第1部:資本の生産過程

第3篇:絶対的剰余価値の生産

第8章:労働日

第4節
昼間労働と夜間労働。交替制



マルクスはまず、交替労働制が発生する必然についてふれ、それが「資本主義的生産の内的衝動」によるものであることを指摘している。

不変資本である生産諸手段は、価値増殖過程の立場から考察すれば、労働を――そして一滴一滴の労働とともに剰余労働のある比率的分量を――吸収するためにのみ定在する。生産諸手段が剰余労働の吸収を行なわない限り、その単なる実存は資本家にとって消極的損失である。……使用中断によって仕事の再開のために追加支出が必要となるようになるやいなや、この損失は積極的なものとなる。……それゆえ、1日の24時間全部にわたって労働をわがものとすることが、資本主義的生産の内在的衝動なのである。しかし、同じ労働力が昼夜連続的にしぼり取られるなどということは肉体的に不可能であるから、この肉体的障害を克服するために、昼間食い尽くされる労働力と夜間に食い尽くされる労働力との交替が必要になる。[271-2]

この「内的衝動」はすでに公文書――ここでは『児童労働調査委員会、第四次報告書』、1865年――のなかで、資本家諸氏によってあからさまに表明されており、典型例として、この節の中では、「サンダースン兄弟会社」のオーナーであるサンダースン氏の言が紹介されている。

「鋼の生産そのものにかんして言えば……まったく変わりないであろうが、しかし、その場合には、きわめて高価な機械設備が半分の時間遊んでいることから損失が生ずるであろうし、またこんにちの制度のもとでわれわれが提供できるだけの生産物量をこなすには、建物と機械施設とを2倍にしなければならず、それは支出を2倍にするであろう。……確かに、遊休機械設備から生じるこの損失は、昼間だけ仕事が行なわれるすべての工場に存在する。しかし、われわれの場合、溶鉱炉を使用していることで特別の損失が生じるであろう。溶鉱炉の火を燃やし続ければ、燃料が浪費され……また火を消せば、ふたたび火入れして必要な高温を得るのに時間の損失が生じ……そして溶鉱炉そのものも温度の変化によって傷められるであろう」[278]

これらの「内的衝動」によって労働者にもたらされている労働実態が、『児童労働調査委員会、第四次報告書』という公文書の実例によって、具体的に紹介されている。ここでも、児童労働の過酷さに焦点があてられている。

一般に少年たちを昼夜交替で働かせる方法は、事業の繁忙時にも平常時にも、労働日の法外な延長に導く。……あれこれの理由から、交替の少年がときどき欠勤するということが必ずある。その場合には、すでに自分の労働日を終えた出勤中の一人または数人の少年がその欠落を埋め合わせなければならない。……ある圧延工場では、名目的労働日が朝の6時から晩の5時半までであったが、ある少年は、毎週4晩は、少なくとも翌日の晩の8時半まで働き……しかもこれが6ヵ月間続いた。……もう一人の少年は、9歳のときには、ときどき12時間労働の3交替分をぶっ続けで働き、10歳のときには2日2晩ぶっ続けで働いた。……現在10歳の第三の少年は……朝の6時から3晩は夜の12時まで、その他の晩は晩の9時まで働き続けた。……現在13歳の第四の少年は……まる1週間のあいだ午後6時から翌日の正午まで働き、しかもときどき3交替分をぶっ続けで、たとえば月曜日の朝から火曜日の夜まで働いた。……現在12歳の第五の少年は、ステイヴリーのある鋳鉄所で、朝の6時から夜の12時まで14日間働き通したが、それ以上続けることはできない。【『児童労働調査委員会、第四次報告書』、1865年】[273-4]

製鋼・製鉄工場や鍛鉄工場、圧延工場、冶金工場などにおける児童労働について、その制限に抵抗している資本家諸氏の理由づけのなかにも、「内的衝動」が明白に表われている。

18歳未満の少年の夜間労働を許さないことにわれわれが異議をとなえるのは、出費の増加が理由であるが、しかしこれがまた唯一の理由なのである。【『児童労働調査委員会、第四次報告書』、1865年】[276]

交替制という労働形態によって、1労働日は24時間という1自然日をゆうに超えて、際限なく延長されてゆく。



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