オルガン・ハーモニウムのための作品 | |
Organ,Harmonium | |
S259−S268 S658−S668 S378/1,S504,S− S List | |
2つの教会讃美歌 1.サルヴェ・レジーナ 2.アヴェ・マリス・ステラ |
S669 S669/1 S669/2 |
ロザリオ(全3曲) 1.歓ばしき秘跡(ミステリア・ガウディオーサ) 2.悲しき秘跡(ミステリア・ドロローサ) 3.栄光の秘跡(ミステリア・グロリオーサ) |
S670 S670/1 S670/2 S670/3 |
主の家に我らは進みゆく ワイマール民謡 バッハ〜リスト カンタータ”涙し、嘆き、憂い、畏るることぞ”の通奏低音と、ロ短調ミサの”クルチ・フィクス”による変奏曲 ハンガリーの神 十字架の道行 ニコライ〜リスト コラール“われらが神はかたき砦”による教会祝典序曲 ワーグナー〜リスト ”タンホイザー”より巡礼の合唱 |
S671 S672 S673 S674 S674 a S675 S676 |
2つの教会讃美歌 S669 1875年 | |
1.サルヴェ・レジーナ S669/1 | |
グレゴリオ聖歌の編曲で、1875年に作曲されました。1880年に、#2の“アヴェ・マリス・ステラ”といっしょに“2つの教会讃美歌”として出版され、グスタフ・フォン・ホーエンローエ枢機卿に献呈されました。1885年にはア・カペラの混声合唱曲も作られます。聖歌をそのまま編曲した静かな響きの小品です。 ≪グスタフ・フォン・ホーエンローエ枢機卿≫ “枢機卿”は、ローマ教皇の最高顧問で、教会内の行政に携わります。ローマ時代のリストはグスタフ・フォン・ホーエンローエ枢機卿と親しく、枢機卿はリストの音楽を賛美する手紙を残しています。ですがヘルムの『リスト』で紹介されているハラスティの著述によると、ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人とリストの結婚を座礁させる根回しをしたのがホーエンローエ家であったとのこと。ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人の娘と、ホーエンローエ家の一人コンスタンティンがすでに結婚していたことが、何か影響したようです。 Salve Regina (5:18 ARTENOVA 74321 59199 2) |
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2.アヴェ・マリス・ステラ S669/2 1868年 | |
1865年〜66年頃に作曲されたオルガンと合唱のための作品“アヴェ・マリス・ステラ”(S34/1)のオルガン独奏版です。オルガン独奏版は1868年に作られました。またピアノ独奏版も兼ねています。オルガンのみとなると牧歌的なのどかな感じがします。ピエール・ボーソウのCDライナーのフランシス・バイエルの解説によると、リストはこの曲を“愛らしいロシア風のバルカロール”と呼んだ、とのこと。 Ave Maria stella (6:51 ARTENOVA 74321 59199 2) |
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ロザリオ(全3曲) S670 1879年 | |
1.歓ばしき秘跡(ミステリア・ガウディオーサ) S670/1 | |
混声合唱とハーモニウムのための作品“ロザリオ”(S56)のオルガン独奏版です。ピアノ独奏版も兼ねています。合唱版と独奏版は同時に作曲されています。親しみやすい旋律が魅力で、オルガン独奏だとさらにのどかな感じがします。 Rosario - Mysteria gaudiosa (1:09 HUNGAROTON HCD12768) |
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2.悲しき秘跡(ミステリア・ドロローサ) S670/2 | |
主題をマイナー調で奏でます。雨の日の田舎の教会のような印象を受けました。 Rosario - Mysteria dolorosa (1:36 HUNGAROTON HCD12768) |
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3.栄光の秘跡(ミステリア・グロリオーサ) S670/3 | |
最後は力強く輝かしく主題を奏で、神の栄光を称えます。“ロザリオ”は確かに驚くような作品ではありませんが、旋律の親しみやすさとコンセプトが明確なところに魅力があります。 Rosario - Mysteria gloriosa (1:28 HUNGAROTON HCD12768) |
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“主の家に我らは進みゆく”への前奏曲 S671 1884年 | |
同名の宗教合唱曲“主の家に我らは進みゆく(S57)”からの編曲です。A・W・ゴットシャルクの日記には1884年10月7日に作曲されたと描かれているとのこと。このオルガン版には“前奏曲”というタイトルがつけられていますが、聴いた感じ、合唱曲の伴奏のみを、ほぼそのままオルガン独奏版としたような感じです。非常に力強くドラマティックな作品です。 Praeludium “In domum domini ibimus” (2:47 ARTENOVA 74321 59199 2) |
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ワイマール民謡 S672 | |
元はP・コルネリウスのテキストによる世俗的合唱曲“ワイマール民謡 ワルトブルク城の前で”です。ピアノ独奏曲、管弦楽曲版である“忠誠行進曲”の旋律が使われています。オルガン版は明るい喜びを持ったシンプルな短い曲です。曲自体が5部?に分かれています。合唱曲版を聴いた事がないのですが、合唱曲が6曲あるので、それをそのまま編曲しているのでしょうか? まず“忠誠行進曲”の主題が高らかに奏された後、オルガン曲らしいパートに移り、また“忠誠行進曲”の主題、そして、ゆるやかなパート、最後にまた“忠誠行進曲”の主題、という構成です。もう少し細かく分けることで6部になると思います。 Weimars Volkslied (4:30 ARTENOVA 74321 59199 2) |
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バッハ〜リスト カンタータ”涙し、嘆き、憂い、畏るることぞ”の通奏低音と ロ短調ミサの”クルチ・フィクス”による変奏曲 S673 1863年 |
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バッハの教会カンタータ第12番(BWV12)の最初の合唱からの主題と、ロ短調ミサ曲の2.クレドから同じ主題である“クルチ・フィクス”を用いた変奏曲です。曲の最後にはカンタータ第12番の終楽章“神のなすことは善行なり”が使われます。ピアノ独奏曲はアントン・ルビンシュタインに、オルガン曲はゴットシャルクに献呈されました。またこの曲は、1862年に長女ブランディーヌが亡くなった事が作曲の背景と言われています。 ピアノ独奏曲が最初と書かれているCDライナーが多いのですが、本当のところはどちらかわからないそうです。オルガン版を聴いた感じ、速いパッセージなども多く、ピアノ独奏版が最初のような気がします。ですがオルガンの響きになることで、地鳴りのような低音の響き、壮大な導入部等、オルガンならではの魅力が感じられる作品です。ブランディーヌの死と関係していると言われていますが、深い悲しみに沈むような曲ではなく、混沌とした幻想的な作品であって、僕には“ブランディーヌの死に対するリストの悲しみ”といった印象は感じられません。 と思っていたのですが、“エステ荘の糸杉に 第2番”を聴いたときに、最初の出だしが似ていることに気づきました。“エステ荘の糸杉に”は、 リストがエステ荘に林立した糸杉を見たときに、ミケランジェロの遺体が安置されたサンタ・マリア・デリ・アンジェリ教会を連想し、リストを取り巻く近親者達の死、老境の自分が覆い重なって書かれた曲です。 “エステ荘の糸杉に 第2番”“涙し、嘆き、憂い、〜”に共通するこの旋律はリストにとって、不可解な抗うことのできない“死”というものに対する混沌とした感情を音化している、と考えると納得できます。 “涙し、嘆き〜”は、 前半でブランディーヌの死によって味わった不可解な抗うことのできない“死”というものに対する混沌とした感情を表し、後半の“神のなすことは善行なり”で浄化されるという構成をとっていると考えられます。 Variationen uber das Motiv von Bach(Basso continuo des ersten Satzes seiner Kantate“Weinen, Klagen, Sorgen, Zagen” und des Crucifixus der H‐moll Messe) (20:00 ARTENOVA 74321 59199 2) |
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ハンガリーの神 S674 1881年 | |
ハンガリーの革命国民詩人ペテーフィ(1823−1849)の詩に作られた同名の歌曲の編曲です。ペテーフィに対してはリストは“ペテーフィの哀悼に”を作曲しています。おそらくジプシー音楽のリズムだと思いますが、特徴的なリズムの主題です。この“ハンガリーの神”には多くの編曲版があり、オルガン(またはハーモニウム)独奏曲、ピアノ独奏曲、ピアノ左手のみの演奏、ピアノ(アドリブ)伴奏のバリトン歌曲、ピアノ伴奏による男声合唱曲、管弦楽伴奏による男声合唱曲があります。オルガンで聴くと宗教的な色彩が強くなりますが、ペテーフィの詩の内容は、宗教的というよりも革命高揚的な内容のようです。 1881年2月26日のオルガ宛て書簡で、ペテーフィの詩に感銘を受け作曲した背景が語られています。リストの意図では、ピアノ独奏曲は一般のピアニストのために、左手のみの版は友人のゲザ・ツィヒー伯のために作曲したとのこと。 Ungarn’s Gott (3:51 ARTENOVA 74321 59199 2) |
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ニコライ〜リスト コラール“われらが神はかたき砦”による教会祝典序曲 S675 1852年 | |
歌劇作曲家で有名なオットー・ニコライの祝典序曲を編曲したものです。ニコライのオリジナルは1844年にケーニヒスベルク大学の祝典のために作曲されました。ニコライはリストと1歳違いの同時代の作曲家ですが、教会音楽に関してはバロック音楽に近い伝統的な作風のようです。
またこの曲は、リストの弟子であり、リストとともにオルガン編曲をおこなったA・W・ゴットシャルクが、リストと出会うきっかけになった曲です。ゴットシャルクはワイマール近郊ティーフルトに住む、村のオルガン奏者でした。彼は一人のファンとしてリストの作品を個人的に練習していました。ある日、リスト編曲のコラール“われらが神はかたき砦”による教会祝典序曲を練習していたところ、近隣を散策していたリスト本人と弟子達が彼を訪れます。散策中に自分の編曲作品の調べが聞こえて、リストは中に入っていったのです。そして演奏技術につまずいているゴットシャルクにリストは正しい運指法を教えたとのこと。その後2人は友人となり、リストは週に1度はゴットシャルクのもとを訪れ、オルガンを教えたとのことです。 Sacred Festival Overture on the Chorale “Ein feste Burg ist unser Gott” (12:27 ARTENOVA 74321 59199 2) |
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ワーグナー〜リスト ”タンホイザー”より巡礼の合唱 S676 1860年 | |
ピアノ独奏曲版S443が1861年に編曲されています。オルガン版は1860年の版と、エンディングの異なる1862/63年の第2版があります。ブライヒャーの演奏で聴けるのは1860年の版です。導入部はオルガンの響きに非常に合っていますが、原曲での弦楽による輝かしい装飾部は、オルガンだと音がつぶれてしまう感じです。 Chorus of the Pilgrims from “Tannhauser” (5:12 ARTENOVA 74321 59199 2) |
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