K126.高精度通風式気温計の市販化


著者:近藤純正
放射の影響を含む総合的な誤差±0.03℃の気温観測用の近藤式精密通風気温計が市販化された。 プリード社で製品化され、安価な外国製品とも競争できる精度と販売価格である。 (完成:2016年3月12日、4月23日に付録の追記、8月22日にセンサケーブル長の訂正)。

本ホームページに掲載の内容は著作物である。 内容(新しい結果や方法、アイデアなど)の参考・利用 に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを明記のこと。

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更新の記録
2016年3月9日:素案の作成
2016年3月11日:図125.1a の完成品の写真を追加
2016年3月12日:名称「近藤式精密通風気温計」を追記
2016年4月23日:付録を追記
2016年8月22日:図126.2のセンサーケーブル長=10mを5mに訂正

  目次
      126.1 はじめに
      126.2 高精度通風筒の製作上の注意点
   126.3 高精度通風筒(標準仕様)
   126.4 その他
    (A)特別仕様の通風筒
    (B)数時間の短期観測の例
    (C)精密検定
      付録 吸気口の漏斗構造による気温上昇の計算
   参考文献



126.1 はじめに

日本における地球温暖化を正しく評価する目的で、全国の気象観測所を巡回してきた。 その結果、観測所の周辺環境のわずかな変化が気温観測値に影響していることと、 現在使われている気温観測用の通風筒に放射影響の誤差が含まれていることがわかって きた。

気温観測で使われている放射除けの通風筒として、自然通風式(非通風式)と強制 通風式がある。自然通風式気温観測装置について調べてみると、晴天の無風時 (微風時)には最大5~8℃の放射影響の誤差があり、0.5℃の精度が要求される一般観測 用には向いていない。
「K98.自然通風式シェルターに及ぼす放射影響の誤差」

以下では、強制通風式気温観測装置に用いられている放射除けの通風装置を「通風筒」 と呼ぶことにする。

公式観測が行われている気象庁その他で使われている通風筒では、晴天日中の放射による 誤差は0.3~0.4℃ほど高めに、夜間は0.1℃ほど低めに観測される。
「K84.観測露場内の気温分布-熊谷」
「K99.通風筒の放射誤差(気象庁95型、農環研09S型)

日常生活上の天気予報では、0.3~0.4℃程度の誤差があっても差し支えなく、 ±0.5℃の誤差(代表性誤差も含む)が許容範囲とされている。

しかし、地球温暖化量を正しく監視していく場合は0.1℃の高精度の観測が必要となる。 また、観測所のわずかな環境変化が気温観測値に及ぼす影響や、都市気候、農業気象 など微気象学的な研究では高精度の観測が必要となる場合がある。

こうした目的のために、筆者は高精度観測用の通風筒を作り、その作り方を具体的に示してきた。
「K92.省電力通風筒」
「K100.気温観測用の次世代通風筒」

長時間の試験を繰り返して改良を重ねた結果が、総合的誤差0.03℃の高精度の通風筒に反映され ている。

しかし、これまでに数名が独立に真似て作ったのだが、本人なりに微少な変更をしたため、 いずれの場合も0.1~0.2℃の誤差があり高精度が得られていない。

気象観測の歴史を振り返ってみると、誤差3℃から1℃、そして1970年代から0.3℃となってきた。 放射影響の誤差を1/3にするのに数十年の時間がかかっている。

こうした歴史を考えると、現在の誤差0.3℃を0.03℃に1桁小さくすることは容易なこと ではない。理論的考察も十分にできる技術者・研究者でなければ手製では難しい。 そこで定型の通風筒をメーカに製作・商品化していただくことを考えた。

今回、プリード社が製作してくださることになり、総合的精度は±0.03℃、センサーも記録装置 も含めた一式で15万円の品ができ上がった。この精度と価格ならば、安価な外国製品と競争 できる。精度±0.03℃の観測が行なえれば、これまで見えなかった興味ある現象にも気づく。

名称を「近藤式精密通風気温計」とし、他の名称の気温計と区別することにする。

126.2 高精度通風筒の製作上の注意点

日中は太陽光により通風筒は加熱され、加熱された通風筒からの長波放射(熱放射)が気温 センサーに影響し、気温は高く観測される。夜間は地上気温より低温の上空大気からの大気 放射の影響により気温は低く観測される。

放射影響による気温観測の誤差はセンサーの大きさと通風速度に依存する(「大気境界層の科学」 の3章;「K16.気温の観測方法」)。

前記の報告に示したように、現在使われている数種類の通風筒について放射影響を調べた結果、 構造上にそれぞれ欠点があり、注意点をまとめると次のようになる。

センサーに及ぼす放射影響の3要因
(a) 通風筒吸気口の部材による加熱(夜間は冷却)された空気の吸引
(b) 通風筒内壁面からの放射影響
(c) 地表面からの短波・長波放射の直接的影響

精度0.03℃の通風筒の設計
通風筒の部材が薄い場合・・・・・・3~4重の通風筒が必要
部材が断熱材の場合(塩ビ管)・・・2重でよい

注意すべき点
良好な通風
(1)排気の再循環防止
(2)気温計・湿度計の通風筒は分離
(3)外筒・内筒間の通風速度は弱くしない
(4)通風速度は過大にしない(特に降水時)
(5)吸気口はラッパ構造の流線型に

放射影響は小さく
(6)吸気口部材の断面積は小さく、風上に部材なし
(7)吸気口に直射光を入れない
(8)通風筒は透過光ゼロの部材
(9)センサー取り付け部への長波放射の防止
(10)センサーから見える地面の立体角は小さく

保守管理を容易に
(11)経年変化の小さいPt1000オームのA級センサーを用いる
(12)分解掃除を容易に

注意点についての詳しい説明
日中に生じるセンサーの加熱防止について説明する。夜間については、日中とは逆に冷却防止の 方法である。

(1)排気の再循環防止:
地上風速が弱いとき、通風筒内で加熱された排気が吸気口から吸引されて再循環し、 気温が0.5℃前後高く観測されることがある。再循環を無くするために、排気部周辺の工夫が 必要で、排気の下降流防止板を取り付ける。

(2)気温計・湿度計の通風筒は分離:
現在用いられている気温・湿度計には2種類ある。その一方の種類では、1つの通風筒に気温 センサーと湿度センサーの通風部か2つ並んでいる。気象庁型のように、吸気部の漏斗状部材が 地面からの放射(短波、長波)で加熱され、その空気がセンサーに流れてくる。通風が全体と して複雑になる。

他方の種類では、2つの通風筒を用い、それぞれに気温センサーと湿度センサーが別々に入り、 空気流が単純化された構造となる。

(3)外筒・内筒間の通風速度は弱くしない:
2重構造あるいは3重構造の場合でも、外筒と内筒の間の通風速度が弱いと、吸気口で加熱された 空気がセンサーの入っている内筒に流れ込みやすい。

(4)吸気口付近の通風速度は過大にしない:
通風速度が大きいほど放射影響を小さくすることができるが、強過ぎると降雨時に雨滴中の 微水滴が通風筒内に吸引され、センサーが湿球となり気温より0.5℃以上も低い温度を記録する ことがある。通風速度は3~5m/sが適当である。

(5)吸気口はラッパ構造の流線型:
吸気口が流線型でない場合は、吸気口付近で乱れた加熱空気が内筒に流入しやすい。

(6)吸気口部材の断面積は小さく、風上に部材なし:
吸気部先端の水平断面積が広いと、そこで吸収された放射(短波、長波)によって加熱された 空気がセンサーに流れてくる。センサーまでの空気流の風上に放射除けとした物体を置かない こと。

放射除けは放射を遮断するかわりに、その放射エネルギーは顕熱に変換され加熱された空気が センサーに流れてくる。こうした熱の流れ・変換のこと(エネルギー保存則)を知らない研究者 たちの考案品、例えば、網構造を吸気口に取り付けた例は昔からある。

追記(4月23日):吸気口付近の物体による加熱量の計算
気象庁95型を例として、加熱による吸気の温度上昇の計算を付録に示した。

(7)吸気口に直射光を入れない:
吸気口は地面放射を必ず受けるが、強い太陽直射光だけは入れない。

(8)通風筒は透過光ゼロの部材を用いる:
例えば、3Dプリンターで2重構造の通風部をつくった場合、部材は直射光のほんの一部を透過 する。

太陽直射光の1~2%程度の透過があれば、センサーの直径=3mm、通風速度=3m/sの場合、 放射の影響により0.1~0.2℃前後の誤差を生む。このような場合は、内筒の両壁面をつや消し 黒色で塗装する。

(9)センサー取り付け部への長波放射の防止:
通風筒の通風部は断熱材(例えば塩ビ管)の構造としても、奥の部分が金属の場合、金属部内壁 からの長波放射がセンサー取り付け部(センサー保護管とコードの接続部付近)を加熱し、 熱伝導によってセンサー先端の受感部へ伝わる。センサー保護管(通常、金属のSUS保護管、 その先端に受感部)の長さが100mmほど長くても伝導熱の影響がある。

ここで説明している高精度気温計の場合、センサー取り付け部周辺の放射影響を無視してはなら ない。

(10)センサーから見える地面の立体角は小さく:
晴天日中の地表面は気温より10~30℃ほど高温になる。その高温地表面からの長波放射が センサーに直接当たる。また、地面反射光も直接当たる。地面反射光は地表面の種類により、 その反射量は直射光の10~30%程度はある。 これら長波・短波放射量を受けるエネルギーを微少にするために、センサーは吸気口先端より 奥の適当な距離とし、センサーから見える地表面の立体角を小さくする。

ただし、立体角を小さくするために、吸気口先端からの距離が大きくなり過ぎると、内筒内壁面 で加熱された空気がつくる内部境界層内へセンサーの受感部が入るので、適当な距離でなければ ならない。 内筒の内径=25mmの場合、センサー先端は内筒先端より100mm~150mmが適当である。

(11)経年変化の小さいPt1000オームのA級センサーを用いる:
Ptセンサーに用いられている白金はサーミスタに比べて電気抵抗の温度係数が小さい。そのため、 リード線は3線式や4線式が用いられる。従来は製造が難しかったので100オームセンサーが広く 利用されてきたが、最近は極細体のPt受感部が製作されるようになった。高精度気温計として 1000オームの3線式を用いる。

A級センサーの誤差は±0.15℃以内とされている。筆者が実際に立山科学工業製の16本について 試験を行った結果、精度±0.15℃以内は信用できる。従来の精度の観測を行う場合は、この精度で よいが、高精度観測の場合は、精密検定を独自に行なう必要がある。その方法は、 「K69.気温観測用Ptセンサーの安定性と器差」に示した。

(12)分解掃除を容易に:
野外観測では、空気中の汚染物質や微少動物が通風筒内に吸引されて、通風筒内とセンサーに 付着する。同時に通風速度も落ちる。付着物によってセンサーの見かけ上の大きさが大きく なると、放射の影響が過大となる。そのために、特に夏期は少なくとも2か月に1回の頻度で センサー周りを掃除しなければならない。センサー周りの通風部の取り外し・分解掃除が短時間 に行なえる構造にすること。

ファンモータの耐久性により、ファンモータの交換も楽にできる構造とすることも重要である。

多翼構造のファンモータを用いた外国製の通風筒を試験した結果、日本では特に夏期に小昆虫 などが吸引されて翼まわりに付着して通風速度が落ち、放射影響の誤差が大きくなる。 この構造の通風筒の分解掃除は容易ではない。 翼が数枚で、吸引-排気が直線方向のファンモータなら掃除も楽でよい。

126.3 高精度通風筒(標準仕様)

プリード社製の近藤式精密通風気温計は、前節で説明した注意点が考慮された構造である。

通風筒のうち、もっとも重要な部分は通風部であり、その原理を説明した模式図は 「K100.気温観測用の次世代通風筒」の図100.1に示された内容の 構造である。ただし、吸気入口のガイドはその後の試験で不要となった。

図126.1aは通風筒である。
通風筒の全長(高さ)=381mm
通風排気口の下部に付けた下降流防止円板の直径=204mm
通風筒の重さ=1.6kg(ケーブル、取り付け具を除外)
Uボルトなど取り付け具を含む通風筒の重さ=2.1kg(ケーブルを除外)
ファンモータの電圧はDC12V, 電流は0.125A

外筒と内筒の2重構造の通風部は断熱をよくするためにプラスチック材からなる。その上部は 天蓋までアルミ材を用い軽量化してある。


通風筒
図126.1a 近藤式精密通風気温計―通風筒の写真(プリード社提供)


図126.1bはポールに取り付けられた通風筒の写真である。
通風筒に及ぼす放射影響は筆者の基準器と10日間ほどの比較を行い、総合的な誤差は±0.03℃で あることを確かめてある。

通風筒ポール設置
図126.1b ポールに取り付けられた通風筒の写真


図126.2はケーブルと中継ボックスを含む一式、図126.3は中継ボックスの内部の写真である。

通風筒一式
図126.2 ケーブルと中継ボックスを含む一式
ACケーブル長=10m、中継ボックスから通風筒までのDCケーブル長=10m、中継ボックス から通風筒内のセンサーまでのセンサケーブル長=5mである。


ボックス内部
図126.3 中継ボックスの内部
AC電源は100Vまたは外国の240Vが使えるように自動切り替え。
AC電源からDC12Vに変換されて通風筒内のファンモータに送られる。AC電源が停電のときは 自動切り替えにより乾電池使用となる。単3乾電池8本の場合、電池の寿命は概略 5 時間程度 である。 写真の上部右はデータロガー(TR-55i-Pt/Pt1000対応)、左は入力モジュール(PTM-3010)。 写真に写っていないが、パソコンにデータを吸上げるとき、データロガーを載せるコミュニ ケーションポート(TR-50U2)が付属されている。


センサー:
立山科学工業製
抵抗値:1000Ω(at 0℃)
許容差:A級(±0.15℃ at 0℃)
導線形式:3導線式
直径=2.3mm

立山科学工業製のPt1000のA級センサーの許容差は、筆者によって0~35℃範囲について確認した ところ、16本中16本とも±0.15℃の範囲内に入っている。


126.4 その他

(A)特別仕様の通風筒
標準仕様で用いられているデータロガー((TR-55i-Pt/Pt1000対応:T&D社製)の記録間隔は 1秒、2秒、・・・・・、1分、2分、・・・60分のいずれかに設定できる。

記録データ数=16,000個である。
ワンタイム(データが16,000個に達すれば記録を停止する)モードと エンドレスモードのいずれかに設定できる。10分間隔の場合は、111日間の記録となる。 20秒間隔の場合は88.8時間の記録となる。

これより長期間の記録が必要な場合など、使用者の目的に応じて別の特別仕様の製品を注文する ことも可能である。

(B)数時間の短期観測の例
数時間の短時間観測の場合の設置方法の例を図126.4に示した。

短時間観測
図126.4 短時間観測時の設置方法の写真
パラソル三脚にアルミ伸縮棒を差し込み、その先端に通風筒を設置。電源は単三乾電池のみで観測、 重心をアルミ伸縮棒の中心軸上にするため、熱して曲げた塩ビ管に通風筒を固定した。風で 転倒しないように三脚の端は鉄杭で固定してある。この通風筒は放射影響の試験用に作られた ものであり、完成品と少しだけ異なる。


(C)精密検定
気象業務法の第三十三条によれば、電気式温度計の検定公差は0.5℃、感部のみの検定公差は 0.3℃となっている。今回用いたA級Pt1000センサーの許容差は±0.15℃であり、感部の精度は 合格の範囲内にある。

今回の市販化された近藤式精密通風気温計は、放射影響を含む総合的誤差が±0.03℃で あるので、直径2.3mmのA級Pt1000センサーを用いれば±0.15℃以内の精度がえられる。 気象庁型の通風筒(誤差は0.3~0.4℃)などが含む従来の多くの通風筒に比べて2倍以上の 高精度観測ができる。

このセンサー16本について精密検定の結果によれば、気温の範囲が5℃以内であれば、相互の 相対的な誤差は0.1℃以内である (「K91.Ptセンサーの検定(比較検定)」)。

この結果を信頼するならば、相対的な最大誤差0.1℃以内の観測が可能となる。

研究目的によっては、これよりも高精度の観測が必要なこともある。その場合は、使用者が 精密検定を行うことになる。精密検定は多少の熟練が必要であり、数日間に及ぶ長時間をかけて 注意深く綿密に行なうこと。 「K69.気温観測用Ptセンサーの安定性と器差」が参考になる。 精度±0.3℃の検定は容易であるが、さらに1桁の高精度であることを十分認識して行なうこと。

筆者の基準器との比較検定でよければ、申し出ていただければ相談に応じます。


付録 吸気口の漏斗構造による気温上昇の計算

この付録では、気象庁95型を例にして、吸気口付近の部材による吸気流の気温上昇を計算によって 示すことにする。

気温センサーの風上側に置かれた物体は、何らかの理由で必ず放射エネルギーを受けて加熱される。 その加熱物体は吸収された放射エネルギーを顕熱に変換し、通風流の気温を上昇(夜間は下降) させる。その結果、観測される気温は高く(夜間は低く)なる。これはエネルギー保存則の原理に よって計算できる。

エネルギー保存則についての具体的計算はすでに「K83.気温観測に及ぼす 樹木の加熱効果ー実測」の図83.3と式(4)~(12)に示した。また樹木による風下大気の加熱量 の測定結果も83.3節に示した。

気象庁95型、その他の通風筒でも同様に、気温センサーの風上側に置かれた漏斗構造による気温上昇に ついては、実験するまでもなく、計算で求めることができる。

図126.5は吸気口部材による気温上昇を計算するための模式図である。日中を想定して説明する。

漏斗構造模式図
図126.5 気象庁形式の通風筒の吸気口に置かれた漏斗構造による吸気流の模式図。

黄色:地面からの反射日射量と高温地表面からの長波放射量を受ける部材
赤矢印、I:部材が受ける放射エネルギー(W/m2=J s-1 m-2
緑矢印、U:センサーのある内筒を吸引される通風速度(m/s)
r :内筒の半径(m)
Q :内筒を単位時間に流れる空気量=πr
R :部材の有効な半径(m)
A :部材の有効な表面積=πR
IA :部材が吸収する放射エネルギー(J/s)
cρ:空気の体積熱容量=1200 J K-1m-3
dT:内筒内を吸気される気温上昇量
とする。

部材が吸収する単位時間当たりの放射エネルギーは、すべて内筒内の空気流によって運ばれる 熱エネルギーに等しいので、次式が成り立つ。

 IA=cρQdT ・・・・・・・・・・・・・(1)
 IπR=cρπrdT

ゆえに、

 dT=I(R/r)/cρU ・・・・・・・・(2)

I について、地表面のアルベド=0.2程度であるので、晴天日中は反射日射量200W/m2、及び 気温より20℃程度高温の地表面からの長波放射量100W/m2の和として、最大300W/m2 を想定すれば、

 dT=300(R/r)/1200×U
 dT=0.25(R/r)/U

の気温上昇となる。例として図126.5において吸気口の水平円板の場合、 R/r=1, U=5m/sのとき、 dT=0.05℃となる。

漏斗構造の場合として、 R/r=3, U=5m/sのとき、dT=0.45℃となる。

注意:
計算を簡単化するために、R は吸気口部材の有効半径とした。水平円板の場合、吸気口レベルの 水平面下の地表面すべて(全立体角の半分)から放射エネルギーを受ける。ところが漏斗構造の場合は、 少し奥に入っているので、有効半径は実際に吸気口断面の半径より小さくなる。

以上の計算例は、実験でも成り立つ関係である。それゆえ、通風筒の改良や高精度通風筒の製作 に際しては、注意すべき点の
(6)「吸気口部材の断面積は小さく、風上に部材なし
は必ず守ってほしい。

重ねて、念のために伝えたいことは、
「注意すべき点12項目」は守って欲しい。

引用文献

近藤純正、1982:大気境界層の科学.東京堂出版、pp.219.

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