温泉の科学特別編
良い温泉を選ぶために
 by
やませみ

群馬県万座温泉湯の花旅館

その3 新鮮な源泉であるか?

ひとくちに温泉といっても、宿や施設で使っている源泉にはいろんな種類があります。

・集中管理泉

大規模な有名温泉地では、温泉資源の保護のために、湧出量の多い有力ないくつかの源泉だけを残して、組合で管理運用していることが多くなっています。

源泉から採取したお湯を、あらかじめ一カ所にまとめて貯湯しておき、各施設の契約量に応じて配分しているわけです。使われずに余ったお湯は再び帰ってきて、また貯湯しておきます。この場合、宿による泉質の違いはありませんから、基本的にどの宿も同じ泉質です。お湯の管理を各宿でやるのは大変なので、その手間を省いて、料理や内装に重点を置ける、と経営者には好評です。

利用者は泉質で宿選びに迷う苦労がなくて、結構と言えばそうですが、反面、複数源泉の混合でそれぞれの個性が失われたり、貯湯槽でガス成分が抜け出してしまったりと、泉質こだわり派にはうれしくないことばかりです。

・配湯と引湯

豊富な湧出量の源泉をどのようにして配分し、お湯を引いてきているかで、同一源泉の宿でも大分変わってきます。ガイド誌でも、温泉地の詳細な地図がのっているときには、源泉地がマークされていることがあるので、要チェックです。源泉地に近い宿ほど、新鮮なお湯に出会える確率は高くなります。最近は配湯管の性能が向上したので、かなり長距離を引湯してもほとんど温度や成分の変化は起きないようになっていますが、なかには古い方法で引湯していることがあり、末端ではまるで源泉とは違うお湯に変貌していることが無いとは言えません。温泉街の中心から離れて、広大な敷地や高台の展望などを売り物にしている宿に、こういったものが多い傾向があります。

いくら湯元の源泉が豊富でも、宿への配分量がちょろちょろでは満足のいくお風呂は望めませんから、このへんは思い切って宿に直接聞いてみるのが一番です。「おたくの配湯量はどのくらいですか?」と、これにきちんと答えてくれる宿は概ねお湯に気を使っているか、自信があるかのどっちかですから、安心して予約できます。配湯量に比べて異常にでかい浴槽を誇っているような宿は、たいていろくな使用法をしていませんから、なるべく避けるのが無難です。

源泉地がどこかわからないとき、共同湯を目安にしましょう。古くからある共同湯は、源泉の直近に建てられていることが多く、周辺の宿に配湯していることが多いです。また、万一、宿のお風呂が×でも、共同湯で取り返せますから、この点でも安心です。

・自家源泉(独自源泉)

宿自身が独自の源泉を所有している場合、これはお薦めです。とくに、浴室内やすぐ脇に源泉があって、新鮮なお湯が投入されているときなど、泉質の違いを超越したお湯の浴感があって、これはもう最高です。最近のガイド誌や温泉地公式WEBサイトでは、独自源泉を持っているかどうか書いてあるものもありますので、これは参考になります。

WEBにもパンフにも書いていないとき、どうやって見つければ良いでしょう? まずはお風呂の写真です。浴槽の底や側壁が自然の岩盤のときは、適温の自然湧出泉ですので、文句無く「買い」です。次に宿の全景写真です、メンテ用の井戸櫓が写っていることがあります。後は? 残念ながらこれもやはり直接聞くしかありません。


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