昔読んだSF小説の傑作。
映画「魍魎の匣」を観て思い出し、どんな作品だったかと図書館から借り出して読み返しました。
ケルン教授の研究室に勤めることになった女性医師のマリー・ローラン。
まもなく彼女は、ケルン教授の研究が途方もない代物であることを知ります。それは、死んだ筈の高名な科学者ドウエル教授の首に研究室で向かい合うことになったことから始まります。
遺体は科学の研究の為に役立てて欲しいというドウエル教授の遺言を盾に、ケルン教授はドウエル教授の研究を引き継ぎ、なんとドウエル教授の首だけを生き返らすことに成功していたのです。
そこから、奇想天外なSFストーリィが、リアリティをもってサスペンスチックに展開されていきます。
着想、ストーリィ展開の面白さ、傑作といって間違いないSF作品です。
首だけを残して生命を存続させ、別の死者の身体に繋ぎ合わせることにより生きた人間を復活させるという計画は、移植手術による患者救済の究極にある姿かもしれません。
その一方で作者は、本ストーリィの中でそのことの滑稽さ、その行為の恐ろしさを語っています。その先見性もまた本作品の素晴らしいところです。
現代SF小説に比較すると安易にことが進みすぎると感じる部分もありますが、その分読み物としてはとても面白い。
なお、こうした古典的SF名作が絶版になっているのは残念な気がします。
※人間を改造する古典的名作にウェルズ「透明人間」がありますが、本作品と同じ着想をコメディに仕立てたSF小説に梶尾真治「フランケンシュタインの方程式」もあります。
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