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読み切り小説
「繋いだ手」
カミラ&アスカル
(作者:むーむー)
●目次
〇カミラ・マーモの姫君
〇二人の出会い
〇コッツィ
〇あずまやの秘め事
〇セラフィム
〇サキュバスの夢
〇愛の言葉
〇アスカル・責任と決意
〇ライトネス
〇ウェルスガルド
〇舞踏会
〇繋いだ手
政治的な問題をある程度セラフィムにやってもらっているカミラは、実は意外と暇だった。
勉強はきちんとしているが、そればっかりやっていても疲れる。
前は逃亡生活だったので外に出るなどもってのほかだったが、この村はかなり治安がいい。
夜でもなければ、外を出歩いていても問題がない。
最初のうちは村人がどんな人物たちか分からないのが怖くて、
護衛の中に囲まれてでしか外を出歩けなかったが、最近では一人で歩いてみたくなるくらい、
この村の生活や人に慣れてきた。
暗黒騎士たちやサキュバスのメイドたちも、カミラがそういう風に変わってきたこと自体は喜んでくれていて、
過保護に護衛を付けることはしなくなってきていた。
カミラは大体、どこに行くにしても、行く場所や時間をちゃんと言ってから出かけるし、
それも長くても2、3時間のことだった。
なので、危険でないと判断されれば、表向きは護衛が付かずに、
カミラ一人で歩き回れるようになったのだった。
表向きは、というのは、裏ではサキュバスのメイド達が交代で離れたところから監視していて、
それならOKということで暗黒騎士がついてこなくなったのだった。
カミラの最近のお気に入りは、田園風景の散策だった。
ブラスは開拓が進み、街道沿いだけだった村の規模が一気に広がった。
森が開墾され、田園、畑などに変わっていった。
水路もちゃんと引かれていて、家も多く建ってきており、
歩くたびに風景が変わっていくので楽しかったのだ。
日傘をさしながら、そこそこの距離を2時間ほど歩く。
時折、農作業用の休憩所になっているあずまやを借りて休憩する。
ドワーフの職人が作ったという小型の可愛らしい水筒に飲み物を入れて持ってきているので、
のどを潤しながらしばし休憩を楽しむ。
休憩している間も周りの風景をのんびりと見たりしていた。
そこへ、7、8歳くらいの男の子がやってきた。ブラス代表のライトネスの弟、アスカルだった。
「ごきげんよう。アスカル様でしたわね?」
「あ、これはカミラ様」
軽い挨拶をする。
この頃は、まだお互い名前に「様」を付けて呼び合っていた。
さほど知り合いでもないため、天気の話など当たり障りのない会話をした。
10分ほど話し、いったん会話が途絶えた。
もうすこし話しても良いかなとカミラは思ったので、この後の予定などを聞いてみた。
聞けば今日はもうちょっとしたら仕事があるので邸宅に戻るそうだ。
今後は、週の終わりにリスモアからやって来て、
2日ほど逗留したらまたリスモアに戻るという生活をずっと続けるそうだった。
小さい子供なのに大変だな、とカミラは思っていた。
セラフィム従姉様やシャーロットとお茶会をしている時に聞いたことがあるけれども、
このアスカルという少年は相当優秀な子供らしい。
この歳にして商業的な才能が既にあり、ブラスとリスモアの取引の話をしに来ているそうだ。
シャーロットが気を抜くと出し抜かれるくらいらしい。
最近ではアスカルの持ってくる案件は絶対に即答しない、と、シャーロットは言っていた。
本当なら信じられない才能だ。
ちょっとその才能が羨ましいな、とカミラは思っていた。
カミラが「商業の才能があるのは羨ましいですわ」と素直に言ったら、
「そうですね」とアスカルは事も無げに答えた。
謙遜をしない子供なのだな、とカミラはこの時思った。
アスカルは今日と同じ曜日のこの時間は、仕事を入れず休息時間として遊ぶつもりらしい。
遊ぶといっても散策をしたり、買い物をしたりと、そういうことらしいのだけど、
一人だと暇でつまらない、とこぼしていた。
本当は姉であるライトネスともう少し話せるかと思っていたらしいのだけど、
彼女は相当忙しいらしく構ってもらえないらしい。
それはちょっと可哀そうだな、とカミラは思い、つい、こんな話をしてしまっていた。
「私も、このくらいの時間ならいつも散策をしているので、お暇でしたらお話ししましょうか?」
「え!? 良いんですか!?」
アスカルはものすごく嬉しそうだった。
何しろ絶世の美少女からの提案だ。嬉しくない男などいないだろう。
その笑顔が子供そのもので、可愛いなぁと思いつつ、
カミラはこれから毎週、ここで会いましょうと約束をして、その日は別れた。
それからカミラもアスカルも、約束をきちんと守り、このあずまやで毎週のように会っては、
30分ほど話すということを繰り返していた。
何度か会ううちに「様」付けで呼び合うのは、ちょっと堅苦しいかな?
なんて思ったカミラは、もう少し年相応に会話してみることを提案した。
カミラは、意図が伝わる様に、最初から口調を変えて提案する。
「ねぇ。ちょっと良いかな?」
「え……? はい……。 何でしょう……?」
「アスカル……君、って呼んじゃダメかな?」
「……あ、なんか話しやすい感じがしますね。嬉しいです!」
「そしたら、私もカミラ……ちゃん? さん? で良いわよ?」
「であれば、カミラさんでどうでしょう?」
「その口調ももうちょっと、普段の生活通りの方が、良いかなぁって…」
「あ、僕、普段からこんな感じですよ?
それに……カミラさんのほうが、……お姉さん、と思いますので、この呼び方で話したいです……」
「そっか……それはそうだよね。分かった。じゃぁ、今後はこんな感じで……」
それ以降、急速に二人の仲は良くなっていった。
やはり言葉使いで受ける印象はだいぶ変わるのだ。
1、2か月も経つとだいぶ変わっていた。
その頃には、カミラはアスカルを呼び捨てにしていて、
アスカルはというと、だいぶ本音を語る、生意気な子供になっていた。
「なんか、アスカル、凄く変わったよね?」
「どう変わったっていうんですか?」
「……生意気になった!」
「あっ、だいぶひどい単語を選びますね?!」
「だってそうじゃない…!」
「カミラさんだって、だいぶ違いますよ?!」
「どう違うの……?」
「もっとお姫様かと思っていましたよ?」
「どういう意味!?」
軽い口喧嘩が出来るくらいに仲良くなっていた。それも、お互いずっと笑っているのだ。
アスカルはライトネスと異なる、年の近いお姉さんが出来たような気持ちで接していた。
ライトネスとは11歳年が違い、からかうというようなことがそもそも出来なかった。
あとライトネスはかなりのブラコンで、過去にはアスカルを抱きしめて一緒に寝るようなこともちょくちょくあった。
溺愛という表現が一番ぴったりくるくらいの、ひたすら甘やかせてくれる感じの姉で、
言い争いをするような感じでは無かったのだ。
どちらかと言えばアスカルはペットの様な扱いだった。
それはそれで心地良いには心地良いのだが、こうして言い争いにムキになって応えてくれるカミラの方が
姉弟ぽい感じがして、もう、本当に大好きでしょうがなかった。
この年頃の男の子は、好きな女の子をからかったりいじめたりしてしまうことが多いが、まさにそれだった。
絶世の美少女が頬を膨らませてムキになって張り合ってくれるのだ。ご褒美としか言いようがない。
カミラはカミラで、そもそも男の子と話すこと自体が初めてだったし、こんなに楽しいとは思って無かった。
年上の男を見るとちょっと怖いな、なんて思ったりして委縮していたが、
年下のこの子はちょっといじめても反応が可愛いし、生意気にも言い返してくるし、
ついついムキになって応えてしまっているけど、それすらも楽しんでいられた。
お互いが毎週、この時間を楽しみにしていた。
カミラとしてはもうちょっと会っても良いかなと思っていたが、
アスカルはリスモアに帰らなくてはならない。
週に1回しか会えないのだ。
そのため、会う時間がじわじわと長くなっていった。
最初は30分ほどだったが、最近では短くても1時間、
長ければ2時間弱くらい、言い争いという名のじゃれ合いをしていた。
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