中国(合肥)の回顧録 〜unlucky business trip〜

*渡航記録

期間: 1996年8月〜1週間
ルート: 成田→上海→合肥→南京→上海→成田


合肥の科学技術大学にて。(向かって左が私)

何となく重い気分で出発

久しぶりの中国。そして今回は猛烈に忙しい日々の中の出張である。中国東方航空という聞き覚えの ない航空会社の小さな飛行機に乗り、何となく重い気分で成田から上海に向かって出発。

初めての上海に到着したのにワクワクする気持ちにならないのはどうしてか・・・。 そんな事を考えながら上海の空港で荷物が出てくるのを待っていたが、いくら待っても自分の 荷物が出てこない。待つ事15分。残りの荷物が数えられる程になってもまだ自分の荷物が 出てこない。これはおかしいと思い、荷物が出てくる所のゴムのカーテンをまくって見てみると、 なんと私の目の前で係りのおっさんが私のスーツケースをこじ開けようとしている。 その荷物に触るな!この野郎、出てこい!

日本語で怒鳴っても通じるはずもなく、同行した中国の方の話によると、そのおっさん曰く、 開けようとしていたのではなく、開きそうになってる口を閉めようとしていたと言う事である。 何かのショックで片方のロックがはずれてしまったようで、それを閉めようとしていた というのが本人の説明だ。口が完全に開いていた訳でもなく、15分もかけて人のカバンの 片方のロックを直そうとするのは相当怪しい。しかし本人がそういうからにはこれ以上 疑っても仕方がない。

すぐに荷物を引っ張り出して中を調べたが、特に何も無くなっていなかったのでとりあえず この場は勘弁してやる事にしよう。のっけから運の悪い出張だぜ、全く。

国内線の乗り換えまで約4時間。同行者と食事をしながら仕事の打ち合わせをし、後は適当に 時間つぶしだ。今回は写真を撮ろうなどという気分にはならないので、残念ながら写真は 上の一枚だけ。

ただでさえ待ち時間が長いのに、さらに飛行機が遅れて目的地の合肥に到着したのは夜中の 12時だった。ホテルのレストランも近くのレストランもさすがに全部閉まっており、 仕方がないので道端の小さな食堂で食事をする事にした。喉がカラカラだったのでまずは ビールを注文。ビールが出て来てコップに注ごうとしたら、向かいに座っている同行者が 一生懸命コップを紙で拭いている。

どうして拭くのですか?

そう聞くと、ここでは皿やコップは汚いので自分で拭いてから使うのが当たり前との事。 まあいいだろう。よその国に行ったらそこの流儀に従うのが礼儀というもの。私も一緒に コップを拭いてから使う事にした。紙で拭いても全然意味ないけどね・・・。そしてビールが 出てきてコップに注ぎ、グイッと飲むと思いっきり生温いビールが喉を通っていった。 昼間40℃近くまで気温が上がる地域なのに、ビールぐらいは冷やとしてほしいものだ。

次に料理を口にすると、何だか作ってからとっても時間が経ってるような変な味。 ピータンが最高に変な味だった。つまり発酵ではなく本当に腐ってるというヤツだ。 ここは大都市ではないので場所によってはクーラーが完備されておらず、 日中の高温に負けない為には食べて体力をつけるしかない。味など論外だ。 多少腐ってようが息をとめて口に詰め込み、生温いビールで腹に流し込む。 頼むからちゃんと消化してくれと祈りつつ・・・。 腹を一杯にしたら後は寝るだけ。窓がちゃんと閉まらないホテルのベッドに横たわり、 あっという間に夢の中へ。


さっそうと軽トラに乗る2人

翌朝から仕事開始。黄色い軽トラックのタクシーに乗り込み、目的地に向かう2人。 ところがこの運転手、運転が実に下手くそなのである。右折する為に右にハンドルを切るのはいいが、 思いっきり切り過ぎるのとハンドルを戻すのが遅い為に切り返しが間に合わない。 危ないなと思っていたら、目の前にきついS字カーブが迫ってきた。これはまずいと思い、 思いっきり車内の手すりにしがみついた。案の定、S字カーブの途中で花壇のような植え込みに ドサッと乗り上げてしまい、それでもアクセルを戻さないのでその上をガタンゴトンと 踏んづけながら無理やり通過。こんな運転するやつは初めて見た。これでは教習所の仮免前の 状態ではないか。仕事場に到着した頃には、仕事をする前から既に疲れ気味になっていた。

仕事の方はそれなりに進み、その日の夜はホテル内の普通のレストランで食事。ようやくまともな 食事にありつける。昨夜の事があるのであまり期待はしてなかったが、出てきた料理は昨夜とは 打って変わり、大変美味しいものだった。特に美味しかったのは大きな魚の入った白いスープだ。 キレとコクが実に良いバランスでとても美味しかった。という訳で2日目もなんとか終わった。


特大の蜂

3日目の朝、少し早目に起きてちゃんと閉まらない窓を調べてみようと窓を開けたり閉めたりしていると、 すぐ外に大きな蜂が何匹も飛んでいるのが見えた。あんなのに刺されたら大変だと思いつつ、 ふと顔を上げると窓のすぐ上に30cm級の大きな蜂の巣を発見。そしてその蜂の巣には一匹ずつの 顔の違いがわかる程の特大の蜂が一面に群がっているではないか。しかもみんなこっちを見てる ような感じ。何じゃこれはと思い、慌てて窓を閉め、ちゃんと閉まらずに隙間がある部分には バスタオルを取ってきて目一杯詰め込んだ。

こんな蜂の巣が窓のすぐ上にあって、おまけにちょうどその部分の窓が閉まらずに隙間が空いて いるとは一体何事だ。子供の頃に蜂の巣を叩いてあちこち刺された記憶を思い出して怖くなった。 しかしこの特大の蜂に刺されたらそんな比ではないだろう。きっと痛いだけでは済まないに 違いない。こんな蜂は今まで見た事がない。

すぐにフロントに行って部屋を変えてもらうように頼み、別の部屋に移動した。 しかし移動した部屋は今度はエアコンから水漏れがしており、朝起きたら床が一面水浸し。 クーラーがちゃんと効いてないくせにお釣りの水を出しやがって、とんでもないホテルだ。 立派な部屋じゃなくていいから、普通の部屋でいいから頼むから普通の部屋をくれ。 この日もまたフロントに行き、やっとまともな部屋に行きついた。ふぅ、やっと3日過ぎた。


お金がない!?

予定を淡々とこなし、そろそろ帰国の準備だ。同行者と2人で帰りの飛行機の予約をしに 行ったところ、上海までの国内線が満席で次に予約を入れられるのは2週間先との事。 なんという事だ・・・。1週間で帰国する予定だったのに、ちょうど夏休みシーズンで 時期が悪かった。さてどうするか。

もう少し人民元に換金しようと思って銀行に行ったところ、今は現金を切らしてるとの事。 銀行にお金がない? どういう事? そして銀行員はカウンターの中で楽しそうに トランプ遊び。もう何も言いたくない・・・。なんだか「新・猿の惑星」にきたような 気分だ。銀行の休憩時間が終われば人民元が届くという話だったので、その時間まで 待ってようやく換金する事ができた。単に休憩したかっただけじゃねえのか・・・。

残るは帰国の方法だ。結局上海までの国内線はキャンセル待ちも出ずに、仕事のスケジュールは 最終日を迎えた。仕方なく空路は諦め、陸路を使ってバスと列車を乗り継いて南京経由で 上海まで行く事にした。仕事の都合で中国人の同行者は今日南京に向かう 事になり、私は仕事を片付けてから明日1人で南京に行く事になった。南京までは バスである。何も起こりませんようにと、そう祈るだけだ。


次は何だ?

翌朝現地の人にバス乗り場まで送ってもらい、予定通りバスに乗った。このまま何も なければバスに揺られて3時間程で南京だ。

バスが発車してしばらくして高速道路に入った。高速道路といっても人が歩いて横切る ような道路なので、スピードはそんなに出さない。高速道路を走って約15分、車のスピードが どんどん落ちてきた。そろそろ出口かなと思ったが何となく違うような・・・。 その内バスは路肩に完全に止まってしまった。運転手が乗客と何やら話しをしており、 乗客が声を荒げている様子。こっちは中国語が分からないのでとにかく待つしかない。 運転手が中国語で乗客全員に何かを説明し、工具箱やオイルのようなものを抱えて 車外に出て行った。エンジンは切っていないのでどうやらオーバーヒートのようだ。 またしてもトラブルかいな。

このままバスが動かずに降ろされたらどうしよう・・・。 言葉が全く通じないこんな農村地帯の真中に放り出されたら為す術がない。おまけに真夏で 気温は40℃近い。でもまだエンジンは止まっていないからきっと大丈夫だ。そう自分に 言い聞かせて待つ事約40分。運転手が戻ってきてバスが動きだした。ほっと一安心。 この時は真剣に嬉しかった。運転手は遅れた時間をとり戻す為かどんどんスピードを上げ始めた。 頼むからそういうのやめてくれ。ゆっくりでいいから確実に頼む。先日の軽トラックの タクシー運転手の事を思い出すと生きた心地がしなくなる。

やっと安定した走りになり、冷房も程良い感じでウトウトし始めた頃、突然バスがガタガタと 震えだした。ああ、またか・・・。次は何だ? どうやらタイヤがパンクしたようだ。 しかしどういう事だ。生まれてからバスのトラブルなど一度も経験した事がないのに、たった 数時間の間にニ度も起こるとは。よほど今回の出張は運が悪いに違いない。ところでこのバスは 整備した事があるのか。これが飛行機じゃなくてほんとに良かった。それを考えると怒りも 鎮まり、悟りの心境になった。もう何が起ころうが驚かない。ドンとこいだ。

次の出口までトコトコと路肩を走り、一旦高速道路を降りた。高速を降りると割と近くに 修理工場があり、そこで修理を待つ事約30分。無事にパンクを直して再び高速道路に入り、 その後渋滞にはまって結局予定より3時間近く遅れて南京に到着した。南京に到着して バスを降りると、1日早く南京に移動した同行者が心配そうな顔をして待っててくれた。 やっと着いた。もう神経くたくた・・・。


帰国の途

南京に到着して食事をし、その足で列車に乗る為に駅へ向かった。この列車に乗れば 上海だ。初めて乗る中国の列車。しかも日本で言う新幹線に近いような高速列車のようだ。 頼むから脱線なんかしないでね・・・。景色は田園だけだったが今回の出張の中では 一番快適だった。数時間前のバスのトラブルがまるで嘘のようだ。しかしここで気を抜くと また何かありそうなので、厳しい顔つきで景色を眺める事にした。そして約3時間半後、 一週間ぶりの上海に戻ってきた。何のトラブルもなく到着できる事がこんなに 嬉しいとは。あらためて普段の日本の生活に感謝。

上海に到着した時は既に夜で、朝からの長時間移動に疲れて夜の観光に行く元気など 残っていない。とにかく一杯飲みたい気分である。しばらくぶりに飲む冷えたビール。 くぅ、ほんとに美味しい・・・。ビールを飲みながらこの一週間の出来事を一つ一つ 振り返り、そして記憶の中に焼き付けていく。

翌日、例によって中国東方航空の飛行機に乗り、成田に向かって一っ飛び。機内でじっと 目を閉じると頭の中はもう仕事の事で一杯。数時間後に飛行機は着陸態勢に入り、 あとは着陸するだけ。やっと無事に帰れる。と思ったら飛行機が変なふうに揺れだした。 上下の揺れではなく、船の横揺れのような揺れ方だ。まるでシーソーに横座りしてるような 気分だ。とても気分が悪く、しかもその揺れは高度が下がるにつれて振り子のように 酷くなってくる。近くの乗客が苦しそうな顔つきで袋を口にあてがい始めた。 なんだこの揺れ方は・・・。今まで飛行機はそれなりの回数乗ってきて相当酷い揺れも経験したが、 こんな変な揺れ方は初めてだ。もしかしてコントロールできなくなってるのと違うか。 もうちょっとで着陸だよ、頼むぜ神様。 そして高度がどんどん下がって揺れが最高潮に達した時、ドッスン!という凄い衝撃と ともに着陸。ほとんど落ちたのと変わらないぐらいの無理やりの着陸。もう嫌だ、もうこれに 乗りたくない、二度と乗らない。とほほ・・・。

今回の出張では仕事以外の事でヒヤヒヤの連続だったが、色々と経験させてもらった。 上には書かなかったが、実は合肥の飲み屋で10人以上に囲まれてボッタクリにも遭っている。 さらに現地の人に確認して使った電源が実は200Vで、髭剃りが一個ぶっ飛んだ。 とにかく何をやってもうまくいかず、全部裏目に出る出張だった。 ま、こんな事もありますな。とにかく無事に帰れた事に感謝!

(終わり)



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