御遊戯結社

トップ  ⇒ むーどす島戦記リプレイ  ⇒ 「繋いだ手」

←[ 1話前の話へ] [このページ]  [次の話へ]→


読み切り小説
「繋いだ手」
カミラ&アスカル
(作者:むーむー)

●目次


〇カミラ・マーモの姫君
〇二人の出会い
〇コッツィ
〇あずまやの秘め事
〇セラフィム
〇サキュバスの夢
〇愛の言葉
〇アスカル・責任と決意
〇ライトネス
〇ウェルスガルド
〇舞踏会
〇繋いだ手

〇カミラ・マーモの姫君

※この話はシナリオ12以降でシャーロットがライトネスの補佐官になって以降の話となります。

カミラは旧マーモ王室の姫君だ。
母親がサキュバスの側妃であったため、ほんの一瞬の期間、
相当下の順位ではあったが王位継承権を持っている身分だった。
とはいえ、マーモにベルドがやって来て、今までの支配体制を壊し新しい王になったので、
古い王室の王位継承権は無意味なものとなっていた。
元からいた王室の者は多数殺され、残りの者は逃げまどう生活となった。
生きた心地のしない生活だった。
現在齢12歳。
生きている期間の大半が逃げまどうことに使われていた。
身分は旧王族であるが、暮らしは質素なもので、舞踏会などにすら出たことのない姫君だった。

ただ、「いつか旧王室の復興を」と叫ぶ旧王党派の文官や騎士たちによって
神輿として担がれてしまっていたため、その身辺には男を寄せ付けないよう徹底的に守られていた。
身の回りには女しかいない、
男子禁制の世界でしか過ごしていない。
純粋培養の深窓の令嬢だった。

彼女はサキュバスだ。
サキュバスは人間の男の精気をすする妖魔で女性しかいない。
その性質上、種族的には人間よりも生命力や魔力・妖力などが強い。
戦闘などはともかく、夜の営みにおいて人間に圧倒されることは無いのだ。
また、男から精気を奪って活力を得る性質のため、男女の営みをしたとしても
子供を作るかはサキュバスが自分で決めることができる。
サキュバスが望まなければ子供は産まれてこないのだ。
子供を望んだ場合、そのサキュバスから生まれる子供は、女であればサキュバス、
男であればインキュバスとなる。
妖魔でなく人間として選んで産むことも可能だ。

カミラはサキュバスの中でも最上位の妖力・魔力を持つ「女王」の格を持って生まれてきた。
マーモの王、という意味でなく、妖魔サキュバスとしての王である。
実際に国がある訳ではないが、成長すれば他のサキュバスを従える力を持つことになる。

本来なら男から精気をすすって生きている身だ。
だが、男子禁制の世界に閉じ込められていたため、精気をすする相手などいなかった。
そもそも男と会話することもままならない。
家族以外の男と同席したことすら数えられるのではないか?というくらい、男に接してこなかった。
家族であるマーモの旧王や王子たちすらも、物心つく前にベルドに殺されこの世を去っている。
ほとんど男に接してないと言っていい。
護衛に騎士や戦士や魔法使いなどもいたが、全て女だった。
他にいる者も、影武者兼メイドのサキュバスくらいで、これも全て女だった。
いつかは使うことになるかもしれないとして、作法として学んだダンスなどの手ほどきも女性騎士から受けている。
舞踏会や社交界などにもいつか出てみたいな、などと思うこともあったが、
正直なところ、ある訳もないと思っていたので諦めていた。
逃亡生活という状況もあるのだが、そもそも男性の手を握れないのだ。
改めて言うが彼女はサキュバスだ。
男に触れただけで催淫してしまう。
ダンス以前の問題だった。

そんな彼女の運命が変わったのは、つい最近の事だった。
アルトハルト城に拉致された後、何故かヴァリスの冒険者に救い出され、
そのまま、とんとん拍子にマーモの脱出に成功し、逃亡生活をしていた王党派の多くのマーモ民とともに、
ヴァリス領内のブラス村へと移住したのだ。
もう、逃亡生活をしないで済むという。
しつこく追われていた謎の集団からの襲撃もぱったり止んだ。
悪の首領と目されていた悪魔プゥを討伐したというのだ。
なんだか物語のような展開だなと、カミラは思っていた。

ここ数か月の出来事を彼女は思う。
ブラス村の領主は「ファリスの聖女」の呼び名を持つライトネスという女性騎士だった。
ライトネスとその仲間の冒険者たちによって、カミラは救われたのだった。
ライトネスは男のような口調で親し気に話してくれる気のいい人だった。
セラフィム従姉様と同じくらいの女らしい体付きをしているのに、
なぜ男口調で喋っているのか不思議でしょうがなかった。
ライトネスにシャーロットを取られたのは凄く悔しいけど、そのおかげで村の生活は劇的に改善した。
やはりシャーロットは凄い人だったのだなと感心した。
色々な事情があって、ライトネスは女性騎士ではなくなったようだけど、
彼女が村の代表という体制が大きく変わることはなく、むしろ騎士であるしがらみがなくなってから、
村の生活が急速に改善されていった。
つい最近ではマーモ区の中にある山の上に、自分用の屋敷を建ててもらった。
ライトネスはマーモ民の移住者の働きを高く評価してくれた。
そのため、村の中にある小高い山の近辺をマーモ区として定め、優先して家を建ててくれたのだ。
山の上に建った自分の屋敷から辺りを見回す。
海まで望める眺めの良さに心が躍った。
ここが新しい生活の拠点なのだと思うと、わくわくした。

カミラのブラス村での地位はマーモ代表という扱いだった。
ただ、政治に関してはセラフィムにだいぶ頼っている状況だった。
多少はカミラも勉強をしていてそれなりの発言もできるが、
セラフィムがいなければ自信をもって会合に出ることなどできないだろう。
実質上はセラフィムが代表であることは皆が分かっていることだった。
カミラはまだ12歳で成人にもなっていない。
一応サキュバスの成人は早ければ10歳くらい、遅くても15歳くらいだ。
年齢で決まっているというのではなく、男にきちんと夢を見させることが出来て一人前なのだ。
カミラは育ちの事情があって、男を遠ざけられていた。
夢を見させる機会がなく、今はまだ子供という扱いだった。
子供が政治を取り仕切るわけにはいかない。
セラフィムもちゃんとそこは理解していたので、ラーダ神殿に住んでいる今でも、
カミラがもう少し経験を積むまではと、代理で色々なことを手助けしてくれていた。

とはいえ、ブラスはガーディアンという共同体が、
仕事という仕組みを通じて体制を維持することが近頃決まった。
今後はヴァリスやマーモやカノンという昔の出身国による違いは無いものとして扱われることになる。
そうすると、必然的にカミラはマーモ代表をする必要がなくなる。
遠い未来のため、マーモ王室の復興を目指すというのならカミラの立場は神輿として残る必要があるが、
カミラ自体はそこに興味がほとんどない状態だった。
一部の騎士たちはその夢を諦めていないようではある。
だが、他のマーモ民の様子を見ていると、ブラスの新しい体制の方に魅力を感じているようで、
今更マーモへの執着はないのではないかと思う。
かく言うカミラも、マーモに戻って王室に入りたいかと問われると、そうでもなかった。
そもそも王宮での生活の記憶もなく、実感も湧かないことだったので、
今更戻らなくて良いのではないかと思っていた。
もうちょっと言えば、政治上のマーモの実質的リーダーであるセラフィム自体が、
この村の男性とここで暮らしていく気になっており、マーモには戻らないと言っているのだ。
カミラとしてはセラフィムもいないのにマーモに行っても辛いだけだと思うので、
一部の騎士たちには悪いが「その話は無しで」と思ってしまっていた。
せっかく穏やかな日常を手に入れたのに、わざわざ火種を撒きに行く必要など無いのだ。

←[ 1話前の話へ]  [このページ]  [次の話へ]→


●本コンテンツについて

・本コンテンツは同好者の間で楽しむために作られた非公式リプレイ内のショートストーリーです。
・個人の趣味で行っておりますので、のんびり製作しております。気長にお待ちいただきながらお楽しみください。

・原作の設定とは無関係の設定が出て来たりしております。あくまでこちらのコンテンツは別次元のお話と思ってください。
・本コンテンツの制作にあたり、原作者様、出版社様とは一切関係がございません。
・TRPGを行うにあたり、皆が一様に分かる世界観、共通認識を生んでくださった原作者様と、
 楽しいゲームシステムを販売してくださった関係者の方々に、深く感謝申し上げます。

●本コンテンツの著作権等について

・本コンテンツのリプレイ・ショートストーリーの著作権はむーむー/むーどす島戦記TRPG会にあります。
・本コンテンツのキャラクターイラスト、一部のモンスターイラスト、サイトイメージイラスト等の著作権は、
 むーむー/マーコットPさん/アールグレイさんにあります。
・その他、原作、世界観、製作用素材については以下の権利者のものとなります。

●使用素材について

・本コンテンツは以下の製作者、原作者、製作素材等の著作物を使用して製作されています。

【プレイヤー】

・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー(GM)

【挿絵・イラスト】

・マーコットP
・むーむー

【キャラクター(エモーション・表情差分)】

・マーコットP
・むーむー

【使用ルール・世界観】

・ロードス島戦記
 (C)KADOKAWA CORPORATION
 (C)水野良・グループSNE
・ロードス島戦記コンパニオン①~③
 原案:安田均、水野良、著者:高山浩とグループSNE
 出版社:角川書店

【Web製作ツール】

・ホームページデザイナー22
 (ジャストシステム)

【シナリオ・脚本】
【リプレイ製作】

・むーむー

【ショートストーリー・小説製作】

・トゥナ・P
・マーコットP
・ヤトリシノP
・むーむー
 (むーどす島戦記TRPG会)

【製作】

・むーむー/むーどす島戦記TRPG会

←[ 1話前の話へ]  [このページ]  [次の話へ]→