DIARY
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3月29日 2006
金属製のアクセサリーは危険
米国で子供靴の景品に配ったブレスレットの一部を
4歳の幼児が誤飲し、鉛中毒で死亡したとして
リーボックインターナショナル(米国)が自主回収を始めた。
鉛は蓄積性のある強い毒性を示す物質で、
脳や神経、腎臓、肝臓、血液、消化管、生殖器官などに影響を与る。
一度体内に入ると、排出されにくく、
骨格中に入り込んでしまった鉛の半減期は、17〜27年といわれている。
猟銃の弾に含まれる鉛の為に、
直接撃たれなくても、
鳥を含めて多くの動物の生存数が減少してきていると言われている。
(あの悪趣味な遊びは、もうやめにしたらいいと思うのだが・・・・。)
また、鉛は乳幼児に対しては、
脳障害や神経系への影響が大人よりも顕著である。
さらに、口から入った鉛が体内に吸収される割合は、
大人で 10%程度なのに対し、
幼児での吸収率は成人の4〜5倍といわれている。
つまり、
鉛を高濃度に含有する商品を
乳幼児がなめたり飲み込んだりするのは、
将来も含めて健康 への影響が懸念されるのである。
2005年2月、米国消費者製品安全委員会(以下CPSC)は、
子ども用の金属製アクセサリーの一部に
高濃度の鉛が含有していることを報告し、
金属製アクセサリーに含まれる鉛の暫定基準を設けた。
これを受けて、東京都も調査を実施したところ、
案の定であった。
今回、調査対象となった金属製アクセサリー類は76点
(中国製52点、韓国製12点、タイ製3点、台湾製2点、
日本製2点、マレーシア製1点、不明 4点)
子供用に購入されることを考慮して、
価格は100〜1000円程度のものが選ばれた。
いずれも、
携帯ストラップやネックレスなどを都内の販売 店で無作為に購入した。
鉛の含有量試験の結果、
含有量がCPSCの基準(0.06%)より高かったのは46点で、
いずれも中国製と韓国製、台湾製のものであった。
このうち含有量が50%以上の高濃度の製品が32点もあった。
鉛を91%も含んでいたブレスレットもあった。
ちなみに、これら46点の製品に関して
人の胃の中の胃液を想定した酸の溶液を作って、
どの程度溶け出すか?
という溶出テストをした結果は、
14点からCPSCの暫定指針値である175μgを上回る鉛の溶出が確認された。
中には、9900μgと暫定指針値の56倍の鉛が溶け出すものまであった。
現在、日本には、
金属製アクセサリー類などの鉛に関する規制はない。
今回都は、国に対し
「金属製アクセサリー類などに含有する鉛を規制す ること」と、
「鉛を含有している場合は警告表示を行うなどの対策を取ること」を要請した。
また、業者には、
「鉛を含有した金属製アクセサリー類などの 安全確保について対応を図ること」を指示した。
しかし、金属製アクセサリーは見かけでは鉛の有無は判断できない。
子供のいる家庭では、金属製アクセサリーは買わない方がいいと思う。
もちろん、大人でも、危険だから、
金属製のアクセサリーは買わないのがいい。
鉛でこんなだから、
純金製や白金は、もっと毒に違いない!
間違いなく、僕の財布には猛毒である。
3月28日 2006
桜の季節
また、桜の季節がやってきた。
近所の公園の桜も、つぼみがふくらんできた。
もうすぐ満開の桜が見られるのだろう。
逝く空に 桜の花が あれば佳し
南春男の辞世の句が、昨日の朝日新聞の夕刊に載っていた。
彼が生きているときには、あまり好きにはなれなかったが、
この句は、妙に心が打たれた。
桜の花には、何処かに「死」を思わせるものがある。
ただ、その「死」は、忌まわしい「死」ではなくて
生きとし生けるものが、
そのことわりとして死を迎えるという意味の死の匂いである。
いっせいに咲いて、数日の内に、美しいままに散ってしまう姿は、
まさしく、諸行無常であり、色即是空の世界観を
見せてくれているようである。
いつの頃からか、桜の花を見て、
「この人生で、後何回、桜の花を見るのだろうか?」
と思えるようになってきた。
以前は、年配の人がそういっているのを聞いて
「何をそんな大げさな!」
と思ったものなのに・・・。
あの句が良いと思ったのは、
読んだその人自身が、まさに桜の花だからなのだと思う。
★またしても、サイバーアクションのお願い★
以下は、グリーンピースからのメールのコピーです。
今、青森県六ヶ所村に建設中の核燃料再処理工場では、放射能を出す"アクティ
ブ試験"が開始されようとしています。
このアクティブ試験は"試験"とは言っても実質的な稼動開始で、クリプトン、
トリチウムなど様々な放射性物質を周囲に放出し、人体や農作物、水産物にも
害を及ぼす非常に危険なものです。同様の施設がある英国のセラフィールド周
辺では、小児白血病の発病率が全国平均より10倍高くなっています。
そしてこの試験で工場が再処理する430トンの使用済み核燃料からは、核兵器
の材料であるプルトニウムが4トン(核弾頭500個分!)以上も作られる予定です。
しかも、そのプルトニウムをエネルギーとして使う目途は立っていません。
★決まるのは明日
3月27日に行われた「核燃料サイクル協議会」で日本政府は核燃料再処理を推
進することを再確認。それを受け青森県知事は、明日29日には試験入りの可否
を判断しようとしています。
★止められるのは青森県知事
このまま試験が開始されてしまえば、六ヶ所村に、そして青森に暮らす人々や
豊かな自然は放射能に汚染されてしまいます。まだ今なら間に合います。アク
ティブ試験を今すぐ止めるよう、青森県知事へみなさんの意見を届けてくださ
い!
青森県知事へのアクション
http://www.greenpeace.or.jp/cyberaction/rokkasho/
[参考ページ]
再処理がいかに危険・ムダ・不経済であるかについて詳しくは、
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/nuclear/stoprecycle/notes_html
グリーンピース・ジャパン 核・原子力問題ホーム
http://www.greenpeace.or.jp/campaign/nuclear/
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サイバーアクション・ニュース以前のメールは
http://greenpeace.or.jp/pipermail/cyberaction-news/2005/date.html
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3月24日 2006
目にごみが入ったら・・・。
またしても、「これのどこが日記じゃぁ!」
と怒られそうな状態になってしまった。
先週末から、遊びに仕事に忙しくって、
ついつい書きそびれていたら
あっという間に1週間が経ってしまった。
本当に時が過ぎるのが早い。
そう感じるのは、年をとったせいだろうか・・・。
昔、まだ医者になって5−6年しか経ってなかった頃のこと。
たしか花粉の季節だったと思う。
朝起きたら、猛烈に目が痒くて、薬箱の目薬をさした。
入れた瞬間に、猛烈に目が痛くて、
「こ、これは目薬ではない!」と直感した。
目薬の形をした水虫の薬だった。
「目がつぶれる。」と本気で思った。
恥ずかしかったが、
そんなことにこだわっている状態ではないと思って、
慌てて眼科の後輩に電話をして、
大学病院で、すぐに目を洗浄してもらって事なきを得た。
「一面びらんでしたよ。時々こんな事があるんです。」
と優しい後輩は、言ってくれた。
K君、ありがとう!
実は、液体の水虫の容器には、
「目に入れないように」と書いてある。
「そんなことはわかっている。
誰が好きこのんで入れるものか!
そんなことを書くくらいなら、
目薬と間違えないような形状の容器を作れ!」
と思ったものである。
最近は間違って点眼しないように
目薬とはあきらかに違う形状の容器にしたものが出てきている。
たったこれだけのことの改善に
10年以上の歳月がかかったのにはあきれてしまう。
さて、やっと、本題の「目にごみが入ったら」。
(おやじになると、本当に話が長くなってくる!)
まずは、症状
多くの場合は、
目にごみが入りそうな環境で
(風がきついとか、ほこりが舞っている状態)
異物が入ったときから、
目がゴロゴロして痛い。
充血がひどい、涙が出て止まらない。
目を開けていられない。
といった自覚症状がある。
目の表面は神経が豊富なため、非常に鋭い痛みが続く。
目に入った異物によっては対処が異なるので
代表的なものについて記載する。
1.液体 (僕がやってしまった水虫の薬など)
まず、絶対にしないで置いて欲しいこと:
汚い手で目を擦る。
入った液体の種類によって、ことの重大さは異なる。
適切な処置をしないと、重篤な視力障害を残すこともあり得る。
目の中に何が入っても、まずは大量の水で目をよく洗うことが基本である。
洗面器があれ ば大量の水道水を入れた中で、
目をパチパチとして、まばたきを繰り返す。
なければ大きめのコップでも可。
2.鉄粉、ガラス片、とげなどが刺さった場合
目に直接何かが突き刺さったら、自力で取り除くことは非常に困難。
目の清潔を保ち、早めに眼科を受診。
3.小さなごみ
まばたきを頻回に繰り返す。多くはこれで涙と一緒に流れ出てしまう。
それでも取れない場合は、上まぶたの裏にあることが多いので、
下を見るようにして、上まぶたをひっくり返し、綿棒で取り除く。
3.コンタクトレンズ装用中のごみ
実はこれが、一番多いと思う。
すぐにレンズをはずして、一度洗浄してから再度装用。
それでも異常を感じたら、装用を中止。
4.スクラブ洗顔をしていて、異物感を感じたとき
スクラブ洗顔料は、毛穴の汚れや皮脂を取り除くために使うものだが、
目を閉じているつもりでも案外目の中に入ってくる。
これが一度目の中に入ると、まぶたの裏に張り付いてなかなか取れない。
目の健康を考える上では、使わないこと。
これらの対策はあくまでファーストエイド。
自己判断で放置しておくと急激に症状が悪化することがある。
異常が半日以上続くようなら、必ず眼科専門医の診察を受けるべきである。
3月15日 2006
オリジナルドリンク
いつも、スポーツジムに行くときは、
オリジナルドリンクを作って持って行く。
ベースは、アクエリアスである。
これに、燃焼系のアミノ酸を追加する。
ジョギングでは
汗をいっぱいかくので、塩分が不足する。
スポーツドリンクは、実は塩分が少ない。
やってみたらわかるが、
塩を入れると、
スポーツドリンクは、味がてきめんに悪くなる。
そのため、各メーカーは
塩は必要量よりはるか少量しか入れていない。
だから、スポーツドリンクを飲んでいるからといって
安心してはいけない。
汗をかく運動時には、塩の補給が必要である。
そんなわけで、
味には目をつぶって塩を1−2g入れる。
味をごまかすために砂糖かジュースを少量追加する。
さらに、乳酸の代謝をよくするために酢とレモン汁を入れる。
できあがったオリジナルドリンクは、
決しておいしくはないが、
それでも渇いたのどには、潤いである。
必要なものは一通り入っているので、
普通のスポーツドリンクより疲れがましな気分がする。
先日もそうやってオリジナルドリンクを作っていた。
我が家の台所の、酢と日本酒の入れ物は
同じ容器に入っている。
よく醤油などを入れるガラス製のものである。
酢はやや黄色っぽくて、酒は無色透明なので一目でわかる。
しかし、
一目でわかるということが、間違えないということではない。
その日は、なぜか、透明な方をドボドボと入れてしまった。
でも、今更捨てるのはもったいないし・・・。
「エーィ、ままヨ!」 と、そのまま持って行った。
お酒を入れると、
あの「決しておいしいとは言えないオリジナルドリンク」は、
けっこういける味になっていた。
少しくらいアルコールが入った方が、
味がすっきりとしまっていいみたいである。
ドボドボと入れても、全体量が多いから、薄まっていたので
あまり酔っぱらった感じはなかった。
これは、なかなかいいかも・・・。
そういえば、いったい誰が、
「お酒を飲んで運動しちゃいけない!」って言い出したんだろう?
(でもやっぱり、多く飲んで、きつい運動をしたら、
何かが起こる可能性は高いだろうなぁ。)
僕は、一度、
「ビールを飲みながら(あるいはビールを飲んだ後に)
ほろ酔いでダイビングをしてみたい。」と思っているが、
かなえられそうにない。
ダイビングの1本が終わって、
その後、
うまいビールをキューッと飲んで、軽い食事をして
その後に2本目を潜るのは、
きっといい気持ちだと思うけど、
どう間違っても、許されそうにないみたいだ。
きっと、そう思っているダイバーは、
少なからずいるのではなかろうか?
「缶ビール350mlまでならかまわない。」
なんて新しいルールができないかなぁ!
3月10日 2006
やっぱり赤身の肉は・・・
以前に何度か、「赤身の肉が大腸癌の危険因子である。」
と日記に書いてきたが、
今回は、さらに、「胃癌」の危険因子でもありそうだ。
という話である。
ここでいうところの
赤身肉とは、牛、豚、羊肉など
鳥肉は、鶏、七面鳥、家鴨など、
加工肉は、ハム、ベーコン、ソーセージ、ハンバーガー、肉団子、パテなどである。
食肉消費量と
結腸直腸癌、乳癌あるいは前立腺癌の発症リスクは関連している。
しかし1997年に発表された栄養と癌に関する報告書で、
食肉及び保存加工肉の消費量と
胃癌・食道癌の発症リスクとの関連は
エビデンス不十分と結論づけられていた。
欧州の10カ国に住む年齢が35-70歳の521,457例の男女が、
EPICコホートへの登録時に、食事および生活習慣に関する情報を提供した。
(コホート研究とは、ランダム化研究より質が落ちる。
例えば、
コーヒーをたくさん飲む人と、そうでない人で、
どんな違いがあるか何年か追跡して調査する研究。
この場合、はじめから、コーヒーをよく飲む人は、
「神経質な傾向がある。」とか、
「デスクワークの人が多い。」など
はじめから、その集団自体が一定の特徴を持つ可能性があり、
それ自体が、統計的な差の原因になりうる。
この様な要因をバイアスと言って、
統計では出来るだけバイアスが入らない手法が、
より信頼性が高い研究となる。)
(しかし、一定の人口の人々を、ランダムに2つに分けて
一方のグループには
「あなたは、この先10年間、肉は食べないように!」
もう一方のグループには
「あなたは、この先10年間、毎日肉を食べてください。ただし、
「癌が多く発生するかも知れないけど・・・。」
とは、なかなか出来ないので、コホート研究がしばしば用いられる。
まぁ、とにかく、そういうわけで、
食肉摂取量と
噴門部胃癌、(胃の入り口に出来る癌)
(胃の出口近くの癌は、
ピロリ菌感染のための腸上皮化生が主な原因といわれている。)
非噴門部胃癌
ならびに食道腺癌発症との関連を評価した。
また、コホート内症例対照研究によっ て、
H.
pylori抗体と食肉摂取量との相互作用についても評価した。
平均6.5年間の追跡調査期間中に、
胃癌330例、食道腺癌65例の診断がなされた。
非噴門部胃癌の発症リスクは、
総食肉摂取量(赤身肉、鳥肉、加工肉の合計)では、
1日摂取量100g増加すると 3.52倍 (95%信頼区間 1.96-6.34)
赤身肉摂取量では
50g増加で1.73倍 (95%信頼区間 1.03-2.88)
加工肉摂取量では
50g増加あたり 2.45倍 (95% 信頼区間 1.43-4.21)
と有意な関連があった。
H. pylori抗体陽性である被験者では、
非噴門部胃癌と総食肉摂取量との関連が特に強かった。
(1日摂取量100g増加あたりのオッズ 比[OR] 5.32;95% CI 2.10-13.4)。
しかし、
噴門部胃癌では総食肉摂取量、赤身肉または加工肉摂取量との関連はみられなかった。
関連する因子を調整したモデルを用いた 解析では
食道腺癌と総食肉摂取量ならびに加工肉摂取量の間には
統計学的有意差に至らないものの関連が認められた。
60歳の被験者が10年以内に胃癌を発症する絶対リスクは、
総食肉摂取量が下位4分の1のグループでは0.26%、
上位4分の1のグループでは0.33%であった。
ようするに、肉を毎日100g多く食べると、
胃癌の危険が3.5倍になるのである。
特に、ピロリ菌陽性の人は、それが5倍になってしまう。
肉の中でも、
特に豚、牛などの「Red Meat」にその傾向は強く、
鶏肉では弱かったという内容である。
また、
論文では食肉全体と加工肉によるリスク増加が大きく、
鶏肉では少なかったため、
考察では「Red Meat」の
ヘモグロビン鉄が病態に関与しているのではないか
という推論が述べられてる。
前から言っているように、
鉄は足らないと困るけど、
余るとかなり危険なのだと思う。
女性は生理があるからいいが、
男は、たまに献血をするか、
「鼻血ブーッ!」になるのがいいのだろう。
・・・・、最近、そんないい思いしてないなぁ!
あっ!もちろん、昔も、してませんです!はい!
署名のお願い。
福島県立病院の産婦人科医師が逮捕された。
この逮捕には、
今の医療システムの改善すべき大きな問題点があると思う。
以下は、コピーです。
只今、署名が700を越えました。
更に、多くの方の署名をいただけましたら幸いです。
もし可能でありましたら、お知り合いの方にメールを転送していただけましたら幸いです
どうぞよろしくお願いいたします
福島県立医大産婦人科教授 佐藤 章
福島県立病院の産婦人科医師が逮捕された件です。
福島県立医大産婦人科 佐藤 章教授より依頼を受け、事務を東京大学医科学
研究所 上講座が担当し皆様に署名のお願いを遅らせて頂いております。
以下の陳情書を総理大臣、官房長官、法務大臣、厚生労働大臣、国家公安委員
長などの関係各位に渡したいと考えています。
多数の医療に関心のある方々の署名を集めたいので、陳情書の内容をご確認の
上、ご協力お願いします。
ご同意いただけた方は、お名前、御所属、専門分野を、このメールアドレス
tmatsumu@gmail.com
までご返送くださいますようお願い申し上げます。
陳情書(案)
平成十八年二月十八日、福島県立大野病院に勤務しておりました産婦人科・
加藤克彦医師が帝王切開中の大量出血により患者さんが死亡した件(死亡日
平成十六年十二月十七日)に関して、業務上過失致死罪および、異状死の届出
義務違反(医師法違反)で刑事事件として逮捕されました。(死亡日から実に
一年二ヶ月が経過しています)
逮捕直後から、インターネット上などで、逮捕、勾留という事実に対しての
驚き、憤り、今後の診療上の不安などが、産婦人科に限らず多くの診療科の先
生方より意見が発せられております。
この件は
1) 前置胎盤に癒着胎盤が合併するという希なケースが
2) 産婦人科医が1人しかいない
3) 僻地の病院で起こり
4)患者さんは不幸な転帰をとった
ということであります。
患者さまが亡くなられているという事実に対して、我々医療者がこの事実を
真摯に受け止め、心からお悔やみを申し上げるべきであることは言うまでもあ
りませんし、加藤医師および大野病院は民事上の責任を負うべき可能性は否定
いたしません。
しかし、癒着胎盤は全分娩の0.01〜0.04%という希有な疾患であ
り、さらに、前置胎盤のうち、癒着胎盤が合併する頻度は4%程度といわれて
おります。特に、癒着胎盤は現在の医療水準では、事前に確定診断することは
難しいとされています。
今回の場合、帝王切開中に癒着胎盤による出血が多量となり、子宮動脈血流
遮断、子宮全摘などの止血措置を施したにも関わらず、不幸な転帰をたどられ
ています。仮に、執刀医が高度の技術と経験を持っている場合でも、この措置
を1人で行うことは極めて難しいといわざるをえません。まさに、今回の事件
は、医師個人の問題ではなく、現在の地方僻地医療が抱えている医師不足や、
輸血血液の確保難を背景とした医療政策、医療マネージメントの問題であります。
また、今回のことを考える上で、理解して頂きたいのは医療に100%確
実、安全ということはないということです。分娩、帝王切開でも同様です。医
療は急速に進歩し、医師はその進歩に追いつく努力と医療の安全性確保につい
て日々努力しておりますが、その危険性をゼロに近づけることはできても、ゼ
ロにすることは出来ません。
今回のように、診療上ある一定の確率で起こり得る不可避なできごとに対し
て、その状況下における最善の治療を施した状態においても刑事責任を問わ
れ、逮捕・起訴されるようなことが認められれば、もはや医師は少しでも生命
危険のある患者様に対して治療を行うこと自体が医師のリスクということにな
ります。現にこの事件の後、福島県立医大産婦人科は、一人で産婦人科診療を
行っている県立病院への医師派遣を中止せざるをえない状況に到っております。
こうしたことが広がれば、重篤患者のいわゆる「たらい回し」が全国各地で
一挙に広がることにならざるをえません。医療現場における事故を、個人の責
任に帰着させるのではなく、システムの問題としてとらえ、その発生を最小化
していくべきとの考えは、日本以外の国々では共通の認識となっています。今
回のように個人責任の追及だけに注目されると、本来このような場合に行われ
るべき原因追及とその後の対策、再発防も出
来なくなる可能性があり、また、システムは改善されず、同様の事案が再びあ
る一定の確率で発生すると考えられます。こうしたことは医療を受ける患者様
にとっても全く利益のあることではありません。
最後に、勾留理由に挙げられている 1) 証拠隠滅のおそれ 2) 逃亡のおそれ
については、平成十七年四月に同院に対して強制捜査・証拠書類の押収がすで
に行われており、また福島県が事故調査を行い、報告書を作成し、処分も行わ
れていることや、これまで医療事故・医療過誤についての業務上過失致死事件
において医師が実際に逃亡した例はないうえに、加藤医師がその後も大野病院
唯一の産婦人科医として献身的に勤務し続け逮捕当日も診療中であったことか
ら、これらの理由による勾留の必要性は認められないと考えます。
以上の理由により、加藤克彦医師を起訴猶予していただくとともに、このよ
うな事案の再発防止のために最善の施策を講じていただきますようお願い申し上げます。
平成18年3月○日
福島県立医大産婦人科教授 佐藤 章
事務担当
上 昌広
田中祐次
松村有子
東京大学医科学研究所 探索医療ヒューマンネットワークシステム部門
〒108-8639 東京都港区白金台4-6-1
3月 4日 2006
元気な人は、抗酸化ビタミンを飲まない方がいい。
以前、ビタミンEは、やたらに摂らない方がいいという話を書いた。(こちら)
今回も、よく似た内容の話である。
論文の原題は
「Chronic Antioxidant Supplementation Impairs Coronary Endothelial Function
and Myocardial Perfusion in Normal Pigs」。
アブストラクトはHypertension誌Webサイトのこちらを。
健康な人がビタミンEやCなどの抗酸化ビタミンをのむと
むしろ体内の酸化ストレスを高めてしまう可能性があるというもの。
体内で酸化ストレスが高まっている場合、
抗酸化サプリメントは血管内皮機能に利益をもたらす可能性がある。
しかし、実際には、抗酸化サプリメントを使って、
効果があるという実証はほとんどなかった。
(効果がある場合と、逆に有害かも知れないという場合がある。)
正常なブタにビタミンEとCを12週間投与し、
心血管系への影響を調べた結果、
これらの抗酸化ビタミンが、
動脈壁における酸 化ストレスをむしろ高め、
心筋血流と内皮機能を損なうことが明らかになった。
以前にも日記に書いたが、
高用量のビタミンEを慢性疾患の患者に投与すると、
総死亡率が上昇する可能性を示した。
in vitro試験(試験管内での試験のこと。反意語はin vivo:実際に生体を用いた試験)では、
酸化活性が低い状況では、
抗酸化ビタミンは、酸化促進作用を示す。
つまり、抗酸化ビタミンの作用は、
酸化ストレスのレベルによって異なることを示唆している。
すなわち、
酸化ストレスが上昇している場合に は、
抗酸化ビタミンは利益をもたらすが、
酸化ストレスの上昇がない場合は、
利益はないか、逆に悪影響が現れる可能性がある。
ブタの実験ではあるが、
ブタ高血圧モデルと高コレステロール血症モデルに
ビタミンE(100IU/kg/日)とビタミンC(1g/日)を 投与すると、
酸化ストレスが減少し、内皮機能および心筋血流が正常化した。
そこで今回は、
正常なブタに同じ量のビタミンを投与し、心血管系へ の影響を評価した。
その結果、
高用量の抗酸化ビタミンを正常なブタに長期間投与すると、
心筋血流と内皮機能が損なわれること、
この過程に は、
動脈壁での酸化ストレスの上昇と
NOSダイマー形成(内皮の一酸化窒素合成酵素)
の阻害が関与する可能性が示された。
(NOの産生が減少すると、活性酸素が増加することが知られている。)
酸化ストレスが上昇していない状態で過剰な抗酸化ビタミンを投与すると、
体内の酸化還元平衡の不均衡が生じて、
健康だった心血管系に悪影響が及ぶと考えられた。
今回ブタに投与されたビタミンの量 は、
抗酸化作用を期待してわれわれが摂取する量とほぼ同じである。
今までは、
「ビタミンCやEは、過剰投与しても特に中毒になるわけではない。」
「取り立てた副作用もない。」
という理由で、
使われていたし、サプリメントなどでも売られていたが、
どうやら、
健康な状態で、わざわざビタミンCやEを飲むことは、
やめた方がいいようだ。
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