オルガン・ハーモニウムのための作品       
Organ,Harmonium
S259−S268  S658−S668  S669−S676  S List
アンジェルス! 守護天使への祈り
アヴェ・マリア II
S378/1
S504

アヴェマリア IV
婚礼
おお聖なる晩餐
コラール いざ、もろびとよ、神に感謝せよ
クリスマスツリー
S−
S−
S−
S−
S−
  コンソレーションズ
1.アダージョ(第4番)
2.第5番
3.第6番
S−
S−
S−
S−
交響詩”オルフェウス”
”ダンテ交響曲”より、導入部、フーガ、マニフィカト
オラトリオ”聖エリザベスの伝説”より序曲
モーツァルト〜リスト アヴェ・ヴェルム・コルプス
ヴェルディ〜リスト 神の小羊
S−
S109
S−
S−
S−
アンジェルス! 守護天使への祈り          S378/1           1883年  
これはピアノ独奏曲“アンジェルス!(巡礼の年 第3年 第1曲目)”のハーモニウム独奏版です。ハーモニウムで演奏されることで、不可思議な印象は少し弱められ、牧歌的な、のどかな教会音楽の小品のような感じです。オルガン版は孫のダニエラ・フォン・ビューローに献呈されました。

Angelus!
(7:05 HUNGAROTON HCD12768)
アヴェ・マリア II                       S504           1871年
原曲はオルガン伴奏を伴う独唱または4声の混声合唱曲“アヴェ・マリア II(S34)”になります。合唱曲は1869年に作られ、1871年にオルガン版が作られました。ピアノ独奏版では、同じS504で“ニ長調のアヴェ・マリア”になります。この曲はワーグナーの友人のジェシー・ラウソーに献呈されました。シンプルな親しみやすい旋律の静かな小品です。この曲は、1879年作曲の“オルガン・ミサ(読唱ミサの挙式の助けとして付随する)”(S264)の第5曲“オッフェルトリウム”になります。

Ave Maria II
(2:44 HUNGAROTON HCD12768)
アヴェ・マリア IV                       S−            1881年
これはピアノ独奏曲の“ト長調のアヴェ・マリア(S545)”のオルガン版です。もともとはピアノまたはハーモニウム伴奏の女声合唱曲(S341)です。このS341の第2版で、ピアノ独奏版、オルガン、またはハーモニウム独奏版が作られたようです。リストの生前には出版されませんでした。

アヴェ・マリアというタイトルから連想されるイメージとは違い、後半はまるで何かの物語が終るかのような壮大な響きが聴ける曲です。

Ave Maria IV
(3:10 ADDA 581089)
婚礼                             S−             1883年
“巡礼の年 第2年 イタリア(S161)”の第1曲目からの編曲です。夜明けを想像させるような明朗な響きは、オルガン曲にも向いています。リストは1883年にこのオルガン版を編曲しました。またこの曲は同年に宗教的合唱曲の“結婚式のために(アヴェ・マリア III)(S60)”に編曲されています。

Sposalizio
(7:14 ADDA 581089)
おお聖なる晩餐                      S−             1884年
アルトまたは女声合唱のための宗教合唱曲からの編曲です。静かな響きの小品です。とても印象的で美しい和声と旋律を持つ曲です。宗教合唱曲版を聴いたことがないのですが、このオルガン曲を聴く限り、おそらくアルト独唱−合唱−アルト独唱−合唱というように交互に歌っていく構成を取っていると思われます。美しい和声の部分というのは、“合唱”の部分であって、このハーモニーが女声合唱で歌われると非常に美しいのではないでしょうか。オルガン版もオルガン小品としての美しさがあり、リストのオルガン作品の中でも傑作だと思います。

O sacrum convivium
(5:48 ARTENOVA 74321 59199 2)
コラール  いざ、もろびとよ、神に感謝せよ             S−            1883年
同年の1883年に宗教合唱曲も作曲されています。リガ大聖堂の、120のストップのあるヴァルカー・オルガンの奉献式のために作曲されました。大オルガンでの演奏を目的とした雄大な響きの作品です。リガは現在のラトヴィアの首都です。リストとリガ、および大聖堂との関係はよくわかりませんが、1885年作曲の世俗的合唱曲“挨拶”がリガの合唱団に献呈されています。

また、この曲のイントロが終った後の主旋律は、1878〜79年作曲の合唱曲“12の古いドイツの宗教的旋律”(S50)の11曲目であり、それがまず単独の合唱曲としてS61になっています。さらにピアノ独奏版に編曲された“コラール”(S504b)の4曲目とも同じです。

Nun danket alle Gott
(7:38 ARTENOVA 74321 59199 2)
クリスマスツリー                            S−            1875年
クリスマスツリーは最初の4曲については、“ピアノまたはハーモニウムで”との記載があるとのこと。ただしハーモニウムの音域を明らかに超えているため、通常オルガンと考えられています。

最初の4曲とは
1.古いクリスマスの歌
2.おお聖なる夜
3.飼葉桶のそばの羊飼いたち
4.誠実な人びとよ来たれ(東方三博士の行進)

です。もともと宗教的な色彩がある曲で、オルガンの響きでも美しいです。

Weihnachtsbaum
(Total16:22 HUNGAROTON HCD31701-05)
コンソレーションズ                       S−         1850年
1.アダージョ(第4番)
ピアノ独奏曲として名高い“コンソレーションズ”のうち3曲がオルガンに編曲されています。これは第4番のオルガン版。“コンソレーションズ”の新しい魅力を教えてくれる、非常に美しい作品です。マリア・パヴロヴナ大公妃は本当に素晴らしい主題をリストに与えました。

Adargio(Consolations IV in D♭ major)
(3:54 ARTENOVA 74321 59199 2)
2.第5番 ホ長調                       S−         1850年
ピアノ版のコンソレーションズ第5番は、強弱のアクセントと歌い上げるようなリズムの取り方が魅力の小品でしたが、オルガン独奏版となることで、それらの魅力とは異なり牧歌調ののどかな小品のような感じとなりました。この第5番はゴットシャルクの“レパートリウム”のために作曲されました。

Adargio(Consolations V E major)
(3:12 ARTENOVA 74321 59199 2)
3.第6番 ホ長調                       S−         1850年
同じ調性である第5番と似ているのですが、第5番がピアノ独奏版とは異なる表情を出しているのに対し、こちらはピアノらしいリズムを残しています。そのため少し変わったオルガン小品となりました。またオルガン版独自の短いイントロが付けられています。ブライヒャーのCDクレジットには、第6番だけ“Troestung”という標題がつけられていますが、これは“慰め”という意味で“Consolation”と同じです。

Trostung(Consolations VI E major)
(2:52 ARTENOVA 74321 59199 2)
交響詩”オルフェウス”                         S−     1860年頃
交響詩の中で最も愛らしい旋律を持つ“オルフェウス”のオルガン編曲版です。壮大な響きのオルガン版となっても、どことなく奥ゆかしい感じが魅力的です。この編曲はA・W・ゴットシャルクにより、その後リストによる手直しをされています。またジャン・パーカー=スミス演奏のCDでは1976年にジャン・ギューによってさらに編曲された版も聴けます。

≪リストとゴットシャルク≫
A・W・ゴットシャルクはワイマール近郊ティーフルトに住む、村のオルガン奏者でした。彼は一人のファンとしてリストの作品を個人的に練習していました。ある日、リスト編曲のコラール“われらが神はかたき砦”による教会祝典序曲を練習していたところ、近隣を散策していたリスト本人と弟子達が彼を訪れます。散策中に自分の編曲作品の調べが聞こえて、リストは中に入っていったのです。そして演奏技術につまずいているゴットシャルクにリストは正しい運指法を教えたとのこと。その後2人は友人となり、リストは週に1度はゴットシャルクのもとを訪れ、オルガンを教えたとのことです。最晩年の有名な写真で、リストを中央に高名な弟子達が囲んだ写真があります。ローゼンタールやエミール・ザウアー、アレクサンダー・ジロティらといっしょに、前列一番右に腰掛けているのがゴットシャルクです。

Orpheus,Symphonic Poem
(10:56 ARTENOVA 74321 59199 2)
“ダンテ交響曲”より、導入部、フーガ、マニフィカト        S109 R426   1860年
これはダンテ交響曲の第2楽章“煉獄”の前半と、最終楽章の合唱“マニフィカト”を編曲したものです。オルガン編曲はA・W・ゴットシャルクによりますが、その後リストによる手直しがされました。“ダンテ交響曲”の中で最も壮大な部分で、オルガンの響きに合っています。

楽譜にはゴットシャルクによって、1860年2月14日との日付が書かれているとのことです。

Introduction,Fugue,and Magnificat from the Symphony for Dante’s “Divina Commedia”
(14:00 ARTENOVA 74321 59199 2)
オラトリオ”聖エリザベスの伝説”より序曲            S−     1857〜62年?
オラトリオ“聖エリザベスの伝説”から序曲を編曲したものです。もとはワイマールの宮廷楽団長のカール・ミュラー=ハルトゥング(1834−1908)によってオルガンに編曲され、その後リストによって改訂されています。原曲のオラトリオが1857〜62年に作曲されており、序曲のピアノ独奏版(S2)が1857〜62年と同時です。リストの他のオルガン作品も1850年代後半からは作曲され始めているので、このオルガン版も同時期だと思います。

“オルフェウス”“ダンテ交響曲”に続いて思う事は、リストとゴットシャルク、ミュラー=ハルトゥングは、やみくもに編曲しているのではなく、オルガンに向いている作品をチョイスしているということです。ハワードによるピアノ独奏版(S2)の演奏時間が6:58、ブライヒャーのオルガン版が9:22、マルギエリのオルガン版が12:29です。またヨーの管弦楽版が10:01です。これらの演奏時間の差異は、聴いた感じ楽譜の違いによるものではなく、オルガンや管弦楽など長音が活かせる楽器の場合、その利点を活用しているために、ピアノ独奏版よりも長くなっているようです。

Introduction to “Die Legende der heiligen Elisabeth”
(9:22 ARTENOVA 74321 59199 2)
モーツァルト〜リスト アヴェ・ヴェルム・コルプス        S−   1886年
リストが亡くなる年に作曲されたオルガン作品として最後のものです。リストは1862年に“システィナ礼拝堂の喚起”において“アヴェ・ヴェルム・コルプス”を使用していますが、“システィナ礼拝堂の喚起”では“ミゼレーレ”の不穏さと対比させるため、単旋律に近いアレンジでした。こちらの編曲は、しっかりとしたコード伴奏を伴っていて、とても安定したアレンジとなっています。

Ave verum corpus
(3:27 ARTENOVA 74321 59199 2)
ヴェルディ〜リスト 神の小羊(アニュス・デイ)                S−   1877年
ヴェルディのレクイエムから第5曲“神の小羊”の編曲です。ヴェルディの“レクイエム”自体は1874年作曲です。ヴェルディのレクイエムでは、この第5曲は冒頭、合唱のみのアカペラで歌われます。その後伴奏を伴っても静かなことにはかわらず、美しい旋律を各パートが交互に歌っていくシンプルな曲です。ヴェルディのレクイエムといえば、ドラマティックな“怒りの日”を思い出しますが、晩年のリストにとって、一番心に響いたのが、静かな“神の小羊”だったのかもしれません。

Agnus dei
(5:32 ARTENOVA 74321 59199 2)


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