともかく生まれも育ちも横浜という現代の若者が、いきなり携帯も通じない山奥の村に放り込まれ、林業に従事するという、現代若者版お仕事ストーリィ。 神去村の暮らしや風習、林業仕事と、理屈抜きに珍しい&信じ難い体験が味わえる、楽しい一冊。 |
●「星間商事株式会社社史編纂室 The Mystery of HOSHIMA Trading Co.」● ★☆ |
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2014年03月
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題名からどんなストーリィを予想すればいいのやら。 やおい小説(ボーイズラブ)を書いては仲間と同人誌発行に熱を上げる、オタクの主人公=川田幸代29歳。 あまり仕事に熱中せず、プライベートこそ熱中したいと、出世に捉われず会社生活を見るからこそ、楽しめる面もあり。 |
●「天国旅行」● ★★ |
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2013年08月
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本書の題名からどう感じますか。また表紙を見てどう内容を予想しますか。 本書は、梶尾作品のようなファンタジーでなく、乙一作品のようなホラーでもない。 「森の奥」:富士樹海で首つり自殺しようとした中年男の話で、割とあるストーリィ。 森の奥/遺言/初盆の客/君は夜/炎/星くずドライブ/SINK |