■ (3).ATに関するQ&A ■

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【AT編・タイトル一覧( 03/11/15 現在)】

Q3. 変速時にATが滑る(エンジンも吹け上がってしまう)のですが・・・?
Q2. AT内部の「多板クラッチ」や「多板ブレーキ」について教えて下さい。
Q1. 変速ショックが大きく、ディーラーで「ソレノイド故障」と言われたが?
 

3.変速時にATが滑る(エンジンも吹け上がってしまう)のですが・・・? ←NEW

<質問>
「1速→2速」変速とか、「3速→4速」変速で、ATが滑っているような感じとなり、エンジンが高回転まで吹け上がってしまいます。何か原因がありましたら教えて下さい。
<回答>
レオーネ、レガシィ(BC/BF型、BD/BG型)、SVX、フォレスター初期型ターボ、インプレッサ初期型などにお乗りの場合、不調の原因は「バンドブレーキ」と呼ばれる部品の調整不足か、または摩耗による滑りが考えられます。他の多板クラッチについては因果関係から考えると、絶対とは言い切れませんが犯人の可能性は低いです。

バンドブレーキというのは、それ自身は帯状になっていて、車両前後方向に約5〜6cmくらいの幅を持つ”円筒状の”摩擦材です(自分自身は回転せずに、動いている相手部品を止めるのでブレーキと呼びます)。多板クラッチではありませんが、役割は多板クラッチと似たようなものとお考え下さい。 このバンドブレーキと対をなす相手部品はドラム(円柱状部品、シャフトの一種)です。バンドブレーキは、回転しているドラムを外周からギギギュ〜と内側方向に油圧の力で「締め付ける」ことによって、その回転を止めるためのものです。

したがって、バンドブレーキ自身は、使用にともなってだんだん摩耗していきます。摩耗の仕方が不均一だと、制動力にムラが起こって変速不良に至る可能性があります(いわゆるATの「滑り」)。また、この部品のスキマ調整が適正範囲外になると、変速しなくなる恐れがあります。バンドの摩擦材の摩擦係数が経時変化(走行距離の増大とともに不安定になるなど)する場合にも、変速不良に至る可能性があります。

<断面図>改行くずれご容赦!

帯状(正確にはΩ=オメガ字状)のものがバンドブレーキ
◎印(正確にはシャフトと一体になって回転するドラム)が相手部品
    ※ドラムの回転軸は紙面に垂直

 / ̄\
| ◎ |
  \  /
   ̄   ̄
 → ←バンドが締まるとブレーキ作用
 ← →バンドが緩むと解放作用

構造上、バンドブレーキは真円になりにくいと言われています。つまり楕円になって片当たりを起こしやすい可能性が否定できないのです。また、ドラムとのスキマ調整がシビアかもしれません。スキマが小さいと、いつもドラムを引きずることとなり、スキマが大きいと、油圧をかけて締め付けてもなかなかドラムの回転を止められなくなってしまいます。

3速→4速変速がおかしな場合の原因として、他にはバンドブレーキの油圧を発生させる油圧回路、あるいはTCU(トランスミッションコントロールユニット)そのものも考えられますが、TCUに異常があるなら最初から変速がおかしいはずなので、走行距離が進むにつれて調子が悪くなるような場合は、関係ないかも知れません。いずれにしても、ディーラーなどで様子を見てもらったり検査をしてもらうことになります。

ちなみにスバルでは、新世紀レガシィやフォレスターの2000ccNA追加のころから、ATを新型構造のものにモデルチェンジしています。新型ATではバンドブレーキを廃止して、代わりに同等の機能を持つ多板ディスクブレーキがATに内蔵されています。これはその名の通り、バンドの替わりに円盤(ディスク)が相手部品(こちらもドラムの代わりに円盤に変わっています)に押しつける構造になっています。
 

2.AT内部の「多板クラッチ」と「多板ブレーキ」について教えて下さい。 ←NEW

<質問>
ATの内部には、「多板クラッチ」とか「多板ブレーキ」があると聞きました。これについて簡単に教えて下さい。
<回答>
スバルに限らず、ATには「多板クラッチ」という部品が複数個、使われています。1組の多板クラッチは、円盤状のディスクプレートが3〜7枚程度、重なった構造をしています(場所により「多板」の枚数が異なります)。多板クラッチは、それが設置される場所により「フォワードクラッチ」「ハイクラッチ」「リバースクラッチ」などというように、区別するために名前が変わりますが基本構造は一緒です。油圧のON−OFFにしたがって、クラッチがつながったり(=駆動力が伝達)、切れたり(=駆動力がとぎれる)する働きを持ちます。

同じ「多板クラッチ」であっても、設置場所によって呼び名が異なるのは、例えば人間で言うと、「小腸」も「大腸」も同じ内蔵でありながら、身体の中のどの場所にあるかによって名前が変わるのと同様です。どちらも「腸」ですから、働きは同様なはずです。あるいは、同じ「歯」であっても、場所によって「奥歯」「犬歯」「前歯」などと名前が変わるのといっしょです。

「多板ブレーキ」についても同様の構造ですが、こちらは例えば自分自身は回転せずに、動いている相手部品を止めるような働きを持つ場合(の多板クラッチのこと)を、ブレーキと呼んでいます。ATの内部に複数個ある、どのクラッチ(やブレーキ)をつないでどのクラッチ(やブレーキ)を切るか、その組み合わせを変えることによって、1速〜4速(車種によっては5速も)、およびロックアップの状態が決まります。

ロックアップ機構自体も、クラッチの一種と見なされますが、こちらは1枚ものなので「多板」ではなくシングルプレートです。しかもAT本体ではなくトルクコンバーターの内部に内臓されており、外からは見ることが出来ません。その点では、他のいわゆる「多板クラッチ」とは区別されることが多いです。

変速不良が起こる場合は、たいていの場合、
 (1)この多板クラッチそのものが(摩耗や劣化などで)機能不全になる場合
 (2)多板クラッチの作動圧である油圧回路の不良(ガスケットやソレノイドを含む)
 (3)多板クラッチのON−OFF指令を出している制御そのものが、不適な場合
に集約されるのではないかと思います。

人間にたとえると、(3)は脳みそ、(2)は神経、(1)は臓器、という感じでしょうか。
またATの特徴として、ある特定の多板クラッチが機能不全になった場合、それが原因で引き起こる不具合現象には、ある種の法則(=因果関係)があります。逆に言えば、いま起こっている不具合現象からどこの多板クラッチが怪しいのか、おおよその検討がつきます(断定はできませんが)。人間にたとえると、「不整脈なら→心臓が怪しく」、「血液中の酸素濃度が低下するなら→肺機能が怪しい」、という感じでしょうか。心拍数がおかしいのに心臓を見ないで目を見るとか、手足がしびれているのに神経を見ないでノドチンコを見るといったお医者さんはいませんよね。したがって、ATで不具合症状が現れた場合は、ディーラーなり修理工場なりに、なるべく正確にその症状を伝えることが解決への近道になります。
 

1.変速ショックが大きく、ディーラーで「ソレノイド故障」と言われたが?

次に挙げるいくつかの症状のうち、該当するものがあれば、確かにソレノイドの故障が考えられます。
 (1).シフトショックが大きい
 (2).ロックアップしない
 (3).3レンジ3速でエンジンブレーキが効かない
 (4).シフトしない
 (5).ハンドルをめいっぱい回したときに、車体にブレーキがかかったようになる
   (タイトコーナーブレーキング現象)


まずソレノイドバルブについてですが、AT内では複数個使用されています。デューティーソレノイド(A,B,C)やシフトソレノイド(1,2,3)などといった呼び名で、ATF(ミッション内のオイルです)の通路や油圧を調整する役割をしています。

複数個あるうちの、どのソレノイドが故障するかによって、車体側に現れる症状は異なってきます。逆に言うと、車に現れる症状によって、故障した(=交換するべき)ソレノイドが異なるのです。その場合、これらのソレノイドはAT内で装着される場所がそれぞれ異なりますので、交換するソレノイドによって部品代だけでなく工賃も異なってくると思います。

上記(1)〜(4)の現象で入庫した場合は、おそらくミッション下部のオイルパンを取り外すと、ソレノイドが出てきますので工賃は安くなると思いますが、部品は一式セットでの交換となる恐れがあり、部品代は高めになるかも知れません。

上記(5)の現象で入庫した場合は、おそらくはプロペラシャフトを取り外し、ミッション本体(後部)を分解しないとソレノイドが出て来ませんので、部品代はそれほどでもないが工賃は高くなる恐れがあります。

 


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