A16.宮古観測所、2012年5月15日

報告者:近藤純正
2012年5月15日に開催した宮古特別地域気象観測所の見学会についての報告である。 (完成:2012年5月22日)

本ホームページに掲載の内容は著作物であるので、 引用・利用に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを 明記のこと。

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更新記録
2012年5月18日:概要の作成
2012年5月22日:完成


	目次
	16.1 はじめに
	   経緯
	   記念講演
	16.2 宮古気象観測所の見学会
	   気候観測を応援する会:新メンバー
	   5月15日の参加者(21名)
	   観測所の説明
	16.3 露場周辺の写真
	16.4 露場風速の観測
	16.5 露場の周辺環境で気になること


16.1 はじめに

経緯
昨年2011年の5月27日に、宮古市の皆さんに宮古気象観測所のことを知って いただくために市民講座と見学会を開催する予定となっていたが、3月11日の大地震・ 大津波によって宮古市が大きな災害を受けたため、市民講座は延期されていた。

それから1年が経過し、宮古の復旧・復興がはじまり、市民講座も開催 できることになった。市民講座と同じ日に観測所の見学会も昨年に続いて行う ことになった。

5月15日の13時40分~15時、山口公民館の多目的ホールにおいて市民講座を開催した。 これは、宮古市中央公民館(館長・藤田清氏)主催の「宮古市社会経験者大学」の 開校式の記念講演として行われたもので、一般市民も参加自由であった。

記念講演
題名:「気候変化と暮らしー歴史資料に学ぶ」
受講者数:117名(宮古市中央公民館による)
内容:(1)歴史資料からみた異常気象、(2)災害克服の歴史、(3)地球温暖化の 実態、(4)重要な気候監視ー宮古観測所

市民講座(記念講演)の終了後、観測所の見学会参加希望者は鍬ヶ崎下町にある 観測所まで車に相乗りして移動した。移動の世話役として岩渕恵子さんと伊藤 悦子さんにお願いした。

16.2 宮古気象観測所の見学会

気候観測を応援する会:新メンバー(敬称略)
村上雅則(グローバルオーシャン・ディベロップメント勤務ー観測船「みらい」にて 気象、海洋などの観測を担当)

田屋脩蔵(宮古市)
岩田育子(宮古市)
及川彰(宮古市)
豊間根正志(元宮古測候所所長)

これにて現在の「気候観測を応援する会」の会員は85名となった。

5月15日の参加者(21名)(敬称略)
上記の新会員:田屋脩蔵、岩田育子、及川彰、豊間根正志、
会員:大久保孝雄、岩渕恵子、伊藤悦子、齋藤久昭、内田幸志、近藤純正、
盛岡地方気象台:小田嶋孝一(気象情報官)、佐川振一(防災指導係長)
その他、宮古の市民:9名
合計21名が参加した。

見学会開催時間は15:30~16:30、現地集合・解散

観測所の説明
(1)挨拶ー見学会の趣旨説明(近藤純正)
(2)参加者名簿作成・記念撮影(内田幸志)
(3)宮古観測所の説明(齋藤久昭)
配布資料1「宮古特別地域気象観測所ー地球温暖化監視の重要な観測所ー」(近藤純正著、 2ページ)、内容は「気候観測応援会」の 「A54.宮古特別地域気象観測所」を参照。
配布資料2 元宮古測候所所長・工藤敏雄著「丘の上の白い建物」(出典:続いわて 気象風土記ー岩手日報社)。
(4)現在の定常観測機器の説明(小田嶋孝一)
配布資料3 「宮古特別地域気象観測所見学会」(小田嶋孝一著、12ページ)。

参加者集合写真
写真16.1 宮古観測所の見学会参加者、集合写真(内田幸志氏提供) 。

説明風景
写真16.2 宮古観測所について説明する気象予報士・齋藤久昭氏(内田幸志氏提供)。

見学会風景
写真16.3 小田嶋気象情報官から説明を受ける見学会風景

屋上での説明
写真16.4 屋上の機器について説明を受ける見学会風景(内田幸志氏提供)。

16.3 露場周辺の写真

以下は今回の見学会で撮影した宮古観測所(宮古特別地域気象観測所)の写真である。

西から見た露場
写真16.5 観測所露場の西方からの写真、中央の赤色は、手前に生えているヤマツツジ。

北東から見た露場
写真16.6 露場の北東側からの写真。

屋上から見た露場
写真16.7 屋上から見下ろした露場、左方の白い丸いドームの中は上空の風を測る ウインド・プロファイラ(内田幸志氏提供)。

16.4 露場風速の観測

露場の周辺環境の管理は、目視による観察が重要である。そのほかに、露場内の高度 1.5~2mの高度で風速を長期にわたり観測することも必要である。必要性と効果 についての詳細は「研究の指針」のシリーズ研究「日だまり効果の基礎研究」に、 具体的には「K59.露場の風速と周辺環境の管理 ー指針」に説明されている。

その予備的観測として今回の見学会の前日、当日、翌日の3日間を計画したが、見学会 の15日は降雨のため準備した熱線風速計による露場内観測はできなかった。

14日の14時10分~16時00分と16日の9時40分~11時20分、14時10分~15時40分の 3シリーズの観測を行った。14日は斜面下からの吹き上げの風(南寄りの風)、16日は 西寄りの風で斜面の等高線に沿う方向の風であった。

大気安定度が中立に近い条件を解析するため、16日については、露場風速が3m/s以上 のデータのみを掲載する。

風測計センサーは3Aを用いた(指向性を小さくしたセンサー3と 指示器A)。センサーの詳細は「研究の指針」の 「K58.熱線風速計の検定と指向性」を参照。

熱線風速計による観測
写真16.8 熱線風速計による露場近くの風速の観測、丸印は風速計センサー(地表面 からの高さ Zr=1.8m)、下向き矢印は露場西側に生えているモミジ(カエデ?) :露場内風速を弱化させる心配がある。


表16.1 露場風速の観測、ただし露場フェンスの外側(高度Zr=1.8m)
  測風塔風速:定常観測の屋上(高度 ZA=20.1m)における値
  指示風速:熱線風速計3Aによる風速指示値
  露場風速:感度と指向性および日射影響を補正、ただし誤差は±5%程度
  風速比=露場風速 / 測風塔風速
  風向:測風塔の風向

 観測時間  指示風速 感度補正 指向性 露場風速 測風塔風速 風速比 風向
              m/s       m/s      m/s      m/s       m/s
14日
14:10-15:00  1.58      1.47     1.43     1.33       3.14      0.42    SE       
15:00-16:00  1.68      1.57     1.52     1.42       3.63      0.36    SSE

16日
 9:40-10:20  3.39      3.48     3.38     3.34       4.65      0.72    WSW
14:10-15;40  3.97      4.18     4.06     4.02       5.92      0.68    WSW


14日の斜面を吹き上げる風(SE~SSE風)に対して、斜面に造られた旧宿舎跡地が 平らで全体的な地形が階段状になり、さらに露場の下方の斜面には笹竹を含む樹木が あるために、露場風速は弱めになっていると考えられる。

16日の西寄りの風では、露場付近では西方の山から吹き降ろしてくるように感じられ、 風速比は0.7前後の比較的に大きな値として得られた。

注1:水平で広い理想的露場の風速比:
周辺も水平できれいな芝生で覆われた理想的な露場の風速比は次の通り、 (「研究の指針」の 「K57.森林内の開放空間の風速」の57.2節を参照)。

風速比=露場風速 Ur/測風塔風速 UA=ln(Zr/0.003) / ln(ZA/0.003)
=ln(1.8/0.003) / ln(20.1/0.003)=0.73

宮古観測所では、西寄りの風(斜面の等高線に沿って吹くような風)に対して、 風速比は理想露場の値に近い、ただし、露場風速の観測場所はフェンス外側の北西端 から3m離れた地点であり、露場内の風速比と少し違う可能性がある。

16.5 露場の周辺環境で気になること

帰途の5月17日(木)に盛岡地方気象台に立ち寄り、北川貞之・台長と巻 和男・次長に お会いして、今回の宮古観測所見学会に際して小田嶋孝一・気象情報官と佐川振一・防災指導 係長が参加していただいたことに御礼を申し上げた。また、観測所の周辺環境の 維持管理には住民の理解と協力が必要であることを伝えた。

さらに、露場周辺の環境管理について、気になる次の2点をお伝えした。
(1)露場フェンスの南側の笹竹の刈り取り
フェンスの外側の南斜面には笹竹が密集し、吹き上げ・下げの風を弱め、露場の 日だまり効果を生む原因となる。 一度に無理ならば、数回に分けて時々刈り取りすることが望ましい。

(2)露場西側のモミジ(カエデ?)の剪定
露場西側の一段低い敷地にはモミジが成長しており、西寄りの風のとき、露場風速を 弱めるようになる。大木にならないうちに早めに先端を切り落とすなどしておくこと が望ましい。

注2: 露場面から見たとき、水平距離10に対して高さ1を超えると露場面 付近の風通しが悪化する。

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