`05/5/17追加:初期の肥後の守

肥後の守の使い易い点?

 さて、前述の研ぎ上げてバフ掛けまでした肥後の守は、その後、家の伝言用のホワイトボードの磁石付きフックにぶら下がっていて雑用に使われている。他に刃物や道具類があるので我が家ではあまり表舞台には立てないのだ。だが、今回此のページを作ろうと思ったのと同じ印象は日頃持っていて、確かに竹を細工するのに使い易いのは確かだ。持っている肥後の守は、確かに長切れして切れ味が落ちにくいがATS34あたりのものだと同じ事をすると途端に切れなくなってくる。それは竹をこじったりゴリゴリとハードに使った時だ。

 鍋屋さんの主が、肥後の守を持った手を台に当て、刃の根本も台に当てて固定し、割った竹を細く削って竹籤を作る。竹とんぼのシャフト作りだ。『こういった作り方は今の子達は分からないんだよな。』と仰る。スースーと竹を引くだけで綺麗な籤が出来上がった。  竹とんぼの羽の中央のところを加工する。刃をこじって丸く削る。主は、『切り出し小刀も確かに切れるけど、片刃だろ、そうすると食い込んでしまってこじりにくいんだ。肥後の守は両刃だから食い込まずに綺麗にこじれる。。』と言う。確かにそうかも知れない。

 

 手際よく削って羽根が綺麗に出来ていく。どちらかというと芸術的な細かい作業ではないので、片刃で切つというより両刃で割っていくという感じ?  あと、切り出し小刀と違って刃先の方にも高さがあるからもう一方の手で押す時も、両刃故、テコの原理でこじり易い事もあるかも知れない。

 

 金物屋の主として刃物を扱う鍋屋のオヤジさんのものだから、良く研いであってスースーと良く切れる。
 なんといっても日本刀収集も趣味の一つだし。
 鍋屋のオヤジさんのポケットナイフは肥後の守だ。中には纏めて何本も買う人も居て、何かのイベントのプレゼント用にするらしい。依頼されてイニシャルを彫って上げることも多いとか。

 片方の羽根を薄く削いで、羽根の重量バランスをとる。

 厚手の竹で羽根のねじれを削りだけで作ったもの。素材、工作中、出来上がりの各品

 

 手前はアルミホイルを巻いた上で、蝋燭で炙ってねじれを入れたもの。見えなくなるまで舞い上がっていくらしい。奥のものは火で炙ってねじりをしていないもの。

 今回は、鍋屋のオヤジさんが丁度肥後の守で工作をしていて改めて肥後の守の使い易い点について再認識した。確かにカネ駒の肥後の守は青紙を使っていて硬い焼きが入っているので長切れはするのは分かっていたんだけれど、形状がこんなことに特化して使い易いとは思わなかった。勿論、他にも良い刃物は確かにあるが、低価格で、両刃で、青紙で、折り畳んで持ち運びしやすいという同じ様なものはそんなに無いように思える。勿論、オヤジさんは名工の刃物類や、木屋の刃物類を扱う位だから研いで良い刃付けがしてあるし、もちろーんのこと私の肥後の守もそうだ。何よりも安いというのは良いよね。気にしないでガンガン使えるしね。by Recycler

此の画像は本ページをアップしてから1年以上経ってのもの。`06/5
鍋屋のオヤジさんの肥後の守が大分研ぎ減りしている。

 

 これも良く飛ぶとの事なので一本頂いてきた。家の前で飛ばしてみると確かに空高く舞い上がっていった

12/7追記:包丁他刃物を研ぐついでに久方振りに肥後の守も研いだ。他のものは中砥と仕上げ砥の両方で研いだが肥後の守は仕上げ砥の6000番のもので研いだだけ。やはり青紙は硬いので研ぎ易くはないが6000番の砥石でも少な目ながら研いだ澱の痕が綺麗に残る。丁度、調理用の竹製のヘラの柄がが黴びていて黒くなっていたので肥後の守で削って綺麗にしてみた。
 案の定確かに薄く削りやすい。表面を薄く鉋を掛けるみたいに削り取る事が出来る。ただ、竹を割った面は乾燥している為に刃が食い込み易く簡単に刃が入って割れるように切ってしまう。其処で切り出し小刀に換えて同じ事をしてみた。やっぱりだね。片刃(で、裏スキがちゃんと造ってあるので)なので吸い込みが良すぎて、薄く表面だけ削ろうとしても竹の内部へ刃が進んでしまう。削りすぎ切りすぎの状態になってしまうわけだ。ちょっと力を入れると、竹ベラの柄の形がドンドンと意図せぬ形になっていく。(^-^;;
 どうも竹製品の外側の処理には両刃で刃角が肥後の守のようなものが扱いやすいんだね。子供の頃にはやっていたはずなんだけど忘れてしまっていた。適材適所、ご存じの方も多い事だろうけれど自分は再認識。先に重複するが、ステンレス合金系の刃物では炭素綱のような切れ味にはなりにくいし青紙の様な長切れは期待できない。勿論、コストを掛けたお高いものだったらそれなりのものは出来るはずだが、この価格では出来ないものね。ちょっと見直した肥後の守であった。
 その後、小山師匠に電話をする機会があったのでこの事を話すと、「そうなんだよな、肥後の守は竹細工に絶妙の形をしているんだわ。」とやっぱりご存じだった。この時、師匠はお孫さんに純銀のスプーンを鍛造で作ってあげた後とのこと。銀は酸化しないように火入れを上手く行うのが大変だそうだ。


`05/5/17追加:【初期の肥後の守】先日、近くまで行く用事があったので久々に小山師匠の所に寄った(小山師匠は今年になってから心筋梗塞で倒れて奇跡的にこの世に戻ってきたばかりなのだが...)。去年、小山師匠に貰った研究開発用にワンメイクされた可成り良いベアリングを使ってある回転物?(30万円位掛かったらしい)を陶芸用の轆轤に転用するのにどの様な造りにするかを相談に行ったのである。あきる野の山田の交差点近くの爺婆がやっている注文するとその場で焼いて渡してくれる昔ながらの本当に美味しい団子を手土産に乗り込んだ。小山師匠は上質の甘いものが好物だ。で、心筋梗塞。。。関係ないか・・・
 その時に雑誌ナイフマガジンと共に見せてくれたのが肥後の守と打刻された此の古い刃物。

 可成り良く切れるらしい。  が、造りが薄いので無理するとパキッと逝ってしまうかも。

 それで、柄が画像の様に尻のところで折り返しているだけなので、刃を折り畳むと反対側に刃が飛び出すことがあるのでとっても危ない造り。

 何か僅かに記憶がある様な無い様な。子供の時に此の形のものを見たことがあるはずなんだが。ポケットに入れて於いて刃が飛び出し腿を傷つける事故が多発したので学校に持ってこない様にというお達しが出た様な想い出が。それとも単なる記憶違いか。。。

 でも、此の肥後の守だったら、自分では今のカネ駒製の肥後の守の方がいいな。刃は永切れして刃保ちが良いし厚めなので無理にこじっても割れないし。
 とは言っても、此はタングステンなどが鋼材に多く含まれているからなのだが、其れを研ぐのは人工砥石だから良いのであって、天然砥石では柔らかくて直ぐに砥石の形が変わってしまい高いものについてしまう。そういう意味では此の肥後の守も時代に応じて進化しているのではないか?

 此の肥後の守の造りがどうなのかというと、小山師匠はヤスリを掛けていないので解らないと言う。ただ、かなり薄いから総鋼かもとのこと。
 他のページに載せたかどうか健忘症気味の脳味噌から記憶を引っ張り出せないのだが、小山師匠は古いモノを手に入れてくるとヤスリを掛けてどんな素性のものかを調べる。それから鋼だったらグラインダーを掛けて火花の飛び方で使われている鋼の種類を探る。玉鋼、青紙、白紙、東郷綱をはじめ鋼で火花の飛び方や色合いが違う。デジカメに撮ってもあ程度は解る。かなり前に撮ったのがあるのだが、多分アップロードしていないだろうなあ。その場合には、いずれ時間をみて載せたいと思っている。。。

 さて上の画像の下敷きになっている`05/6号のナイフマガジン。肥後の守を題材に、自分だけの一本にカスタマイズしようという趣旨のページが載っていた。後ろの方には竹とんぼの作り方。当方の刃物系のページ群にアップしている内容とよく似たテーマ。ただ流石にお金を取る雑誌では更にもっと突っ込んで深い内容が書かれているのは流石に学者さんが書いている記事。やっぱり道具は自分なりにカスタマイズして自分が使い易い様にしなくては。ましてやナイフは自分で研いでいくので形も変わっていくしね。こういった多くのマニア達が読むオーソリティの出版物にはもっともっとそういったことが採り上げられなくてはね。(ただ、小山師匠がその記事の中の写真を観て、この人は学者であって作り手側では無いなという様な内容のことを言った。それはグラインダーで削る時の持ち方で、件の様な持ち方では刃の熱の上がりが手で感じられないから温度が上がりすぎても解らないので焼き鈍しする可能性の高いものだからプロはやらないというものであった。でも一般読者相手にプロのやり方を載せても仕方がないから、より危険度の低いものを採り上げたと言うこともあるかもね)。
 ナイフ作りをするほどのマニアではなくても、売っているそのままでは切れ味も良くなかったり作り込みが雑だったり、また自分好みではなかったりするので、其れをどの様にカスタマイズするかというのは汎用的なテーマかと思う。自分は子供の時から道具類(自転車もその内)などは何かと手を入れて自分用にカスタマイズするのが好きだった。勿論、外見を変え部品を換えるという事に留まらず各パーツを自分でシコシコとチューンナップして使い易い様に、また作動がスムーズになるようにという事も含めてである。うーん、だから古いモノを買ってきて直して使うという事を厭わないんだな。もっとも、貧乏人故お金を掛けずに最大の効果というのが基本的スタンスにあるのは事実だが。。。以上 by Recycler
 


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