byやませみ

5 温泉の化学

5-5 炭酸泉と炭酸水素塩泉

温泉の泉質名には「二酸化炭素泉(炭酸泉)」と「炭酸水素塩泉」があります。まぎらわしいこと にどっちにも「炭酸」という字がはいってますが、これってどう違うんでしょうね? 温泉のガイ ド誌でもときどき混同されているのを見かけます。 まずはじめに、それぞれの泉質の定義をおさらいしておきましょう。なお、以下の文中ではおもに ()内の旧泉質名を使用します。

<二酸化炭素泉(炭酸泉) 略記:CO2泉>

 遊離炭酸(CO2)が250mg/kg以上の含有量であれば温泉とみなされる。泉質名はつかない。
 遊離炭酸(CO2)が1000mg/kg以上あれば、泉質名がつけられる
  → 主成分が塩類泉に満たないときは、単純二酸化炭素泉(単純炭酸泉)とされる。
  → 主成分が塩類泉のときは、含二酸化炭素−〇〇泉とされる。 例)含二酸化炭素−ナトリ ウム−塩化物泉(含炭酸−食塩泉)

<炭酸水素塩泉(重曹泉または重炭酸土類泉) 略記:HCO3泉>

 Na-HCO3(重曹)成分が340mg/kg以上の含有量であれば温泉とみなされる。泉質名はつかない。
 塩類泉のうち、炭酸水素イオン(HCO3-)が陰イオン主成分のものを炭酸水素塩泉という泉質名で よぶ。
 陽イオンの主成分によって、
  → ナトリウム−炭酸水素塩泉(重曹泉)、→ カルシウム(・マグネシウム)−炭酸水素塩 泉(重炭酸土類泉)

炭酸泉は低温の入浴でも浴後ポカポカと暖かい「温もりの湯」で、体表に気泡が付着する「泡つき 」が見られます。(註:CO2泉でなくても泡付きがみられることもあります)。炭酸水素塩泉は肌 触りの良い浴後さわやかな「冷の湯」で、このうち、アルカリ性の重曹泉は皮脂の洗浄効果に優れ たいわゆる「美肌の湯」で女性ファンを魅了します。重炭酸土類泉は炭酸カルシウム(CaCO3)の沈 殿による「濁り湯」や「石灰華」などができやすく、温泉通にはこたえられない景観をつくる泉質 でもあります。


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