フィルムフェスティバル2005in札幌、多彩な企画ショートショート フィルム フェスティバル2005in北海道の札幌会場での上映が、7月3日から9日まで開かれた。会場は、アーバンホール(札幌市中央区南3西4、アーバン札幌7階)。17プログラム約120作品を上映。インターナショナル・コンペティション部門(5プログラム) 、ナショナル・コンペティション部門(3プログラム) 、[ B & C ]セレクト(1プログラム)のほか、コリアン1、コリアン2、フレンチ1、フレンチ2、オーストラリアン、カリフォルニアの各ショート、ロイストン・タン特集、北海道セレクションという札幌だけのオリジナルプログラムも8用意した。 私は、インターナショナル・プログラムのA、B、C、D、E、ナショナル・プログラムのC、[ B & C ]セレクト、コリアン1、フレンチ1、フレンチ2、オーストラリアン、カリフォルニアの各ショートと、ロイストン・タン特集、北海道セレクションと計14プログラムを観た。 |
ショートショート「I-A」は「OH MY GOD」 |
ショートショート「I-B」は「おんぶ男」善人が食い物にされていくブラックなアイスランド作品「おんぶ男/The Man on the Back」(21分) が、もっとも良かった。監督のジョン・グナーは、俳優、脚本家、芸術家としても活躍。おんぶされる男を演じ、脚本、監督も務めた。世界的有名な歌手・ビョークがこの映画のために音楽を作曲。スカンジナビア映画祭、韓国・プサン映画祭で上映されている。「女性上位の世界」は、1940年代の闇世界を、男女の役割を逆転して描いた。10年前だったら、果敢な試みとして評価されただろう。 |
ショートショート「I-C」は「最後の農場」アイスランドの郊外に住む年老いた農夫の生きざまを、落ち着いた映像で描いた「最後の農場」が、印象に残った。2つの世界が回転し融合する「優柔不断」は、ショートショートらしいオチ。「新たな歓び」は、下ネタで笑わせる下品な発想だ。そして「聖戦JIHAD」は、宝くじに当たったイスラムの自爆テロリストの動揺と転向で笑わせようとしている。文化的な多様性を尊重するはずの映画祭の精神に反するのではないか。 |
ショートショート「I-D」は「カタツムリの宝物」チリの作品「カタツムリの宝物」が、両親の思わぬ深謀を描いて驚かせる。唖然とさせて終わる結末が見事。「母の全て」は、年老いた女性が夫に愛された自分の太った身体について赤裸々に語る。これまでにないドキュメンタリーだ。「サプライズ」は、2重3重4重のオチの連続。まさにサプライズ。「励ましのメッセージPeptalk」は、目新しいアイデアではないが、清清しく撮影され、思わず笑ってしまう。ヨーロッパ各地の映画祭で上映された。 |
ショートショート「I-E」は「鼓動」 |
貴重で面白い[ B & C ]セレクトことしのショートショートフィルムフェスティバル2005で、もっとも特徴的な企画。「モーターサイクルダイアリーズ」「バッドエディケーション」のガエル・ガルシアベルナル主演作とアルフォンソ・キュアロンとカルロス・キュアロン監督作品の作品を集めた。貴重なだけでなく、とても面白い。ガエル・ガルシア・ベルナルの存在感は、傑出している。「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」のアルフォンソ・キュアロン監督作品「堕天使」(29分30秒)は、巧みなカメラワークに酔う傑作だ。ローラ・ダーン、アレン・リックマン、ダイアン・レインが出演している。カルロス・キュアロン監督作品「新婚の夜」も楽しい。 |
「THE SECRET SHOW」は、別格の面白さショートショートフィルムフェスティバル2005「N-C」プログラムを観た。「LELAINA」(和泉理砂監督)や「Wonder」(亜良野佑監督)は、構成的なレベルはともかく、面白さを感じない。「THE EAR」(宇野潤監督)は、思わぬ戦争体験のシーンが衝撃。アニメーションの「Dream Thie」(木下岳監督)は、不思議な味わいの作品。「UMAMI」(水橋玄ニ郎監督)は、良いところに眼をつけたが、微妙な味覚の意味を伝え切れていない。そしてスーパードライアワード・スカラシップ作品「THE SECRET SHOW」。まさに別格の面白さ。 中尾浩之監督のストーリーテラーとしての才能をあらためて感じさせられた。渡辺典子や石原良純が出演していて驚くが、本当に驚くのは物語の巧みさだ。まさに逸材だ。 |
札幌オリジナル・ロイストン・タン特集 |
カリフォルニア・ショートはハイセンス最初にコミカルなロボットアニメを持ってきて、ラストに心臓移植のとびきりハートウォームな作品を持ってくる構成が心憎い。タンゴの曲に乗せた美しく心地よい作品、世代間の交流、哲学的なテーマ、皮肉な視点など、久保俊哉プロデューサーの目配りとセンスが光る。重いテーマをあつかった「Some People」は、生きる理由ではなく具体的な人との繋がりが大切というメッセージが、ストレートに届く。 |
「フレンチ・ショート1」は思わぬ収穫札幌オリジナル「フレンチ・ショート1」は思わぬ収穫。「L' Autre combat」は、少年のもうひとつの戦いが痛いほど伝わる。「フルシニコフ・メソッド」は、映画監督を題材にしたかなりユニークなアニメ。「テレグラム(電報)」は、戦地から届く訃報の電報をめぐる母親たちのやり切れない悲しみを描く。息詰まる展開に、見事なオチ。これが一番かなと思ったら、ラストにとんでもない傑作が控えていた。「天使の刻印」。ほくろは、こう呼ばれているらしい。精緻なCGによるシーンが、牧歌的な場面に重なり、静かなラストを迎える。感心した。 |
「フレンチ・ショート2」は古典的な傑作札幌オリジナル「フレンチ・ショート2」は、古典的な傑作ぞろい。彫刻家がボクシングのグローブで顔を殴り、作品にする。1988年カンヌ映画最優秀短編映画「ボディー・スカルプチャー」のブラックなエスプリは、古さを感じさせない。1990年カンヌ映画最優秀短編映画「レヴェストリクション」は、緊迫感の連続に見事なオチだ。そのほか、どの作品も、癖のある展開で楽しめる。 |
「オーストラリアン・ショート」は、なかなか骨があることしの「オーストラリアン・ショート」は、なかなか骨がある。単純なオチを用意してはいない。味わい深い結末が特徴だ。不条理と芸術と恐怖が交錯する「IMMURED」の映像センスを高く評価したい。わずか5分のドキュメンタリー「ARBORSMITH」は、木々を細工してアートに仕上げるピーター・クックを取り上げている。もっと長い本格的な作品にすべきテーマだ。 |
大人気の「コリアン・ショート1」韓国のミュージッククリップを紹介するショートショートフィルムフェスティバル2005in札幌の札幌オリジナル「コリアン・ショート」は、とても人気がある。札幌の人気に影響され東京会場でも企画された。クリップ1は、韓国から見た日本がテーマになっているものの、雪景色など、まだ表面的なレベルにとどまっている。突然の悲劇として、安易に交通事故死を使うのにも閉口した。「マイ・ファースト」のロングバージョン(23分)は、特別に公開が許可された作品。ミュージッククリップを超える本格的なドラマが展開されている。 |
北海道セレクションは「討ち入りだヨ!全員集合」北海道から発信することを目的に未発表のオリジナル作品を募集して構成している北海道セレクション。ことしは、SSFF2005札幌アワードを新設。小川亮輔 監督のノンストップワンカットームービー「討ち入りだヨ!全員集合」が、初受賞した。オーストラリアの映画祭での上映が決定したが、「忠臣蔵」のパロディとか理解してもらえるのだろうか。「missing」(朝日浩明監督)は、巧みに怖さを演出。悪くないが、それだけでは物足りない。 |