■ (2).MTに関するQ&A集 ■

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ENGINE  /  MT  /  AT  /  CVT  /  ELC.(電気配線・制御)


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MT編・タイトル一覧( 03/11/15 現在)
今後も追加します。上の方が新しく追加された項目です。

Q4. 走行中のMT油温は、何℃位まで上がるのですか?
Q3. クロスミッション車で、ギヤ比とエンジン回転の関係は?
Q2. 添加剤を入れたら、ギヤが「ギャ」っと鳴くのですが(シャレではなくて)?
Q1. ギヤチェンジの時、シフトがゴリゴリするのですが・・・?    

 

Q4.走行中のMT油温は、何℃位まで上がるのですか?

<A4>
私(KAZ)のクルマには、MT油温計を付けていますので、その結果をお伝えします。以下、データはスバル純正75W−90でのもので、車両は先代レガシィの後期型ワゴンGT−B(BG5B)です。また、測定部位はレベルゲージ先端のフロントハイポイドギヤ周辺ですから、ミッション内部でも熱源(発熱部)に近い場所と言えるでしょう。

■総論
季節(=外気温)と走りのステージ(状況)によって大きく変わりますが、特徴を一口で言うと、MTオイルは「温まりにくく冷えにくい」です。また、暖機後のMT油温は、おおむね車速と負荷に比例すると思います。冬場はエンジン油温と同等以下、夏場はエンジン油温±20℃くらいですね。

■冬場のMT油温
例えば朝の通勤時(東京都)を想定してみましょう。エンジンスタート前、エンジン油温とMT油温とも約5℃(=ほぼ外気温)だとします。始動後、6〜8分ほど走るとエンジン油温は60〜70℃に上がりますが、この段階ではMT油温はまだ30〜40℃(!)くらいです。
エンジンが暖機されて90℃くらいになるころ、ようやくMT油温は60〜70℃くらいです。市街地では車速が上がらないので、MT油温の上昇は極めて鈍いです。30分程度走り続けて、ようやく80〜90℃に落ち着きます。高速道路を走る場合はもう少し温度上昇は早いですが、外気温度が低い冬場は、上昇してもエンジン油温とほぼ同等といったところです。

■夏場のMT油温
一例として、調布(東京)から実家の札幌(北海道)まで、片道約1000kmを走ったときのデータ(国道4号線や東北道などを利用)を紹介しますと、
  ・一般道------夜間85℃〜日中100℃くらい(外気温度で異なります)
  ・峠道--------105℃〜110℃くらい(攻峠モードでは無く、流す程度で)
  ・高速道路----120℃〜126℃で安定(流れに乗った一般的な車速で)

という具合です。
これを見ると、ミッション油温は市街地モードでは外気温度に多少左右されるものの、全体的には低めです。峠道など運転負荷がかかるところでは、全体的な温度が底上げされるので昼夜の差が小さくなる。高速道路では、ミッションのシャフト回転速度が高くなるので、発熱による温度アップに加えてかくはん抵抗増大による温度アップも加わると考えられます。

■余談
スキーに行くため、関越自動車道を走行中、食事を取るためサービスアリアで駐車したときのこと。外気温度は約0℃。エンジン油温は約98℃、MT油温は約95℃でした。30〜40分ほどで食事を済ませ、クルマに戻ってみると。
  ・エンジン油温=約45℃
  ・MT油温  =約65℃
粘度が高いこともあってか、ギヤオイルは温まりにくいけど冷めにくいです。走行後にMTオイルをご自分で交換される方々は、やけどに注意しましょう。(と言っても、ある程度温まっていないとなかなかドレンしませんが・・・。)

Q3.クロスミッション車で、ギヤ比とエンジン回転の関係は?

<A3>
インプレッサを例にとって、クロスミッション車とノーマル車のギヤ比とエンジン回転の関係について、少々述べてみます。まずはカタログ諸元から見てみましょう(ここではD型で説明しますが、他のタイプでも同様です)。

ひとことで言いますと、ノーマルのWRXは1速から5速のギヤ比がワイドであるのに対し、RAは接近(クロスレシオ)しています。具体的には、次のようになっています(いづれも280PS車での比較です)。

【D型インプレッサ セダンWRX・WRX-STiV】
最大トルク  1速   2速   3速   4速   5速  ファイナルギヤ
33.5(kgfm)  3.166  1.882  1.296  0.972  0.738   4.444

【D型インプレッサ セダンWRX-RA・WRX-RA-STiV】
最大トルク  1速   2速   3速   4速   5速  ファイナルギヤ
35.0(kgfm)  3.083  2.062  1.545  1.151  0.825   4.444

【参考:5速100km/h走行時のエンジン回転速度N】
・D型 WRX系 ----- 約2950rpm
・D型  RA系  ----- 約3300rpm
・計算式 N  =  100  ×  1000  ÷  60 ÷ (0.295×2×3.14) × 5速ギヤ比 × 4.444
      ↑     ↑      ↑      ↑        ↑           ↑       ↑
      rpm,   km/h,   kmをmに, /hを/mに, タイヤ直径×π,   0.738か0.825,  ファイナル


ギヤ比を見る場合は、そのミッションが搭載される車(グレード)の性格だけでなく、組み合わされるエンジンとの相性も考慮する必要があります。(RAはWRXに対して、エンジンの発生するトルクは大きくなっています)
      -------------------------------------------------------------------------
上表を見ると、WRXの1速は低め(3.166)で5速は高め(0.738)です。この設定は、WRXが街乗りから高速道路まで、過不足ない走りを得るために必要なのでしょう。もし仮に、1速がもっと高めであったなら、パワステ・パワーウインドウ・エアコンなどを標準装備する(つまり車重が重い)WRXでは、発進加速性能がつらくなりますし、また仮に5速がもっと低めであったなら、高速道路での巡回はエンジン回転が高くなって、燃費に不利になるでしょう。

つまり、ある程度オールマイティな走りをこなすためには、どうしてもギヤ比はワイドになってしまうのです。また逆に、WRXとは、そのように使用されることを前提とした性格付けがされているのだと思います。

それに対してRAの方は、ほとんど受注生産の競技用ベース車両といっても良いような性格の車です。エンジンはチューンアップされ、車体は軽量化され、たぶん国内ダートラへの参戦も視野に入っている(?)のでしょう。このような車は、エンジンの最大トルクをいかに殺さずに伝達して走行できるかがポイントになりますから、例えば2速−3速−4速などと加速する際に、シフトアップするごとに(エンジン回転が下がりすぎて)パワーバンドからハズれることのないように、ギヤ比が設定されると思います。

つまり、各ギヤでギヤ比は接近することになります。ギヤがクロスレシオだと、小気味よい加速感が得られることでしょう。とは言え、RAであってもナンバー付きの市販車である以上、通常の使用がこなせる最低限の考慮はされたギヤ比になっているはずです。例えばバイクの競技車両では、レース場のある特定のコーナー(の立ち上がり)や直線距離にあわせて、ミッションのギヤを組むことがありますので(市販の車ではそこまでできない)。
   --------------------------------------------------------------------------
以上より、人を乗せる機会のあるかたや、高速道路を走る機会のあるかた、あるいはごく普通(?)に車に乗られるかたであれば、ギヤ比を含めてWRXの方が適しているかと思います。遮音材のあるぶんRAよりも静かですので、オーディオも聞けて疲れません(・・・多分)。

一方、競技に出なくても、街中での加速感を重視されるかたや、止まることを含めた運動性能を重視されるかたには、RAは抜群におもしろい素材となることでしょう(・・・多分)。意のままにホイホイ加速するRAは、ほんとうに運転が楽しいと思います。ただし、乗り手がそのような運転をした場合に・・・ですが。

WRXとRAをバイクに例えると、ちょっと違うけど、NSRとNSR-SPのような感じかな??
まあ、クロスミッションといっても特別繊細なミッションと言うわけではありませんので、整備性や耐久性に関しては、特別な注意点はないように思います。あとは用途と好みの問題でしょうか。

Q2.添加剤を入れたら、ギヤが「ギャ」っと鳴くのですが(シャレではなくて)・・・?

<A2>
MTの操作フィーリングについてですが、シフト時に「コツン感」とか「ゴリゴリ感」といった感じがある場合、
次の2つの要因が挙げられます


 (1).シフト操作が渋い ----- 新車の場合、すりあわせ効果が出ていない
 (2).ゴリゴリ感がある ----- 「2段入り」現象と思われる(下記参照)


このうち、(1).の「シフト操作が渋い」については、特に心配はいらないと思います。まだ走行距離が少ない新車ですので、しばらくすればシフト系のすりあわせ(なじみ)効果が現れるでしょう。

次に、(2).の「ゴリゴリ感」についてですが、原因はシンクロ系だと思われます。シンクロ系の部品には、ハブやスリーブがあるのですが、ここのクリアランス(隙間)がきつかったり、あるいはコーン面などの摺動部分の摩擦係数が高かったりすると、場合によっては「引っかかり」が起こります。「引っかかった」状態を経てなおシフトしようとするため、一瞬「コツン」と何かに当たったような感触を伴って、「2段入り」するわけです。
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対策案を、小さな物から順に挙げますと、次のようになります。
 (1).シンクロ系も「なじみ」が出るまで待つ     (期待度=小さい)
 (2).オイル交換する。またはオイル銘柄を変える。(期待度=やや小)
 (3).オイル添加剤を投入する   (期待度=中、ただしデメリットもあり)
 (4).クレームでMT交換      (期待度=中、ただし再発の恐れあり)

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要するにシンクロ系の摩擦係数を低く安定させれば良いわけです。(3).の場合は、摩擦係数の低減効果は確かにありますので、操作フィーリングは改善されるでしょう。しかし、そのデメリットとして、「ギヤ鳴り」が発生する恐れがあります(全部位でμが低下するため)。シフト操作が丁寧な方以外にはおすすめ出来ませんが、まあ効果はあるはずです。

(4).は、ちょっと難しい対応になります。要するに、「このシフトフィーリングは何だ。対策してくれ。」と、ディーラーにクレーム申請するわけです。ディーラーとしては、お客様からの苦情に対応するため、(4).=「ではミッションを交換致します」とか、あるいは(5).=「(もしあれば)対策品に交換させて頂きます」とかの対応になるわけです。

新車の場合でしたら、1ヶ月点検の時などにオイル交換した方が良いと思います。ただし、その意味合いは、ギヤなどの初期摩耗粉を取り除いてやる(=ミッション内のフラッシング)ことであり、純正オイルを新油に交換したからと言って、必ずしも「2段入り」が改善されるわけではありませんので、ご注意願います。
(とは言っても、交換した方が良いことは明らかです)

なお、添加剤として、エンジン用には「フロンティア」というスバル推奨のものがありますが、ミッション用には残念ながら設定されていません。

Q1.ギヤチェンジの時、シフトがゴリゴリするのですが・・・?

<A1>
これは、「シンクロの同期が遅れることによるギヤの "かみ合い騒音"が起こる」状態 をいいます。
例えば、2速から3速にシフトアップする場合について考えてみます。

シンクロには、途中のニュートラルの時に、(ギヤ比ぶんだけ異なった速度で回転している)ギヤシャフトを同期させて、差回転が生じないようにする役割があります。差回転が無ければ、そのままスムーズに3速に入りますが、差回転があれば、シフト時に一瞬「ギャッ」と音が出ます。

ミッションオイルに添加剤を入れた場合、シンクロ系にもコーティング被膜が形成されると、今まで「摩擦力でギヤシャフトの差回転をおさえて同期」させていたものが、今度は「摩擦力が低下するのでシンクロ系が滑り続け、同期させるまで時間がかかる」という事が考えられます。同期までに時間がかかると、結果として回転の同期が終了する前に、ドライバーが3速にシフトしてしまうため、ギヤが「ギャッと "鳴る" 」のです。これが「ギヤ鳴り(ギヤ鳴き)」です。

要は、もともとミッションの機構上から摩擦力を確保しておきたい場所の摩擦係数までも下げてしまう恐れが添加剤にはある、ということです。(注;必ずしもすべてのミッションで発生するとは限らない)。

添加剤を入れたからといって、必ずしもギヤ鳴りが発生するわけではないですし、逆に他の部分での摩擦係数(摺動抵抗)が下がることにより、トータルで見るとシフトフィーリングが改善される場合もあります(2段入りに対してなど)。よって、一概には添加剤が良いとも悪いとも言えません。

 


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