2022.11.25
京都アニメーションの作品『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』がテレビで放映されたので観た。丁寧に描きこんであって、なかなか綺麗な画面なので癒される。でもまあお話は少女漫画系である。

・・まだ文字を書ける人が少ない時代の話で、手紙を代筆する職業があって、それが郵便事業でもあった。代筆者のことをドールと呼んでいて、中には有名な人も居た。題名はその人の名前である。幼い頃軍人の兄弟に拾われて、助手として育てられた。激しい戦争があり、その弟の方(少尉)と戦場で生き別れた。彼は片目と片腕を失っていた。彼女は両腕を失った。義腕を付けてタイプライターを打っている。戦場で育ったために感情表現が苦手であるが、仕事は極めて優秀であった。別れ際に少尉に言われた言葉「愛している」という言葉が理解できなかったのであるが、仕事を続ける内に様々な事例に遭遇して、その意味を理解するようになり、彼の事が忘れられなくなった。死んだと思っていた少尉は孤島で教師をしたり若い人の居なくなった代わりに村人を助けていたのだが、やがて、生存が彼女の会社に知られる。彼もまた島の人々の為に代筆をしていて、その一通が宛先不明で残されていたのである。

・・上司と共に彼女は彼に会いに島に行く。しかし、彼は「自分は居ない方が良い」と判断して会おうとしない。「生きていたことを知ったし言葉も交わせたから」と彼女は別れ際に手紙を託す。それを読んだ彼は心を取り戻して離れ行く船に向かって叫び、彼女は海に飛び込んで泳いで島に渡り、再会を果たす、という処がいかにも少女漫画風である。結局彼女と彼は結婚して島で代筆業を続けたらしい。それが島の記念切手になった。

・・挿話として、彼女の顧客である少年の話があった。重病で死ぬことが判っていた少年は彼女に、自分が死んだときに両親と弟に見せるための手紙を書いてもらう。ところがその時ちょうど彼女は島に居たのである。そこで会社の人が代理で義務を果たし、その様子が電信で伝わる。

・・またこの話全体は昔話であり、それを想起させる出来事として、彼女が代筆していた死後50年に亙って誕生日に届く手紙の話があった。それは語り手の女の子のお婆さんがお母さんに出した手紙だった。お婆さんが亡くなったとき、その手紙を読んで、女の子はお母さんと和解する、という落ちが付く。

・・直接話せないことでも、書いて手紙にすることで心が伝わる、というメッセージが主題のような気もする。ところでこれはシリーズの最後たっだようで、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『同左ー外伝』というのが前々週と前週に放映されていたらしい。おそらくその中で彼女の「愛する」という言葉の意味の理解が進んでいくことを描いているのだろうと思う。そういう意味で人格形成物語なのだろう。

  <目次へ>       <一つ前へ>     <次へ>